「君も書いたらどうだ?」と言われるのですが、
「見たことあるのが『この素晴らしい世界に祝福を』と『Re:ゼロから始める異世界生活』なんだけど大丈夫?」と答えると黙ります。
どうすれば良いでしょうか?
女の子はいつからこの駅に住み着いていたのか覚えていない。
あるときは待合室のベンチの下、ホームの隅、鐘楼の隙間に入り込み、手頃なモノを襲ってはボコボコに殴られていた。
この駅、昔は駅員が常駐していた。
駅員も何度も捕まえようとしたが、それだけには捕まらなかった。
相手は人間だったからだ。
こっちは常に六道と戦っているのだから、捕まるわけがない。
そしていつのまにか駅員もいなくなった。
その頃、鐘楼に刀が結びつけられていることに気づいた。手に取ってみると、自分の身長並みにあった。
とても振り、扱えるものでなかったが、時間はたっぷりあった女の子は練習した。すると上手くなるもので、モノへの襲撃も上手になった。
そしてあるとき、畜生道の二人の子供を連れた親子を見た。
親は赤いマントを着ていて、一人は歩いているがもう一人は親が抱いている。
大きな子どもは一人で遊んでいた。
そして親は抱いている子供に歌を歌っていた。
「ねんねん ねこじまのきんきら乙女…」
それがその歌であった。
その時、無性にむしゃくしゃした。
その子どもを殺して、女の子はあの人にああいう顔をしてほしいと思った。
あの歌を私のために歌ってほしいと思った。
鐘楼から飛び降り、大きな子どもに斬りかかった。
一撃目はうまくいった。
さぁもう一太刀!
とその時、親が飛び出して子どもをかばい、背中を向けた。
バシュ!
っと子どもの代わりに斬られた。
親はその一撃で死んでしまったのか動かなくなった。
まぁ、子ども達もその後で滅多刺しにしたのだが…
だが、彼女自身も不思議なことが起きた。
その親も滅多刺しにしたのだ。
女の子に残ったのはむしゃくしゃした胸を締め付けられる感情だけだった。
どちらかと言えば、親は頼めば自分のために子守唄を歌ってくれたかもしれないのに…
その女の子はいつしかその親の赤いマントを着るようになった。
そして顔も隠すようになった。
それにくるまっていればなぜか安心した。
自分を殺そうと自警団がやってくる時も、雷雨の時もそのマントに包まってると安心した。
ただ、虚無感は必ずあった。
この苦しさはなんだろう。
親子の頭を鐘楼に飾ったこともあったが苦しさが薄れるわけではなかった。
悲しい。
自分を殺そうとする人を殺して生きる。
ただ苦しい。
勝つことは嬉しい。
襲ったモノが持っていたものを食べてお腹が満たされて寝る瞬間は気持ちが良い。
だけど、満たされない。
悲しい。
苦しい。
マントにくるまっても満たされない。
そんな時に、歌を歌う青髪の女の人が現れた。
歌を歌うのは、天人しか見たことない。
いや、大昔に一回、行列になって歌を歌っている人間を見たことある。
男の人の叫ぶような声だったのを覚えている。
じゃあ、女性は?
その謎が今日解けた。
まさかこんなに美しく歌うなんて思ってもみなかった。
だから、杖が転がってきても手で取らないで足に当たったのだった。
それともう一つ。
何回かモノに捕まったことはあった。
その時捕まって分かったのだが、私は人間らしい。
人間に興味を持った。
しかし、人間とはなんだ?
鏡があるので何度か自分を見た。
これが人間か。
いままで地獄道、餓鬼、阿修羅そして畜生しか見たことなかったので意識してなかった。
すると、身体的特徴が似ている人が現れたのだ。
髪の毛が青いが、自分に身体的特徴がよく似ている。
しかも、あの時の親子のようだ。
子どものために歌っている。
その時思った。
この人は、私にもそういう顔をしてくれるのだろうか?
だから、杖を拾った。
近づいたら、この人もそうだった。
やっぱりそうだ。
私になにかされると思って赤ちゃんを隠した。
またイライラむしゃくしゃ、胸が苦しくなる。
だけど、一途の希望があった。
ああいうことをわたしにもやってくれないかな?
この人ならやってくれるかな?
そう思った。
だから、勇気を出してフードを取った。
女の人はびっくりした表情だった。
まるで私に殺されるモノのような顔をした。
海美は驚いた。
「…あなたは人間だったの?」
「そう。だから…」
女の子は願った。 私もそういうふうに…
「…あなたは人を襲うの?」
女の人の表情が険しくなる。
そんな顔をしないで。
私をそんなふうに見ないで…
「私はしない。…追いかけてくるから倒したお腹が減ったから倒しただけ。」
お願い。私を信じて。私を…私に優しくして!
「…………。」
「…………。」
「…そう。なら、」
この心臓がついた杖が私を見ていたような気がしていたが、杖をベンチに立てかけた。
「座ってみたら?」
「…いいの?」
「あなたのテリトリーでしょ?勝手に入ってごめんなさい。」
許された…
トンっと隣に座る。
「さっきの歌…」
このお願いも聞いて!
「あぁ!?子守唄ね。」
「私に…」
思わず綺麗な青髪を掴む。
「私にも歌って…」
「………。」
海美は驚いた。
まさかこんなに弱々しい女の子が雄鬼と恐れられていたとは…
いや、強がるしかなかったんじゃないか?阿木丸さんに押しつけて私が出来ないんじゃ笑われちゃう。と思った。
「いいよ。おいで。」
右手で、女の子の右肩を掴み、グイッと引き寄せる。
「えっ!?」
「今までここでよく頑張ったね。」
「………。」
感じたことのない感情が湧き上がった。
ツゥーっと涙が出る。
この感情はなんだろうか?
痛くも辛くもないのに涙が出る。
逆に嬉しいのに。
ちょっとしたら、誰か来た。
「もし、誰かいますか?」
見ると、背丈ほどある長い白杖を持ったスーツの人だった。
「シーッ。寝てる人がいるの。」
海美は小さな声で言う。
「そうでしたか、すみません。わたくし、鬼を退治しにきた、鉄道の職員ですが、鬼はどちらへ?」
白杖をついているのに、そんなことを言った。
いや、このおちゃらけた男。すごい殺気を感じる。目が見えてればどんだけ強いんだろうと思った。
「鬼のような殺気はありませんねぇ。感じるのは、母親みたいなのと、赤ん坊と…子どもですか?しかも幼い。」
「………。はい。でも、血が繋がってない家族です。」
この人、末恐ろしい。
心の目で世の中を見てきた人のようだ。
「そうですかい。じゃあ、お母さん。そろそろ、列車が入って来ますから準備してつかぁさい。」
そう言うとその男は事務所に入って行った。