高畑勲監督作品「かぐや姫の物語」で月の使者が迎えに来るシーンは、来迎図をイメージしていると聞きますがあのような音楽を仏様が着想しているというのも座頭市とは違う衝撃を受けました。
どれくらい天人の音楽にはまったかというと、YouTubeにアップされた天人の音楽ならだいたい分かるぐらいはまりました(笑)
前回の続きですが、「はまるの遅…」と言われた作品は、2016年頃に見た「ひぐらしのなく頃に」2019年の令和になった直後に読んだ「あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない」があります。
しかし、2021年から考えると、まさか2020年にひぐらしのなく頃に業が放送され、2021年にあの花のイベントがあるとは誰が思っていたでしょうか。
まさかマイブームが来た状態で公式のブームが来るというおいしい展開です。
さて次はなにを読み書きしましょうか?
誰かが子守唄を歌っている。
ここは、阿木丸の夢の中
どのようなところかと言うと、先程とあたり大差ない。
寝ながら、このお寺の夢を見ている。
そして、寝ながら地蔵菩薩の絵を描いて、水子達に破られている。
ただ、目に見えない水子と言うより、子供の姿形は見える。
姿があり、その子供が自分の絵を破るのだから精神的にくる。
自分の描いた絵は、子供達のおもちゃにされてしまっている。
「どうすれば、子供達は分かってくれるんだ…」
力尽き、公園の入り口に座り込んでしまった。
すると、どこから…いや参道の入り口からなにか音楽が聞こえてきた。
締め太鼓のような音や、篠笛のような和風だが、どこかインドいや、サンバのような、 チャカチャカした音楽だ。
その音楽が聞こえたら、子ども達がワッと入り口に集まり、阿木丸を踏み潰し、蹴り飛ばして参道に群がった。
阿木丸も蹴っ飛ばされたり押されたりして参道までやってきた。
すると、その音楽とともに、見たことある人が来る。
「海美さんだ!」
赤ん坊を抱き、杖をついてこちらに来る。
子ども達がまた走り出し、海美さんの近くに集まった。海美さんは怒るでもなくニコニコしている。
公園の前から山門までは登り坂になっているが海美さんが登り出すと山門が徐々に光り出して、子ども達や音楽隊と共に光の中に吸い込まれていった。
阿木丸はボソッと喋った。
「子ども達は成仏出来たってことなのか…
まるで観音様みたいだった…」
「まるで観音様みたいだった…」
フッと目が覚めた。
机に突っ伏して寝てしまっていたようだ。
残念なことに描いていた紙がぐしゃぐしゃになってしまっていた。
「あちゃ…」
紙を変える。
後ろを向く。
行燈が一つある。
行燈の近くで海美さんが子守唄を歌いながら赤ん坊を寝かしつけている。
「…さっきの夢は、どういうことだったんだろう。」
手で口を隠して頬杖のようにして考える。
「…どんな夢だったんですか?」
子守唄をやめて海美さんが聞く。
「いや…眠ってしまってすみません。」
「いえいえ、今日は色々ありましたから疲れたんでしょう。」
そう言って、私に微笑む。
行燈に照らされ、ユラユラと揺れている。
さっき見たような優しい顔だ。
あのような顔は誰にもされたことが…いや、さっき助けてくれた時、足にすがりついていたが、上を向くと赤ん坊には微笑みながら、鬼には鬼に負けないほどの形相で睨みつけていた…
「あとは母親にはされたか…母親?」
阿木丸の中をなにか通り過ぎた。
「…はは…はぁ!そうか!そう言うことか!」
「なにか悟ったようですね。」
「海美さん!私は分かりました!」
そういうと阿木丸さんは自分のノミとカナヅチを持って部屋から飛び出した。
山門付近で人々が集まっている。
なぜか分からないが、親分に取られた書付が家の前にあったから、効果を無効にしてもらう印をもらいに来たらしいのだ。
「すみません。通してください!通して!」
快晴さんを後ろから退かし、こちらを向いている人をかき分け、公園に向かって走る。
公園に着くと、遊具の近くにある白い巨石の前に立った。
そして、ガリガリと下絵を描いていく。
身体中になにかぼんやりとしたものが張り付いてくるのが分かる。
多分水子達がまとわりついてきているのだろう。
「よし、なら…」
外枠に✖︎を書く。
「水子達。このバツ周辺を削れ!」
すると、✖︎がだんだんボコボコを壊れていく。
阿木丸は一刀一魂込めて、下絵を削っていく。
急に寺から出てきた青年に押し分けられたので河原の人々や快晴さんが集まる。
「す、凄い、こんな勢いで掘り上げていくとは…」
「…地蔵菩薩ではない。阿木丸さんは何を掘る気なんだ?」
ガリガリガリガリ…
だんだん夜が更けていく。
「なにが出来るんだ?」
人間達が焚き火やたいまつをつくる。
阿木丸はそれも無用!とばかりに掘り続ける。
「おぉ!…だんだん見えてきたぞ。」
ガリガリガリ!
「…美しい、まるで生きているようだ。」
ガリガリガリガリ!
「…しかし、恐ろしい形相でもあるな。」
人間達は彫り物の迫力に息を呑む。
その彫り物はまだ上半身だけだが、女性が赤ん坊を抱いている彫刻である。
女性はこちらを睨んでいる。しかし、下から覗き込む、すなわち、腕に抱く赤ん坊の目線から見ると微笑みかけている表情に見える。
人間達がため息混じりの感想を言うなか、今まで黙っていた快晴さんがしゃべる。
「…これは、海美さんか。」
快晴さんが言う。
阿木丸がノミを止める。
「はい。ここにいる水子たちは、親のために石を積まない。
なぜかと考えました。
それは、親を知らないからです。
大人が信用出来ないからです。
だから、自分勝手にここで遊んでいるんです。
たとえ地蔵菩薩様が救済しようと手を伸ばしても、その手を受け取ろうと思わないんです。
それは、そうしてくれることを知らないからです。
言うなれば、ここにいる水子達は愛する。
愛されるを知らないんです。
愛を知らない間に死んだので、愛を与える親のために石を積まないし、慈愛のもと救済してくれる仏にすがろうとしないんです。
ですから、これを彫りました。
水子自分たちにこういう顔をしてくれる人がいる。
腕の中の赤ん坊を自分とすると、その手で守ってくれる人がいる。
それを君たちは知らなかっただけだ。
どの親だって子どもにはこういう態度で接するんです。
それが愛です。
水子達は愛を知らないからここにいるんです。
彼らに足りないものはなにか?
それは愛です。」
そうに阿木丸が言った瞬間、身体にまとわりついていたねっとりとした生暖かい空気がなくなった。
なにかすすり泣くような声がどこからともなくする。
彫り物の近くが何故か湿り出した。
「…泣いている?」
人間が喋る。
「快晴さん!」
参道から人が走ってくる。
「どうしました?」
「河原が…」
「なに?…あぁ!そういうことか。行きましょう。」
一同、賽の河原に移動する。
するとあたり一面に小石が積み上げられていた。
一つ一つの塔ではなく、円錐のように積み上げられたり、山のように積み上げられたりしている。
「やっときたか!」
どっからともなく鬼が現れる。
人間達がおののく。
「快晴さん!」
「ご安心を。あの鬼は石を突き崩すのが仕事です。」
たしかに、鬼はこちらに目もくれず、棍棒を振り回して、積み上げられた石を壊す。
しかし驚くべき現象が起きた。
鬼は一振りで親のためにと積んだ一つの石山を壊すのだが、一つ壊す間にその高さの石塚が三つ出来上がるのだ。
これじゃどうにもならない。
鬼が壊すのより早いスピードで石塚が出来てゆく。
「なんだ?!なんだこの石塚は!?」
鬼は思わず声を上げる。
声を上げる間にも、山のように石が積み上げられていく。
「よし、こうなったら…」
鬼は奇声をあげる。
すると他の鬼が空を飛び超え、川から現れ、とにかく集まってきて、石塚を壊し始めた。
中には棍棒一振りで三つもの石塚を壊す鬼もいる。
「あぁ…石塚が出来るのより、壊されるスピードが早い…」
「水子たちがんばれ!鬼になど負けるな!」
「そ、そうだ!がんばれ!」
「がんばれ水子たち!」
人間達も思わず応援する。
すると、不思議なことが起きた。
「まて!」
と最初の鬼が周りの鬼を止めた。
「この音は…」
「鬼が止まったぞ!?」
人間たちも静かになる。
周りが止まったことを謎に思ったのか、だんだん石塚を造る音も、壊す音も無くなっていった。
たしかに音がする。
音楽のようだ。メロディがある。
使われているのはおそらく和太鼓、締め太鼓、篠笛、龍笛、鼓、尺八、相対して、雅楽で使われる楽器か…
メロディは、雅楽のようにゆったりとした幻想的な音楽というより、忙しくチャカチャカと、ここに救われない水子などいない。「のうてんき」で悩みなどない。まるでサンバやインド映画の明るい音楽がする。
そのように明るい音楽を、雅楽の楽器でやっているような音だ。
「…なんだ?というか、なんだあの光は?」
一人が川上を指す。
空は満月が照らしている。川に反射して少しは明るい。
しかし、川上は光源になっている。
その光は白ではなく、柔い虹色に光って、こちらに向かってくる。
「大変だ!逃げろ!」
鬼達はワッと方々へ、逃げる。
「な、なんだ!?」
人間達は困惑する。
すると次第に足元に雲が立ち込めた。
ピンク色の雲だ。
すると、雲の船に乗ったスキンヘッドで杖をついたお坊さんのようなモノが現れた。
そのモノは、音楽隊を率いて、その音楽を奏でている。
ちなみにその音楽隊、バイオリンのような弦楽器や砂が音を出すマラカスのようなものもいる。
音楽隊もそのモノも人間達の前で止まった。
スキンヘッドのモノが喋る。
「…人間達よ。私は地蔵菩薩である。」
「お地蔵様!」
快晴さんはすぐ正座して頭を下げた。
人間達もそれに続く。
「みな、そうかしこまらずともよい。頭を上げよ。話を聞くときは目を見て聞かねばならんぞ。」
「は、はい。」
快晴さんがゆっくり目線を上げる。
「そう。それでよい。」
他の人間達も頭を上げてゆく。
「子ども達を改心させた彫り物をつくった阿木丸は?」
「私です。」
快晴さんの隣が喋る。
「そうか。君か。よく、この子ども達を改心させた。私がこのように救済しにきても彼らは救われようという気持ちがなかったのをよく改心させた。よって、試験に突破したことを認める。」
「は、はい。ありがとう…」
「ただし、」
「ドキっ!」
「あの彫り物はきちんと彫り、この寺に寄進しなさい。それと、これに満足せず、数多くの仏像いや、人を癒す像を掘り続けるのださすれば、現世での安泰と来世での人間界以上の地位は約束しよう。」
「はい!精進します!」
「よろしい。快晴。」
「はっ!」
「よくいうことも聞かない水子たちをこの公園に留めていた。その功績は大きい。よって、聖人の地位を与える。これは、君が人間でもモノどもに手が出せなくなるものだ。
これで、人や人の霊だけでなく、六道全ての困っている人を救いなさい。」
「はい!」
「そして、人間達。書付を出しなさい。」
「「はい!」」
地蔵菩薩が右手をあげた。
すると、赤い液体が書付に飛んでいき、
『無効』という字と、『地蔵菩薩』という字になった。
「これを持って自分の家に帰りなさい。
そして家がどんなかたち、壊されていたとしても「ただいま」と言いなさい。すれば、法力を持って元通りになるだろう。」
「「ありがとうございます。」」
「では、良いかな?」
「お待ちください。」
「どうした?阿木丸。」
「実は、この彫り物はモデルがいるのです。そのモデルになった人も救済いただけませんか?」
「……その者。感知はしているが、呪いで六道から外れている。すなわち、救えない存在である。」
「そんな…この大作は海美さんのおかげなのに…」
「彼女は呪いで六道のうち全ての道と同等に見られる呪いを使っている。だから、危険な場所やモノの近くでも殺されたり危険なことをされないのだ。
しかし、それは、天道界でも同じで『これ以上の救済の処置なし』と見られてしまうのだ。」
「……だから、わざわざ危険な目に自分をさらしても大丈夫なのかあの人は。」
「もうよろしいかな?」
誰も口を開かない。
「では、水子達は連れてゆく。人間達よ。立派に生きろよ。」
そういうと、地蔵菩薩は手を挙げた。
するとまた音楽が始まる。
雲がゆっくり川下に移動を始める。
地蔵菩薩は顔だけこちらを向けた。
しまったというような顔をしていた。
「一つ言い忘れた。その彫り物のモデルと君たちの書物を奪ってきた人物は同一人物だぞ。」
「………。」
「………。」
目の前に起こっている現象と音楽に惹かれて誰も聴こえていないようだった。」
ヤレヤレといった顔で地蔵菩薩は川を降っていった。
それを見送ったら、一同急に、ゆっくりその場に倒れ込んだ。
急に眠くなりその場で寝たのだ。
「はっ!みなさん!大丈夫ですか!?」
そのまま、朝になってしまった。
快晴さんはすぐ目覚めたと思ったが、空は真っ暗ではなく、くっきりとした水色であった。
みんな、バラバラと起きる。
「さっきのは夢だったのか?」
「いや、そうでもない。」
そう言って、持っていた書付を見ると、地蔵菩薩のハンコが押してある。」
快晴さんも胸元が膨らんでいることが気になり、手を突っ込むと、見たことない巻物があった。
「どうやら、地蔵菩薩様の贈り物はしっかりあるようです。」
ハハハハ!とみんな笑った。
その笑いには、自分の言葉へのお世辞もあっただろうが、いままでの苦労からの解放から、来たものもあっただろうと思う。
「…そうだ!海美さん!海美さんは?」
「そうだ!たしか、彫り物のモデルになった人は我々の書付を取り戻した人だと言っていましたよね!?海美様!」
「海美さん!」
一同、参道、山門、庫裡を目指す。
山門の仁王を通り越し、すぐ行ってしまった。
仁王が口だけ動かす。
「…行ったか。…もう出て良いぞ。」
山門の階段から海美が降りてくる。
「ありがとうございます。」
「礼には及ばん。でもこれで良いのか?」
「はい。私は駅に行かないといけないので。時刻表も見てないので、早く行こうかと…支払いと理由も書いてきたので。おそらくあの調子じゃ、出発が長引きそうなので…
「…そうか。まぁ同格のモノにとやかく言えないからな。」
「ありがとうございます。仁王様。ではこれで。」
「ちょっと待て。一つ忠告がある。」
「はい?」
「…その、駅にはな、鬼が住んでいると言われている。」
「あぁ!快晴さんにも言われました。」
「なら、悪いことは言わない。行くのをお辞めになったら…わしの知ってる仁王も大事に行ったら、大刀でバッサリ大根切りにされたそうだ。」
「お気持ちは分かりますが、わたしにはやらないといけないことがあるんです。大丈夫。わたし、強いんですから。」
「……そうですか。」
そう言って海美は出ていった。
仁王はその姿を見送った。
「やれやれ、快晴はまた泣くな。あいつは涙もろいから…」
この後、海美の手紙と仁王の話から人々は涙を流して感謝した。
この後、阿木丸は、彫り物の下半身を完成させて、本堂に安置して、賽の河原を廻る旅に出た。
快晴は、証文持って本山に登り、人間道未満のモノが多く住む地域の寺への移動が決まり、人々は自分の家に戻り、商売などして暮らしている。