=海名 小卯(男子2番)、某所にて=
だ…………ぶ……?
誰かの声が聞こえる。
僕の意識は、まだぼんやりとしていた。
――あれ、僕は何してたんだっけ。
次第に頭の中のぼんやりした霧は晴れていく。徐々に視界がはっきりしていく。
『大丈夫か?』
僕を呼ぶその声が、今度ははっきりと聞こえた。
「……あっ」
僕は小さく声をもらした。
目の前に居たのは友達の壁智 明流(男子16番)だった。
変わりもしない黒くて長めの髪。意地の悪そうな目。いつも僕を馬鹿にする声。それは、僕の知っている壁智 明流そのものだった。
「お前どうしてあんな所にいたんだよ」
僕の顔をのぞき込むようにして、明流が訊ねる。
「それは……」
そう言われて僕は思い出した。あの智野が銃を撃ってきた事を。
そして、それから逃げてひたすら走っていた事を。その途中で……
――そうだ! その途中で転んだんだ。
「……転んだ」
僕は答えた。
多少ぼーっとしていたためか答えが単刀直入すぎたが。
そう言えばおでこが痛い、転んだ拍子にぶつけたらしい。
「はぁ~転んだぁ~???」
何言ってるんだこいつって感じで明流が聞き返した。
その後、僕はゆっくり体をおこしながら、詳しく事情を話した。
その時分かった事だが僕は当初転んだ場所から大きく移動していた。倒れている僕を発見した明流が、人のいなさそうな所に運んでくれたらしい。
運良く深い草むらだったのが幸いし、他の人には発見されなかったようだ。
「でも、なんで……智野が……」
そう考えるととても恐かった。あの時、智野は異常だった。平気な顔で僕に銃を向け、僕の声も聞かずに撃った。撃った。撃った。
人、自分以外の人間が、何を考えているのか分からなくなった。
僕はパニックを起こす寸前だったような気がする。
「多分あいつの事だからな」
明流は何か知ってるらしい。渋々と困ったような口調で言葉を続ける。
「あいつはアレだ、銃マニアだったからな」
「そういえば」
そう言われて僕は一つ思いだした。
智野の異様に高揚した声。
確かにあの時、智野は何かに喜んでいたのだ。
「もしかして試し打ちでもしてた……?」
ポツリと僕は言葉をもらす。
もしかしたら興奮のあまり周りも気にせず、試し打ちをしただけなのかもしれない。別にやる気ではなかった。だから、逃げる自分を追わなかった。
単なる銃マニアの智野。
無理やりそうやって都合のいい言い訳を自分自身に言い聞かせると、僕は深くため息をついた。
『はぁ…………』
体の魂がぬけるようなため息のあとには、しばし、沈黙が続いた。
ばん ばん
そんな状況も束の間、今度は、その沈黙を2発の銃声が打ち破った。
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