Memory'sOff ─Innocent Fille─ REMAKE   作:キラトマト

15 / 30
第十五話 準備

 YuKuRuからの帰り道、誕生日に呼ぶ人を嘉神川さんに確認することにした。

 

「それじゃ声をかけるのは……マスターと汐鐘さん、それに鈴さんは当然として……」

 

「寿奈桜ちゃんと……リーチも呼んでいいかな? あとはマスターに聞いてみるよ」

 

「お姉さんは今、日本にはいないんだよね?」

 

「はい……フランスです」

 

 それは、仕方ないな。

 

「あの……ごめんなさい。鈴さんと話していたら、なんだか面倒なことをお願いする流れになってしまって……」

 

「気にしなくっていいって。それより……」

 

「……?」

 

 言うか言わないか……。いや、ここは……! 

 

「飾り付けっていうか、そういうののデザイン、俺に任せてくれないかな」

 

「何故わたしに? 信さんに言えばいいのではないですか?」

 

「いや、誕生日会の主役は、嘉神川さんだろ? だから、聞かなきゃなって」

 

「わたしはいいですけど……」

 

「ありがとう。いやー、誕生日会とか何年ぶりなんだろ。覚えてる限りじゃ中学の時以来だからさ。楽しみだよ」

 

 それもそうだ。記憶喪失なんだから。ま、仕方ないっちゃないけど。

 

「……わたしもです」

 

 嘉神川さんがそう言ってくれたことで俺は、今までにないぐらい嬉々とした表情になった。……気がする。

 

「じゃあ俺、レイアウトとか皆誘ったりするから、また明日」

 

「はい。では」

 

 俺は彼女に別れを告げて家へと帰宅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 家に帰ってから俺は、寿奈桜ちゃんに嘉神川さんの誕生日会について連絡してみた。

 

「ってことで、手伝って貰えないか」

 

「おっけー! っていうか、ウチがやらなくて誰がやるって感じっしょ」

 

「助かるよ。俺、こういうの慣れてなくてさ、予定表とか、作るもんなのか?」

 

「んー、そこまでしなくていいんじゃない? 集まるのもみんな知り合いでしょ」

 

(よし、これでアレに集中できる)

 

「そっかぁ……それもそうだな」

 

「まぁ、マスターと汐鐘さん、それと寿奈桜ちゃんに鈴さん。それぐらいだからな」

 

「センセーも来るんだ!」

 

 電話越しに、急に寿奈桜ちゃんのテンションが上がったのがわかった。

 

「センセー……」

 

 まぁ、確かに作家って言ってたし。

 

「鈴代黎音センセー! センセーの小説、ちょー泣けるし!」

 

 興奮した寿奈桜ちゃんが教えてくれたところによると、鈴さんのペンネームが鈴代黎音。かなり人気がある……らしい。

 

 元々、寿奈桜ちゃんは鈴代黎音の大ファンだったらしい。それが、嘉神川さんのお姉さん経由で直接本人に会うことが出来て、ますます好きになったらしい。

 

「え、鈴さんってそんなすごい人だったのか」

 

「はぁ……たまにはルイルイも本を読んだ方がいいし」

 

 寿奈桜ちゃんはため息をついて呆れたような声を出す。

 

「寿奈桜ちゃんだけには言われたくなかったよ」

 

 ここからさらに、寿奈桜ちゃんの鈴代先生語りは数十分にわたって続いた。初めてサインをもらった話、進路相談に乗ってもらった話……多分、ほっといたら何時間でも話し続けるだろう。そう判断して、強引に誕生日会の話に戻す。

 

「他、誰か呼んだ方がいいか?」

 

「あ、ちょっと待って!」

 

「……」

 

 ……なんか電話越しから、ガサゴソと何かを探るような音が聞こえる。なんだ? 

 

「あの、聞こえる? あー、あー」

 

 返事がない。切るか……。俺が通話を切ろうとすると、ドアが開かれた音が聞こえる。

 

「あとは日紫喜先輩とか、声かけてみるし」

 

「う、うわぁぁあああ!」

 

 突然の来訪者に、俺は柄にもなく大きな悲鳴を上げてしまった。

 

「何驚いてるし! 幽霊じゃないっての!」

 

「い、いやいやいや、なんで人の部屋勝手に入ってんだよ?!」

 

「カギ開いてたしー。どうせなら、顔みて相談した方が早いっしょ?」

 

 さも当然のような口振りで寿奈桜ちゃんが馬鹿げたことを言う。

 

「バカか! こんな時間に男の部屋に行くとか……、それに、おじさんやおばさんが心配するだろ」

 

「あ、お母さんにはちゃんと言ってきたからへーきへーき。玄関の明かりもつけといてくれるって」

 

 なんて親なんだ……。しかも絶対明日の朝、根掘り葉掘り聞かれるんじゃないのか? 勘弁してくれよ……

 

 とりあえず、早めに終わらせよう。

 

「そんで、他はどーする? リーチさんとかゆずちゃん先輩は?」

 

「そうだな、リーチは俺から声かけてみるよ」

 

「柚莉は……ちょっと今、体調悪いみたいなんだ」

 

「えっ? そうなんだ……じゃあ、無理はしない方がいっか」

 

 感心したよ。寿奈桜ちゃんが素直に聞いてくれたことに。なにも触れずにいてくれたことに。

 

「あとはしらす……はダメか」

 

「流石に猫はダメっしょ」

 

「でも、せっかくだからすごい盛大にやりたいね!」

 

「きっと嘉神川も喜んでくれるし!」

 

「ああ、俺もそれを期待してるよ」

 

 俺は率直に、自分の考えを口に出す。なにせ、飾り付けとか色々のアイデアは、俺が出すのだから。

 

「そうだ……あの、さ……」

 

「なんだ?」

 

「ルイルイ、明後日ヒマ?」

 

「ん? あぁ、別に祝日だし、空いてるぞ」

 

「じゃあ、飾り付けとか買いに行こ。ケーキも用意しないとだし!」

 

「あぁ、そっか。その辺は予算とか決めないとな」

 

 じゃあ、明後日までには決めとかないとな。絶対……成功させてみせる。もちろん成功というのは、嘉神川さんが笑顔になること、その一点のみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は翌日、飾り付けのレイアウトを考えた。もちろん、授業は受けたけど。

 

 とりあえず、嘉神川さんの名前入れるとして……俺、絵描くの苦手だしな……

 

「なぁリーチ、誕生日会のことだけどさ、嘉神川さんの似顔絵? みたいなの描こうと思ってんだけどさ、見ての通り俺の絵の才能って、まぁ、アレじゃん?」

 

「いや、いいんじゃない? 別に、気持ちさえこもってれば、嘉神川さんも嬉しいと思うよ?」

 

 気持ちさえこもってれば……か。それもそうか、俺だっていくら不味くても、好きな人なら許してしまいそう……だ。

 

「そういうものなのか?」

 

「そうだって、絶対に喜ぶって」

 

「そうか……よし、分かった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は家に帰宅して直ぐに、勉強のことなんて考えずに、誕生日会のための準備の準備を始めた。……どうしても上手く描けない。いや、気持ちさえこもってれば、とか言ってたけど、これはあまりにも酷いだろ……

 

 まず、人としての形を成していないし、体のバランスだって無茶苦茶だ。はぁ……描き方とか分からないし……。

 

(あっ!)

 

 俺は、机の傍らに置いていたスマホを手に取って『人 描き方』と、検索する。

 

 ……ふむふむ、どうやら、俺は基本から間違っていたようだ。

 

「……よし」

 

 俺は十数枚くらいの紙を犠牲にして、自分が納得出来る絵を完成させる。

 

  {リーチ、少しいいか?}

 

 俺は一応リーチに確認をとる。

 

{どした? }

 

  {絵、完成したから見てくれないか?}

 

{おっ、早いな。じゃ、早速送ってくれよ}

 

 俺は送り方が分からなかったので、また検索に頼ることにした。カメラで撮って、それを送るだけなのだが、こんなにもややこしいとは……

 

  {画像}

 

  {どうだ?}

 

{おっ、いいじゃん。これだったら、喜ぶと思うぞ?}

 

  {分かった。ありがとう。それと、これは秘密

 

  だからな}

 

{わかってるわかってる。それじゃ、おやすみ}

 

  {うん、おやすみ}

 

 俺はそんな短い文章で、会話を終えて、睡眠をとる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、ルイルイこっちこっち。遅いよー」

 

 お昼を食べてから、ということで、寿奈桜ちゃんとは駅前に二時に待ち合わせをしていた。

 

「3分ぐらい遅れたか。悪い」

 

 どうやら遅れたようだ。一応謝っておいた。

 

「違うし! ウチが15分前に来てたから、20分ぐらい待ったし!」

 

「……それ、俺のせいなのか? というか、ひとつ聞いていいか」

 

「え? ウチの私服可愛い?」

 

 聞き違いも大概にしてくれ……全く。

 

「それにしても、なんで駅前で集合なんだ?」

 

「もー、ルイルイは女ゴコロ、分かってないなー。そんなんじゃ嘉神川にもフラれちゃうぞ?」

 

 ……少し、いやかなりイラッときた。

 

「とりあえず、今日の寿奈桜ちゃんが"無駄"にテンションが高いのは理解した」

 

「無駄ってなんだし! あ、ほら、モノレール来ちゃう!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。