Memory'sOff ─Innocent Fille─ REMAKE 作:キラトマト
YuKuRuからの帰り道、誕生日に呼ぶ人を嘉神川さんに確認することにした。
「それじゃ声をかけるのは……マスターと汐鐘さん、それに鈴さんは当然として……」
「寿奈桜ちゃんと……リーチも呼んでいいかな? あとはマスターに聞いてみるよ」
「お姉さんは今、日本にはいないんだよね?」
「はい……フランスです」
それは、仕方ないな。
「あの……ごめんなさい。鈴さんと話していたら、なんだか面倒なことをお願いする流れになってしまって……」
「気にしなくっていいって。それより……」
「……?」
言うか言わないか……。いや、ここは……!
「飾り付けっていうか、そういうののデザイン、俺に任せてくれないかな」
「何故わたしに? 信さんに言えばいいのではないですか?」
「いや、誕生日会の主役は、嘉神川さんだろ? だから、聞かなきゃなって」
「わたしはいいですけど……」
「ありがとう。いやー、誕生日会とか何年ぶりなんだろ。覚えてる限りじゃ中学の時以来だからさ。楽しみだよ」
それもそうだ。記憶喪失なんだから。ま、仕方ないっちゃないけど。
「……わたしもです」
嘉神川さんがそう言ってくれたことで俺は、今までにないぐらい嬉々とした表情になった。……気がする。
「じゃあ俺、レイアウトとか皆誘ったりするから、また明日」
「はい。では」
俺は彼女に別れを告げて家へと帰宅した。
家に帰ってから俺は、寿奈桜ちゃんに嘉神川さんの誕生日会について連絡してみた。
「ってことで、手伝って貰えないか」
「おっけー! っていうか、ウチがやらなくて誰がやるって感じっしょ」
「助かるよ。俺、こういうの慣れてなくてさ、予定表とか、作るもんなのか?」
「んー、そこまでしなくていいんじゃない? 集まるのもみんな知り合いでしょ」
(よし、これでアレに集中できる)
「そっかぁ……それもそうだな」
「まぁ、マスターと汐鐘さん、それと寿奈桜ちゃんに鈴さん。それぐらいだからな」
「センセーも来るんだ!」
電話越しに、急に寿奈桜ちゃんのテンションが上がったのがわかった。
「センセー……」
まぁ、確かに作家って言ってたし。
「鈴代黎音センセー! センセーの小説、ちょー泣けるし!」
興奮した寿奈桜ちゃんが教えてくれたところによると、鈴さんのペンネームが鈴代黎音。かなり人気がある……らしい。
元々、寿奈桜ちゃんは鈴代黎音の大ファンだったらしい。それが、嘉神川さんのお姉さん経由で直接本人に会うことが出来て、ますます好きになったらしい。
「え、鈴さんってそんなすごい人だったのか」
「はぁ……たまにはルイルイも本を読んだ方がいいし」
寿奈桜ちゃんはため息をついて呆れたような声を出す。
「寿奈桜ちゃんだけには言われたくなかったよ」
ここからさらに、寿奈桜ちゃんの鈴代先生語りは数十分にわたって続いた。初めてサインをもらった話、進路相談に乗ってもらった話……多分、ほっといたら何時間でも話し続けるだろう。そう判断して、強引に誕生日会の話に戻す。
「他、誰か呼んだ方がいいか?」
「あ、ちょっと待って!」
「……」
……なんか電話越しから、ガサゴソと何かを探るような音が聞こえる。なんだ?
「あの、聞こえる? あー、あー」
返事がない。切るか……。俺が通話を切ろうとすると、ドアが開かれた音が聞こえる。
「あとは日紫喜先輩とか、声かけてみるし」
「う、うわぁぁあああ!」
突然の来訪者に、俺は柄にもなく大きな悲鳴を上げてしまった。
「何驚いてるし! 幽霊じゃないっての!」
「い、いやいやいや、なんで人の部屋勝手に入ってんだよ?!」
「カギ開いてたしー。どうせなら、顔みて相談した方が早いっしょ?」
さも当然のような口振りで寿奈桜ちゃんが馬鹿げたことを言う。
「バカか! こんな時間に男の部屋に行くとか……、それに、おじさんやおばさんが心配するだろ」
「あ、お母さんにはちゃんと言ってきたからへーきへーき。玄関の明かりもつけといてくれるって」
なんて親なんだ……。しかも絶対明日の朝、根掘り葉掘り聞かれるんじゃないのか? 勘弁してくれよ……
とりあえず、早めに終わらせよう。
「そんで、他はどーする? リーチさんとかゆずちゃん先輩は?」
「そうだな、リーチは俺から声かけてみるよ」
「柚莉は……ちょっと今、体調悪いみたいなんだ」
「えっ? そうなんだ……じゃあ、無理はしない方がいっか」
感心したよ。寿奈桜ちゃんが素直に聞いてくれたことに。なにも触れずにいてくれたことに。
「あとはしらす……はダメか」
「流石に猫はダメっしょ」
「でも、せっかくだからすごい盛大にやりたいね!」
「きっと嘉神川も喜んでくれるし!」
「ああ、俺もそれを期待してるよ」
俺は率直に、自分の考えを口に出す。なにせ、飾り付けとか色々のアイデアは、俺が出すのだから。
「そうだ……あの、さ……」
「なんだ?」
「ルイルイ、明後日ヒマ?」
「ん? あぁ、別に祝日だし、空いてるぞ」
「じゃあ、飾り付けとか買いに行こ。ケーキも用意しないとだし!」
「あぁ、そっか。その辺は予算とか決めないとな」
じゃあ、明後日までには決めとかないとな。絶対……成功させてみせる。もちろん成功というのは、嘉神川さんが笑顔になること、その一点のみだ。
俺は翌日、飾り付けのレイアウトを考えた。もちろん、授業は受けたけど。
とりあえず、嘉神川さんの名前入れるとして……俺、絵描くの苦手だしな……
「なぁリーチ、誕生日会のことだけどさ、嘉神川さんの似顔絵? みたいなの描こうと思ってんだけどさ、見ての通り俺の絵の才能って、まぁ、アレじゃん?」
「いや、いいんじゃない? 別に、気持ちさえこもってれば、嘉神川さんも嬉しいと思うよ?」
気持ちさえこもってれば……か。それもそうか、俺だっていくら不味くても、好きな人なら許してしまいそう……だ。
「そういうものなのか?」
「そうだって、絶対に喜ぶって」
「そうか……よし、分かった」
俺は家に帰宅して直ぐに、勉強のことなんて考えずに、誕生日会のための準備の準備を始めた。……どうしても上手く描けない。いや、気持ちさえこもってれば、とか言ってたけど、これはあまりにも酷いだろ……
まず、人としての形を成していないし、体のバランスだって無茶苦茶だ。はぁ……描き方とか分からないし……。
(あっ!)
俺は、机の傍らに置いていたスマホを手に取って『人 描き方』と、検索する。
……ふむふむ、どうやら、俺は基本から間違っていたようだ。
「……よし」
俺は十数枚くらいの紙を犠牲にして、自分が納得出来る絵を完成させる。
{リーチ、少しいいか?}
俺は一応リーチに確認をとる。
{どした? }
{絵、完成したから見てくれないか?}
{おっ、早いな。じゃ、早速送ってくれよ}
俺は送り方が分からなかったので、また検索に頼ることにした。カメラで撮って、それを送るだけなのだが、こんなにもややこしいとは……
{画像}
{どうだ?}
{おっ、いいじゃん。これだったら、喜ぶと思うぞ?}
{分かった。ありがとう。それと、これは秘密
だからな}
{わかってるわかってる。それじゃ、おやすみ}
{うん、おやすみ}
俺はそんな短い文章で、会話を終えて、睡眠をとる。
「あっ、ルイルイこっちこっち。遅いよー」
お昼を食べてから、ということで、寿奈桜ちゃんとは駅前に二時に待ち合わせをしていた。
「3分ぐらい遅れたか。悪い」
どうやら遅れたようだ。一応謝っておいた。
「違うし! ウチが15分前に来てたから、20分ぐらい待ったし!」
「……それ、俺のせいなのか? というか、ひとつ聞いていいか」
「え? ウチの私服可愛い?」
聞き違いも大概にしてくれ……全く。
「それにしても、なんで駅前で集合なんだ?」
「もー、ルイルイは女ゴコロ、分かってないなー。そんなんじゃ嘉神川にもフラれちゃうぞ?」
……少し、いやかなりイラッときた。
「とりあえず、今日の寿奈桜ちゃんが"無駄"にテンションが高いのは理解した」
「無駄ってなんだし! あ、ほら、モノレール来ちゃう!」