(忠実にやっているので、怒られそうです。ただ、ハーメルンは二次創作の活動が盛んですから大丈夫でしょうか?)
そして今。
「じゃあ、これからこの子のお父さんのところに行くの?」
「そのつもりだけど…」
海美は赤ん坊のおしめを替えて、紐で縛って出発の準備をする。
「さっきからナポレオンがいない…」
「どこ行ったんだろう?」
いなきゃ、動くことが出来ない。
二人で赤ん坊を見てたのが問題だった。
「…ねぇ、海美。この子、あなたが育てないの?」
「無理だよ。私、いつ殺されるか分からないもの…」
「だけど、海美は強いじゃん。」
「…この子のお父さんは伊勢崎のお偉いさんなんだって。だったら、この子はお父さんといたほうがこの子の生きたいように生きられるの。」
「海美はそれでいいの?」
「…この子は、…この子は好きだよ。だけど、好きだからお父さんに返さないと。もしかしたら、お父さんがこの子が大きくなった時に私の話をしてくれるかもしれないし…そうしたら、私を探してくれるかも。それだったら、私は、それでいい。」
「………。」
まつりは黙ってしまった。
「おーい!」
ナポレオンがどっからか帰ってきた。
「どこ行ってたの?」
二人とも黙ってしまって気まずかったからまつりがすぐ話しかけた。
「この子に着させてやろうと思ってな。これを」
そう言って、丁寧に持っていた包みを開けた。
中に、産着が入っていた。
黒字に宝船が描かれていた。
「…綺麗。」
「どうだ?これを、この赤ん坊に着させて送り届けないか?」
「そうする。」
「まつり、手伝ってくれ。」
「えっ!…うん。」
さっきのこともあり、まつりは戸惑っているようだった。
赤ん坊を抱いている海美に着させる。
「なるほど。いつも白を基調とした明るい色の服なのに、こうやって黒い服を着るのもかっこいいな。」
「…二人ともありがとう。じゃあ行こうか。」
と言うことで、3人は外に出た。
自販機だけがヴィーン!と来るかわからないお客さんを待つためのモーター音が響いていた。
赤ん坊の父親は、これまた古い建物に住んでいた。
森村家は旗本駒井氏の地方(じかた)代官を務めた旧家である。2階建瓦葺入母屋造りの豪壮な主屋は養蚕をするため、2階に広い空間をとった職住一体の建物である。
屋敷にはさまざまなモノが出たり入ったり忙しなく働いている。
「親分、新聞です。」
「そんなもの読まん。そこらへんに置いておけ!」
「親分!」「親分!」
色んな人から親分と呼ばれているのが地獄の右手王、赤ん坊の親父である。
色んな部下に囲まれていろいろ指示を出している。
「親分!」
「今度はなに!?」
見向きもせず答える。
「なんか、親分の子どもを連れたとかいう女が来ましたよ。」
「なに?」
手を止めてその部下を見る。
「表の土間にいます。」
「…………。どっこいしょ!」
「親分これは?」「親分どこへ?」
「土間だ!」
部下がドカドカ続く。
青い髪を赤ん坊が握っている。
海美も赤ん坊のもう片方の手を握らせている。
杖と二人はどうなったのかと言うと、近くのお店で休んでてもらっている。
杖はまつりが持っている。
杖は人を選ぶはずなのに、なぜかまつりだけには素直に動くのが謎だ。
駅の時、動かないなど、杖がまつりに動かされることを許したのも謎である。
さて、海美は単身この屋敷に入ってきたのだった。
奥の部屋から、親分が姿を表す。
続いて部下たちも続く。
「あっ!地獄の右手王様ですか?」
「そうだ。」
「私、青髪の海美と言います。この赤ん坊は、畜生の菜犬様よりお預かりした御子息とお聞きしています。」
海美は赤ん坊を見る。
「ほら。お父さんだよ。」
そう言って、右手王に近づき、赤ん坊を差し出した。
右手王が受け取る。
しかし、赤ん坊を見ない。
ずっと海美を見ている。
「…あの、お父さん?」
「知らないなあ…」
「はい?」
「畜生の菜犬も、この赤ん坊も知らないなあ…」
「そ、そんなことは…そうだ!」
いつも首から下げていた赤ん坊の荷物を腰に巻いていたのだが、それを外して、中から、畜生の菜犬が持たせた書簡をお父さんに見せる。
「このように証明書もあります。ね?ね!」
一瞬書類を見るが、ほぼ目を海美から離さなかった。
そのまま海美は強引に書類をおくるみに挟む。
親分が海美から目を離さず書類を取り出す。
「…知らないなあ。お前、自分で勝手に産んで育てられないからって、俺に押し付けるつもりだな?」
「なんで?…そんなことは決して…」
「とぼけるな!そうやってここにいくつものモノが置いてけぼりを食らっているんだ!貴様もその一つだろう!?」
「私は決して…」
海美が親分に近づく、しかし、その瞬間、四方八方から刀が伸びて、海美の首をぐるりと刃物が覆った。
「こんなガキに興味はない。とっとと消え失せろ!」
そう言うと、お父さんはは赤ん坊を捨てるように投げた。
「くっ!…」
海美が受け止めようと身を屈める。
ありがたいことに刀が避けて、首が切られずに済む。
なんとか赤ん坊を抱き止める。
しかし、次は迫り来る足足足!
汚い足で海美が踏まれていく。
「この小汚い子娘を蹴り出してやれ!」
「ちょっ…ちょっと待っ…」
「こんなもの!」
バサン!と書類を土間に捨てた。
「……分かりました。わかりましたから、出て行きますから蹴るのをやめてください。」
蹴られるのが止まる。
海美は蹴られないのを確認するとゆっくり書類を取って、チョコチョコと屋敷から出た。
赤ん坊に着せた産着が蹴られて茶色になっていた。