「やってみせろよ、マフティー。」
「なんとでもなるはずだ。」
「ガンダムだと!」
海美も急に圧迫がなくなったので、ふわふわした感覚を味わっている。
しかし、すぐに落とした薙刀にしがみつき、引き抜いた。
すると、いつもは土に刺して引き抜いても刃が綺麗なのに、今回は濡れたところに土や砂利が付くように、汚れていた。
「あれ?」
のたうち回る右手王と見比べる。
「もしかして…」
近くの木を見る。
杖の玉を押し付ける。
変化はない。
次に、汚れた刃で若干傷付けた。
すると、みるみるうちにそこが腐り出した。
「…この心臓、というか、血が体の中に入ると毒になるのか。」
海美は右手王を見る。
右手王は苦しみながらも階段を登る。
赤ん坊と、坊さんたちを殺すために。
「せめて…あの赤ん坊だけでも…」
ズルズル這って上がる。
側から見れば、救済を求めて寺に逃げ込んでいるようだが、彼が求めているのは救済というより、憎悪や憎しみが生まれることだ。
這いつくばる右手に海美が刃を突き立てる。
「あっ!」
そう言って、右手王は海美を見る。
俺がこんなに頑張っているのにどうして邪魔するんだ!?
という顔をしている。
みるみる右手が紫色に壊死していく。
「貴様…」
「右手王。もう諦めなさい。あの子はもう赤の他人なのよ。」
それは、右手王に言ったのか自分に言ったのか分からない。
「そんなことはない。奴を殺せばいいのだ。」
「そんなことしたら、可哀想でしょう。」
「そうだ。かわいそうだ。俺はかわいそうなことがしたいんだ。させろ。」
右手に力を入れたいのだろうが、右手に力が入らず、肘をあげようとした。
肘にすら力が入ってない。
「右手王。あなたはそうやっていつまでも相手を見下して生きてきたのね。」
「………。」
紫色が肩に到達した。芋虫のように体全体で動く。
「自分が劣っていることが分かるから、新聞も読まない。弱いのがバレたくないから右手だか、刀だかで武装してる。そして、その力で、暴力でしか相手を制圧出来ない。そんな弱虫で…」
紫が頭に到達する。
もう動かない。
海美が中腰で下にいる右手王に話しかける。
「右手王。よく聞きなさい。あの赤ん坊は人だけでなく六道から尊敬されるモノになるわ。死んだ時も新聞で大々的に報道されて、何万もの人やモノが泣いて、何万年もの間名前が残るわ。
だけど右手王。
あなたは誰からか尊敬されて、誰かが泣いてくれるかしら?」
「………。」
「あなたは誰からも尊敬されず。尊られず。見下されてけなされて、最後は忘れ去られるわ。」
「………。」
「もう聞こえてないか…」