Memory'sOff ─Innocent Fille─ REMAKE   作:キラトマト

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第十八話 誕生日会の開始!!

「ごめん! 遅くなったし!」

 

「ナオちゃん……」

 

「ホントごめん、ウチ、ケーキの注文忘れてて、それで遅くなっちゃって」

 

「ううん……大丈夫」

 

 嘉神川さんのことだ。俺たちがいなかった理由、寿奈桜ちゃんがいなかった理由、おそらく察しているだろう。だが、それを表には出さない。彼女はそういう子だ。最近は、そういうことも分かるようになってきた。

 

「来てくれてありがとう、ナオちゃん」

 

「あ、あったり前だし! 嘉神川祝うのに、ウチがいなくちゃはじまらないっしょ!」

 

「よーし、それじゃケーキとおまけの寿奈桜ちゃんも来たことだし、改めて乾杯といくか!」

 

 信さんがみんなに合図を出す。

 

「おまけ扱いすんなし!」

 

「未成年組はジュースで、ね」

 

 お京さんが場を仕切り直す。

 

「……っぷはー、やっぱ原稿上げたあとの一杯はサイコーだな!」

 

「って、姉貴もう飲んでんのかよ!?」

 

「流石センセー、オトナのオンナは違う!」

 

 寿奈桜ちゃんが尊敬の眼差しを向ける。

 

「では……みなさんを代表して私、久世奏波が乾杯の音頭をとらせて頂きます」

 

「うんうん……ってぇ! なんで久世さんがここにいるんですか!?」

 

「たまたま通りかかったら、ノエルちゃんが貸切の店に入っていくじゃない? これは何かあると思って」

 

「はぁ……相変わらず滅茶苦茶な人だ……」

 

「うふふ……とても賑やかな集まりですね」

 

「でしょー? トモちゃんとかも来れば良かったのにー」

 

「というわけで、嘉神川ノエルさんの16歳の誕生日を祝って、か────」

 

「かんぱーい!」

 

 久世さんのコールを遮って寿奈桜ちゃんが満面の笑みを浮かべる。

 

 その乾杯のかけ声で、楽しい楽しい最っ高の夜が始まった。

 

「ぐぬ……いいとこだけ取られた」

 

「だって、そこは親友のウチの仕事だし? ところでモデル足りてないって話、まだあります?」

 

「ウチも色々考えたんですけど、その、やってみてもいいかなって────」

 

「え? あ、いえ、あなたは別に……」

 

 ……ドンマイ。何となくそんな気はしてたけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「楠瀬さん……あの……ありがとうございました」

 

 嘉神川さんが、"俺"個人に感謝を述べてくれる。

 

「あ、あぁ、準備なら、みんなも手伝ってくれたからね」

 

 俺は照れ隠しで、みんなもやってくれた、ということを言う。

 

「いえ、多分、それだけじゃなくて……」

 

「ほらほら、今日は嘉神川さんが主役なんだからさ、そんな難しい顔しないで」

 

「わたし、いつもと変わらないつもりですけど……」

 

「そ、そう、かな?」

 

「……嘘です」

 

「とっても、嬉しい日ですから」

 

 と、言葉を続ける嘉神川さん。

 

 その笑顔が、俺には何よりも眩しいものに見えた。

 

「さーて、ここでスペシャルゲストだ」

 

 信さんが言っていたアレか……誰だろう? 

 

「誰だろう? 嘉神川さん聞いてる?」

 

「いえ、なにも……」

 

 どうやら、嘉神川さんも知らないようだ。

 

「残念ながらその人は、今はちょっと遠くにいるので来られません。代わりに、電話が繋がっています。スピーカーにしたから、みんな静かにー」

 

『こんにちは、じゃなくて……こんばんは』

 

「……!」

 

 嘉神川さんは何かに気付いたように声を上げる。

 

『お誕生日おめでとう、ノエル』

 

「おねえちゃん……?」

 

 嘉神川さんが声を上げる。

 

「え、嘉神川さんの?」

 

『嘉神川クロエです。みなさん、こんばんは。妹がお世話になってます』

 

『どう? 私の妹、可愛いでしょ? まだ小学生だった頃、うろちょろ私の後ろついてきた動画とか、みなさんにも見せてあげたい────』

 

「会長……」

 

 志緒兄さんは頭を抱える。

 

「……? 兄さん?」

 

「ちょ、ちょっとおねえちゃん! そういうのは!」

 

「どうしたの? ノエルがはじめて書いたパパの似顔絵の話とか、みんなに教えてあげようと思ったんだけど。あれも可愛かったわよね~」

 

「やーめーてー!!」

 

 嘉神川さんは顔を真っ赤にして止めようとする。

 

 ……正直もっと続けていて欲しかった。だが、楽しい時間はあっという間に過ぎていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして時は過ぎる。明日まで。

 

「昨日はすごかったし! あんだけ人集まるのも嘉神川のジンボーって奴?」

 

 寿奈桜ちゃんは、まだ昨日の嘉神川さんの誕生日会の興奮が冷めやらぬようだ。朝から、いつも以上にテンションが高い。

 

「確かに……まあ、久世さんまで来るとは思ってなかったけどね」

 

「双海さんとは、嘉神川さん随分仲良くなってたみたいだね」

 

「はい……少し、境遇とか似ているところもあって」

 

 どうやら、双海さんも幼い頃から海外に住み慣れていたせいで、来日当初は、日本での暮らしにだいぶ苦労したらしい。

 

「そうだ、ルイルイ、兄さんとか言ってたけど、どういうカンケーなの? まさか……」

 

 勘違いしてるな……絶対。

 

「違ぇよ。俺の育ての親、みたいな感じだ」

 

 あまり詳細な情報は教えられないので、寿奈桜ちゃんには簡単に説明する。

 

「あっ、そうだ! ルイルイ、誕プレ何あげたの?」

 

「あ……」

 

 やってしまった。

 

「……」

 

 嘉神川さんは驚いたような表情を浮かべている。

 

「え……まさか……」

 

「ごめん……ごめんなさい……」

 

 俺は素直に自分の非を認めて頭を下げる。

 

 最悪だ……。折角嘉神川さんが期待してくれていたはずなのに、俺は……。俺は恐る恐る嘉神川さんにお伺いを立ててみる。

 

「あの、嘉神川さん。もし良かったら……良かったらでいいんだけど……今日の放課後、空いてるかな?」

 

「嘉神川さんの好みとか、あまりよく分からなくて……その、一緒に探す、とか出来ないかな?」

 

 一瞬の静寂の後に、嘉神川さんはニッコリと微笑んで答えてくれた。

 

「……はい」

 

 マジか!? 怒って、ないのか? 嘉神川さん……! 

 

「あーっ! 何それ! 漫画にあった『デートに誘うテクニック』じゃん!」

 

「いやそんなテクニック知らないんだけど」

 

「大体、な~に嘉神川も嬉しそうな顔してんの!? 忘れられてて上手く誤魔化されてるってことだし!」

 

「いや、そんなつもりは……」

 

 本当だ。まず、デートに誘うのにそんな回りくどい、しかも相手を傷つけるような真似、絶対にしたくない。

 

「ナオちゃん、そんなわけないでしょ? それに……わたしは昨日来てくれただけで、嬉しかったので……」

 

 おお、やっぱり嘉神川さんは分かってくれているんだな。

 

「あー……もー……。わかったわかった! デートでもなんでも勝手にすればいいし!」

 

 寿奈桜ちゃんは不貞腐れる。

 

「ただし、門限はちゃんと守ること! 遅くなる時は連絡入れる!」

 

「なんで寿奈桜ちゃんが親みたいなこと言ってるんだ」

 

「だって、ウチは嘉神川の保護者だしー」

 

 良かったね嘉神川さん、また一人、鈴さんに続いて親が増えたね。まぁ、そんなことは置いておいて、だ。

 

 ふたりが仲良くしているのは微笑ましい。

 

 

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