しめきりっ!   作:ryanzi

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最初の制裁

バリケードは準備した。

おじいちゃんからの誕生日プレゼントの村田銃もある。

この村田銃に何度命を救われたことか。

おじいちゃんの家が独自に改良を続けた村田銃なのだ。

 

「さて・・・課題をやりますか」

 

別に完未は宿題をさぼろうしているわけではない。

むしろ、宿題を遅れてでもやろうとしているのだ。

今までも遅れてはいたが、必ず提出した。

ただ、葉月に殺されたくないだけなのである。

 

「もしもし、先生・・・ええ、おじいちゃんがその・・・はい。

あっ、ちゃんと宿題はやっておくと葉月さんに伝えておいてください。

はい・・・いえいえ、大丈夫です。

あの、殺されたくないので、ちゃんと葉月さんに言ってください」

 

先生に電話もかけた。これで万事よし。

村田銃をそばにおいて、課題の続きに取り掛かった。

 

しかし、世界はいつだってこんなはずじゃなかったことばかりなのだ。

 

 

『おっ、どうしたんじゃい?お前さんからかけてくるのは珍しいのう』

 

「お孫さんがあなたのことを亡き者にしました」

 

担任が完未の祖父に電話をかけたのだ。

 

『・・・血は争えぬの』

 

「そういうわけではありません。課題を終わらせるための時間稼ぎです。

別にあなたのように本当に親戚を一族郎党皆殺しにしたわけではないんです。

彼も忙しいのか期限には間に合いませんが、課題は必ず終わらせてくれるんです。

ただ・・・ちょっとある生徒の堪忍袋の緒が切れそうなんです」

 

『そうかそうか・・・よかった、儂はあいつには普通に生きてもらいたかったからの。

なんやかんや、普通じゃないことに巻き込まれていたと報告はあったが・・・。

それでも、多少の困難はあいつを強くすると放っておったわい。

じゃが、期限に遅れるのはちょっとよくないのう・・・。すっぽかすよりかはいいとはいえ。

ここは涙を呑んで、痛い目に遭ってもらうとするか』

 

「ええ、その方がいいでしょう」

 

担任は電話を切り、そのまま教室に入る。

 

「葉月、完未のおじいちゃんは普通にぴんぴんだったぞ」

 

「・・・それでは」

 

「葉月、あいつの家を原始時代に戻してやれ」

 

「Sir、yes、sir」

 

葉月の瞳は、主君に固き忠誠を誓う臣下そのものだった。

そんなことも露知らず、彼は着実に課題を終わらせていた。

あらゆるプリントが着実に終わりつつあった。

これなら今日の夕方までには終わりそうだ。

これまでの経験則から、やってさえいればボコボコにされないのだ。

ただ、もっと早くやっておけとか文句は言われるのだが。

 

「・・・まあ、文句言われるくらいなら何ともありませんからね」

 

こちとら転生者とかいう奴らのせいで死線をくぐり抜けたのだ。

文句くらい言われたって、何ともないのだ。

そんな時、プルルルルと電話がかかってきた。葉月からだ。

時間切れになる直前を狙い、受話器を取った。

そして、はっきり、ゆっくり、かつ抑揚の少ない口調で

 

「お掛けになった電話番号は、現在使われておりません」

 

 

これで幾分かは時間稼ぎになるはずだ。

そう安心した直後、扉が吹き飛ばされる音がした。

これはもうあかん。彼女はマスターキー(ドアごと破壊)を用いたのだ。

そう察した完未は課題を明治期の日本軍のリュックに詰めた。

ちなみに、これもまたおじいちゃんの誕生日プレゼントだ。

おじいちゃんの家にはなぜかそんなものがいっぱいあるのだ。

そして、おじいちゃんたちは代々そういったものを改良していった。

まあ、完未自身は普通(魔法少女や転生者基準)の青年なのだが。

そのリュックを背負い、バリケードに向かった

最大限の抵抗をしないと、死んでしまう。

 

「・・・完未、アタシ言ったよね?次はないって」

 

葉月は既に魔法少女の姿に変身していた。

ちなみに、彼女が魔法少女であることは勘づいていた。

その姿を見るのは初めてであったが。

 

「・・・ええ、これは全て僕の責任です。

スケジュールと自分の能力を把握していなかった僕の責任です。

ですが、僕はまだ死ぬわけにはいきません」

 

威嚇として、一発ぶっぱなした。

彼女の足元近くに弾が着弾する。

 

「・・・次は足ですよ」

 

「へえ、女の子の体に傷をつけるつもりなんだ?」

 

彼女は二つの雷を纏った斧を振り回した。

無数の雷撃が自宅内部に展開された。

 

「ぐっ・・・」

 

バリケードごと完未は吹っ飛ばされた。

だが、こんな痛みくらいはなんともない。

転生者たちに痛めつけられたことを思えば、なんともない。

 

「・・・葉月さん、僕の好きな言葉の一つはなんだと思いますか?」

 

「何?」

 

「男女平等」

 

神浜に移住する前の経験が役に立った。

あのころは重い村田銃を背負いながら野を駆けていた。

そして、何度も弾を外しながらもウサギを仕留めたものだ。

おじいちゃんは顔をしかめたが、楽しかった。

その時から磨いていた射撃技術で足を撃ち抜いた。

別に才能があるわけではない。努力によって手に入れた技術だ。

 

「やってくれるじゃん・・・!アンタが使うとろくな意味にならないね・・・」

 

さらなる雷撃が彼を襲った。

 

「げほっ・・・次はその花飾りを狙いますよ」

 

転生者と戦っているときに、年上の魔法少女に遭遇したことがある。

その時に、ソウルジェムやらについて教えてもらった。

それと、転生者狩りを名乗る男からさらなる詳細を教えてもらった。

 

「・・・最後通告ってわけね。完未のくせにいい度胸じゃない」

 

さらなる雷撃。しかし、完未もさすがに見切ることができるようになった。

それは彼女も同じようで、銃から放たれた弾を何十回も雷のように素早く避けていった。

 

「・・・葉月さん、もうやめましょうよ。

このままでは、僕の家が崩壊してしまいます。

ちゃんと今から監視されてでも課題をやりますから・・・」

 

「・・・ごめんね、先生からアンタの家を原始時代に戻せって言われてるから。

別にね、課題が遅れて提出されようと、アタシにとってはどうでもいいの」

 

「えっ???」

 

「アタシはただ・・・先生の望むままに」

 

あかん、これ。

 

「・・・思いっきりやらせてもらうよ!」

 

ありったけの雷撃が完未の自宅で展開された。

あっという間に自宅は炭と化した。

そして、脆くも崩れ去っていった。

 

「あはは・・・先生、ちゃんとやれたよ?褒めてくれるよね?」

 

かくして、完未の家は原始時代に戻った。

次の日、まっくろくろすけになった彼は担任に課題を提出した。

 

「先生・・・遅れてすいませんでした」

 

「そこまで恨みのこもった謝罪は聞いたことがないぞ」

 

「先生、殴りますね」

 

「待ってくれ、俺だって泣きたいんだよ。

なんか魔法だとか知らないけど悩んでたから話を聞いただけなのに・・・!

いつの間にか、あそこまで慕われるだなんて・・・!

というか、俺を殴ったら、今度こそ消し炭だぞ!校内暴力反対!」

 

完未は拳をひっこめた。

 

「まあ、ほぼ僕のせいですからね・・・」

 

「わかってくれればいいんだよ。というか、お前も泣いていいと思うぞ。

実質的にGOサインを出したのはお前のおじいちゃんだし・・・あっ」

 

「どうしました?」

 

「後ろ・・・」

 

振り向くと、にこにこと常盤ななかが微笑んでいた。

 

「大丈夫ですか、完未さん」

 

「あまり大丈夫じゃありませんね。自己責任とはいえ」

 

「泣いてもいいですよ、今だけは」

 

「大丈夫です・・・あっ、報告書をあんな形で提出してしまってすいませんでした」

 

「気にしないでください。ただ一言だけ・・・」

 

職員室にもかかわらず、彼女は魔法少女姿に変身した。

 

「てめえに次回なんてねえんだよ」

 

研ぎ澄まされた、美しい刃の切先が目の前に迫った。

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