Memory'sOff ─Innocent Fille─ REMAKE   作:キラトマト

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第二十五話 女子高に男子が何故?! 解答編

「つまり、『クリスマスの集い』のこと以前にも、色々大変だったわけだ」

 

「まあ、俺より嘉神川さんと寿奈桜ちゃんの方が大変だっただろうけどな」

 

 テスト期間も終わって落ち着きを取り戻した教室で、俺はリーチにこれまでのことを話していた。黙って俺の話を聞いていたリーチは、大きなため息を漏らして言った。

 

「あのなぁ……前にも言ったけど、何でも頼っていいんだよ? その件についてでも、別のことでも……僕だって、ナオちゃんや嘉神川さんも知らない仲じゃないんだからさ」

 

 そういえば言っていた気がする……

 

「ごめん。最近は余裕が無くってな。反省する」

 

「別に謝ることなんてないよ。でも、そうやって周りが見えなくなるとかルイにしては珍しいね」

 

 リーチは少し間を開けて言う。

 

「これも愛のなせる技……かな?」

 

「あーちょっと喉乾いたし自販機でも行くかー」

 

 俺は慌てて話を切り替える……が。

 

「あらら、図星だったか……。いつもならすぐ否定するのにこの誤魔化しよう。その反応だけでも大きな一歩だよ、ルイ。すごい進化だ!」

 

 いくらなんでも大袈裟すぎるだろ、と思ったものの、客観的に見ればそうなのかもしれない……そう思って納得する。

 

「でもさ、実際問題として、ナオちゃんと嘉神川さんのその……いじめみたいなものは、結局まだ解決してないんだよね」

 

 流石だな。俺の親友は、言いたいことは話す前に分かってくれる。

 

「そこなんだ。嘉神川さんは、自分でなんとかするようだけど……」

 

 不安、心配、今の俺の感情の大半は、この二つによって占められていた。

 

「でも、ルイとしては心配で仕方ない。どうにかしてあげたい。それも、できれば自分の手で」

 

 できれば、ではなく絶対、なんだけどな。というか、俺の思考でも読んでいるのか? と、時々思っているが、今回のは顕著だ。

 

「……聞きたいんだけどさ、今の俺ってそんなに分かりやすいのか?」

 

「人間らしい、という意味じゃ正しんじゃないかな。今までのルイは、良くも悪くもヒールだったからね。僕やユズたち以外の人に、干渉しようとしなかった」

 

 失礼な。兄さんや姉さんのお陰でそこそこ社交的なはずなんだぞ、俺は。

 

「これも大きな進化だね」

 

 進化……か。他人の心の鍵を開けて、しかもそれで弱らせることがか? 干渉しすぎて相手をもっと追い詰めることがか? 勝手なことを言って期待させることがか? そんなもの────

 

「ルイは難しく考えすぎなんだよ」

 

 リーチの言葉で俺はかなりネガティブな思考に偏っていたことに気付く。

 

「そう、だな。考えすぎだよな……でも今回は、考えても考えても、案が出てこないんだよ。せめて同じ学校だったら、何とか出来たかもしれないのにな」

 

 出来ないことを言っても仕方がないが……。

 

「向こうは女子校だからねぇ。もしも忍び込んだりしたら、大変なことになるよ」

 

「そんなことはしないけど、でも寿奈桜ちゃんに委ねたりしたら、最悪次のターゲットが寿奈桜ちゃんにされかねない」

 

 第一、寿奈桜ちゃんがこちらの要望に沿って行動をしてくれるとは、到底思えない。絶対、別のトラブルを抱えて戻ってくる。

 

 かといって……。

 

「学校外で解決するというのも難しい。直接会って会談したところで、また隠れてするに決まっている。……聞き分けがいい子とは思えないし、却って悪印象にしかならないだろうな」

 

 それに、前に彼女宣言しちゃったし……。

 

「それはそうだね。もしも『彼氏が文句言ってきた』なんて取られれば、余計な混乱すら招く」

 

 多分もう取られてるんだけどな。まぁ、リーチにはあの事は言ってないけど……。ま、いずれにしてもそう単純に解決できる話ではない。……いくら清廉潔白な人物であっても悪評は絶えない。兄さんの言葉だ。いくら嘉神川さんに事情があろうとも知ろうとしない。そんな奴らに耳を傾けるのは時間の無駄だ。そんなことをするくらいなら、彼女は失ってしまった自分自身を取り戻すべきだと、俺は思う。そのために……

 

「どうしたものか……」

 

「おや? 『彼氏』ってとこは、否定しないんだね」

 

 リーチはニヤニヤとこちらに目線を合わせてくるが、今はそんなことをしている暇はない。……まあ、否定はしないけどな。

 

「そんなことより、あれからなにか思いついたのか?」

 

 俺が問うと、予想通りの回答を返してくれた。

 

「うん。実はふたついい方法を思いついた。ひとつは簡単な方法だけど、効果は人任せ。もうひとつは、ルイ自身も大変だしリスクもあるけど、大きな効果が望めるかもしれない」

 

 言い終わると、リーチは俺に『どっちがいい?』と聞いてきた。

 

「俺に出来ることならなんでもする。分かるだろ? つまり──」

 

「両方だ」

 

 俺は導き出せる範囲の中で最高の決断を下した。この選択が、より良い結末を迎えられるよう、そう願って……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……? 確かに、何でもする、とは言った。でもさぁ……これは流石に……。放課後。俺とリーチ、それと生徒会長の相葉さん。三人で林鐘寺"女子高校"を訪れた。明らかに制服が違うこと、そして何より男子生徒ということで、林女の生徒たちからの視線が痛い。……どうしてこうなった?! 

 

「ねぇルイ、こういうのって、客寄せパンダって言うのかな」

 

 例えが酷い……。

 

「パンダは喜ばれるけど、俺たちは特に歓迎されていないようだな」

 

 ……嘉神川さんのいじめ問題を解決する方法としてリーチが提案した作戦の一つが、この林女潜入作戦だった。

 

「ふふっ。男子生徒に群がる女子高生、というのは夢だったようね」

 

 相葉さんは相葉さんで発送がエグいし……。大丈夫なのだろうか……? 

 

「怖いもの見たさで集まってくる子、っていうのもいるんじゃないかな」

 

 誰が怖いものだ。

 

「三城くんは、そんな女子に囲まれて嬉しいの?」

 

 ──リーチは、ここに来てからずっとニコニコしたままだ。シスコンとはいえ、人並みに可愛い女の子には興味津々なので、楽しくて仕方ないといった顔だ。だが……。

 

「そもそも俺たちは女の子と遊ぶために来たわけじゃないですから」

 

 あくまでも俺たちの目的は、嘉神川さんの問題解決だ。

 

「そうそう。お仕事お仕事」

 

「……本当に、大丈夫かしら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 林鐘寺女子高校はカトリック教会系のミッションスクールで、それなりの歴史を持っているらしい。あまり宗教に関しては勉強しないので分からないが。そんな上品で、風格さえも感じさせる校舎を、相葉さんに先導されて、生徒会室を目指す。と、その時だった。

 

 前から歩いてくる女子たちに、見覚えがあった。……間違いない。あの美咲とかいう女子の取り巻きの連中。林女に来るにあたって、見つかってはいけないふたり。だが……

 

「「……」」

 

 ふたりは、こちらの方をちらりと見ただけで、そのまま行ってしまった。

 

(ふぅ……)

 

 俺が心の中で安堵の声を漏らす。そして、それを知ってか知らずかリーチが……。

 

「大丈夫。変装は完璧だよ。なんたって僕が仕上げたんだからね」

 

 ……自分の妹に変装する奴に言われると安心感が違うな。これなら、嘉神川さんや寿奈桜ちゃんに見つかっても大丈夫かもしれない。

 

「信じるぞ。その言葉、あんだけ時間かけたんだ────」

 

「え……? 楠瀬、さん?」

 

 驚いた顔の嘉神川さんが俺の名を呼んだ。

 

「あっ……」

 

 やってしまった。何回目だよッ!? 嘉神川さん絡みでミスするのは! 

 

「んっ、んっ……誰だ? 楠瀬、というのは……」

 

 俺は咳払いをして、他人ということをアピールするために声を変える。……が。

 

「楠瀬、さんですよね? こんなところで……」

 

 無駄だったようだ。せめて口止めでも……

 

「あー……しー」

 

「しー?」

 

 このままじゃ埒が明かないッ! と、いうことで、どうする……? 

 

「はぁ……」

 

 ────俺は考えた末、嘉神川さんの手を引いて廊下の隅へと引っ張った。

 

 ……幸い、先程のふたり組はもう近くにはいないようだ。

 

(あっぶね!! ってか、もう手遅れじゃ……)

 

「おい、早速見破られたぞ」

 

 俺はリーチに愚痴をこぼす。

 

「嘉神川さんだからセーフだよね」

 

(……嘉神川さんだからこそアウトなんだよ!!)

 

「眼鏡なんてしてるからまさかとは思いましたが……もしかしてお化粧も?」

 

 嘉神川さんからの視線がよりいっそう刺さる。

 

「ふ……不本意ながら」

 

 そんな俺を見て彼女は少し怒ったように問い詰めてくる。

 

「それで、なぜ皆さんがここに」

 

「さ、サプライズのつもりが、いきなり見つかってしまったわね」

 

「別にサプライズでは……。これから言おうと思ってただけなんです」

 

 もしも事前に言っていたのなら反対されていたことだろう。よし……

 

「実は『クリスマスの集い』の準備でしばらくこっちに通うことになったんだ」

 

「お久しぶり。今度は私たちがお邪魔させてもらうわね」

 

「どういうこと……でしょうか?」

 

 流石に、嘉神川さんも困惑を隠せないようだ。なので、まだ事情を飲み込めない様子の嘉神川さんに、俺は事情を説明した。

 

 同じ地域の海陵と林女は昔から交流があって、この前の文化祭に林女の生徒が来たように、今回は、こちらが『クリスマスの集い』の準備のためにこちらに来た、ということを。ちなみに、ここの催し物には珍しいものがあって、『懺悔室』というものがあるらしい。と言っても本格的なものではなく、所謂ラジオのお悩み相談コーナーのような、神父様の代わりにシスターがアドバイスをくれる、というもののようだ。……てか、今思い出したんだが、兄さん昔ラジオのお悩み相談で何回か採用されたって言ってたよな……凄くないか!? なんて話は置いておいて、だ。ここから先は嘉神川さんにあえて伝えなかった。

 

 もし俺だと知れ渡れば、嘉神川さんはまた酷い扱いを受けるのは想像に難くない。だからこそ、嘉神川さんには知られたくなかった。過去のことを悔やんでも仕方ない。なので、今回はあくまで仕事でたまたま、ということにした。したのだが……察しのいい彼女のことだ。

 

 恐らく、バレていることだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういうわけで、これから数日よろしくね」

 

「……分かりました。生徒会のお仕事であれば、仕方ありません」

 

 ちなみに、と嘉神川さんは言葉を続ける。

 

「ナオちゃん箱のこと、知ってたんですか?」

 

「あ……いや……」

 

 実は知っているのだ。作戦が決まったあと連絡したから。ホントに俺、誤魔化すのが下手だな……。

 

 苦笑してその場を丸く収めようとした俺を、嘉神川さんがじっと見つめてきた。

 

「楠瀬さん、後でお話があります」

 

(バレたな……どうしたものか……誘われた以上、断ったり行かないなんて選択肢はないし……)

 

 よし、今、今だけは嘘を貫き通そう。すると、相葉さんが察してくれたのか俺たちの本来の目的を思い出させてくれる。

 

「ふたりとも行くわよ。先方をあまり待たせるわけにはいかないわ」

 

 俺は大きくため息を漏らした嘉神川さんを残して、相葉さんたちと生徒会室へと急いだ。

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