そのための追放   作:センセンシャル!!

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朝7時に間に合わなかったので初投稿です。

※今回戦闘描写多めのため、残酷な描写にご注意ください。


三人に勝てるわけないだろ!

 「討伐依頼」というものは、基本的に信用のおける冒険者しか承認を受けられないものだ。難易度の問題もあるし、討伐確認の問題もある。

 魔物や害獣を討伐する場所は、当然ながら町の外だ。依頼者や酒場のマスターがそこまで行って、実際に討伐したかを確認するわけにはいかないだろう。

 そのため、討伐した魔物の体の一部を剥ぎ取り「討伐証明」として提出することで依頼の完了を確認するのだが……それが偽装されたものでないかの信用の話になる。

 たとえばゴブリン討伐の場合、確認部位は首か右耳になるのだが、多くの冒険者はかさばらない右耳を切り落とす選択をする。首を選ぶのは、まだ信用されていない冒険者ぐらいだろう。

 右耳に限定されるのは、一体のゴブリンの両耳を切り落として討伐数を水増しするのを防ぐためだが……実は割と簡単に偽装できてしまうのだ。

 ゴブリンの耳は細く尖っており、それほど硬くもない。左耳を切り落として裏返して、わからないように適当な傷をつけてしまえば、右耳と偽れてしまうのだ。もちろん、その場合は右耳にもちゃんと傷を付けるだろう。

 そうやって「数が多くて状態が悪くなった」などと適当な言い訳をして依頼料の水増しを図る冒険者は必ずいる。「冒険者」の大部分が定職につかないならず者の集まりなのだから。

 こういう問題があるので、普段から小さな依頼も手を抜かずにこなし、酒場のマスターの信用を得た冒険者が、初めて討伐系の依頼を承認されるのだ。

 ――ちなみに前述のケースでは、冒険者側が勝手にゴブリンを討伐している場合がほとんどなので、依頼料を支払う義務はない。少し考えればわかりそうなものなのだが。

 

 さて、そんな条件の厳しい「討伐依頼」であるが、緊急性のあるものに関しては話が変わってくる。信用よりも迅速な対応が優先されるからだ。

 たとえば人家のすぐそばにグリズリーが巣を作り、討伐者の選別を行っている間に犠牲者が出たのでは、今度は酒場が信用を失ってしまう。こういうケースは口頭での経験確認のみで依頼の承認が行われる。

 一つところにとどまることのない私にとって、こういう依頼はボーナスチャンスだ。中級以下の魔物であれば私が後れを取ることはまずなく、報酬がおいしい上に信用も一気に稼ぐことができる。

 今の同行者たちと出会ったのも同じような依頼を受けたときの話であり、あのときは大規模な合同依頼だった。……強いて言うならば、それがこのテの依頼の難点か。

 

 

 

 

 

「あんたたちが協力者? そっちのデカいオッサンは強そうだけど……なんか頼りないパーティねぇ」

 

 軽装の女戦士は、私たち三人を順に見て、しかめっ面で吐き捨てた。この時点で、彼女を戦力としてアテにするのは諦めた。

 

 今回私たちが受けた依頼は、「町の近隣で見かけられたインプの調査・討伐」。インプ――言い換えるとレッサーデーモンだが、これは魔物の中でも特にわかりやすい脅威だ。

 魔物とは――少なくとも私の祖国の定義では――多量のマナを内包し変異した動植物だ。魔物の代表格・ゴブリンも元はただのネズミだったのではないかと言われている。

 ネズミが人間の子供サイズに、イノシシが大木サイズに変異すると考えれば、魔物が人間の生活を脅かす存在となるのは当然だろう。奴らは「大きい」のだから。

 そんな中でインプは、大きさ自体はゴブリンと変わりない。この種はマナによる変異を「肉体」ではなく「精神」に受けている。

 平たく言えば、「魔法に似たナニカ」を使う。虚空に炎を出現させたり、小さな雷撃を落としたりと、自然には発生し得ない自然現象を引き起こすのだ。

 この力を使って田畑や家を焼き払うなどの「悪事」を行うため、恐れられている魔物だ。発見報告があれば、当然緊急討伐依頼へとつながる。

 

 そうして私たちが受けた依頼は、他パーティとブッキングした。より確実に依頼を達成できるよう、酒場の側で制限を設けていなかったのだろう。

 同行するパーティは、私たちと同じ三人組。先ほどの口の悪い女戦士に、杖を持ったローブの男(ザ・国外の魔法使い)、ロイと同じぐらいの年頃の鎧に身を固めた戦士の男。この男がリーダーだろう。

 

「アンナ、失礼なことを言うな! ……すまない、僕の幼馴染は思ったことをすぐ口にしてしまうんだ。昔から注意してるんだが、どうしても直らなくてね」

「だってさぁシルバ、この全身フードのやつなんか武器持ってないのよ? 何しに来たって話よ」

 

 さらに下方修正。アンナという女はもちろん、シルバと呼ばれた男も、自覚があるかは知らないが、無意識にこちらを下に見ている。

 残った魔法使いの男はおどおどしており、二人の口論に口をはさめないでいる。察するに、ずっと二人でやってきて、最近になって魔法使いを仲間にして気が大きくなっている、か。

 ……私が何かを言う必要はないだろう。コミュニケーションは、ロイの仕事だ。

 

「まあまあまあ。オイラはなんも気にしてないよ。頼りなさそうってのも、まあ自覚してるしさ」

「いや本当にすまない! 許してもらえて感謝だよ。パーティ"銀杏の枝"のリーダーの、シルバ・ハイラルだ」

「オイラはロイ・ストランド。よろしくな! ……ところでミタスさん、うちのパーティ名って?」

 

 そんなものはない。私たちは「私の一人旅にたまたま一緒になっている二人組」という体だろうが。

 

「付けたければお前が勝手につけろ。俺は特にこだわらん」

「あ、そう? じゃあ「アールヴィナちゃんを守り隊」でオブロァ!?」

 

 何勝手に人のミドルネーム使ってるわけ? 死にたいらしいな?

 

「じ、冗談! 冗談だから! 真面目に考えます!」

「……とりあえず、俺たちは「たまたま一緒に行動している三人」だ。パーティ名は特にない」

「そうなのかい? その割には息ぴったりだけど……君たちがそう言うなら、そういうことにしておくよ」

 

 無駄に爽やかな笑顔で、シルバはそれ以上の言及を避けた。私の格好でわけありなのは想像が付くだろう。

 彼は、私にも右手を差し出してきた。私はそれを取らず、最低限の言葉のみを返す。

 

「俺のことは"ミタス"と呼べ。依頼以外で、お前たちと関わる気はない」

「……ははは、気難しいリーダーさんみたいだね」

「そうでもないんだけどね。実は結構優しい人だし」

「うむ。儂らがミタス殿に同行しているのは、その人柄故だ。お主らが心配することはない」

「人柄はどーでもいいんだよ。問題なのは腕前の方。わかってんの?」

 

 「今回の相手はレッサーデーモンだよ」と荒々しく問うてくるアンナ。こちらとしては、そちらのパーティの腕前が大丈夫なのか不審なところではあるが。

 

「インプ程度は5体までなら余裕を持って対処可能だ。不服か?」

「……口だけなら何とでも言えるからね。ま、アテにはしないでおくよ」

 

 少女は私たちへの対抗心を隠さなかった。……はてさて、彼らを無事に帰してやれるかは、彼らがやらかさないか次第だな。

 

 なお、向こうの魔法使いの「ブランチ・エッジ」は終始あわあわ言ってるのみで、出発直前まで名前すらわからなかった。

 

 

 

 インプの目撃情報は、町と町を結ぶ街道上だ。人の往来がそこそこ発生する場所で目撃されたということは、規模もそれなりであることが予想される。

 人間が魔物を警戒するのと同様に、魔物も人間を警戒する。それはインプも例外ではなく、もし単独行動のインプであるなら、不用意に人の目に触れるようなことはしないだろう。

 とはいえ、町からはだいぶ離れた場所だ。日帰りできる距離ではなく、「インプの氾濫」などという恐ろしい事態にはならないだろう。

 

 目撃地点にはまだ距離のある場所で、各々のパーティで野営を行う。テントは二つで、火の番はパーティから一人ずつ出して交代制で行うことになる。

 私と組になったのは、向こうのリーダーであるシルバ。互いに会話はなく、薪のはじける音のみが夜の闇に消える。

 私は、例によってフードの中に陣を作り、超音波探査で周辺を警戒している。半径500mの探査に引っかかったのは、トカゲやリス、フクロウなどの小動物のみ。

 それがわかっているかは不明だが、戦士の男は落ち着いた様子で枝を折り焚火に放り込む。また一つ、パチンとはじける音が響いた。

 

「……昼間は、アンナが本当に失礼をしたね」

 

 不意に、シルバが口を開く。沈黙に耐えかねてという感じではなく、ごく自然に話し始めた。何故今なのかはわからないが、私のわずかな雰囲気の変化を感じたのかもしれない。

 私は短く答える。

 

「小娘の戯言など気にも留めていない」

「ははは、厳しいね。僕が謝っておきたかったんだよ。あの子は、身内みたいなものだから」

 

 パーティとして、ということではないだろう。……そういえばアンナという少女は、家名を名乗らなかった。私のように偽名を使っているということでないとすれば、それが意味するところは一つだ。

 私が聞かずとも、シルバは勝手に話を続ける。

 

「彼女は僕の妹みたいなものでね。うちの家人として招いてから、ずっと一緒だったんだ。こうして、僕の夢に付き合ってくれるぐらいに」

 

 私は何も答えないが、粗方は察する。"銀杏の枝"の言いだしっぺはアンナではなくシルバの方だったようだ。彼女はシルバのことが心配で冒険者をやっているのだろう。

 この戦士の男は、どうやらいい家の息子のようだ。ストリートチルドレンを拾って養える程度の、おそらくは商家。何人目の子供なのかは知らないが、長男ではないのだろう。

 シルバは、「アンナは決して悪い子ではない」と言いたいのだろう。私にとってはどうでもいいことなのだが。

 

「僕はもちろん、アンナもあなた方の実力を疑ったりはしていないよ。ただ、レッサーデーモンと聞いてピリピリしていただけなんだ」

「……ワイバーンと並んで、魔物の脅威の代名詞だからな。あまり経験はないようだな」

「冒険者としてなら2年なんだけどね。こんな大きな依頼を受けられたのは、ブランチが入ってくれたおかげだよ」

 

 「ああ見えてすごい魔法使いなんだ」と彼は言う。……腕前は知らないが、あの気の小ささで、果たして魔物を目の前にしたときに実力を発揮できるのだろうか。

 とはいえ、私も冒険者として活動している期間は1年に満たない。経験だけなら彼の方が長く、冒険者としての心構えも知っているだろう。

 信用はしていないし、アテにもしていない。だからと言って切り捨てる気もないというだけの話。

 

「あなたも、相当な魔法使いなんだとお見受けするよ」

 

 少なくとも、一度も話していない私の技能を見抜く程度には優秀なのだから。

 

「火の番を始めてからしばらく、あなたは緊張状態だった。それがついさっき少し緩んだ。あれは、魔法の索敵で周囲に危険がないことを確認していたんだよね」

「……意外と見ているようだな。俺のやり方では、魔力は感じなかったはずだが」

「僕はそういうのがわからない方だからね。目で見てそう感じたんだ」

 

 フードを目深に被った私のわずかな緊張状態の差を見抜くとは、観察力は相当なものだ。

 ……やられっぱなしというのは癪だな。

 

「そちらのパーティのやり方について。お前が盾となり敵を観察、アンナが遊撃となりかく乱、指示を受けたブランチが魔法で決定打を打つ、というのが基本なのだろうな」

「……やはりあなたも、相当だね。全くその通りだよ。もちろん、相手の出方次第で作戦は変えるけどね」

 

 これはやられたと苦笑するシルバ。鼻はあかせたか。

 そうして、私はまた黙り込む。私は、必要以上に彼らと関わるつもりはないのだ。

 知ってか知らずか、男も以降何かを語ることはなかった。

 

 

 

 

 

 野営地を出発してすぐに、不審な煙を発見した。早足で駆けつけると、小規模の隊商が3体のインプに襲われていたのだ。

 私は即座に判断を下す。

 

「ベア爺、商人を守れ! ロイは1体をどうにか引き離せ! 1体はそちらに任せる!」

「はあ!? いきなり何仕切ってるわけ!? あたしたちだけで十分なんだよ!」

 

 「アンナ、待て!」というシルバの制止も聞かず、軽装の少女は飛び出してしまう。……彼女を支援する義理はないが、ここで怪我をされても困るか。

 私は構築しつつあった魔法を一旦消し、異なる陣をフードの中に生成する。

 

『ギャンギ!?』

『デデャヂャ!!』

 

 少女を追い越して着弾した煙幕に、インプどもの混乱の声が聞こえる。これで一手は稼いだはずだ。

 

「彼女はお前たちが手助けしろ! こちらで2体処理する!」

「……助かる!」

 

 アンナの後を追い、シルバも駆け出す。一拍あってブランチも慌てて走り出し、これで1体はなんとかなると仮定しよう。

 ロイは一連の騒ぎに乱されることなく、既に1体のインプを引き付けて煙幕から飛び出している。おそらくアンナよりも先に動いていたのだろうが、まるで気が付かせなかったのはさすがの腕だ。

 さらに1体が、煙幕から逃れるように飛び出す。ちょうどよく私の射線上だ。

 

「手間が省けたな」

 

 私は人差し指で狙いを付け、最初の陣を再生成した。即座に発動し、白い輝きが指先から放たれる。

 インプがこちらに気付いたときには、奴の額に小さな穴が開いていた。勢いのまま、前のめりに倒れるインプ。

 警戒を解かず、インプに近づき心臓部にもう一発。ピクリとも動かなかったので、一発目で倒せていたようだ。

 視線を巡らせ、アンナが相手にしている1体を確認する。彼女は投擲針(ダート)を武器にするようで、命中率は悪くない。

 しかしダートは投擲武器である関係上、弓矢等に比べて弾速に難がある。距離次第では対人でも十分に迎撃が可能であり、炎を操れる魔物がそれをしない道理はない。どころか、逆に攻撃を受けてしまっている。

 敵の攻撃はシルバが盾で防いで事なきを得ているが、形勢はよろしくないようだ。

 

「――灯ける揺らめき、敵を撃て! 火炎弾(ファイアボール)!」

 

 二人の後ろから、ブランチが魔法で攻撃をしかける。詠唱開始から発動まで約3秒、国外の魔法使いとしてはなかなかの腕のようだが……彼はインプの生態を理解していないようだ。

 インプは、火球を避けるそぶりすら見せなかった。まともに喰らい、アンナがガッツポーズを取る。

 そして弾けた炎が晴れ……多少煤けただけのインプが姿を現す。見るからにダメージを受けた様子はなかった。

 

「なっ!? 効かないのか!?」

「インプは魔力に耐性を持つ! 質量系の魔法を撃て!」

「し、しつりょう!? え、えと、あうう……!?」

 

 インプは「精神がマナの影響を受けた魔物」であるため、マナを変換したエネルギーでは攻撃が通りづらいのだ。常時マナに対するバリアを張っているようなものだ。

 だから私がやった高圧水流のように、高密度を生み出す必要があるのだ。ブランチに手札がなければ、私がやるしかないが……。

 

「風、水、土のどれかだ! なんでもいい!」

「あ、そ、そうか! ――早手の如し、鋭く射抜け! 空圧斬(エアスラッシュ)!」

 

 どうやら風の魔法を持っていたようで、インプの腕に浅い切り傷ができる。狙いは甘いが、攻撃手段があるならば少なくともしばらくは持つだろう。

 私は私で、ロイの受け持ちを倒さなくてはならない。回避の腕前は天下一品の彼は、剣はそこまででもないため決定打に欠ける。

 

「そーれハッスルハッスル! あんよが上手ってなぁ!」

『ゴギャギャゲ!!』

 

 見れば彼は、インプの放った雷撃をバク転で回避しているところだった。相変わらず身体能力に関しては超人的だな。

 インプは決して動きの速い魔物ではないが、あそこまで乱戦となると、狙いを付けるのは容易ではない。……3手だな。

 

「ロイ!」

「ほいきた!」

 

 私の呼びかけで意図を察し、それまで回避一辺倒だった動きを一転、インプに向けて迫る。

 さすがにそれで虚を付けるわけはなく、魔物もまた火炎の弾丸で応戦する。ロイはそれをまるで曲芸のような動きで回避し……そのままインプの向こう側へ通り過ぎた。

 

『ヴァギャレ!!』

 

 インプは振り返り、その背に向けて火炎を撃とうとし、それはあらぬ方向へとそれていった。

 突然の強風にあおられれば、狙いなどつけられないだろう。

 

『ギャゲ……!?』

「そういう連携だからだよ!」

 

 私が使った気流操作の影響を受けていないロイは、振り返る勢いでインプの頭にフルスイング。剣の腹がまともに直撃し、インプは大きくよろめいた。

 ……刃を立てておけば今ので終わりだったのだが。彼は剣をジャグリングのスティックか何かと勘違いしているのではないだろうか。

 

「まあ、どのみちこれで終わりか」

 

 足を止めたということは、私の魔法の的だということだ。最初のインプ同様に額を穿たれたインプは、力を失い膝から崩れ落ちた。

 確実に仕留めたことを確認し、残りの一匹に視線を戻す。……どうやら彼らも、1体は仕留められたらしい。

 全身に風の刃を受けて原型をとどめていない元インプを見て、私はひとまずの戦闘終了を判断した。

 

 

 

 

 

「助かりました! あなた方が通りかからなかったら、どうなっていたことか……!」

「それが僕たちの仕事ですから。お気になさらず」

 

 ベア爺の防御はさすがであり、戦闘が始まってから商人たちに怪我はなかった。今はシルバが商人たちの対応をしている。

 いつもならこういうのはロイの役回りだが、向こうのパーティのリーダーに譲ったようだ。彼は現場の調査を行う私についている。

 

「あちらさんのパーティ、あんなのでこの先大丈夫かねぇ」

「さあな。最低でも1体は倒せる戦力があったんだ。いざとなれば残りを俺たちがやればいいだけの話だ」

「さらっと言うよねぇ」

 

 できなくはないからな。最悪、大規模殲滅という手を取ればどうとでもなる。……環境への被害は甚大になるだろうが。

 それ抜きにしても、私ならば「狙いを付ければ一撃で倒せる」という実績がある。地形などをうまく使って1体1体処理できる状況を作ればいいだけだ。

 先走った割になんの戦果も挙げられなかったアンナは、岩を背に体育座りでふてくされていた。ブランチが何とか元気づけようと声をかけているが、口下手な彼では難しいだろう。

 

「問題なのは戦闘技能よりも経験と知識の不足だろうな。彼女も、対抗意識が先行しすぎて普段の働きができていなかったはずだ。自信の無さと言い換えていい」

「あー……なんとなくわかった。そうすっと、オイラたちにできることってないよねぇ」

「ないな。彼ら自身が乗り越えるべき問題だ」

 

 内面の問題というのは、他者がどうこうできるものではない。助言も、その人物の人格を正確に把握していなければ逆効果につながることだってある。

 彼らを何も知らない私たちに、できることなどないのだ。

 「しょうがねえかー」と割り切るロイ。お人よしながら、切り替えもうまい器用なやつだ。

 

「で、なんかわかったん?」

「規模まではわからんな。……あれはおそらく斥候だ」

 

 あの3体で終わりとは思っていなかったが、どうやらそれなりの規模の群れが近くにいるらしいというのが私の推論だ。

 まず、隊商の被害。荷馬車の幌が一部焼けた程度で、荷物に被害はなかったようだ。我々が迅速に駆けつけたという可能性もあるが、本格的に略奪を行う前段階だったと考えた方がいいだろう。

 そのうえで、インプどもが「陣形を取っていた」という事実。略奪行為が計画的なものであり、人間側の戦力を計ろうとした意図が見える。

 

「人間を殲滅できるか確認、可能ならば略奪、無理ならば棲家を移動、と言ったところだろうな」

「うげー、マジでか。インプって知能高いのな」

「だからこそ脅威とされている魔物だ。奴らが言語らしきもので意思疎通を行っているのを見ただろう」

 

 「精神にマナの影響を受けている」、それは知能の発達にも影響を及ぼしていると考えられる。それがインプの最も大きな特徴だ。

 人間と比較して遜色ない知能を持っていると、祖国で研究論文が発表されていたことを記憶している。

 

「あの3体が帰還しなければ、棲家を移すだろう。それでこの辺りからいなくなるなら、それはそれで依頼達成になるが……」

「確実なのは、群れを探して退治するってことか」

「そしてやるなら今のうちだ。時間を空ければ、それだけ探すのが困難になる」

 

 「なら、やるしかないっしょ」と気合を入れ直すロイ。ベア爺を見ると、無言でうなずきこちらも準備OK。

 あとは"銀杏の枝"次第だ。

 

 私の推測を聞き、リーダーの表情は険しかった。先ほどの戦闘での自身たちのありさまは、客観視できているようだ。

 慎重なシルバとは対照的に、アンナはどうしても脊椎反射的に発言してしまうようだ。

 

「んなもん、やるに決まってるでしょ!? 今更逃げるような腰抜けだとでも思ってんの!?」

「アンナっ! ……すまない、あまり時間をかけてはいけないのはわかるが、相談させてくれ」

「構わない。撤退という選択も、状況次第では適当なものだ」

 

 シルバに手を引かれ、アンナも私たちと距離を取る。威嚇をやめることはなく、ブランチが申し訳なさそうにペコペコと頭を下げてついて行った。

 私が思うに、彼らの課題は「制御」。戦闘についても、精神についても、戦術戦略についてもだ。意識的な制御ができていないから、自信が持てないのではないか。

 ……その点について言えば、私は恵まれていたのだろう。私自身、祖国での高度な義務教育と研究職としての経験で、自分自身を客観的に制御する訓練は、自然と行えていた。

 同行者二人についても、片や冒険者としてもベテランである老練の元騎士、片や繊細な身体制御を求められる元軽業師。全員が全員、制御力には裏付けがある。

 だから、一つのパーティとして――私は認めていないが――活動期間が短くとも、緻密な連携が可能となっている。

 

「運が良かったんだろうな」

「? ミタスさん、何の話?」

「いや、な。……私の姿を見たのが、お前たちでよかったという話だ」

 

 私らしくない発言だっただろうか。ロイはしばし呆然とし、目を瞬かせた。ベア爺は、薄く微笑むのみだった。

 

 短い相談の末、"銀杏の枝"の面々も依頼を続行することに決まった。

 彼らは、この依頼を受けた町を拠点にする……というよりも、そこが故郷の冒険者だ。差し迫る危険を放置はできないという判断になったようだ。

 

「それにあたって、僕らの指揮をあなたに任せます。アンナにも、ちゃんと従ってもらいます」

 

 シルバは、インプに関する知識と経験の不足をちゃんと自覚していた。その上で奴らと戦うために、私を頼ったのだろう。

 こうまで言うのだから、ふくれっ面で私を見ようとしないアンナも、戦闘となれば言うことは聞いてくれるだろう。

 

「とは言われたものの、俺はお前たちをよく知らん。指揮と言っても大雑把なものしかできないが、それでも構わないか」

「ああ。"銀杏の枝"への指示としてひとまとめてしてくれても構わない。それでも僕が一人でやるより、マシなはずだ」

 

 知識面での補助があれば、シルバは自分なりの指揮が可能だろう。それだけならば、私の負担もそこまで大きくはならないか。

 

「了解した。それではこれより、インプの巣の探索を行う。発見し次第戦闘開始となるので、各自準備を怠らないように」

 

 アンナを除く全員が首肯し、やや遅れてアンナも了承した。

 

 

 

 街道を逸れた岩山の中で、2体のインプが番をしているのを感知する。門のような石柱のさらに向こう側に、さらに10を超える同様の反応。

 現在位置は双方から死角となる岩場の影。例によって超音波探知を使っているので、インプ側には気付かれていないだろう。

 

「発見した。数は10以上。正面からやり合うのは危険だな」

「っ、そんな数が……あなたでも、まともに相手はできない数なのか?」

「正攻法ではな。奥の手を使えばどうとでもなるが、あまりやりたくはない」

「地形変わるもんなぁ」

 

 つい先日の光景を思い出したか、苦笑するロイの言葉に戦慄するシルバ。天獄(アーク)の破壊力ならば、インプの耐マナ能力も余裕で貫通するだろう。

 地形破壊の問題以外にも、もしこれで撃ち漏らしや射程外にインプが残っていた場合、私の魔法なしで倒さなければならなくなる。小さな森すら蒸発させる魔法は、それだけマナを消費するのだ。

 やはりアンナは私たちを信用していないようで、ロイの言葉を訝しんでいる。ブランチを基準に考えれば、そこまでの魔法は想像が及ばないのだろうな。

 

「ここは、地形をうまく使おう。奴らが巣を守るのに用意したであろう「門」を利用する」

 

 ちょうどよく、見張りのインプが外に2体。こいつらは巣の中からは見えない位置にいる。

 こいつらを迅速に処理し、異常を察した中の個体が外に出てくるのを待つ。こいつらを門のところで処理し、数を減らす。

 

「うまくやれば、これで半数は減らせるはずだ。それでも7、8体にはなるだろうが、正面からやるよりははるかに安全だ」

「全滅は、無理かな」

「無理だな。インプは知能が高い。混乱に乗じて処理できる数で半分が限界だ」

 

 実際に処理できる数はもっと少ないだろうが、なんにせよ数を減らすに越したことはない。

 緊張感はあるものの「やる」という意志に満ちているロイとベア爺。対して、"銀杏の枝"の面々は不安を隠せていない。

 ――ここが彼らにとっての分水嶺だろう。冒険者、危険に立ち向かう者としての。

 

「できないと思うなら素直に言ってくれ。作戦中に崩れるほど危険なことはない」

「……、……いや、やる。やらせてくれ」

 

 シルバの瞳に火が灯る。頼りないものではあるが、確かな勇気の火だった。

 そして、それは仲間にも伝染する。アンナも、震えているブランチにも。彼らは、一つ乗り越えてみせた。

 

 不意に、教授の顔を思い出した。今の私は……彼女と同じ表情をしていたかもしれない。

 

 

 

 岩陰から飛び出すと同時、私は指先で狙いをつけて片方の門番の額を撃ち抜く。もう片方が驚きの鳴き声を上げ、すぐさま迎撃の火炎を出現させる。

 

「――空圧斬(エアスラッシュ)!」

 

 それは、岩陰で詠唱を終えて飛び出したブランチの魔法で霧消する。敵の攻撃のみを狙い撃つ、いい魔法だ。

 インプが体勢を立て直すより早く、私は次弾を発射していた。門番の死体が二つ、石柱に倒れ込んだ。

 確実な撃破を確認している余裕はない。号令。

 

「陣形展開!」

『応っ!』

 

 ロイとベア爺、シルバとアンナが、門の前を取り囲むように立つ。騒ぎを聞きつけ、門から顔を出したインプの額にダートが刺さる。

 

「あたしだって、このぐらいやれるっ!」

「次、来るぞ!」

 

 無防備なインプはここまで。次に出てきたインプは、門を飛び越すように飛翔していた。

 この手合いの対応は、私とブランチの担当だ。

 

「俺が削る! お前が倒せ!」

「は、はい! ――早手の如し、鋭く射抜け!」

 

 魔法の発動速度は圧倒的に私の方が早いが、さすがに飛翔する相手に狙いを定めることはできない。だから私は、とにかく高圧水流を連射する。

 下手な弓矢も何とやら、連続する致命的な水の輝きは、何発かがインプの手足を掠める。動揺して動きを緩めたその首に向けて、ブランチの風魔法が命中した。

 地上では、早くも乱戦の様相を呈し始める。危険を理解したインプは、勢いよく、複数体が同時に飛び出してくる。そうなっては各個撃破は不可能だ。

 だが持久戦は、ベア爺の十八番だ。

 

「ぬうん! ここから先へは通さん!」

 

 飛び来る火炎や雷撃を、盾一つで弾き飛ばしている。おそらくはマナ操作を盾に適用しているのだろうが……マナ感知能力の低い身で、どれだけの研鑽を積んだらああなるのだろうか。

 内心で舌を巻きつつ、前衛が魔物を撃破できるように、私はインプの集団に向けて気流操作を仕掛けた。

 奴らが動きを止めれば、すぐさまロイが接近し、頭に剣の殴打を入れていく。続けざまにシルバが一太刀を入れてとどめを刺す。

 これで7。奇襲戦で倒せるのは、この辺りが限界だ。

 

「一旦退避! 全員ベア爺の後ろへ!」

 

 堅牢な元騎士の後方で、インプの出方を見る。奴らに最早油断などはなく、岩壁や石柱に身を隠せる位置からこちらを覗いている。

 ……これは、まずいな。

 

「おいおいおいおいおい、どうなってやがる……」

「この数は……異常すぎる……!」

 

 私の索敵は、完全ではない。半径に限界はあるし、超音波を吸収するような素材の後ろに隠れられれば察知することはできない。

 この岩山の組成がそうだったのだろう。目視できるインプの数は、既に30を超えていた。まともに相手できる数ではない。

 

「……撤退だ。6人で処理できる数ではない」

 

 決断は早かった。町に戻って討伐隊を結成するのが最良の選択だ。

 ロイとベア爺は理解できただろう。シルバもまた、唇を噛みながらも頷く。

 

 私の間違いは、アンナの性格を理解しきらずに焚きつけてしまったことだ。

 

「っ、ふざけんな!」

 

 少女は吠える。魔物の視線に恐れ震えながら、己を鼓舞するように。

 

「あんたたちにとってあの町は旅の途中かもしんないけど、あたしにとって……あたしとシルバの、大事な家なんだ!」

「っ、アンナ!」

 

 そうだ、彼女は最初からそうだったじゃないか。引けと言われて引ける性格ではない。真っ先に切り込んでしまう、そんな少女だったのを私は知っていたはずだ。

 ベア爺の盾から飛び出し、ダートを構えた少女に向け、インプの群れはおびただしい数の火炎と雷撃を放たんとしていた。

 

 

 

「――魔なる焔よ骸を焦がせ、その灰が尽きるまで」

 

 これは、私の落ち度だ。だから、私が責任を取る。

 何もかもがスローモーションに見える中で、私は自然と、詠唱を口にした。陣を構築した。魔法を、行使した。

 

「――奈落(ゲヘナ)」

 

 その瞬間、インプが放った火炎は"燃え尽きた"。雷撃も"燃え尽きた"。

 この場にあるすべてのマナ由来のものは、すべて"燃え尽きる"のだ。

 

「こ、れは……一体……」

「ミタスさん!?」

 

 私の異変に真っ先に気付いたのは、やはりロイだった。膝から崩れかけた私の体を、抱きとめて支える。

 力が入らない。意識が落ちる前に、状況を伝えなければ。

 

「この場の、マナを、"焼却"する、魔法だ。これで、インプは、少し賢いだけの、獣だ」

 

 マナ焼却の「攻撃魔法」。これは対魔法使い戦を想定した、不完全な魔法だ。

 魔法の源であるマナが無くなれば、誰もが魔法を使えなくなる。私も、ブランチもだ。

 そしてマナ保有量が多い者ほど影響も大きい。何の備えもなかったブランチは、既に昏倒していた。

 

「魔法で、助けられなく、なるが、お前たちなら、やれるはずだ」

「ミタスさん……」

「……頼んだぞ、ロイ」

 

 そこで私の意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 目を覚ますと、夕暮れの空が目に染みた。起き上がろうとし……襲い来る頭痛で何があったのかを思い出した。

 

「あ、ミリアちゃん! 無理に起きようとすんな!」

 

 私が意識を取り戻したことに、やはりロイが真っ先に気付く。いつの間にやら私は野営用の寝具の上に横たわっており、彼は私を再び寝かせる。

 ……当たり前だが、フードは取られている。介抱をするなら邪魔になるからな。気になる"銀杏の枝"だが……。

 

「気が付いたんだね。……ミタスさん。いえ、ミリアさん。アンナの命を救ってもらって、本当に感謝の言葉もない」

 

 シルバが私の横に座り、頭を下げた。やはり、私の事情をある程度説明したのか。

 彼の隣に、アンナもまた座り、頭を下げる。言葉はなかったが、恥と悔いの中に感謝が混じっているのは、何となくわかった。

 

「……私の落ち度だと思ったからだ。アンナが素直に撤退を受け入れないことはわかっていた。思慮が足りなかった」

「っ、そんなわけないだろ! あたしが、あんたの指示に従うって言ったのに……っ」

 

 大粒の涙をこぼし始めるアンナ。……ああ、この子は素直なだけなのか。自分の感情に、愚直なまでに素直なんだ。

 感情を表に出すのが下手な私には、少しまぶしい。

 

「わかっているなら、次に活かせ。幸いにもお前の命は繋がっている。私に感謝をするというなら、私の助言を無駄にしてくれるな」

「ええ、必ず。……状況ですが、レッサーデーモンは全滅することができました。あなたの言った通り、奴らは魔法を使えなくなってたよ。それだけじゃなくて、明らかに動きが悪くなっていた」

「今まさに私の調子が悪いのと同じ原理だ。マナ……魔力の内包量が多いものほど、それが失われたときの反動はでかい」

 

 巻き添えを喰らったブランチは、私よりマナ総量が少ないのだろう、とっくに立ち直って二人の隣に座っている。

 ……私の方は、今日中にはまともに動けそうにないな。このまま野営となるだろう。

 

「魔力を燃やし尽くす魔法……そんなもの聞いたことはない。もしかして、あなたは……」

「あまり吹聴してくれるなよ。魔法大国の生き残りなんて……知られていいことはないだろうからな」

「言わないよっ! 絶対言わないから! 命の恩人を危険に晒すなんて、そんな恥知らずなこと、絶対するもんか!」

 

 涙で赤くなった目で、アンナは私の手を握る。先ほどまでとのあまりの態度の変わりように、思わず表情が緩んでしまう。

 何故か、シルバは私たちから目をそらした。ブランチがいつも通りの呆けた表情に、微妙に頬を朱に染めている。つまりはそういうことらしい。

 

「オイラも、信用していいと思うよ。あんちゃんも嬢ちゃんも、普通にいいやつだし」

 

 ロイのお墨付きが出た。なら大丈夫だろう。

 ……ちなみに、ブランチは?

 

「そもそも口下手で何も話せないと思う」

「あ、そのぅ……」

「把握した」

 

 最初から何の問題もなかった。

 

 野営をする上で、私が寝具を一つ占領してしまっているので、交代のローテーションが難しくなる。

 だからなのかなんなのか、テントは張りつつ中には誰も入らず、私とアンナ、シルバとブランチが寝具を共用で使い、皆で火の番をしつつ交代で休憩を取った。

 

「っていうかミリア、あんたなんであんなフードで顔隠してるのよ。めっちゃ美人じゃないの」

 

 警戒がそのまま反転したのか、アンナにはやけになつかれてしまった。プニプニと頬を引っ張られる。

 やめなさいと引きはがし、至極当然の回答。

 

「私がこのまま一人で酒場に入ると、どうなると思う」

「うん、フードかぶっておきなさい。酒飲みどもに見せるにはもったいないわ」

 

 そういうことではないのだが、納得したならそれでいいか。

 

「でも、ロイ君がミリアさんをずっと気にしてた理由はわかったよ。どこまで行ってるんだい?」

「それがさー、ガードが堅いのなんの。同行を許可してもらってるだけで御の字です。そっちこそどうなんよ」

 

 男どもは男どもで、下世話な話に花を咲かせる。寡黙なベア爺と口下手なブランチはそんな私たちを見てほっこりしている。

 何とも平和な時間だった。

 

 

 

 会話というのは、なんとなしに途切れることがある。不意に夜の虫の鳴き声だけが聞こえる時間が訪れる。

 

「……あの」

 

 口を開いたのは、珍しくブランチだった。本当に珍しいことのようで、シルバとアンナも驚いた様子だ。

 

「ミリアさんは魔法大国……"アルヘイム"の出身、なんですよね」

「その通りだが。何か気になる点でもあるのか」

「あぅ、えっと、その……」

 

 口下手である彼は、言いたいことをまとめるのにも時間がかかる。私たちの誰も、せかさず先を待った。

 

 そうして出てきた次の言葉は。

 

 

 

「あの、僕、"アルヘイム"出身の知り合いがいるんです」

 

 私に、少なくない驚きを与えた。




用語解説

インプ
小型の悪魔のような魔物。レッサーデーモン。小さな翼を持つ猿ような姿をしており、討伐証明部位は右手首。
精神がマナによる変異の影響を受けた結果、マナを介した自然現象の発生能力や、高度な知能といった脅威を持つ。独自の言語や文化を持っていることも推測される。
「生産」と言った発想を持つ存在は今のところ確認されておらず、略奪者として人間からは討伐対象となっている。
なお、「レッサーデーモン」と呼ばれてはいるが、成長しても「デーモン」になることはない。それは別種の魔物である。

空圧斬(エアスラッシュ)
風系統の魔法。「斬」とはついているものの、コントロール次第で風の壁のような使い方もできる。
詠唱は「早手の如し、鋭く射抜け」。今回使用者だったブランチ・エッジはなかなかの使い手で、実は切断にまで至るのは容易ではない。
これ以上の破壊力を持つ高圧水流とかいう生活用魔法の応用を連射できるミリアのイカレっぷりよ。



奈落(ゲヘナ)
対魔法使い用「攻撃魔法」。自信を周辺とする任意範囲のマナを掌握・消耗させ、魔法の使用を不可能とする空間を作り出す。広域マホ○ーン。
その性質上自身も無力と化してしまうため、開発者の認識としては欠陥魔法。今回は仲間たちを信頼して使用した。
副次効果として、マナ保有量の多い相手の弱体化が可能。インプのような性質の魔物には特攻であった。



魔法大国"アルヘイム"
ミリアの出身国。魔法の研究が盛んで、周辺諸国と比べてぬきんでた文明を保持していた超大国。もし攻撃魔法が肯定されていたら、世界を支配することも可能だっただろう。
初代国王はそれによる世界の混乱を危惧し、あえて攻撃魔法を封印する法を作った。が、世情の変化に後の人々が対応できず、結果としてそれが原因で滅んでしまった。
騎士の国"ヴェンザー"の軍隊によってほとんどの国民と王族は殺され、逃亡に成功したわずかな人々が、各地でひっそりと暮らしている。
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