Memory'sOff ─Innocent Fille─ REMAKE 作:キラトマト
「ん? どうしたんだ、嘉神川さん?」
俺は心配になって嘉神川さんに声をかける。
「……いえ、少し」
「ナオのことでしょ?」
お京さんがつけ加える。
「あぁ……そのことですか……」
「どうしたの、ルイ」
「まさか浮気? ダメだぞ?」
りりす姉さんが軽口を叩く。
「姉さんは黙って嘉神川さんと喋ってて」
姉さんは俺の意図を察したのか、嘉神川さんを連れて場所を移す。
「ああ、寿奈桜ちゃんのことだったな、実は────」
俺はリーチと志緒兄さんに、まだ寿奈桜ちゃんが来ていないこと。ケーキの予約も寿奈桜ちゃんがしてくれているので、このままだと困るということを伝えた。もちろん、姉さんたちとの話で盛り上がっている嘉神川さんには聞こえないように、だ。
「あー、まさか……」
話を聞き終わったリーチは、何かを察したような言葉を発する。
「ん……? 何か知ってるのか?」
「いや……ここに来る途中、駅前で寿奈桜ちゃんを見かけたんだ。その時さ────」
そこまで聞いた時点で、恐らく俺の嫌な予感が当たっているだろうことは察していた。
「もしかして、誰かと一緒だった、か? 例えば同じ制服の子、とか」
リーチは、無言で頷いた。
「その時、寿奈桜ちゃんちょっと困った顔をしてた、とか」
またもやリーチは、無言で頷いた。
──確信した。寿奈桜ちゃんは嘉神川さんに学内での友人はいないと言っていた。つまり、共通の友人に準備を手伝ってもらうというのはありえない。そして、これはまだ確定は出来ないが、恐らく寿奈桜ちゃんと一緒にいるのは、この前の女子3人だろう。それを加味した上で、寿奈桜ちゃんは抜け出せない状況にある。となると、俺に出来ることは……
「累」
「あぁ、わかってるよ兄さん。探すに決まってる。リーチ、手伝ってもらえるか」
「オーケー、任せてよ」
「じゃあ兄さんは、嘉神川さんを心配させないようにしていてくれないか?」
「もちろんだ」
ふたりとも、即答だった。やはり、頼りになるというものだ。
「お京さん、少し出てきます」
「了解。ナオの方が早く来たら連絡するよ」
「お願いします」
嘉神川さんに気づかれないように気を付けつつ、リーチと外に出た。
「とりあえず、リーチが見かけたって辺りに行ってみよう」
「わかった」
寿奈桜ちゃん、せめて連絡取れる状況にあればいいんだが……
────リーチに連れてこられたのは、駅前の通りの近くだった。リーチもこの辺で、プレゼントを探していたらしい。
「僕が見かけたのは、そこのお店の前だったんだけど……」
「ちょっとこの辺の店、手分けして探してみよう」
「了解。その辺のカフェにでもいてくれるといいんだけど」
────だが、寿奈桜ちゃんの姿は見当たらなかった。
もう、どこかへ移動してしまったのだろうか。YuKuRuからも、まだ連絡は無い。
「ルイ、そっちは?」
「いなかった。一応寿奈桜ちゃんの家にも連絡してみたけど、まだ帰ってないようだった」
「リーチ、スマホで分かったりしないのか?」
「寿奈桜ちゃんのスマホのGPS情報とか分かればだけど……事前に仕込んでない限り無理じゃないかな」
「あとは……寿奈桜ちゃんがSNSとかに写真アップしてくれてれば、その位置情報でいけるかも」
……怖い。が、そんなことで使うことを渋っている場合じゃない。使えるものはなんでも使う。
「寿奈桜ちゃんのちょこのタイムラインも更新されてないしな……」
「え、寿奈桜ちゃんって毎日それやってるのか?」
「うん、そうみたい。でも、今日は投稿されてなかった」
寿奈桜ちゃんの方が更新されていない……。なら……!
「逆に寿奈桜ちゃんの友達の方から調べたりできないのか?」
「なるほど、フォロワーから調べるってことか。ちょっと待ってて」
リーチはすぐに寿奈桜ちゃんのちょこを確認してくれて、でもフォロワーの数が多すぎて絞りきれないという状況に陥っていた。
「せめて、その友達連中のアカウントでもわかればね……」
嘉神川さんに絡んでいた連中が、確か名前呼んでた気が……
「美咲……だった、と思う」
「ミサキ……ミサキ……」
リーチが探していると、どうやらそれらしきものを見つけたようだ。
「★33Ki★……もしかして、これかな」
語呂合わせかぁ……
「……ビンゴ! 今、この辺のカラオケボックスにいるみたいだ。店名も写真もあがってる。この、隅で小さくなってるの、寿奈桜ちゃんじゃない?」
グレイト! 最っ高だ!
「間違いない! 他に写ってるふたりも前に見た事がある。急ぐぞ!」
俺はリーチと共に、例のカラオケボックスの前までやってきた。
「そこの店だね。前に来たことあるけど、部屋の扉に窓が付いてて、部屋の中が見えるタイプのところだ。だから、探せば直ぐに見つかると思う」
「ただ……これでルイが乗り込んでいくと、バレた時に後で色々面倒なことになりそうだよね。あの子たちに顔割れてるわけだし」
そうか。そういえば嘉神川さんを彼女とか目の前で言ったんだっけな。
「分かった。リーチに任せる……けど、何か策があるのか?」
「こう見えて、僕も結構頭脳派なんだよ。多分、10分もしないうちに寿奈桜ちゃんが出てくる。そしたら連れてって」
「分かった。任せる」
ここは、リーチを信じて任せるとするか。
「なんだかワクワクするな~じゃ、行ってくるね~」
────リーチの言葉通り、丁度10分後──。
「ルイルイ……!」
「寿奈桜ちゃん! 無事だったか?!」
カラオケボックスに入口から、何度も後ろを振り返るようにして寿奈桜ちゃんが出てきた。
「え……う、うん……別に、いじめられてたとかじゃないし。ただ、美咲たちに帰らせてもらえなかっただけで……」
やはり、予想通りだったようだ。
「嘉神川さんの誕生日……いや、だからこそか」
「……ごめん」
「ウチが弱いから……だから……」
「寿奈桜ちゃんが不在だと、嘉神川さんが悲しむ。だから、来てくれるだけでいい」
「……うん」
まだ涙を拭いきれない寿奈桜ちゃんを連れて、YuKuRuへ急いだ。