Memory'sOff ─Innocent Fille─ REMAKE   作:キラトマト

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第九話 最高の一日

 ────それは、日曜日の午後、俺が買い出しから帰ってきて自炊をした俺は、どうせ今日は用事もないし眠ろうと思っていた。その時だった。

 

「ん……?」

 

 スマホから通知音が鳴る。

 

 {ルイルイ、今ちょーヒマだよね? }

 

 俺が返事に迷っていると、またメッセージが来た。

 

 {既読無視すんなし! }

 

 見たかどうかもわかるのか。すごいな、ちょこって。

 

 {ムカつく! もういいし! }

 

 諦めた……のか? まあいい。どうせろくな用じゃなさそうだし。そう思って今度こそ眠ろうというとき、チャイムが鳴らされる。

 

「……しょうがねぇなあ」

 

 俺は観念して、仕方なく玄関へと足を運ぶ。

 

「……なんだよ、休日だぞ」

 

「やっぱいるし!」

 

 俺が出てきたことは予想済みだったようで、寿奈桜ちゃんにはさほど驚きの様子は見られない。

 

「寝てたんだよ」

 

「でも既読ついたし!」

 

「寝ようと思ってたとこだった。俺は寝るから、さあ帰った帰った」

 

 俺はなるべく早く事を済ませたかったので、無理やりにでも返そうとする。

 

「ってちょっと待つし!」

 

「なんだよ……?」

 

「ルイルイさあ、嘉神川と付き合ってんの?」

 

 あぁ、前のあん時のことか。

 

「いや、前に嘉神川さんが絡まれてた時に、助けるために言ったけど……」

 

「そうじゃないし! ほら、ちょこ見たらルイルイと嘉神川がフレンドで繋がってたからだし!」

 

 ……どうやら、俺の予想は外れたみたいだ。

 

「っていうか、絡まれてた時ってなんのことだし!」

 

「いや、嘉神川さんが前、女子二人になんか言われてて、彼氏? って聞かれたからうんって答えたんだ。もちろん、後で嘉神川さんには謝ったけど」

 

「あ……なんか、その……ごめん」

 

 俺の言葉に寿奈桜ちゃんは気まずそうに目をそらす。

 

「いや、今は責めてるんじゃないから! それより、誰と誰が連絡とってるとか、分かるんだな」

 

 俺は気まずい空気を払拭しようと話題を変える。その考えをくみ取ってくれたのか、寿奈桜ちゃんも普段のテンションに戻る。

 

「ルイルイが素直に認めた……?! どんな悪いことして嘉神川と繋がったし! 言うし!」

 

「どんなって、嘉神川さんの方から教えてって」

 

「!? ありえないっしょ! 嘉神川から!?」

 

 俺の言葉に寿奈桜ちゃんは怪訝の目をこちらに向けてくる。

 

「ウチですら教えてもらうのに一ヶ月かかったのに……」

 

「そんな事言われても……」

 

「やっぱり、ルイルイが嘉神川を無理矢理……」

 

「そんなに疑うなら本人に聞いてみればいいだろ」

 

「本人ならここにいるし!」

 

「いや、嘉神川さんにだ」

 

「そ、それは……なんか恥ずかしいし?」

 

「なんでだよ……」

 

 俺にはいいのかよ、というツッコミは置いておいて。

 

「じゃ、じゃ〜あ〜、ちょうどもうすぐ嘉神川が遊びに来るから、ルイルイも来て」

 

「なんでこんなことに……」

 

 俺はあまりにも突発的な発案に思わずため息をこぼしてしまう。

 

「それで嘉神川が嫌そうな顔したら、ルイルイが悪いってことが証明されるっしょ」

 

「俺に利点は」

 

「お……女の子の家に遊びに行けるの、文句言うなし!」

 

「大家さんの家、な」

 

「……! そうだ、うち大家じゃん。来ないとお母さんたちに言い付けるよ!」

 

 しまった、あんなこと言わなければ……。今更悔やんでも仕方がない。

 

「……しょうがねぇなあ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 寿奈桜ちゃんの実家である明龍神社は、俺の住む夕凪荘のすぐ隣にある。ほぼ同じ敷地内と言っても過言ではなく、部屋の窓からも神社が見える。境内では寿奈桜ちゃんのお母さんが、掃き掃除をしていた。

 

「あら……、まあ、そうなの」

 

「ナオちゃん、良かったわねぇ。お兄ちゃん出来て」

 

「違う! そういうんじゃないし!」

 

 どうやらお母さんの方は勘違いしているようだ。

 

「こんにちは」

 

「こんにちは、楠瀬くん。今日はお父さんもいるし、呼んでこようかしら」

 

 その言葉に寿奈桜ちゃんはすかさずに口を挟む。

 

「余計なことすんなし!」

 

 その声につられたのか、お父さんがやってくる。

 

「やあ、キミが楠瀬くんか」

 

「もういた!?」

 

「えぇ、初めまして。大家さん」

 

「いや、今は大家ではなく、寿奈桜も父として、ここに立っている」

 

(うわぁー、なんか気難しそうな人だな……)

 

「いや、父として出てくんなし!」

 

「寿奈桜は、今でこそこんな喋り方で虚勢を張っているが、根は優しく真面目な子でねぇ。とにかく、よろしく頼むよ」

 

「ナオちゃん、良かったわねぇ。お父さんも喜んでくれて」

 

「あーっ! もう、いいから行くし!」

 

 寿奈桜ちゃんは俺に促す。

 

「あら、お部屋行くの? 片付いてる?」

 

「いいから、ほっといて!」

 

「あとでたい焼きかってきてあげるわね」

 

「それは食べるし!」

 

 ……面白い家族だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ぅぅ」

 

 部屋に着いた俺たちは、嘉神川さんが来るまでの時間を、会話をして潰していた。

 

「なんというか、マイペースなご両親だな」

 

「……ぅぅ」

 

「……? どうかした?」

 

「る、ルイルイは……その、慣れてるの?」

 

 寿奈桜ちゃんは、少し言いづらそうに聞いてくる。

 

「ああ、女の子の部屋に来てるってこと?」

 

「そ、そう! なんかすっごいフツーにあがってきたし!」

 

「普通って、案内してもらったら普通に入れるだろ」

 

「そ、それはそうだけど、もうちょっとこう……恥ずかしいとか嬉しいとか……」

 

「そんな事言われても所詮は友達の部屋じゃん」

 

 そりゃ好きな人とか恋人の部屋に入ったとかなら別だけど、とは口が裂けても言えないな。

 

 それに、女の子の部屋といえばこの前、柚莉の見舞いで行ったばかりだ。

 

「寿奈桜ちゃんこそ、確か彼氏いるって言ってなかったっけ? でも、だったらさっきのご両親の反応は……」

 

「う、ウチはそんな軽いオンナじゃないから、カレシも部屋にあげたりしないし! お父さんにもお母さんにも教えてないし!」

 

「そうなんだ。あの感じじゃすぐ受け入れてくれそうだけど」

 

「ウチのカレシの話は今はいいから! それより嘉神川のことだし!」

 

 今まで嘉神川さんの名前出してなかっただろ、とは言わないでおく。

 

「ナオちゃん? 嘉神川さん来たわよ~」

 

「はーい!」

 

 さっきまでとは違って寿奈桜ちゃんは元気に挨拶する。

 

(なんだ、普通にいい子じゃん)

 

 俺は寿奈桜ちゃんが嘉神川さんと一緒に来るのを待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで……どうして楠瀬さんがここに?」

 

「俺が聞きたいぐらいだよ。嘉神川さんは、どうしてだと思う?」

 

「ん……、どうしてでしょう?」

 

 嘉神川さんは質問に質問で返してくる。

 

「いや、だからそれを俺が聞きたいんだ」

 

「いえ、先に尋ねたのはわたしですよね」

 

 あ、そうか。質問に質問で返していたのは俺だったのかッ! 

 

「やっぱり……仲良く喋ってる……」

 

「別にいいんじゃないのか? なぜそんなに疑問に思う」

 

「嘉神川は難しいハズなんだし!」

 

 難しい、って、ゲームじゃないんだし……

 

「わたしは、いつも通りだよ? ナオちゃん、今日なんか変だよ?」

 

「変だな」

 

 俺も嘉神川さんの意見に賛成する。

 

「ウチがおかしいの!?」

 

 そろそろ寿奈桜ちゃんが可哀想になってきたので、理由を話すことにした。

 

「寿奈桜ちゃんは、俺と嘉神川さんが連絡先を交換していることに、驚いたらしいんだ」

 

「にゃ、な、なんでそう言うこと言うし!」

 

「楠瀬さんには……色々してもらったから」

 

 嘉神川さんは、あっさりとそう答えた。誤解を生みそうな言い方で。

 

「し、してもらった!? 色々!?」

 

(ほ~ら、寿奈桜ちゃん絶対変な意味に捉えてるよ)

 

「……助けて、くれたから」

 

「ウチだって、助ける……る、よ……?」

 

「だから、寿奈桜ちゃんはもう嘉神川さんの連絡先知ってるだろ。それに同じ学校だし」

 

「それはそうだけど! そう、なんだけど」

 

 まだ納得していない、という様子の寿奈桜ちゃん。嘉神川さんって、いつもはそんなにガードが固いのか……。

 

「ナオちゃんは、わたしが楠瀬さんと連絡しない方がいいの? だったら登録消すけど……」

 

 嘉神川さんは名残惜しそうにそう言う。

 

(消す……? え?)

 

「えっ? そんなことないけど……」

 

「良かった。ナオちゃん、楠瀬さんのこと好きなのかと思った」

 

 ……??? 

 

「はああ!? なんで!? ウチが!? そんなわけないじゃん!!」

 

「ルイルイはただの……隣のお兄ちゃん? お兄さん? みたいな感じだし!」

 

 それはそれでダメな気がする……

 

「だだだ大体、ウチ、カレシいるって言ってんじゃん!!」

 

「うん、そうだったね」

 

「……今日の嘉神川、なんかちょっと意地悪な気がするぅ」

 

「楠瀬さんは……なんていうか、今まで私の周りにいなかったタイプ」

 

「ん? そうなのか?」

 

 俺は嬉しい気持ちを抑えて質問する。

 

「……はい。だから────」

 

「ちょ、ちょっ、待つし! まさかウチの部屋で告白とかしちゃうの!? そんないきなり!?」

 

 いきなり寿奈桜ちゃんが慌てて止めようとする。

 

「……ナオちゃんは、少女漫画の読みすぎ」

 

「でも、少しだけ……楠瀬さんに興味があるのはそうかも」

 

(!? ま、マジでか……)

 

 俺は飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになる。だが、そんな俺よりも驚いているやつが一名。

 

「ふぇ……、ええええ!?」

 

 と、寿奈桜ちゃんのお母さんが部屋に入ってくる。

 

「あら~。大変ね、なお。お兄ちゃんの取り合い? はい、たい焼き」

 

「楠瀬くん……男にはな? 必ず選ばなければならない……そういう時が、いずれ来る。覚悟だけはしておきたまえ。ほら、たい焼き美味いぞ?」

 

 寿奈桜ちゃんのお父さんまでもが入ってくる。

 

「っていうか、勝手にゾロゾロ入ってくんな~~っし!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────それから、いろんなたい焼きを食べたり、ゲームで遊んだり──嘉神川さんは、何故か格ゲーが異常に強かったり、とにかく、最高の一日を過ごせた。




遊んでる時の様子はまた今後、書く予定です。お楽しみに!
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