Memory'sOff ─Innocent Fille─ REMAKE   作:キラトマト

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第十二話 女子と二人で飯食ってると緊張するけど好きな子だったら逆に吹っ切れる

 ──翌日。

 

 シカ電車内で目が合うと、嘉神川さんが乗客の合間を縫ってやって来た。

 

「Bonjour. おはようございます、楠瀬さん」

 

「おはよう、嘉神川さん。……昨日は、色々と迷惑をかけてしまった」

 

「いいえ」

 

 俺の言葉に嘉神川さんは一言で返した。

 

「わたしは部外者ですが、色々と考えさせられました」

 

「忘れたけど、覚えている。そういうことでしょうか」

 

「……ああ、そういうことだろう」

 

「難しいですね」

 

「時間は……かかるだろう、でも、例えどんなに辛い真実だったとしても、俺は受け止めるよ」

 

「そう……ですね」

 

「だから、これも考えました」

 

「楠瀬さんの消えた記憶より、もっといい思い出を作るにはどうすれば良いのか」

 

「……え?」

 

「わたしは、ここにいます」

 

「それは分かるんだけど……」

 

「時間短縮のためです」

 

「ええっと、意味は分かるというか分からないというか……」

 

「もっと、ですか」

 

 その言葉ともに、嘉神川さんは眼前に近付いてくる。このままじゃ……! 

 

「ちょ、ちょっとストップストップ!」

 

 電車の中だというのに俺は大きな声を上げてしまう。

 

「んっ、んんんっうっうっ……げほっ、えほっ」

 

「あの~さぁ……ふたりともぉ、ウチもことぉ、忘れてない?!」

 

 寿奈桜ちゃんもだ。

 

「ああ、いたのか」

 

 俺は、すっとぼける。

 

「ふっざっけんなし! ウチの嘉神川にそれ以上近付いたら、社会的にぶっころーす!」

 

「海陵の校庭に『ルイルイ大好きー!』とか書いちゃうからね! 愛を叫んじゃうし!」

 

「ナオちゃん、楠瀬さんのことをそんなに……?」

 

 嘉神川さんは勘違いしてしまう。

 

「嘉神川!? 冗談だし!?」

 

「んなことより、電車の中で騒ぐなよ」

 

「っていうか、ふたりの間にまた何かあった!? その辺、詳しく聞かせてもらうし!」

 

「だから黙れ────」

 

 俺が注意しようとした瞬間、アラートがなる。

 

「次は、林鐘寺。林鐘寺でございます」

 

 その音に俺は小さくガッツポーズをする。

 

(ナイスッ!! 時間!!)

 

「あーっ! じゃあ放課後ルイルイんち行くし!」

 

「いや、それは嘉神川さんに……ってダメか。ゴメン、あんま詳しい話は出来ないんだ」

 

 俺に続いて嘉神川さんが俺に同意する。

 

「言えないの」

 

「まっすます、アヤシーしー!!」

 

「それよりいいのか? もう閉まるぞ」

 

「あーっ! あっぶない!!」

 

 俺の言葉で気が付いたのか、寿奈桜ちゃんたちはそそくさと降りていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 午前中の授業が終わり、やっと昼休みの時間がやってきた。と、同時にリーチが笑顔でやってきた。

 

「やあ、ルイ。お昼一緒に食べない?」

 

 いつも通り。昨日のことなどなかったようにリーチは笑顔でそう言う。

 

「あっあたしもあたしも! でもなー、学校来てまでリーチと一緒ってのもね。またリーチがシスコンとか言われちゃいそうだし」

 

 その言葉にリーチは反論する。

 

「だから僕はシスコンじゃないっての! 大体、僕がルイを先に誘ったんだからね! ユズは、誰か別の友達と食べればいいじゃん!」

 

「リーチこそ、クラス違うんだからそっちで食べればいいじゃない……って、あ、もしかして友達いない系?」

 

「そんなわけないだろ。ま、一番の親友はルイで間違いないけどね」

 

 リーチはハッキリとそう言った。

 

「!? もしかして、シスコンからBLへの転向を狙って……」

 

(なんでだよっ!)

 

「なんでだよっ!」

 

 珍しく俺の気持ちとリーチの発言が一致した。

 

「あーあー、もううるさいな……一人で食うからほっといてくれ」

 

「「ルイー!?」」

 

 結局、俺はリーチと柚莉の三人で昼食を食べた。ともあれ、俺はリーチが昨日のことを克服してくれたようで安心した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は帰りにYuKuRuに寄ることにした。店内に入るとマスターが出迎えてくれる。

 

「いらっしゃい」

 

「こんにちは、マスター」

 

「彼女、来てるよ」

 

「……え?」

 

 マスターの視線の先には、窓際の席で静かに佇む嘉神川さんの姿があった。

 

「……嘉神川さん」

 

 俺は嘉神川さんの席の方へと向かった。

 

「莉一さんから……ナオちゃん経由で連絡があって」

 

「楠瀬さんが、きっと行くだろうから……と」

 

(リーチの奴なんてことしてんだ!!)

 

「ありがとう。なんとなく、そのまま帰るのが嫌でさ」

 

「……わたしも」

 

「……そう」

 

 俺は、口では落ち着いた口調だったが、心は穏やかではなかった。

 

「……」

 

 お互い、口数は少ない。だが、今はそんな空気が心地よいとさえ思っていた。マスターの淹れたコーヒーの深い香りが、その雰囲気をさらに良いものにしていた。

 

 とても穏やかで落ち着く……色々あった後だけに、この時間が貴重なものに思えた。

 

「もう1ヶ月か……」

 

「……? なにがですか?」

 

「いや、嘉神川さんたちと出会ってさ」

 

 そう言うと嘉神川さんはクスリと笑って答える。

 

「フフ、……そうですね」

 

 そんな会話をしていると、マスターがやって来た。

 

「なんだなんだ、その縁側の老夫婦みたいな会話は」

 

「キミら、まだ高校生だろ」

 

「別に、そんなつもりはないんですが……」

 

「ノエルちゃんも、昔と違って随分と落ち着いて────」

 

「昔? この店が出来たの、まだ一年前とか聞いたんですが」

 

 マスターの言葉で疑問に思った疑問を投げてみる。

 

「ああ、俺は元々ノエルちゃんのお姉さんと知り合いでさ」

 

「余計なことは言わないでください、信さん」

 

 今まで黙って聞いていた嘉神川さんがジト目でマスターを睨んで言った。正直可愛い。ま、思っていても言わないが。

 

「う……ごめん」

 

「へぇ、嘉神川さんはお姉さんがいるのか」

 

「これがまたすごい美人でさ!」

 

 マスターが口を挟む。

 

「……信さん?」

 

「あ、ええっと……それじゃふたりとも、コーヒーお代わりでいいかな?」

 

 嘉神川さんに睨まれたマスターは逃げるようにカウンターの奥へ戻っていった。

 

「でも、嘉神川さんの家族か。たしか……お母さんはフランス人だっけ?」

 

「……はい。家族が……少し離れていた時期もあったんですが、今は一緒に暮らしています」

 

「そうか……お姉さんも、嘉神川さんに"似て"可愛いんだろうな……」

 

 あ……しまった。

 

「い、今の取り消して! 言葉のあやっていうか……」

 

「フフ……、構いませんよ」

 

 嘉神川さんはいたずらっぽく笑ってみせた。

 

「い、いや、マスターが言ってたからさ、そりゃ嘉神川さんが一番だけど、それに似て、って意味でさ!」

 

「なんだか楠瀬さん、必死です」

 

 嘉神川さんは笑いながら言った。

 

「そ、それよりも、もうこんな時間じゃないか! そろそろ帰らないと、家の人も心配するんじゃないかな?」

 

 俺は必死に話を変えようとする。

 

「ふふ、そうですね」

 

 と、二人で立ち上がろうとした瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今坂さん……前に柚莉が発作を起こした時に助けてくれた人と雑談していたら、すっかり遅くなってしまっていた。

 

「嘉神川さん」

 

「……?」

 

「……またね」

 

 出来れば送っていきたかったが、それは流石にお節介がすぎるだろう。

 

「はい」

 

 少しの未練を残して、俺は家に帰宅する。

 

 部屋について風呂に入り、少ししてからベッドに潜り込んだ。今日は……少し失言の場面もあったが、平穏な日だった。これからも、こんな日が続くといいのだが。そんなことを頭に思い浮かべながら目を閉じようとしたところで、スマホがチョコの着信を告げた。

 

{おやすみなさい}

 

 嘉神川さんも今寝ようとしていたところだろうか。凄いな、タイミング。俺は短めに返信して、目を閉じた。

 

  {今日は楽しかった。おやすみ}




今回サブタイトル銀魂っぽくしてみました。
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