金剛杖物語~青髪の海美の章~   作:仲村大輝

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鬼滅の刃、呪術廻戦を始め、ゲゲゲの鬼太郎6期、怪物事変、裏世界ピクニックなどなど空前の日本怪異ブームが到来していますため、この話が後出しみたいになっちゃったのが、悔しく思っています。
しかし、今後も日本の妖怪怪異、歴史がサブカルチャーを支える媒体になってくれることを望んでいます。

 上記の作品も面白いですが、日本の妖怪怪異で忘れてはならない化物語に一昨年の11月にはまり、ほぼ1年で刊行されている全巻読みました(笑)
 大学で、「化物語にはまった。」と、言うと、「遅っ…」と言われます。
 ただ、「遅っ…」と言った人たちは、大学生になった阿良々木くんと戦場ヶ原さんが赤ちゃんプレイをしているのは知らないだろう。


第四話 振り下ろされる刃

 五人の部下たちは、人間がいる河原を目指していた。

 満月が明るいのだが、雲がかかり、近づかないとよう分からない。

 ただ、その闇の中、河原を歩いている女の子は一瞬で見つかった。

 遠くからでも長い杖を持ち、よろよろ歩っているのが分かる。

ザッ!  ザッ!  ザッ!

 なにせ赤ん坊を持っているからとてもゆっくりだ。

ザクザクザクザク。

「おい!お嬢ちゃん。」

何回かこけたが、5人の男がすぐ女の子をぐるりと囲む。

 正面に一人、左前、右前、左後ろ、右後ろである。

「親分がな。お礼をし忘れたって言うんだ。戻ってくれないか?」

男の円がじりじりと狭まる。

ガツ! ガッ! ドシ! ガシ!

「痛っ!」「ギャ!」「んぅ!」

取り巻きの男たちが足を抱えて、ケンケンしながら後ろに下がった。

 杖で足を突いた。

「お前!」

突かれなかった正面の男が、女の子の胸元を掴む。

 しかし、その瞬間、胸を掴んだ腕が肘下からブランブランとぶら下がっていた。

 男の腕が斬り落とされた。

 女の子はその腕を気にせず、杖を両手で持ち、背を低くした。

「やっちまえ!」

ジュバ!

シュパ!

 子分の一人が叫び、全員が刀を抜いた。

 いや、海美の前の三人は抜けなかった。

 正面のが抜けないのはわかる。

 しかし、両脇の二人も抜けなかった。

 二人の抜こうとした右手が刀にぶら下がっている。

 やっちまえの号令の元、刀に手を伸ばして刃が出ているところで斬られたのだ。

 薙刀とは思えぬスピードで斬った。

 海美は真下の地面を見る。

 左後ろから気配がする。

 素早く杖の尻で左後ろを突く。

 グッと手応えがあり、

 ザザッドシャン!と人が倒れる音がする。

 しかしそれは、右後ろのモノにとって絶好のチャンスだった。

 背中がガラ空きだ。

「身体を捻ったとしても、突き技で!」

案の定、青髪は右に身体をひねる。

 ここで何故か右脇腹が冷たい。

 髪の毛を素早く掴もうと思っていたから、左手を伸ばす。

 伸ばそうと思うのだがうまく伸ばせない。

 何故か急に身体がダル重い…

「う…あっ、が…」

声もうまく出せない。

 青髪の女がここで腰を入れるように身体を揺さぶる。

 何故か腹の中が無性に痛い。

 そしてその時見てしまった。

 青髪の女の杖から出る刃先が鎌のように曲がって自分の脇腹に刺さっているところを。

「うっ、がぁ…」

足から力が抜けてその場に倒れる。

「せめて一太刀」

そう思いながら、青髪の女に左手で挑もうとした。

 しかし、杖の尻で払われ、喉元に刃先が迫る。

 杖を振り下ろした青髪の女がこちらを見ている。

 喉が痛い。

 意識が遠くなる。

「せめて、どんな顔だったのか見たかった…次生まれ変わったら、せめて真っ当な…」

 ここまで、本の数秒だったが、一人の仲間が殺されるところを見て、他の四人が自棄になった。

 刀が抜けない今、背中に覆い被さり、動きを封じるしかない。

 手のない三人で飛びかかる。

 しかし、青髪の女は素早く突き立てた鎌を抜くと、右手で赤ん坊を庇いつつ、バレエの選手よろしく、クルクルクル!っと回り、左手で無い右腕、肩、喉を鎌の先で斬った。

 喉から噴き出す鮮血が海美にかかる。

 しかし、右手で守る赤ん坊にはかからない。

 左後ろの、ただ杖で突かれたモノは刀も抜けず、震えていた。

「まだやるの?」

震えるモノは、迷いもあるのか、ジタバタしながら、元来た方向へ走って行った。

 音もなくシーンとなった。

 

 

 

 

 しばらくすると

ジャリ!ジャリ!

と二人ぐらいな足音が聞こえて、近くで立ち止まったが、そのまま行ってしまった。

 

 

 

 

「なんだ!?」

「なんだ?」

「なんだったんだ?」

静まり返り30分ぐらいした後、河原の小屋から人間たちが飛び出してきた。

 すると、急に雲が晴れ、川に反射して明るくなった。

 すると、その人たちの目の前には、自分たちから資産を奪った親分の腰巾着どもが、重なり合って倒れている。一番上のモノは仰向けでなにか咥えて白目を剥いて喉が血だらけになっている。

「猪ガシラ組の子分どもが死んでる。」

「なにを咥えてるんだ?」

一番年上の男性が勇気を出して、咥えている紙を引っ張り出す。

 また、この男は字を読むことが出来た。

 なけなしの蝋燭に火を灯し、字を読む。

「なになに?…なんと!これは、私たちが取られた資産の証明書!」

「なに!?」

「…これを寺に持っていって、仏様と坊様に承認をもらえば、わしらの資産は戻ってくるぞ!」

「「「おー!」」」

思わず人間たちは雄叫びを上げた。

 ある日突然、この親分の部下たちが人間たちの住む建物に押し入り、一方的に資産譲渡の書付を書かされ追い出されたのだ。

 その書付を手に入れ、モノに対抗できる仏様に理不尽を訴える必要があったのだが、自分たちの資産となったことの証明書をモノが返す訳がない。

 だからといって、書付なしで仏様に縋ってもその書付を正式に消すことは出来ないから結局泣き寝入り状態だったのだ。

「みんな!快晴さんに頼みに行くぞ!」

「おー!」

と雄叫びと共に、人間たちが一斉にお寺に向かって進み始めた。

 

 

 寺に向かって海美は急ぐ。

 赤ん坊が泣いている。

「ごめんね。ごめんね。あと少しで着くからね。」

海美が血だらけの状態で寺を目指す。

 返り血を浴びた状態で、部下たちを積み上げ、おくるみの間から、書付を出すと、赤ん坊に持たせつつ、一番上のモノの口に書付を突っ込んだのだ。

 今まで抱っこしていた女の人は血だらけだし、目の前にいる男も血だらけで白目まで剥いていれば、子供じゃなくても泣く。

 なんとか賽の河原まで来た。

 すると、誰かが河原で焚き火をした跡らしく、燃え残った木や炭がくすぶっていた。

「しめた。」

 海美は川べりの一部を削ったり、石でいけすのように囲った。

 そのあと、焚き火のところまで戻ると、杖の尻で木や炭をどかし手ぬぐいを引っ張り出して、焚き火の下の石を包んだ。

 そして、いけすまで運ぶと石を入れた。

 石がシュー!ズブズブと音を立てる。

 手を入れてみるとお風呂ぐらいなら温度になった。

「よし。」

また月が隠れた。

 海美は杖を後ろに置き、手ぬぐいで身体を拭き始めた。

 一応、赤ん坊を抱いたまま。

 なんで置かなかったのかは、嫌な予感がしたからとしか言えないのだが、予感が的中してしまった。

 後ろからザクザクザクと音がする。

 頭を下げて、覗き込むように後ろを見ると、鬼の近くにいた餓鬼の女二人組だった。

 ただ、海美は振り返り、杖を取ろうとしない。

 服をはだけさせているから、振り向けないのだ。

「鬼の餓鬼さんですか?」

「そうよ。私は食糞。」

そう言って、一人の餓鬼がヒョイっと杖を拾い上げた。

「そっちが食血だ!」

そしてその杖で海美を突こうと前に構えようと振り上げた時、振り上げた杖が急に重くなり、まるで丸太を担がされているような感覚になった。

 そしてそのまま、杖の下敷きになった。

 まだそれで終わらない。そのまま杖が餓鬼にめり込む。

 血が目や鼻口から出る。

 重みに耐えかねた地面が、身体が、徐々に沈む。

「お前、なにをした!」

もう一人の餓鬼が海美に飛びかかる。

 まさに、顔にめがけて飛んだ。

「私は何も!…」

大きく右足を踏み込み、杖の尻を押しつぶす。

 すると、杖が反動で起き上がり、杖の柄に戻っていた刃先が現れ、餓鬼を真っ二つに斬るとまた刃が柄にしまわれて、地面にカランカランと転がった。

 真っ二つになった餓鬼は踏み込んだことで背が低くなった海美を通り越してそのまま川にジャポン!と落っこちた。

「言い忘れたけど、私の杖、私の通りにしか動かないから、無理矢理動かそうとしたりするとバチが当たるし、私のために理想的な動きもしてくれるから…まぁ、もう聞こえてないでしょうけど…」

餓鬼の土や水が埋まった耳には聞こえなかった。

 

 

 快晴の寺の庫裡を海美と快晴さんが歩く。

「わざわざそのようなことをしなくても寺に風呂はありましたのに…」

「赤ん坊が泣いてては、すぐに拭うしか出来なかったんですよ。」

寺に戻ると、仁王の審査は「書物を渡して、人間を助けた行為として12時間与える」ということで、中に入ることが出来た。

 しかし、快晴さんから声をかけられた第一声は、風呂はあるとのことだった。

「そういえば、海美さん。あなたは、駅を目指しているとおっしゃいましたよね。」

「はい。」

「…こういうのはなんですが、お辞めになった方が良いと思いますよ。」

「なぜです?」

「いや、…実はあの駅には鬼がいると言われているのです。」

「鬼が?」

「はい。しかもそれは噂で、本当に鬼なのか確認したモノはいないそうです。」

「どういうことですか?」

「…その姿を見たという人がいないんです。

駅を利用したいという人の服が、駅の近くで見つかるという事件が続出しているんです。」

「その…殺されるところなど見た人は?」

「六道の合同警察が退治に行ったことはありますが、その際、赤い毛布をすっぽり被り顔は分からず、毛布が膨らむほどの男根と尻尾が確認できた。と言われています。ただ、それも、服に血で書かれていたそうです。互いに殺されることを前提として互いの服に書き合うことになっていたようなので、生きて見た人はいません。」

「……そうですか。」

しかし、海美に辞めるという選択肢はない。

 なんとか、その鬼に勝つ方法を模索しようとした。

「そういえば、阿木丸さんは?」

「まだ、絵描きの最中だと…あら?」

襖を開けると、机に伏せて寝ていた。

 しかし、周りには数多くの地蔵菩薩の絵が描いてあった。

「すごい…こんなに…」

「ですが、公園の子供たちには届かないようです。みんな破られてしまいますので…」

A1サイズの大きな紙に地蔵菩薩の立ち絵も描かれている。

 細かく美しく描かれている。

「……分かった。」

「なにがです?」

「…子供たちが成仏しない理由です。」

「ほう!あなたにも分かりますか?」

「あれ?快晴さんもお気づきだったのですか?」

「もちろんです。お経だと子供たちには分かりづらいんでしょう。その点絵や仏像ならストレートに伝わるはずです。しかし、これに自力で気づかねば本当に子供たちは成仏出来ないはずですので…。」

「彼がそれに早く気づけば良いですね。」

その時山門の近くから声がした。

「どうしたんだろう?」

快晴さんが行ってしまった。

 スゥスゥ。

 仮眠というか、ガッツリ寝てしまっている。

「どんな夢を見てるんだろう?」

ここで、赤ん坊がぐずりそうになった。

「あぁ、よしよし。眠いんだね。寝て良いよ。ノノサンいくつ 十三 七つ 」

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