Memory'sOff ─Innocent Fille─ REMAKE 作:キラトマト
「さーて、女子高生たちが待ってるよ!」
「そのセリフ、録音して校内放送で流してもいいか?」
正直キモかったので言ってやった。
「ルイ、僕は君を親友だと親友だと信じてる……て、それより、思ってたより作業大変だね。これで周りに女の子たちいなかったら、やってられないよ」
そう言って大きくため息を漏らすリーチ。あきれる……ホントに。
「リーチ、俺たち何しに来てるかわかってるよな」
俺はリーチに再確認する。
「分かってる分かってる。そうやって仕事を通してここの子と仲良くなって、嘉神川さんたちのことを聞くって作戦だよ。そもそも僕は女子に興味なんかないからね」
……そうか、リーチはシスコンだったな! と、言ってやりたい。
「想像していたより作業が大変なのは問題だな。他所の様子を見る余裕が無いからな……」
「日紫喜さんの方で上手くやってくれるといいんだけどね」
チャペルに入ったが、予想より内装は豪華で、イエスの磔などや、ステンドガラスなどの宗教っぽいものが沢山置いてあった。
「あら、今日も手伝ってくれるのね、ありがとう」
シスターが俺に感謝の意を伝える。
「昨日の続き、ですよね?」
「ええ。何か分からないことがあったら聞いてね。……それと、どうしてもうちの子たちの視線が気になるようなら、その時も相談してね」
シスターが周囲を見渡すと、先程から気になっていた視線の主の数々が一斉に周囲から散っていく。
「ほら、うちは女子高でしょう? 男の子が来るとみんな興味津々なのよ。それもあなたたちみたいな……イケメン? っていうのかしら?」
やはり、リーチも変装した方が良かったのか……?
「ありがとうございます、僕らもシスターのような美しい方々に見られていると思うと、身が引き締まる思いです」
……相変わらず、お世辞が上手なヤツだ。
「まぁ、お上手。後でお茶と焼き菓子を持ってきますからね。それと、お手洗いは職員室の脇にあるのを使うように」
そう言ってシスターは自分の持ち場へと戻っていた。
「リーチ、俺はお前を見直したというか、そのコミュニケーション能力はどうやって身につけたんだ?」
「演劇部を舐めてもらっては困る。それよりもルイ。女子の注目を浴びているのは必ずしも僕だけじゃないって分かってるかい?」
……そんなことは……ない、よな? そう思っていると、遠巻きにこちらの様子を伺っていた女子生徒の内の一人が、こちらに話しかけてきた。
「あ、あの、楠瀬くん? だよね。そっち終わったら、飾り付け手伝って欲しいんだけど」
「あぁ、こっちが終わってからなら」
嘉神川さんというものがありながら……と一瞬思ったが、これを断ると、後々のここでの人間関係が少々面倒臭いことになりそうだったので、俺は了承する。
「終わってからでいいよ! 別に急いでないから! なんなら、明日とかでも!」
いいひとじゃん。と思ったが、思い返してみるとこの人も嘉神川さんをいじめている側の人間の可能性もあるんだよな……。いや、それなら逆に仲良くなっとくのも悪くないか……。そう思って俺は、『いい人』を演じる。
「わかった。それなら」
「よかった! ところで楠瀬くんって────」
と、その間に割り込んでくる影が一つ。
「はい、すとーっぷ!」
「志摩さん?!」
「寿奈桜ちゃんか……」
俺と目の前の女子は声を上げる。
「飾り付けはルイ兄いなくても出来るし。シスターからも、そう言われてるよね?」
「そ、それは……」
「本当に必要ならいいけど、ルイ兄は忙しいの。キョーミホンイで連れて行こうってんならやめるし」
そう言って凄む寿奈桜ちゃんを前に、女の子は諦めたように退散していった。……寿奈桜ちゃんは、言い方は悪いけどあのグループ内でも立場は下のようだし、それに反抗しないということは、嘉神川さんの件には関わっている可能性は低いだろう。なら、やり方はともかくここで追い払えてよかったかもしれない。
「ありがとう、寿奈桜ちゃん。でも、なるべく俺たちは他人のフリをしないとじゃ……」
「大丈夫。今の子はクラス、ウチとも美咲たちとも全然別だし。あんまし根に持つタイプの子じゃないからね」
……そういえば、嘉神川さんと最初にあった時にいた常盤さんは、結構根強い子だったからな……。
「っていうか、ルイ兄もキッパリ断ればいいのに」
知っていれば、断ったんだが……。
「まぁ、そうだな」
「あ、ナオ。こんなところにいた」
背後から声に聞き覚えがあった俺は、咄嗟に寿奈桜ちゃんから離れて、リーチの元へと駆け寄って、小声で話しかける。
「……リーチ、おいリーチ、あのふたりが、いじめの中心だ。覚えておけ」
「覚えておけ、って、なんだよルイ、なんか上から目線だな」
「今はそんなのいいから、リーチ、お得意のトーク力であれ、収めてこい」
そういったのは言いものの、リーチが行くまでもなく、向こうから寄ってきた。なので、俺は、俺だとバレないようにサッとその場から離れる。
12月23日。この一年もあと数日で終わる頃、そして、クリスマス当日までは後たったの二日であったが、ほぼ全く有益な情報は得られなかった。ほぼ、というのは実際に嘉神川さんの件についての痕跡を見つけたからだ。ある時は靴箱にゴミを詰められ、それを見てせせら笑うクラスメイトたち、勿論映像として記録しておいたが、主犯格であるあの二人がいないので、あまり価値はない。そしてある時は彼女が作業を終えたオーナメントが破壊されるという非道極まりない残虐な行為の、痕跡のみが見つけられた。つまりは、まだ何も見つけられていないということだ。そしていじめの件は、勿論シスターにも言ってみたのだが……。
「いじめ……ですか。ないとは言い切れませんね。……神の見ている場でのそんな行為、考えたくないですね」
なんと無責任な。
「……単純に、見落としているという可能性は」
「なにか、事情がありそうですね。何かお悩みがあるのでしたら、詳しいお話は、いつでも伺いますよ」
俺の言葉に、シスターは察してくれたようなことを言う。
「ありがとうございます。シスター、もう少し考えてみます」
そして、シスターとの会話を終えた後、リーチを通して生徒たちにも話を聞いてみた。そこで得られたのは、嘉神川さんをいじめている側の連中の名前だった。まず、茶髪の方は、『葛原りいな』そして黒髪の方は、『三浦春瑠花』二人はいつも一緒にいて、よく街でも一緒に遊んでるような子達のようだ。いじめ関連については聞き出せなかったが、あまり評判は良くないらしい。
まぁ、与太話もここら辺にして、休日だからといって部屋でじっとしている訳にも行かない。俺は日紫喜さんがバイトに出ていると聞いて、YuKuRuへとやって来た。いや、来たのはいいのだが……。
「それでは嘉神川さん救出作戦会議を始める」
やたらと険しい顔をしている信さんと、それに乗っかるようにして相槌を打っている姉さん。信さんはまだいい。……が、なぜ姉さんもいるのだ……? 聞いてみると、『家族なのだから当然』だそうだ。……じゃあなんで兄さんは来てないんだよ。と聞くと顔を赤らめたので、これ以上の追求はやめた。まあ、それよりも、だ。
「いいんですか。お店準備中にしちゃって」
「大丈夫。姉貴はどこぞの編集部で缶詰にされてるし、お京さんも体調不良で休ませて欲しいと連絡があった」
「……それについては分かりました。でも、俺はともかく姉さんは客なのに入ったままでいいのか?」
「ふっふっふー、聞いて驚け累! ……裏口から来た」
急に小声で早口になる姉さん。というか、裏口なんてあったのかこの店……。喫茶店だろ?
「はいはい。りりすちゃんもそこら辺で終わって終わって、さ、本題に入るぞ」
場を仕切り直してくれる信さん。
「それで、日紫喜さんの方で何か分かったことはある?」
「ん……どうしたものか」
妙に歯切れが悪くなる日紫喜さん。
「まずだが、三城くんの予想通り、神崎さんはこの件とはあまり関わっていない……少なくとも、このいじめに関しては」
……やはりか。リーチの予想通りになったな。でも、これで穏便に解決できる、かもしれない。
「もちろん、巧妙に隠している線も否定はできない。だが、彼女が直接いじめている、といった目撃情報はない」
あくまであのふたりがやっていること、として罪を逃れる気か、もしくは本当に知らないのか。
そんなことを考えていると、姉さんが疑問の声をあげる。
「でもさ……なんでノエルちゃんなんだろねー。あの子可愛いのに……やっぱり、何か妬まれたりしてるのかな……?」
「そこまでは分からない。もう少し調べてみないことには。しかし……一般論ですが、いじめという物は、些細な事から……他人から見たらなぜ? と思うようなことからでも発生します」
日紫喜さんは言葉を続ける。
「今回も、そういった類のようなものだと感じています」
「でもさー、女子高ってことは恋愛のトラブルってことでもないんでしょ? だったら、そのいじめているふたりって、神崎って子とつるんでるんでしょ? その子本人と何かあったとか」
姉さんが日紫喜さんに疑問の意をなげかける。
「いや、まあ、このふたりの間に対立のようなものはあるようだが、それも反りが合わないであったりの、些細なものだ」
「でもさー、さっき瑞羽は些細な事から始まるって言ってたよね?」
鋭いな姉さん。
「ですがそれは一般論です」
「日紫喜さん、俺、一回聞いてみます」
そう言って寿奈桜ちゃんにちょこでこの後の約束を取り付けた。