Memory'sOff ─Innocent Fille─ REMAKE   作:キラトマト

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第十三話 ないよりある方がいい

 ────二日後、俺は学校へ行こうと部屋から出たところで、ほうきで掃き掃除をしている大家さん……寿奈桜ちゃんのお父さんとばったり出くわした。

 

「おはよう、楠瀬くん」

 

「おはようございます、大家さん」

 

「ああ、大家業はね、ウチの家内がやってるんだ。ボクは神職専門でね」

 

「そうなんですね。では……寿奈桜ちゃんのお父さん?」

 

「長いなぁ、それに君がウチの寿奈桜の旦那になったみたいだ」

 

 なんだか寿奈桜ちゃんのお父さんが目を細めた気がする。怖いんだけど。

 

「そうでしょうか……」

 

「まぁ、簡単に『神主さん』とか『おじさん』でいいよ」

 

「それなら……おじさんで」

 

 そしておじさんは感心したように首を振る。

 

「うんうん。ところでキミ、巫女ってどう思う?」

 

 ……はぁ? 

 

「巫女……ですか?」

 

「そう、巫女だよ。巫女さん。ほら、神社といえば巫女さんだろ?」

 

「ええ、まぁ、人によっては……」

 

「もしかしてキミ……巫女さんに興味ない人?」

 

 おじさんにかけられた言葉が冷たいナイフを首筋に突きつけられたような感覚のように思える。恐らくここで返答を誤ると即死だ。慎重に考えなくては……

 

「人並みに興味あるとは思います」

 

「そうか! そうだと思ったよ! わざわざ神社の隣の部屋を選ぶくらい────」

 

 ここから、おじさんの長〜いうんちくが始まってしまう。今日、遅刻しちゃうのかな……

 

「何やってるし!」

 

 怒声と共に、彼女は現れたのだ。

 

「何って、寿奈桜の晴れ姿を────」

 

「そんなもの、見せなくてもいいし! っていうかルイルイ、こんなのに付き合ってたら学校遅刻するし!」

 

 おじさんの言葉をバッサリと断ち切って俺に登校を促す。

 

「あ、ああ……それじゃおじさん、行ってきます」

 

 俺は一寸の躊躇いもなく受け入れる。

 

「帰ってきたら、また見せてあげ────」

 

『彼女』は実父にも容赦がなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ね、ねえ……ルイルイ」

 

「……?」

 

 どうしたのだろうか。もしかして謝ろうというのだろうか。どう考えててもあっちの方に非があるように見えたのだけど……

 

「ルイルイもその……ああいうの、好きなの?」

 

 違った。

 

「ああいうの……、ああ、巫女さんの話か。別に好きとか嫌いとか……」

 

 別に、特に思い入れがあるという訳でもない。

 

「まあ、一応見て見たくはある、かも」

 

「そ、そっか……うん、それだけ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────翌日、俺は嘉神川さんと寿奈桜ちゃんと一緒に登校することにしていた。

 

「ほらルイルイ! 早く行かないと遅刻しちゃうよ!」

 

「わ、わかってる……よ……」

 

 俺は最後の力を振り絞ってドアに入り込む。

 

 朝からこれで、今日一日持つだろうか……。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 俺が息切れを起こしていると、寿奈桜ちゃんが話しかけてくる。やめてくれ……

 

「ルイルイ、ホント体力ないよねー。剣道やってたんでしょ?」

 

「それと……これとは……別」

 

 俺は会話を交わしながら車内で時間を潰していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 浜咲では、いつものように嘉神川さんが待っていた。

 

「おっはよー、嘉神川!」

 

 寿奈桜ちゃんもいつものように快活に挨拶する。それに続いて俺も挨拶する。

 

「おはよう、嘉神川さん」

 

「おはようございます」

 

 俺たちは電車に入って会話の続きを開始する。

 

「あのさ、嘉神川って体力あるのとないのどっちがいい?」

 

 寿奈桜ちゃんは嘉神川さんに質問する。俺のことだろうか? 

 

「それは、ないよりはあった方が」

 

「だよねぇー」

 

 それを言って寿奈桜ちゃんは俺の近くに寄ってきて口を開く。

 

「ルイルイ、ほら、だってさ!」

 

「それは、俺だってそう聞かれたらあった方がいいって答えるよ」

 

 人間、なくて後悔するよりあって後悔する方が楽なのだ。誰だってそうだ。俺もそうだし。

 

「ん? あれ?」

 

「ただ、自分で体力付けるための努力をするかっていうと別の話だろ」

 

「ああ、何かと思ったらそういう」

 

 どうやら嘉神川さんは全てを察してくれたようだ。

 

「でも、嘉神川も意外と体力あるし。前はテニスもやってたし」

 

 確かにこう見えて、嘉神川さんは体力もあって運動神経もいい。

 

 この前リーチが襲われていた時だって一緒に助けたし。

 

「身体を動かすのは嫌いではありませんが……無理に走りたくもないです」

 

「そうそう。不必要に体力を使いたくないんだよ、大体、モチベーションも上がらないし」

 

 俺は嘉神川さんの意見に全面的に同意だった。

 

「不必要? モチベ? とにかくちょっと走ったぐらいでハァハァ言ってるようじゃダメだし!」

 

「あ、あぁ、そうか。今日は俺だったな。いやでも……」

 

 まぁ、今日は俺の寝坊のせいで遅れたけど……俺のせいだけど!! 

 

「でもぉ? なに?」

 

「あぁーもう!」

 

 俺が反論しようとした瞬間だった。

 

「……」

 

「……」

 

 ふたりがすっと離れていった。

 

「……? ……!」

 

 俺がその原因に直ぐに気づいた。今電車に乗り込んできた者の中に見覚えのある顔があった。

 

 あれは……確か嘉神川さんに絡んでた奴らの片割れか。二人の様子から見るに、まだ嘉神川さんと寿奈桜ちゃんの問題は解決していないのだろう。となると、今俺が二人のどちらかに声をかけるのもどちらの状況を悪化させてしまう。このまま、少し離れているしか……

 

「ん……?」

 

 嘉神川さんからちょこが来た。

 

{すみません}

 

  {気にしないで}

 

{ありがとうございます}

 

 

 

 ホントいい子だよな。だからこそ、虐めるようなやつを許せないんだけど。

 

 そんなことを考えていると、林鐘寺駅に到着した旨のアラートが鳴る。

 

 ふたりはそれぞれ、違う扉から電車を降りていく。そのとき見えたふたりの顔に、俺の心はダメージを受けていく。悲しそうにしている、ふたりの横顔が……。あまりにも酷く、俺の心に、杭を打ち付けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の晩に、嘉神川さんからちょこが届いた。

 

{明日3時に、YuKuRuで会えませんか? }

 

 明日は学校も休みだし、それに向こうから直々のお誘いだ。断るなんてそんな選択肢、俺の中にはなかった。

 

  {行くよ}

 

 それだけの短い返信をする。そして明日の準備をするために早めに眠りについた。




書いてる途中にめっちゃ凄いアイデア思い浮かんだんで、読者の皆さんが疑問に思ってるところ(クロエ・・・、とかのところ)とか、回収できそうです! 楽しみにしておいて下さい!
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