おじいちゃんの家の経済力と技術力により、家はすぐに復興した。
ほっと一息ついて、数学の課題を始める。
しかし、とんでもなく難しかった。・・・彼にとっては。
「・・・夜逃げするしかありませんね」
「その必要はないよ」
机の上に、キュゥべえがいた。
魔法少女と会った影響か、それとも転生者狩りに見せてもらったからか。
その白い生物?がキュゥべえだと一瞬でわかった。
「魔法少女にはなりませんよ」
「当たり前だよ。というか、ボクは逃げに来たんだ」
「そりゃ、いたいけな少女を騙したら殺されるに決まってるでしょう」
「そっちじゃない。ボクはノルマから逃げに来たんだ」
キュゥべえは溜息をついた。
「こう見えても、ボクたちにはノルマが課されているんだ。
そして、達成すれば達成するほどノルマは増えていく」
「地獄みたいなシステムですね」
「ボクはいつの間にか疲れていたんだろうね。
いつの間にか、ボクは仲間たちとのネットワークが途絶えて、
そして仲間が入れなかったはずの神浜に入れたんだ」
「えっ、入れないんですか?でも、魔法少女がいるはずですが・・・」
「入れなくなったのはつい最近らしいんだ」
「そうですか・・・」
そこで、疑問が湧いた。
「どうして僕のところに来たんですか?
普通だったら少女とかのところに命振り込め詐欺をするはずでしょ?」
「人聞きが悪いなあ・・・ほぼ事実だけど。
いやね、なんかボクと似たようなオーラを感じたからね。
別に君にも見えるようにはコントロールもできるし。
魔法少女には何が何でも見えてしまうけど」
完未はあまりいい気がしなかった。
こんなのに同一視されてしまったのだ。
だが、今はわらにもすがりたい気分。
「・・・地球の数学くらいは簡単ですよね?」
「それもそうだけど・・・課題から逃げようとは思わないのかい?」
「逃げたら死にますよ」
「それにしても、僕たちはいいコンビになれそうですね」
「確かにそうかもしれないね。君も飲み込みは早いし。
しかし、君は今日、ボコボコにされたそうじゃないか」
「別に大丈夫ですよ。いつものことですし」
「君はもう少し自分の置かれた状況に疑問を持った方がいいよ」
キュゥべえは絆創膏を張りながら忠告した。
そんなキュゥべえの言葉に耳を傾けることなく、封筒を学生鞄から取り出した。
「今日は世界史の課題が出ているんですよね」
「へえ、君の学校は中学の時点で選択できるのか」
「まあ、半々くらいに分かれていますよ。ななかさんは日本史ですし。
葉月さんは世界史ですけど・・・まあ、世界史の教師が担任の先生と同じですから。
かくいう僕も先生の教え方が好きなので世界史を選んだんですがね。
それに、世界史に関してだけは僕の独壇場なので。
実はというと、授業の残り数分のところで居眠りしてしまったんです」
封筒のシールを剥がす。
「だから、課題の内容は知らないんです。みんなの顔が蒼白になってましたが」
プリントをつかむ。
「聞いても答えてくれないんです。開ければわかるとしか言ってくれなかったので」
完未の顔が蒼白になることはなかった。ただ、『無』であった。
その次の授業というのが、四日後だ。
完未は大正時代の日本軍のリュックを取り出した。
そこに色々な荷物を詰め込んでいく。
数切れのパンや筆記用具、地図、、寝袋、通帳、そして課題など・・・。
おじいちゃんの家で修理と改良を施された村田銃は弓袋に隠す。
普通に持ち歩いていたら犯罪だと、最近知ったのだ。
そしてランタンを灯して、書置きを残す。
「夜逃げするつもりかい?」
「いえ、ちゃんと提出します。減点は仕方ないでしょう。
ですが、ここで作業すれば原始時代になります」
「何が言いたいのかはわからないけど、危機的ということはわかったよ」
「そういうわけで、これより
「ボクも付いていくよ。何か助けにはなるかもしれない」
一人と一匹はランタンに照らされた夜の街路に歩みを進める。
これからどこに向かおうかなんて計画はなかった。
とにかく、課題を安全に片付ける場所を見つけなければ。
まだゲームオーバーには早すぎるから。
「さて、どこに行きましょう。
神浜市の隣にある水名という街はどうでしょうか?
そこら辺に僕の知り合いの魔法少女がいたはずです」
「そうだね・・・待ってくれ、神浜市の隣にあるって言った?」
「神浜市の周囲には水名の他に北養、工匠、大東、
中央、南凪、新西、栄といった街があったはずですけど」
その後の数分間で、完未は自分の住んでいる街の知識がなかったことを痛感した。
やはりキュゥべえと行動を共にすることにして正解だった。
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