金剛杖物語~青髪の海美の章~   作:仲村大輝

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鯉のぼりのお母さんがどこに行ったのかも気になるが、ぞうさんの父さんもどこに行ったのか気になる。


第十二話 殺人列車爆殺

「どう?落ち着いた?」

「うん。」

「じゃあ、あの人がなんなのか説明するから、下に降りようね。」

「うん…」

二人して屋根から降りる。

ボックス席には、獅子頭が鯉のぼりを赤ん坊に見せていた。

「ようお嬢さん。」

獅子頭はまつりに声をかける。

まつりは黙って海美の後ろに隠れる。

「大丈夫。このお獅子は人間だよ。」

獅子頭は、口を閉じて頭を若干下げながら喋る。

「お嬢ちゃん。さっきは悪かった。あぁしないとこの赤ん坊が殺されるところだったんだ。」

「あなたは、赤ちゃんを…」

声を低く、鋭くまつりはしゃべる。

獅子頭が手を横に振る。

「違う違う!俺はな。助けに来たんだ。この赤ん坊はどんな子供か知ってるかい?」

「うん?」

まつりは首をかしげる。

「元々、選挙は腕に印が現れたモノから選抜されるよな?難しいか…

この赤ん坊は、みんなを引っ張り、導く資格があるんだ。それがその腕にある印だ。

だけど、その印ってのは、地獄、餓鬼、阿修羅じゃないと出現しないんだ。

そうすりゃ、人間や天人が首長になることはないだろう。本来ならその印は畜生も出現しないはずだったんだ。

ただ、この赤ん坊はな。畜生の血が入ってるんだ。

片親が地獄のモノでも出現する時は出現するってことだ。

しかし、それで焦ったのは…」

「モノたち?」

「または選挙管理委員会かもしれん。とにかく、畜生の血が入っている奴でも被選挙権、みんなを導くことが出来る印が発生しちまったってことを嗅ぎつけた三道のモノどもが、その赤ん坊を狙ってるってわけだ。」

海美は話を聞いてるんだから聞いていないんだか赤ん坊をあやす。

「じゃあ、これからも海美は狙われるの?」

「そうだなぁ…少なくとも選挙が終わるまでは。」

「赤ちゃんかわいそう…」

「そうも言い切れない。その赤ん坊は我らの希望だ。」

「うん?」

海美のボックス席の後ろに隠れてたまつりが身を乗り出した。

「つまり、この赤ん坊が選挙に出れば、腕の印は混血でも現れるからモノどもに被選挙人、つまり立候補者を縛り、限定することは無理だってことになる。」

「…だけど、こんな赤ちゃんの言うことみんな聞くかな?」

「そこよ。だから、俺はこの赤ん坊を使って、選挙を壊したかったんだ。」

「………。」

海美の動きが止まる。

「その、印が見える状態で、選挙会場を襲撃する。立候補者出来るのがモノどもだけってのがおかしいって訴える。そして、この赤ん坊は畜生の血が入っていることも公表する。そうすりゃ、次から印が入っているもんのみ立候補出来るって制度はなくなる。

そうすりゃ、モノどもが自分たちに有利になる国づくりを遅らせることが出来る。」

「壊すって…」

「みんな伏せて!」

急に海美が喋る。

「なに!?」

獅子頭は頭を風車で守る。

「わっ!」

海美はまつりを掴むと、自分の席に引っ張り下ろして、膝の上に頭を持って行き、伏せた。

ガグン!

と何か金属音がした。

 

 

なにも起こらない…

いや、

「車両が止まった。」

一同外を見る。

「おいおい…川の真上だぞ。」

川幅が100メートルはありそうな橋の真ん中に自分たちの乗った車両が取り残されている。

「このままだとやばい。なにか起こる。」

「なにか起こるんじゃ、先になにか起こしてやろうじゃないか。」

そう言って、獅子頭は風車を持つ。

「待って!」

「なんだ?」

もう獅子頭は通路に出て、頭の上に風車を構える。

顔の目の前に鯉のぼりが重なる。

「…あなたはなんと呼べば?」

左手で赤ん坊を抱え込む。右手で、杖を掴み、右腕でまつりを抱き込む。

「俺か?俺は…」

まつりが急にマントを脱いで、赤ん坊を隠した。

「俺の人の名前はナポレオン。武力で平和を求める者だ。」

全力で風車を床に打つける。

車両が割れて、レールが歪み、黒煙が上がり、火が吹いた。

 

火が吹いたのを確認するモノが伊勢崎側から見ていた。

「爆発したなぁ。」

望遠鏡を二つ縛って双眼鏡にしたもので鬼が覗いている。

「あれなら木っ端微塵だ。生きてることはないだろうな。」

爆発の起爆に使った線を束ねながら違う鬼が巻いている。

「はやく城へ戻ろう。明日には選挙だぞ。」

この起爆スイッチも人間に作らせたものだ。

人が人を殺すことは許されてないが、準備した人間も、機関車にいた車掌もまさか車両ごと爆発させるとは思っていなかったようだ。

車掌には、「橋のトラブルのため停車する。」

と、神保原か本庄で止める作戦だった。

「おうよ。」

川の対岸でなにか手、いや、棍棒を振っている。

こちらのモノも赤い旗を取り出すと、大きく3回グルグル回した。

すると、棍棒が大きく2回上下に動いて、鬼はいなくなった。

読者の中には、高崎線だったのか…とお思いでしょうが、実は、この橋、急遽人間に造らせたフェイク。

繋がってない駅を、道路に線路を引いて、急遽線路にしたところを走らせたのだ。

道路の橋の上にレールを並べて、殺人列車が通り過ぎたら、近くの線路まで列車を戻して、赤ん坊を殺す作戦だったのだ。

対岸の鬼は、本庄から延線させた鬼で、これから人間どもを使い、またレールを剥がす作業をするようだ。

もちろん、伊勢崎側の鬼もしないとだが、明日の選挙があるので、明後日以降剥がすことになっている。

「よし。連絡終わり。戻るぞ。」

「おうよ。」

そう言うと、二つのモノは去っていった。

そのに残ったのは、利根川の流れだけであった。

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