「・・・逃げられた」
葉月は玄関ドアをいつも通り吹っ飛ばすと、書置きを見つけた。
よりにもよって、完未題宿はnightwalkを実行しやがったのだ。
彼女も一応は完未が課題をやり遂げるということは確信していた。
あの男は期限においては信用できないが、最終的な提出においては信用できるのだ。
おおかた、どこかに隠れて課題をやっているのだろう。
「でも、今回ばかりは見逃すわけにはいかないんだよね」
先生はおっしゃった。何が何でも提出と。
つまり、次の世界史の授業までに提出させなければいけない。
優しい先生のことだから、完未の野郎を許してしまうだろう。
だが、それでは先生の顔に泥を塗ることになるのだ。
甘えなど、決して許してはならない。
(先生に褒められるために、もう課題は終わらせた。あとは、あの男を捕まえるだけ・・・)
ちなみに、完未以外にもnightwalkを実行したものはいた。
36.6度の平熱という異常な病気を発症したものもいた。
後者はどうでもいいとして、nightwalk実行者は完未以外は捕らえられた。
葉月が捕まえた者もいれば、親に見つかったり補導された者もいた。
中には課題のための調査と称してロシア連邦内のブリヤート共和国まで亡命したものもいた。
文化、主用言語、その他もろもろの事前準備をとっくに済ませていたらしい。
その努力をどうして課題に向けなかったのか、葉月には不思議でたまらなかった。
ちなみに、そいつは沿ドニエストル共和国警察に捕まり、日本に即日引き渡された。。
サヤン山脈で白い牛乳を撒いて、「俺はトゥヴァ人だ!」と抵抗したらしいが、
トゥヴァ政府からも当然のごとく帰化を拒否され、御用となったそうだ。
問題は完未だ。あの男だけがどうしても見つからない。
肝心の完未は天国のような場所で課題を進めていた。
小学生の時、神浜市に引っ越したのだが、それが転生者との戦いの始まりだった。
その転生者からのナンパやら何やらに悩んでいた魔法少女と手を組んだこともある。
そして、その一人は水名区の出身でお嬢様でもある。
「みふゆさん、匿っていただきありがとうございます」
「いえいえ、困ったときはお互い様ですよ」
梓みふゆ、手を組んだ中では最も完未に協力的な魔法少女だった。
「はい、コーヒーですよ」
「ありがとうございます・・・ふう」
残り2万9千字。まだまだ先は遠い。
というか、書くだけが課題だけではないのだ。
資料も読み込んで、出来の良い文章を書かなくてはいけないのだ。
どう考えても期限には遅れるので、せめて出来は良くしなければ。
宿題は期限に間に合わないといけいないという論理は今回は通用しない。
あの先生はたまに魔が差すので困る。期限内に提出できない課題を出しやがるのだ。
「優しい味がしますね。このコーヒー」
「ちょっと睡眠y・・・気持ちが落ち着く成分を入れましたから」
とてつもなく不穏な単語が聞こえた。
「えっと、村田銃村田銃・・・」
だが、彼女はそれをさっと取り上げてしまった。
「実はですね、ワタシも魔力が衰えてきたんです」
「そりゃそうでしょう」
「何がそりゃそうなのかは聞かないでおきますね。
ワタシだったから、助かったんですよ???
とにかく、そろそろワタシも一人の女性としての幸福を得たくなったんです」
眠気で瞼が重くなってきた。
「そこで初恋の人を思い出したんです。
初恋というには、四歳年下だったんですが。
あの日、転生者という存在に襲われそうになった私たちを助けてくれた人・・・。
そう、完未さん。あなたのことを思い出したんです。
それで、恋愛というのをしてみたくなったんです」
「・・・ちょっと待ってください。
僕は普通の青年ですよ。あなたのご両親が・・・」
「あっ、その辺も不安でした。
でも、あなたのおじいちゃんの特徴を言ったら認めてくれました」
ああ、駄目だ、眠気が・・・。
「そういうわけで、ちょうどいい妥協点だったんです」
「そ、そんな妥協点・・・いや、で・・・す!」
小さいころからの、または転生者と戦い続けた時代から由来するものか。
完未はその根性を振り絞って、彼女から村田銃を取り上げた。
そして、足に当たるように撃った・・・はずだった。
魔力が衰えていようと、みふゆの強さは未だに一線を画していたのだ。
彼女は弾丸を華麗に避けてしまったのだ。
みぞおちに彼女の攻撃が当たった。完未は意識を失った。
魔法少女の攻撃は一般人を気絶させるくらいなんてことはないのだ。
「・・・ごめんなさい、完未さん。でも、ちゃんと優しくしますから」
彼女は完未を抱きかかえ、自分の寝室に向かう。
さて、キュゥべえは今の一瞬の出来事に唖然とするしかなかった。
この話の読了後一週間以内に(省略)
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