とにかく話が通じない、それが転生者という存在だった。
唯一の救いは特典とかいう能力にかまけてばかりいるということだったか。
実戦経験ならこちらの方があったので、最初は有利だった。
でも、相手も油断しなくなると話は違ってくる。
そして、その劣情の餌食になりそうになった時、彼は現れた。
自分たちよりも幼い少年が現れたのだ。
「そこのお姉さんたち、伏せてください!」
そう言いながら、少年は猟銃を転生者に向ける。
放たれた弾丸は転生者の腹部を貫通した。
「て、てめえはこの前のモブ・・・」
少年は倒れ伏せた転生者に即座に飛び乗り、銃口を頭に突き付けた。
「このお姉さんたちにもかこさんにも二度と近づかないでください。
もちろん、僕にも金輪際。約束できないなら・・・」
少年は引き金に指をかける。
「わ、わかった!」
「おーけい、わかりました。では、ゆっくり立ち上がってください。
いいですよ、はい・・・じゃあ、今すぐ立ち去って下さい」
男はすたこらと逃げ去った。
「・・・今日のことは忘れたほうがいいです。それでは」
少年もそう言って立ち去ろうとする。
「待ってください」
みふゆは少年を呼び止めた。
「名前・・・教えてくれませんか」
だが、少年は振り向きもせずに言った。
「それをしたら、僕もアイツらと同等になってしまいますから」
数日後、今後は逆の立場だった。
殺されそうになっていた少年をみふゆたちで助けたのだ。
彼を殺そうとしていたのはまた別の転生者だった。
「・・・ありがとうございます」
「いえいえ、困ったときはお互い様ですから。
まあ、礼と言ってはなんですが、名前を教えてくれませんか?」
「・・・ぐっ、そんな手を使うなんて」
「さあ、恩人たるワタシに名前を教えてください!」
そんなみふゆの頭を七海やちよはぺちりと叩いた。
「ごめんなさいね、この子、色々と失礼なの」
「ひ、ひどいですよ、やっちゃん!」
「それに、この前の一件と合わせればプラマイゼロよ」
「ぐぬぬぬぬ・・・」
そんなやり取りを見て、少年はふっと笑った。
「わ、笑わないでくださーい!」
その後もプラマイゼロは覆せなかった。
少年がみふゆを助け、みふゆたちも少年を助け・・・。
一緒に魔女と戦ったこともあったが、変わらなかった。
だが、ある時、みふゆはたった一つの方法を思いついた。
これはいたって単純なことだった。
「ワタシ、梓みふゆっていいます」
これがたった一つの最適解。
自己紹介の基本は、自分から名前を言うこと。
そして、相手も名前を答えなければ失礼になるのだ。
「・・・完未題宿です。完未って呼んでください」
そして、次にみふゆは手を差し出した。
その意図は完未にも伝わってくれたようだ。
「・・・あれから何度か一緒に戦いましたよね。
完未さんは弱かったけど、それでも勇敢でしたよね。
ほんっと、卑怯なんですから。
強い面も、弱い面も、見せてくれるなんて・・・」
みふゆは眠ったままの彼に話しかけ続けた。
「あなたの手、とても猟銃を握ってた手には思えなかったんです」
みふゆは彼の手を握る。
「ああ・・・今でも柔らかいんですね。あなたの優しさそのものみたいです。
いつからか、あなたは姿を見せなくなりましたよね。
ワタシ、すごく不安になったんですよ?魔女か転生者にやられちゃったんじゃないかって。
でも、噂だけは聞こえてきましたから安心はしていたんです。
猟銃を抱えた一般人が戦っているって噂です。
たぶん、あなたのことだから知らないでしょうけどね。
それでも不安だったんですよ。いつか噂すら流れなくなるんじゃないかって」
彼女の頬に涙が伝う。
「だから、今朝会いに来てくれた時は本当に嬉しかったんです。
ちゃんと生きていてくれたんだって。
まさかキュゥべえまで一緒にいるとは思いませんでしたが・・・。
そのことはまた、あの人たちに報告するとして・・・ふふっ、可愛い寝顔ですね」
「キスとかしようと思わないほうがいいよ」
キュゥべえが背後にいた。
「まさか・・・〔R-18指定回避のための検閲〕しようなんて思ってませんよ」
「キス以上にことを発展させようとしてるじゃないか。
悪いけど、それ以上はしないほうがいいと思うな」
「破壊しますよ?」
「そうか、それが君の決断か・・・じゃあ、後は頼むよ」
入れ替わるように、七海やちよが入ってきた。
「みふゆ・・・ふざけた真似はやめなさい」
「やっちゃん、これは真剣な交際なんです!」
「双方の合意なき交際は交際といわないわよ」
「日本語で喋ってください!」
「日本語で喋ったはずよ???」
キュゥべえはその隙に完未の耳元にささやいた。
彼は叫び声を上げて眠りの淵から這い上がった。
「ひどい第一声ね・・・受け取りなさい」
やちよは村田銃の入った弓袋とリュックと靴を投げ渡した。
「課題も入れてあるわ。安心しなさい」
「ありがとうございます、やちよさん!」
彼は即座に靴を履くと、窓に向かって走り出す。
そのまま窓ガラスを割って、地上まで飛び降りた。
「わけがわからないよ」
「キュゥべえ、それが彼という人間よ。
あれで戦闘能力が普通じゃなかったら神浜の終わりは確定だったわ」
下の方から悲鳴が聞こえた。キュゥべえも下に飛び降りる。
「まあ、彼のことだからすぐに走り出すと思うわ。
・・・さて、みふゆ。言い残したいことはあるかしら?」
「そう、残念ね」
この後、みふゆは(戦闘的な意味で)めちゃくちゃめちゃくちゃにされた。
読了後一週間以内n
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