今は昔、〆切に追われるモブありけり。
「なんで古文調なんですか・・・そろそろ精神が限界かもしれません」
彼の名前は
だが、転生者とかいう狂った連中と関わったせいで酷い目に遭った。
はす向かいの夏目書房の女の子と仲が良くなっただけで殺されそうになったのだ。
まあ、それで身体的にも精神的にも強くなることができて、
転生者狩りを名乗る存在にも助けられてなんとかなった。
それに、この世界の裏事情・・・つまりは魔法少女について知ることもできた。
しかし、その傷跡はいまだに深く残っている。宿題が終わっていないのだ。
「・・・このままだと葉月さんに殺されますね」
転生者との戦いのさなか、宿題に手を付けることはできなかった。
以前から課題提出が芳しくなかった彼は遊佐葉月にいつもボコボコにされていた。
このままだと、本当に殺されかねない。
「やっほー」
先輩の保澄雫が空間結合で入ってくる。
「・・・雫先輩、普通に入ってきてくださいよ」
「だって、玄関も勝手口もカードキーだし・・・」
セキュリティー上の観点から、最近はカードキー式に変えたのだ。
「それはそうと・・・やっぱり宿題が終わりそうにないんだね」
「ええ、もうすぐ夜明けだというのに」
時計の針は五時を差していた。
「コーヒー淹れてあげるね」
「ありがとうございます・・・」
宿題を終わらせる、口では簡単に言える。
だが、意外と終わらないものなのだ。
自身の処理能力、仕事量、スケジュール・・・。
そういったものと照らし合わせながらやっても難しいのだ。
ふと、一枚のプリントが目についた。
それは華道部の活動報告書だ。参京院教育学園の華道部は男性も入れるのだ。
そして、それを書くのは自分の役目で、提出期限は・・・今日だ。
大事なことなので二回言おう。
「・・・大丈夫?」
「雫先輩、僕は先輩の後輩でいられて幸せでした。
どうか、かこさんには僕が旅に行ったと伝えてください」
「待って、諦めないで。何があったか言って」
今起こったことをありのまま説明した。完未にもわけがわからなかった。
「・・・素直に謝ろう?」
「・・・葉月さんはもう謝罪を聞きそうにありませんよ。殺されるのがオチです」
彼はバリケードを玄関の前に設置し始めた。
「・・・先輩はそろそろ帰っても大丈夫ですよ」
「ねえ、一つだけでも課題は終わらせられない?」
「確かに・・・」
彼は華道部の活動報告書に完未の次回提出にご期待ください!と綺麗に書いた。
実に美しい字だった。書道の達人と言ってもいいくらいだ。作者とは大違いだ。
「うわあ・・・」
「仕方ないですよ。ななかさんも許してくれるはずです」
とりあえず、彼女は空間結合で出て行った。
ここからが正念場だ。葉月が諦めるまで、今日は籠城だ。
まず、一時間後に先生に欠席連絡を入れなくてはいけない。
おじいちゃんにはすまないが、死んでしまったということになってもらおう。
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