自分で思い出した名前だが他の事は覚えていない。反転した影響で高校1年生くらいに成長している。反転したことで前よりも賢くなり、自分の想い人である士道に恩返しができるので張り切っている。高校生の知識を持っているが見た目に反して黒いので自分の身内などにしか優しい言葉を掛けない。
~士道side~
また、転校生だ。此処の高校は転校生が多いなぁ……と思いつつもどんな人間かを見る。夏に近づいているのにブレザーやタイツをしっかりと着用し、真珠のような白い肌。片目を隠すほどの長い髪、その揺れている髪をじっと見つめていると金色の目が見えた気がする。
「時崎狂三と申しますわ……わたくし、精霊ですのよ」
明らかにこっちを向いて言っている、しかしシカトだ。どうせそっちから接触を図ってくる……長年の経験がそう言っている。
「士道、あやつは気を付けろ。どんな手を使ってでもお前を取ろうとしてくる執念が滲み出ている」
「そんなにもか……対策は必須かな?自分から精霊です、って言ってくる奴だしな……」
こちらも色々と考えなければいけないことが山積みなんだが……。
「四糸乃が転校してきて、凜祢達にも聞かなきゃいけないこととか……予定が多すぎるぅ」
もう一人自分が欲しいくらいの量だ。普通の人より体力があっても無理をすると倒れる。
「一つずつやっていけばよかろう。私の方で四糸乃を見ておく、凜祢の方は士道が行けばいい」
仕事が減ったので感謝する。これは人が行うスケジュールではない。
「ありがとな……とりあえず昼休みにでも聞いてくるか」
そう話し、この後の予定を考えていると転校生が話を続ける。
「わたくし、教室などがあまり分かりませんの……なので、士道さん?お願いしてもよろしいですか?」
俺を名指しするとは……俺の前に居る殿町などはお前大丈夫か?という視線を送ってくるが口パクで問題ないと言っておく。
「了解。放課後案内するよ」
仕事が減ったと思ったら、一つ増えていく……この生活に慣れるにはもう少し時間が掛かりそうだなと心の中で思った。
昼休み、屋上。それは弁当を食べるのに最適である。
「で、話を聞かせてもらいたいんだが……」
いつもの五人と屋上で昼食を取りながら話を聞く。
「凜祢は何処まで話しましたか?」
「え~っと。私達が精霊だよって所までかな」
「最初しか話してないって事ね……道理で呼び出されるわけだわ……」
鞠奈がため息をつく。仕方ないじゃないか、知らなかったんだし。
「あの時、死んでなかったってことになるのか?」
「そういう事。士道とのパスが繋がったことによって生命活動を維持できた。でも、一気に五人と繋げたからそのまま意識が途絶えたってとこ」
万由里が解説する。なるほどなぁ。
「その後、自分たちはラタトスクに保護されて今に至る……といった所だ」
その後の事を蓮が付け足す。
「事情は分かったけど……他の精霊とお前らは違うよな?」
「どうして違うと思ったんですか?」
鞠亜が聞いてくる。
「ん……俺と同じ力を感じたからかな。俺の存在自体がこの世のものじゃないし、だからお前らも違うんじゃないかな~って思っただけ」
「一応、私達は精霊っていう区分付けをされているけど……他の子たちとは全然違う精霊ってことになるんだ」
違う区分付けをされているということは、逸脱しているか、イレギュラーなのかという二つの選択肢になる。
「封印してるなら、力を使えるはずだよな……どんな力があるんだ?」
そうして、聞いていく。凜祢は<凶禍楽園>、鞠亜と鞠奈は<フラクシナス>の補助をすることが出来る力を持っているとの事で、万由里は<雷霆聖堂>、蓮は<瘴毒浄土>という天使であることを聞いた。
「一応、凜緒は私と士道の娘になるんだ」
へ?む、娘?いつの間にそんなことしたっけ?
「ああ、ち、違うよ?私の霊力と士道の霊力が合わさってできたのが凜緒だから。決して娘とは言えないんだよ」
良かった……危うく結婚騒動になるところだった。
「焦らせないでくれよ……使えるには使えるんだな」
「士道が強く望むと、使えるはずだよ……時間になりそうだね」
昼食を取りながら話していると時間を忘れる、気づいたら昼休みが終わりそうだった。
「じゃあ、士道。前の続き皆でしよっか?」
前の続き……嫌な記憶が蘇る。俺は必死に逃げようとしたが或守姉妹に拘束された。
「大丈夫……私達の虜にしてあげるから……今は、力を抜いて」
皆でキスをさせられた。教室に帰って来た時の俺の疲れ様は皆心配するほどだった。
「………」
「五河?死にそうだな」
「ああ……精神的に疲弊したよ。女の子って、怖い」
「トラウマを新しく作ったのか。再発するなよ」
昼休みに地獄を味わったが、放課後にもあると考えると体が震える。それを我慢しながら放課後まで授業を受けた。
「あぁ……ぁ……」
「ゴメンやり過ぎちゃったみたいで、死にかけちゃった」
「はぁ……士道、目を覚ませ。狂三に学校案内するのではないのか?」
そういえばそうだったなぁと思い気持ちをリセットする。
「ん~!!頑張って行きますか……」
「気持ちの切り替えは早いんだね……私達は仕事するからフラクシナスに行くね」
「私は四糸乃と先に帰っておくぞ」
「了解だ、案内って言っても特に紹介するところは無いしなぁ」
そう言いながら二人と別れると丁度、狂三がこちらに向かってきていた。
「士道さん?宜しくお願いしますね」
「紹介するところって言ってもあんまりないけどな……」
そうして、学校を歩く。後ろから折紙が付いてきている気がする……殺気を放って。
「後で埋め合わせだな……」
「………士道さん?何を言ってらっしゃいますの?」
「独り言だ、気にしないでくれ……此処が食堂だな」
食堂を紹介し、次に保健室を紹介する、最後に屋上。
「………」
心を無に、何も感じるな。思い出すな。
「士道さん?どうされましたの?」
「………」
震えを押えろ。俺は恐怖を感じていない。
「士道さん!」
「………」
このまま感情を無にして、何も考えずに。
「し・ど・う・さ・ん……」
むにゅ?何だろう、柔らかいものが当たっているし耳元で囁かれた気が……。
「ぁ……」
そこで意識が途切れた。
「………?」
起きた時、柔らかいものを枕にしていると思った。俺って気絶したんだっけ?
「おはようございます。士道さん」
狂三が膝枕をしていたようだ。
「ああ……思いっきり気絶してたか。すまんな」
起きて立ち上がる。体が怠いが動けないほどではない。
「大丈夫ですわ。でも、急に倒れるんですもの……心配ですわ」
「大丈夫、家に帰って晩飯の用意をしなきゃいけないし。動けるから心配するな」
今日は大変な一日であったと記憶するだろう。キスを迫られ、挙句の果てに気絶。これほど恥ずかしい日はあっただろうか。
「ふふ、それならばいいですわ。では、明日会いましょう」
そうして別れたが、なんだろうか仮面を被り感情を偽っている気がする。
「偽って何がしたいんだ……?それを取った時、俺は何を思うんだろう?」
不安が募っていく、そんなことを考えながら帰路に着く。そうすると、途中で中学生の女の子を見た。知らないはずなのに……懐かしいと感じるのは何故だ?
「に……」
に?
「兄様~!!」
俺は妹は一人だと思ってたんだが。
「………どちら様?」
「兄様も記憶がないんでいやがりますね。私は崇宮真那と申します、これが証拠で嫌がります!」
真那という少女はポケットからペンダントを取り出しそれを開ける。そこに会った写真は俺の小さい頃の写真だと見れた。でも、その年齢だったら五河家に引き取られているはず。
「んー。でも、似てる。真那、だっけか……そっちも記憶が無いんだな?」
「はい、ここ数年の記憶がないでいやがります」
「でもこの歳だったら引き取られてるはずなんだ」
「う~ん。分からないですね……」
二人で頭を捻っても考えは浮かばない。
「………真那の両親にご挨拶しに行った方がいいか」
「あー何というか、私全寮制の職場で働いてるというか……」
職場?働いてるって。
「なので、すいません。そろそろ時間なので帰りますね」
そうして真那が走り去っていく。不思議とまた会える気がした。
「やべ、家に帰んないと天香に怒られる……」
時間的に不味かったので家に急いで帰る。
「はぁ……ぜぇ……」
「帰ったか士道。夕食は四糸乃と私で作ってみたのだが……」
まさか作れるとは……とてもありがたいがキッチンはあまり渡したくはないんだがなぁ。
「ありがとう……でも、風呂に……入る」
全力疾走したので体がべとべとだ。風呂の優先度が一番だと感じた俺は脱衣所に向かい風呂入りそして上がった後リビングに向かった。
「すげぇ……疲れたなぁ」
「狂三とうまくいったか?」
「ああ、そのことなんだけど」
俺が学校紹介をして最後に屋上で気絶して膝枕してもらったという話をした、本当に恥ずかしい。
「士道さんは何で気絶してたんですか?」
「ああ……凜祢達に順番に大人のキスをされて……精神が崩れかかったところに狂三にダイレクトアタックを喰らったから……」
時間が経とうとも精神力は回復しなかったようだった。
「本当に女に弱いな。士道にそんな弱点があったとは驚きだぞ」
「精霊を封印するのにキスが必要なのに、怖いって……無理しないでくださいね」
これからもそれが必要になってくる……耐性くらいは付けておいた方がいいだろうか。
「………あ、少し気になってたことがあった」
その狂三に抱いた違和感、四糸乃と同じような不審な感じ。
「狂三は感情を押し殺してる風に見えるんだよな……そのことについてどう思う?」
「………士道を狙っているということは何か目的があるはずだ。その目的を果たしたいが、自分の感情が邪魔をしている……ということではないか?」
それほど壮大な目的、俺の中でぱっと思いつくのは”死人を蘇らせる”。
「死んだ人を蘇らせる……」
「え……?」
知らぬ間に口に出てしまったようだ。
「士道さんはどうしてそう思ったんですか?」
「俺もそう思ってたんだ。最近までな……」
狂三の場合、恋人ではなく親友あたりだろうか?しかし不可解な点が多い。
「狂三は精霊。でもどうやって蘇らせる?そういう天使じゃなきゃ蘇生は不可能だろ?俺のあれみたいにさ」
俺は死んでも生き返ることが出来る天使を持っているが……同じ天使が存在することはまずありえないと琴里も言っている。
「謎は深まるばかり……か。考えていても仕方がない……明日も学校だ、寝るとしよう」
そうして俺達は明日に備えて寝ることにした。明日狂三に聞くことにしよう。
翌日、出席確認の時には狂三は居なかった。
「狂三は……来てないのか」
「時崎狂三はもう……来ない」
ASTに所属している折紙は何か知っている様子だった。しかし、急に扉が開かれて狂三がやってきた。
「すみません、登校中に体調が悪くなってしまいまして……」
そうしてホームルームを終えると、琴里から電話が掛かってきた。用件は昼休みに物理準備室に来いとの事だった。
「改造されてますけど……」
本当なら違う先生がいるはずだが、部屋を改造されて挙句の果てには自分のいる場所まで奪われている……可哀想に。
「ああ、来たんだねシン」
相変わらずの隈を持っているフラクシナスの解析官の村雨令音さんがパソコンで不気味な物を作っていた。
「ギャルゲー作んないでくださいね。マジで俺クリアできる気がしませんから」
デスクトップに映っていた”恋して・リトル・マイ・シドー”とかいうゲームが開発されつつあった。
「琴里?用件ってなんだ?」
一応、許可を取って来ていた司令官に事情を聞こうとするが映像を見ろとの事だったので映像を見る。左右には心配してきて天香と四糸乃が居る。
「………ASTと狂三か。あの時は終わった後だったんだな」
「後、DEMの社員も入ってるわ」
映像を見つつ説明を受ける、DEMはとりあえず精霊を実験するために捕獲したいクソ組織であることが分かった。
「此処からよ……」
そして映像を見続けると狂三は一瞬で真那に切り倒さればらばらに斬られていく。
「………っ……ぁ……あああああああ!!」
思い出すな、あの日の出来事を。誰も死んではいなかった。そうだろう五河士道。
「これだから見せたくなかったのよ!!令音!」
そして俺は注射をされ、一時的に落ち着く。
「はぁ……はぁ……ぅ……」
「士道さん……大丈夫ですよ……」
四糸乃が俺を落ち着かせようとする一方で天香は狂三の死体の映像をじっくりと観察していた。
「やはり、そういう事なのか?」
「どういう事よ?」
「狂三は分身体を持っているのではないか?」
識別名<ナイトメア>はあちらこちらに出没する。分身が居るのならば説明がつくし、死んでも本体が生き残っていればまた分身できるのでは?という説を唱える。
「確かに……説明がつく。まあ、士道のやることは決まってるんだけど。今日はもう帰った方がいいわね……」
琴里が言う様に俺の状態では授業を受けることすらできない。
「天香と四糸乃も一緒に帰って頂戴。士道を見てて……こっちは狂三について調べとくわ」
そうして教室に戻って荷物を取っていると、狂三が声を掛けてきた。
「士道さん?お帰りになりますの?」
「少し……体調が悪くって……な」
限界も近い、話すこともきつくなってくる。
「それでしたら、明日お時間をいただいても宜しくて?」
デートのお誘いが向こうから来た。
「わか……った。明日10時に……パチ公前でな」
死にそうになりながら家に帰った。
「ようやく……家だ」
「士道は風呂に入って休め……明日はどうせ休日だ。明日狂三とのデートもあるしな」
そう言われたので、風呂に入りすぐさま眠りについた。
次の日、マシになった体を動かし三人分の朝食を作る。琴里は帰れないからと言っていたので自分と精霊二人のご飯を作っておけば良い。時間は、8時半過ぎ。食べ終わり片付けをすると丁度いい時間になる。
「おはようございます、士道さん」
「おはよう、士道」
二人が起きてきて椅子に座り始める。
「今日は狂三とデートだろう?気を付けて行け。危険だと感じたら逃げた方が良い」
「士道さんが傷つくのは見たくないんです……だから、ちゃんと戻ってきてくださいね?」
二人が心配しているなら無事に戻ってきたい所だが……今回は死ぬ可能性も考えられるので十分警戒していこうと思った。
「結構早く着いたなぁ……」
時刻は9時半過ぎ。狂三が待っている様子もなかったので男としての威厳を保てたことに安堵する。
「待ちましたか、士道さん?」
狂三がいつの間にか隣に居た……忍者なのか?
「全然待ってないし、むしろ今来た所」
「ふふ、デートで最初に言う言葉ですわね」
「まあ、いいや。何処行くとか決めてるのか?」
「決めていますわ。それでは行きましょう」
二人でデートをするなど初めての経験のはずだが……何回かデートをした気がする。前世の記憶があるのだろうか?
「で……俺にどうしろと」
「選んでくださいまし、士道さん」
狂三に連れられた場所はランジェリーショップ。此処に来た経験はないので緊張してしまうし周りは女性客ばかりだ。
「選べって……本当にいいんだな?」
「ええ、士道さんに選んで欲しいんですの」
仕方なく選ぶことにする。狂三は肌が白いので対照的な色か合わせていくのが良いだろう……そう思い、周りを見ると黒、白が目に入った。
「………エロ過ぎんだろ。白は無いな」
白の下着はほぼ透けているのでパス。対照的な黒の下着を差し出す。
「俺的にはこれが良いと思うんだが……狂三によく合っていい感じに映えるぞ」
「まあ、士道さんったら際どいものを選びますのね」
「あれよりはマシなんだよ……」
あっちを選ぶと見えてしまうので、俺的には嫌な部類に入る。黒も際どすぎるが。
「士道さん?どうでしょうか?」
真珠のような肌に黒の下着が良く似合っている。自分でも選ぶセンスがあったんだという感動を覚える。
「綺麗だ……すごく」
そうしてその下着をお買い上げし、昼食をとる為にイタリアンの店に入った。
「狂三もこういう所に来るんだな……何か意外性がすごい」
「わたくしが一般庶民ではないと?悲しいですわ、泣いてしまいますわ」
「あれだよ……狂三が名家のお嬢様みたいだったからさ。家でこういうもん食べてると思ったんだ」
そうして、注文した料理を食べ始める。やっぱり何か違和感があるなと思い鎌をかけてみることにする。
「なあ、狂三?俺の事何処まで知ってるんだ?」
「?士道さんの乱れに乱れた女性関係ですか?」
思ったより知られてなかったようだ、なら理由を聞いた方が良いかもしれない。
「女性関係については何も言えないが、狂三は何か隠してるだろ?俺に言えないこと」
その言葉に驚きつつも、いつもの表情に戻る。やっぱり無理している。
「そうですわね……士道さんに言えないことはたくさんありますわよ」
「そっか、なら食べ終わったら俺に付いて来てくれないか?」
そして食べ終わった俺達が向かったのは人気のない高台。デートスポットとしても有名だが俺は話をするために此処を選んだ。
「狂三、精霊なら持ってるよな?」
「士道さんはわたくしが何をしたいのかを知りたいのですか?」
「知りたいし、なんで俺を狙ってるくらいは教えてくれないか?」
その目的は俺の中にある霊力を奪い過去に戻ること。俺達のにらんだ通り死者蘇生をしようとしている。
「貴方様が望むなら、今直ぐにでも食べて差し上げますわ」
「とりあえずは分かったけど……少し昔話を聞いてくれるか」
俺は話す、あの時の出来事を。そしてどうやって立ち直ったかを。
「昔、とある町に一人の少年と六人の少女が居ました。一人、優しい少女。一人、優しい少女の娘と呼べる存在。一人、少年を気に掛ける少女。一人、少年を気に掛ける少女の姉。一人、無口ながら少年を助けようとする少女。一人、一緒に考えてくれる少女が居ました。その七人は良く一緒に遊んでいてとても仲が良いと評判でした。しかし、七人は誘拐され、少年と少女の娘と呼べる子しか逃げることが出来ませんでした。少年は目の前で五人が死んでしまう所を見てしまい人とは言えない存在になり人が怖くなってしまいました。少年は残った娘と呼べる子と死んでしまった少女たちの為に修羅となりました。しかし、修羅となっても扱えるわけではありませんでした。その時、ある女の子に出会いました。その女の子は緑の髪をした不思議な少女でした。その子は自分と同じく人が怖くなって寄せ付けない力を持っていました。少年は女の子と力の扱い方を学び、仲良くなりました。しかし、女の子は悪戯が好きで、少年を少女の体にしてしまいました。彼は少女の体で生活することになりましたが、その時に出会った自分よりも歳上な女の子に出会いました。その子は男の子が嫌いでした。しかし、自分と同じように人が怖かったのです。それを分かち合うと彼は少女から少年に戻り、自分は男だけど大丈夫だよ。と言いその子と仲良くなりました。そうして二人の理解の出来る人を付けて少年は復讐をするために勉強を頑張り、運動も同じように頑張りました。そうして少年が青年になった時、彼の元に死んだはずの少女たちが現れました。青年はその少女たちと一緒に生きることを選び幸せに暮らしました……」
「………」
俺の昔話に耳を傾けていた狂三は自分と重なる部分があったのか色々考え込んでいた。
「士道さん。もしかして、貴方は……あの事件の」
「気づいちゃったか。他の皆には分からないようにしてあるんだが、狂三には敵わないな」
「昔の誘拐事件、少女が惨殺、一人の男子小学生、士道さんもその時小学生で天宮市に住んでいたことを考えるとそう思いますわ」
でも、分からない所が多いと思うんだよな……俺しか知らない話しだし。
「不思議な少女。恐らく精霊ではなくて?」
「おお、そこまで分かるか。その後の少女は?」
「恐らく、今アイドル活動をしてらっしゃる方でしょう?」
丸わかりだったようだ。
「死んだ少女たち……士道さんが話しているときに幾つか類似点がある人たちを知っていますの」
さながら探偵だ、流石最悪の精霊と呼ばれるのも頷ける。
「園神凜祢さん、或守鞠亜さん、或守鞠奈さん、万由里さん、蓮さん、そして園神凜緒さん。士道さんについて調べようとすると彼女らが関わってきますもの、嫌でも分かりますわ」
此処までバレるとは……感服だ。
「で、俺は個人的に過去に戻らなくても死者蘇生は出来ると思ってる」
それをするなら……俺は、選択する。
「俺なら、世界をぶっ壊すな。過去に戻っても復活してるとは言い難いし……それだったら最初から作った方が早いと思わないか?」
その言葉に狂三は驚愕する。今の俺は存在してはいけない物だと自覚している。だから過去に戻ろうと、世界を壊そうと俺は消える。
「士道さんにはそれが可能と思っていますの?」
「ああ、出来るさ。俺とお前で」
ギザったい言葉を掛ける。ホントは言いたくなかった……。
「そう、ですの。なら明日の放課後に屋上に来てくださいまし。そこで決着を付けましょう」
やっぱりそれになるよな……と思っていた俺は承諾する。
「受けて立つ。その代わり、封印はさせてもらう」
「では、こちらは士道さんを頂くということで」
二人に盟約が交わされた。
家に帰ると司令官と解析官の他、精霊二人が待機していた。
「この……阿保兄!!知らぬ間に約束してんじゃないわよ!!」
鳩尾に来た拳を喰らい意識が闇に落ちた。
気づいたら朝だった。とりあえず起きると自分の部屋で寝ていたので運んでくれたのだろうと思い、着替えて下に降りる。
「おはよう、士道。昨日はやり過ぎたわ」
「ああ、体調は万全じゃないから喰らったら普通に気絶したし、後から話そうと思ってたし」
「で、最後の方しか見てなかったのよ。高台に行ってから何を話してたの?」
「俺の昔話を聞いてもらってた。お前にも聞かせたろ?意味わかんない奴」
あー、あれね。という反応をする琴里に話を続ける。
「それで、狂三が何か隠してるってという所は分かったんだけど。何がしたいのかはよく分かってないんだ」
仮面を被っている。感情を押し殺さないと目的を果たせない。どれほど悲しいことがあったのだろう?
「今日で決着を付ける。どうせそうなると思ってたし、全力で行くから学校の事を任せたいんだが……」
「こっちでもどうにかするわ。後、無事に帰って来なさい。何回もあれで帰ってくるの怖いのよ……妹として」
「無事に帰れるかは分からんが、戻っては来る。だから心配するな」
心配性な妹にはハグが一番だ。そして落ち着かせ、学校へ向かう。
「二人が起きたら、学校に行ったと言っておいてくれ。こっちでも準備する」
「そっちの準備は分からないけど……言っておくわ。帰ってきてねおにーちゃん」
学校に向かう足取りは早く、そして教室に入り誰も居ないことを確認すると霊装と呼ばれていた服を展開する。
「<無帰ノ之>……カウンタートラップを仕掛けるって、俺も俺でやばい奴だな」
狂三は何か放課後にやってくる。それに対策したまでの事。気にしないようにした。
「準備はできた……後は時間が経つのを待つのみ」
そうして、放課後になり帰る人たちが増え始めた時。急に気怠さが襲い掛かった。
「………狂三か」
「ちっ……士道、四糸乃の様子を見てくる」
「俺はせっかちなお嬢様と話してくる」
そうして俺は屋上に向かう、そしていつでも力を使えるようにしておく。
「ようこそ、士道さん」
「おう、相変わらず黒が好きみたいだな」
「この空間は<時喰みの城>。空間内に居る人から寿命を吸い取るわたくしの力ですわ」
「情報提供ありがとな」
指を鳴らすと空間が砕け散った。
「何故!?士道さんは天使を使えないはずでは!?」
「まあ、ただの人に精霊を封印する能力があるというのも可笑しな話だ。でも、イレギュラーだからこそ力を使える」
天使を出す。俺だけの絶対的な力を見せろ。
「<無帰ノ之>……<絶凍傀儡>《刀形態》」
新しく封印した天使、絶凍傀儡。それを形を変え刀にすると冷気が溢れる。
「さあ、決着を付けよう……」
そうして始まったが、すぐに決着は着いた。
「狂三?もう、我慢しないでくれ。俺も見ていて辛いんだ……狂三が一人で罪を背負うことは無いんだ」
そう言い彼女を抱きしめる。彼女は今にも壊れそうなくらい脆い感じがした。
「あ……しどう……さん」
「大丈夫だ、俺は此処に居る」
そうして、無事に終わろうとした時……騒音がした。機械?のような音が響く。
「狂三!!逃げろ!!」
俺は思いっきり彼女を屋上の入り口に吹き飛ばした。そうすると俺の所に網がかかる。
「アラ、チガウ精霊ガカカッタミタイネ」
そうして赤い髪の外人はスイッチを押した。
「あああああああああ!!」
電撃が身体に流れ、網が身体に引っかかると体に傷跡ができる。
「ごほっ……ぅ……」
「コンナモノデハナイデショウ?」
そうして拷問のような痛みを永遠に続かされた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
~狂三side~
「………わたくしは……いったい?」
自分が何をしていたかあまり思い出せない。誰か助けてくれた……そんな記憶があった。
「狂三?目を覚ましたか」
「天香さん?わたくしは……」
「お前は捕まるところを士道が庇った。今、ASTで捕まっているはずだ」
自分のせいで罪を一緒に背負ってくれると言った人が、運命を変えられる人が。私のせいで捕まり、拷問を受けている。
「わたくしのせいで……ひっぐ……」
「大丈夫ですよ……狂三さん」
彼女は確か……氷芽川四糸乃だったはずだ。彼女も彼に救われたのだろう。
「琴里か?恐らく士道はもう捕まっているはずだ……ああ。取り戻しに殴りこむ」
天香は何処かに電話を掛けているようだ。
「狂三……今から士道を助けに行く。力を貸してくれ」
「わたくしが助けとなるならば喜んで。彼のために全てを捧げましょう」
そうしてASTに殴りこもうとした時、突然彼女が現れた。
「天香。ASTに入るならこっち」
「折紙、いいのだな?」
「分かっている。私の判断、士道が捕まってほぼ死にかけているのを見ているのはつらい」
そうして折紙という強力な助っ人を手に入れ基地に殴り込みに行った。
「此処からは私は敵になる。一応誘導できるように銃で印をつけておく」
そうして、基地を破壊するために天使を召喚した。
「<暴虐公>、<終焉の剣>」
「<絶凍傀儡>、<絶対零度>≪ニブルヘイル》」
「<刻々帝>、<八の弾>」
それぞれ、天使を出し蹂躙する。私は分身を出して彼を捜す。
「天香さん。士道さんが見つかったようです」
彼は地下深くの部屋に閉じ込められているようだ。
「そうか、ならばすぐに向かおう」
そうして三人で部屋に向かうと、先客が居た。
「おやおや、<プリンセス>、<ハーミット>、<ナイトメア>。彼女たちが此処までくるなんて、彼は愛されているんだね」
あの顔に見覚えがある。DEM社の業務執行取締役、アイザック・ウエストコット。
「彼には少しばかり実験に付き合ってもらった。なので最後の実験を開始しよう」
そうして彼に大量の剣が刺さり、電撃が流れる。
「ふむ。結果は上々か。では、また会おう精霊たちよ」
そうしてウエストコットは去っていったが彼に次々と刺さる剣や電撃は一向に止まる気配はなかった。
「わたくしたち、装置を壊してくださいまし」
そうして装置を壊すと、彼は見るも無残な姿になっていた。頭部だけは原型を留めているが体は肉塊と化していた。
「ちっ!あいつ等は士道を道具と勘違いしているのか!」
私が彼に近づく……彼はもう目を覚ますことはない。私の親友と同じく……直接ではないが間接的に殺してしまったのだ。
「嗚呼、可哀そうな王子様。わたくしにどうか、罰を……」
その時、自分の影から自分とは違う存在が出てきた。
「彼はそんな簡単に死にませんよ」
誰だろうか?自分によく似ているが、別の存在と感じる。
「はぁ……顔も覚えてないんですか。狂三さん」
「え?紗和さん……?」
「はい、あなたの紗和ですよ」
これが彼の言いたかった事。別に過去に戻らなくても未来を視ていれば良い事もあるということを彼が身をもって教えてくれた。
「でも、わたくしが……士道さんを!!」
「別に悪いと思ってねぇよ」
そう話す方を見つめると彼が立っていた。
「え……?」
「意識を失ってる間に隣界に居る紗和に呼び掛けてたんだ……。でも、やることは見つかったな、DEMを潰す。それだけは明確な目標になった」
やっぱり彼は、私よりも優れている。
「あ……天香、四糸乃?少し後ろを向いてくれ……後でちゃんと埋め合わせするから」
二人は笑いながら後ろを向いた。
「よっし。じゃあ、二人とも。目を瞑ってくれ」
彼の言う通りに、目を閉じる。そうすると自分の唇に何かが触れた。
「狂三、いいぞ」
そうして、隣に居る彼女にも唇を合わせた。
「お二人とも?とりあえずこれ着てもらって……」
その言葉を聞き自分の体を見ると裸になっていた。
「俺は決して見てないです。断じて!!」
目を瞑りながら自分のコートを差し出す彼はとても面白かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
~士道side~
狂三と紗和を封印して数日。彼女らは同部屋で住むという話で、仲良くやっているようだ。
「……………」
教室で一人考える。彼女らの埋め合わせは済んでいるのでゆっくりと考えることが出来る……。
「アイザック・ウエストコット……」
あのクソ社長をボコボコにしてやりたい所だが……側近には世界最強を恣にする魔術師が居る。でも、あの顔……何処かで……。
「……………」
考えていると時間ばかり過ぎていた。そろそろ帰らないと心配されるし、洗濯と夕飯を作ることが出来ない。なので、荷物を持ち教室から出る。
「はぁ……」
ため息をつく。これから、精霊の封印や恐らく紗和が学校に転校するので弁当の準備、メンタルケアなど……スケジュールが詰め詰めになった居る。
「気分転換するかぁ……」
ポケットから音楽プレーヤーを取り出し、再生ボタンを押す。とあるゲームの曲だが、何回聞いても飽きない。中毒性がある曲なのだが……英語で歌っているので何を言っているかは分からない。
「……………」
いつもの帰路を辿る。最近会っていない”あいつ等”にも俺の近況報告をしなければ……と思いつつ家に帰ることにした。
次回、黒炎