金剛杖物語~青髪の海美の章~   作:仲村大輝

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これは、新型コロナウイルスが流行っているさなか、一日5分だけ書き続けたものです。
どうぞお楽しみください。




第一話 謎の赤ん坊

「ハアハアハア…」

 旅姿の女の人が小走りに峠を超えている。

 灯りなど持ってない。月明かりを頼りに走っている。

「待て!」

 後ろから、腹の出た餓鬼、武装した阿修羅が追いかけてくる。

 その女の人がやっと峠の山頂まで来たとき、ついに囲まれてしまった。

「お願いします!どうかこの子は…」

 女の人は体を丸めて、抱いた子どもを隠す。

「うるさい!我々はその子どもに用があるのだ!」

 阿修羅が抜いた刀が、丸まった女の人の頭を斬った。

 見るのをためらったかの様に月が雲に隠れた。

 餓鬼が集まり女の人の服を剥ぎ取ろうとする。

 その時、女の人の腕の中の子どもが泣き出した。

 餓鬼の1人が子どもを女の人から引っ張り出す。

「この子供を殺せば、俺たちの…」

 阿修羅がもう一度剣を振りかぶり、

 振り下ろした。

 しかし、そこに剣はなかった。

「あれ?」

 阿修羅が右手を確認するがそこには剣がない。

「ぐわぁ!」

「ぎゃあ!」

「なにぃ!?」

 一緒にいた餓鬼たちが急に悶える。

 月がないからなにが起こっているのかようわからない。

 ただ、なにか頭が大きくなっているように見える。

 黒いものが頭に載っているような…

「くそ!」

 阿修羅が剣の入っていたつかで戦おうと解こうとしたとき。

トン!

トン!

トン!

 和太鼓の音が聞こえてきた。

「おの音…しまった!…この峠は!」

 阿修羅はその瞬間、その場から逃げ出した。

「待て!」

「逃げるな!」

「助けてくれ!」

 謎の黒いものに馬乗りにされた餓鬼たちが叫んでいるが、そんなの無視して元来た道を逃げて行く。

「そんなことに、かまってられるか…うわっ!」

 その場に誰かに突き飛ばされた様に倒れ込んだ。

ドン!

ドン!

ドン!

カカッ!

ドン!

ドドド ドン!

「くそ!…うん?」

 起きあがろうと上半身を上げたいが踏まれているようで起き上がれない。

ドドドン!

「やめてくれ!俺だって人に頼まれて…」

 阿修羅は首を出来るだけ上げた。

 そこには、フェイスカバーハットのように獅子頭を付けているものがいた。

 その獅子頭は、「人間」と言われているが人には見えない。

人間の匂いもしない。

声も聞いたことない。

布で身体を隠して、腰に太鼓をつけている。

それを叩きながら戦う。

 手にはバチと風車を持っている。その風車は鯉のぼりの風車が鋭利な刃で、手元の車を回転させることで風車が回り敵をミンチにする武器と言われているが姿を見たものはみんな死んでるので噂でしかない。

「浦山の唐獅子…」

グジャ!

 まるでスイカ割りのように頭を潰された。

ピクッ…ピク…

 

ドン!

ドン!

ドン!

 

獅子は口をバクン!バクン!と鳴らして、仲間たちがいる方向に向かって戻っていった。

まだ意識があるのか阿修羅はピクピクしている。

スタスタスタ

提灯を持った下に体操服、上に浴衣という変わった服装で、心臓が刺さった杖を持った女性がやってきた。

砂利道をザクザク。

よく分からないものをムニュ。

鎧みたいなものをガチャガチャ。

また砂利道をザクザク歩いていく。

「おや?」

 前方を提灯で照らすと頭をかじられて絶命した餓鬼がいる。

「可哀想に…畜生にでも襲われたのかな?さっきのモノも。」

 どうやら彼女は知ってて踏んづけたらしい。

「この女の人は斬られてる…どうして?畜生は剣を使わないはずなのに…」

 その時、女の人が海美の足を掴んだ。

 掴まれたことに驚いたが、ない話ではないと思った。

 坂本龍馬が近江屋で斬られた後も意識があり、中岡慎太郎に声をかけたと言われるからそれに似ていると思った。

「もし…旅のお方ですか?本当に申し訳ないのですが、この子を連れて行ってもらえませんか?…」

「………」

 海美は驚愕した。

 今までさまざまなモノに襲われて、自分の命を守ることを最優先にしてきたのにこの女性は自分の頭より子どもを助けてほしいと言ってきたのだ。

 そうだ。それが母だ。それが人間だ。

「お願いし…ま…」

 海美は母の手を握った。

「分かりました。お母さん。私がつれてきいます。」

 そういうと、提灯で照らされた母の引き攣った顔が穏やかになった。

 そうして海美は母から子どもを拾い出すと、峠を降っていった。

 子どもと言っても、まだ生まれたばかりで、包む布、おくるみに包まれている。

 ただ、赤ん坊の割に重い気がしていた。

ザクザクザクザク

 倒れている餓鬼を避けながら海美は降っていく。

 それを、道の脇の笹の中から獅子頭と大猿たちが見ていた。

「まずいな。赤ん坊を持っていかれてしまった…」

 口を開けず唐獅子がしゃべった。

「ウー!」

 大猿が低く唸り、海美の歩いていった方向を指指す。

 獅子頭は手のひらを見せ、次に手刀状態にして横にブンブン振った。

「いや、追わなくて良い。あの女…流れる様に阿修羅を踏んで、倒れた餓鬼を避けながら、母親に話しかけた。おそらく俺たちの動きを全て知ってるんだろう。あの女に手を出したら絶対苦戦する。だから、様子を見る。」

 唐獅子は、両手を広げて顔の前でバツをつくる。

「お前たちは目立つからついてこなくていいぞ。」

「うー!」

 次に大猿は倒れた餓鬼を指さす。

「ああ!…食べていいぞ。そのかわり、片付けて、浦山に帰ってくれな。」

 ドン!と太鼓を叩くと、猿たちは飛び出して、餓鬼の肉を、我先にと食べ始めた。

「よし。」

と獅子頭は見届けると、海美の後を追いかけて峠を降りていった。

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