色々な没集   作:超人類DX

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後々のフラグを知らず知らず叩き折るスタイル。


素材集め(フレンチ感覚)

 まだ一誠であった頃、彼は荒れに荒れ果てていた。

 

 生まれながらにして持ってしまったその異常性により肉親から拒絶され、神滅具のひとつまでもその身に宿していた事で人ならざる者達に強引に支配され。

 

 早い話が運に死ぬほど恵まれてこなかった少年期を黒々と過ごしてきた彼は決めたのだ。

 

 

『自分の生き方は自分で決める。その為に化け物にでもなんでもなってやる』

 

 

 悪魔に力を使われる日々から解放される為、何より自由を求めて。

 奪い取られるだけの人生に終止符を打つ為に、少年は覚悟の炎を心に灯した。

 

 そして途方もない鍛練と堪え忍ぶ日々の結果、彼は到達したのだ。

 最強最悪――最後の赤龍帝へと。

 

 手始めに。自分の力を自分の都合だけで利用してきた悪魔とその眷属を手始めに死んだ方がマシに思える程に八つ裂きした。

 自分を縛る為に強引に身体の関係まで持たされた恨みもあったが、何より彼女達は最初から気にくわなかった。

 

 そうしたらその悪魔の肉親や同族達が排除に乗り出したので、まとめて殺し尽くしてやった。

 そうしたら今度は他の種族達が『自分達の脅威』となると判断したのか、襲いかかってきたので殺してやった。

 

 その度に彼は更なる進化をする。

 戦えば戦うほど、彼の異常性は彼自信を無限に強くし続ける。

 

 その繰り返しばかりの日々を乗り越えた少年は、気付けば頂に相棒の龍と共に立っていた。

 人でありながら人を超越し、神を含めた全ての人ならざる生物を殺し尽くした屍の山で築き上げた頂。

 相棒の龍と、無限に進化をし続ける己の異常性という力。

 

 誰もが彼に指を指せなくなっていた。

 

 他を圧倒する絶対的な存在。

 この星の頂点に君臨する――最後の龍帝。

 

 しかし、この圧勝の少年の人生は突如として終わる。

 

 自由である事を求め、力を得る為に堪え忍び、懸命に己をコントロールし続けた男が、その頂から見える景色に絶望したのだ。

 

 それは恐らく、並の人生を行く者達や神ですら想像も出来ぬ果てしなき絶望によって。

 

 

『なぁドライグ……なんかもう、疲れちゃったよ』

 

 

 結局、人ならざる者達への嫌悪と復讐心を糧に進化し続けた人生には限りがあった事を、全ての人ならざる存在達を消し去った事で漸く悟ってしまった。

 それが彼の生きる気力を完全に失わせる事に繋がり、相棒の龍と共に自らの命を終わらせたのだ。

 

 その決意すらも、相棒の龍はただ黙って共に逝ってくれた。

 全ての龍の頂点に到達した唯一無二の赤い龍帝もまた

そんな最後の宿主である彼と同じ気持ちを抱いたのかもしれない。

 

 だから共に終わらせた。

 兵藤一誠としての人生の全てを。

 

 だが、誰の運命の悪戯は二人の到達者を逝かせてはくれなかった。

 

 そして兵藤一誠としての全てを思い出し、相棒の龍との再会も果たした兵藤命は――かつて一人たりとも出会うことはなかった『同じ人間』と出会う事で、再び甦る。

 

 到達せし無神臓の赤龍帝として。

 

 

 

 

 

 

 普通にお通夜状態なテンションでオルクスの大迷宮の中を進んでいく。

 

 所謂実戦訓練の為に今回は精々20階層までしかし行かない事になっている中、取り敢えず出てきた魔物を生徒達は倒していく。

 軽いチーム分けごとに魔物を倒していく内に、お通夜状態な空気は大分緩和されたのだが、次に現れた魔物と戦う事になったハジメとマコトのコンビの登場で、微妙に空気が冷え冷えになったのは仕方ないのかもしれない。

 

 

「次、南雲ハジメと兵藤マコト……!」

 

「うぃーっす」

 

「アウェイ感が凄いや……はは」

 

『……………』

 

 

 呼ばれて気だるげな返事のマコト。

 そしてハジメは、完全にアウェイな空気になっている状況に苦笑いしながらも、犬みたいな狼にも見える魔物と相対する。

 

 

「よし……錬成!」

 

「!?」

 

 

 ちゃっちゃと終わらせよう。

 そう思ったハジメが唸っていた魔物の足下を錬成で崩し、足場を崩壊させて身動きを封じる。

 

 

「良いよマコト」

 

 

 そしてマコトにトドメを頼む。

 別にこの程度ならばわざわざマコトの手を煩わせる事も無いのだが、一応ペアでやっているのでとどめを任せたのだ。

 

 

「ほい」

 

「ぎゃぅ!?」

 

 

 ハジメに言われた通りマコトは魔物に肉薄し、地面に埋もれ始めていた魔物の頭を踵落としで完全に潰して絶命させる。

 

 

「ナイスだよマコト……けど、わざわざ直接じゃなくても良かったんじゃあ……」

 

「こんな事にドライグ使ってたらドライグが怒るしよ……」

 

「ああ、そういう……でも靴がよごれちゃったんじゃあ……後で洗うよ」

 

「ん、さんきゅー」

 

『…………』

 

 

 なんてほんわかしているのだ……と、二人仲良く倒した魔物から魔石の回収をしているハジメとマコトを見ながら生徒達は思う。

 というか何気にマコトが魔物の頭を物怖じ0の躊躇なしで蹴り潰していることもあって、微妙に怖い。

 

 

「な、なぁアイツ本当にステータスが0なのかよ? いくらここら辺の魔物が弱いからって、ありえないだろ……?」

 

「め、メルドさんも見たんだから間違いねーよ、くそ、あの男女が……」

 

 

 檜山達のグループは、香織に構って貰ってばかりの分際で、その香織を拒否る南雲に腹を立てるが、子番犬ちゃんことマコトが傍にいるせいで悔しげに睨むしかできない。

 

 

「兵藤の奴……多分だが戦いなれてるな」

 

「龍太郎も思ったか? なんというか、相手を痛め付ける事に元から慣れているように見える」

 

「確かに……って、香織? あれ、香織は―――あっ!?」

 

 

 そしてカースト上位勢も、あまりにも躊躇いもなく直接魔物の頭を踏み殺しているマコトの姿に、先程のチンピラ丸出しな啖呵の事もあって、相当に複雑な眼差しだ。

 そんな中、チームを彼等と組んでいた筈の香織がとなりに居ない事に気づいた八重樫雫という、実は背が低いマコトからその長身だけは羨ましがられている美人タイプの女子が、フラフラとした足取りで倒した魔物から抜きとった魔石をしげしげと眺めているハジメとマコトに近づいていくのに気づき、慌てた声を出す。

 

 

「か、香織があの二人のところに……」

 

「と、止めた方が良い! さっきのこともあるし……!」

 

「まったく……!」

 

 

 光輝としても香織がハジメに絡むのは見ていて面白いとは思わないので、取り敢えず止めようとするが、既に香織はハジメに――さっき言われた事なんて無かった事にしているかの如くにこやかに話しかけている。

 

 

「南雲くん! 今のは錬成の応用? 凄いね!」

 

「ま、また白崎さん……」

 

「お、おお……? メンタルやべーなこの子」

 

 

 さしものマコトもさっきもさっきだった出来事も忘れてますな香織の態度に引いているらしい。

 しかしこの瞬間、香織のファン達がこぞってハジメに嫉妬めいた視線を向けるのを察知したので、取り敢えず慌ててこちらに香織を引っ張りに来たであろう光輝達に言う。

 

 

「おい、さっき言った事を忘れるほどの脳みそなのはわかったから、さっさとこのお嬢さんを連れていけよ」

 

「あ、あぁ……わかってる。

だがその……あんまり香織を悪くいうのは――」

 

「もう酷いなー兵藤さんは! ちゃんとさっき言われた事は忘れてないよ? 私はただ南雲くんを労いたいだけなの!」

 

「…………………………………」

 

「あの、ごめんなさいね? 悪気は無いのよ……本当に」

 

「悪気の無い行動がこの世でもっとも迷惑に繋がるって教えてやったらどうだよ? ノッポちゃんよ?」

 

「の、ノッポ!? ノッポってなによ!?」

 

 

 普通に辛辣なマコトのノッポ呼ばわりにちょっと憤慨する雫。

 知れば知るほどこの異世界組の人間関係はめちゃくちゃなんだなと……纏め役でもあるメルドはただただ深いため息を吐くのであった。

 

 

 

 

 思っている以上に南雲ハジメと兵藤マコトの二人は残りの異世界組みとは距離が離れていると知っていくメルドだが、本当の目的は二人の力を知る事であった。

 

 ステータス表記とは明らかに違う地力を二人とも有していて、何よりマコトの天職である赤龍帝が何なのかが気になる。

 

 今のところ、19階層まではマコトも天職としての力を使うことなく自身の身体能力のみでハジメと共に魔物を狩り続けている。

 やはりこの程度では見ることもできないか……と、半ば予想はしていたものの、見ては見たかったメルドは、魔物を狩る度に一々ハジメに絡もうとする香織を光輝達と共に抑えながら、本日の訓練のゴール地点でもある20階層に到達する。

 

 

(恐らくこの程度の階層では見れんが、あのステータスの表記がおかしいと確信できただけ良しとしよう)

 

 

 疲れの色すら無くハジメと喋っているマコトを見つつ、妥協を心の中でもしたメルドは声を張り上げる。

 

 

「よーしお前達!

ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくるぞ! 今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するな! そして入る前に言った通り、今日はこの20階層で訓練して終了だ!」

 

 

 そう言って先導しながら20階層に突入する。

 この階層からは今までと違って極端に道幅が狭かったり、もしくは足場が不安定だったりと、まさに迷宮らしい空間となっており、魔物の力もそこそこ強くなっている。

 

 とはいえ、この異世界組み達にとっては苦戦する程のものではないとメルドは判断しており、現に徒党を組ながら襲い掛かってくる魔物達を次々と彼らは倒していく。

 

 

「天翔閃!」

 

 

 もっとも、こんな場所でそんな広域の技を使用した光輝には注意をしておくのも忘れない。

 そして驚いたのは、それまでマコトのサポートをしてきただけだったハジメが直接魔物と戦い始めた事だろう。

 

 訓練の時のあの型もなにもない――簡単に言えば暴力そのものといえる戦闘術の使い手であるのは既に知っていたが、どうやら魔物相手でもそのスタイルは変わらず、ゴリラのような魔物を真正面から殴りまくってた。

 

 

「ハッ!! ダァッ!!! ウラァッ!!」

 

「ごぎゃっ!? へぎぇ!? ボビゲッ!?」

 

 

 時折手首をスナップさせるのは癖なのだろうか、しかし妙に様になって見えるハジメの喧嘩殺法に、それまでハジメに暴力じみたイジメを行っていた檜山といった者達にショックを与えるのと同時に『報復』されるのではと軽く怯え始めていた。

 

 

「そーらよ!」

 

「ギェェェェッ!?!?」

 

 

 何せ、魔物が倒れても攻撃の手を緩めるどころか、わざわざ強引に立たせてまだ殴りまくるし、どう見てもマコトに近い戦い方なのでトラウマが嫌でも呼び起こされるのだ。

 

 ある意味戦い方に関しては檜山達よりチンピラムーブしているハジメとマコトは気付けば魔石がざっくざくだった。

 

 

「うーん、本で読んだんだけど、この魔石は低ランクなんだよね……」

 

「? 魔石集めでもしたいのか?」

 

「ちょっとね……。幸い錬成が使えるから、こう、上手く加工して良い感じの武器を作りたいなって……」

 

「んじゃあ練習用に採れるだけ採っとくか?」

 

「うん」

 

 

 そんな彼らの軽い畏怖を知らず、マコトとハジメは倒した魔物から魔石をマイペースに乱獲しまくっていた。

 どうやらハジメは錬成の技術を駆使して武器を作りたいとの事で、その練習の為に魔石を欲している。

 

 ともなればマコトもそこそこ張り切りながら出てくる魔物を素手で粉砕しまくる。 

 

 誰かがグランツ鉱石なる綺麗な鉱石を発見し、ハジメにその鉱石を加工された結婚指輪的なものを送られるような妄想をしつつ『キレイ……』と呟く香織の声を聞き付けて無駄に張り切った檜山が、止めようとするメルドを鬱陶しく思いながら取りに行こうと壁をよじ登り、触れようとしたその瞬間、ヤバいトラップが発動して大騒ぎになっても二人はマイペースだったし、トラップ発動で石橋みたいな場所に全員が飛ばされ、目の前に今までの比じゃない魔物……ベヒモスなる魔物が現れ、焦ったメルドが逃げろと叫んでいても――ハジメとマコトは魔石の乱獲タイムが中断された事を寧ろ残念がっていただけだった。

 

 

「? なんだありゃあ?」

 

「え、えーっと、多分笑えないくらいヤバめの魔物じゃないかな? メルドさんが本気顔で僕たちに逃げろって言ってるし……」

 

「へー?」

 

 

 確かに立ち向かおうとする光輝達に『今のお前達には無理だ』と怒鳴り、逃げろとひたすらに言い続けるメルドが居る。

 そんなにヤバいのか? とマコトは咆哮をあげるベヒモスなる魔物を見てみるが――普通だった。

 

 

「どうするマコト? なんかメルドさんが言ってる感じだと、65階層まで行った当時最強の冒険者でも歯が立たない程度には厄介らしいけど」

 

「え、じゃあアイツ狩れば良質な石取れんじゃね?」

 

「うーん……それは間違いないかも」

 

 

 逃げろと言われて逃げようとしたが、またしても黒い魔方陣が出現し、38階層の骸骨みたいな化け物であるトラウムソルジャーに道を阻まれてしまう。

 つまりそう簡単には逃げられない状況らしい――少なくとも彼等だけでは。

 

 

「乱獲再開できんじゃね?」

 

「はぁ、本当にマコトってマイペースだよね? 僕も今は正直怖いのに……」

 

「怖がってるだけじゃあ前には進めないしな……。

よし……そろそろハジメも『アレ』使ってみろ」

 

「うん、僕コレは集団向きじゃないんだけど、やってみよう……!」

 

「その意気だハジメ。

そして――――起きろドライグ」

 

 

 マコトにとっては『慣れ親しんだ』状況なのだから。

 

 

 

 

 

 

 突然の状況にクラスの生徒達は混乱の極みだった。

 メルドに言われるがままに逃げようとする生徒達を阻むトラウムソルジャーの出現も混乱に拍車をかける。

 

 陣形はバラバラ、パニックに陥る生徒達。

 

 しかしその中でも光輝だけは逃げろと言うメルドの言葉に逆らい、ベヒモスと相対しようとしていた。

 

 

「待って下さいメルドさん!

俺達もやります! あの恐竜みたいなヤツが一番ヤバイでしょう! 俺達も……!!!」

 

「馬鹿野郎!

あれが本当にベヒモスなら六十五階層にいるはずの化け物、今のお前達では無理だ!

さっさと行くんだ! 私はお前達を死なせるわけにはいかないんだ!」

 

 

 王国騎士団長として、彼等を死なせてはならないメルドの言葉にそれでも光輝は引き下がらない。

 そして光輝が必殺剣を放ち、まるで効力無しとばかりにベヒモスが突進してきた瞬間、それは天から落ちてきた。

 

 

「お宝はっけーん!!!」

 

「ひょ、兵藤!?」

 

 

 左腕に慣れ親しんだ赤い龍帝の力を纏いし、最後の赤帝が。

 

 

「な、何をしているお前まで! 早く――」

 

「黙ってろよとっつぁん。

アンタ、オレの天職ってのを知りたがってたんだろ? 正直こんな獣もどきに使う必要はねーが……」

 

『Boost!』

 

「ちょっと見せてやんよ?」

 

 

 メルドにそう言うか早いか、謎の声と共にマコトの全身から目視する程の生命エネルギーのような赤いオーラが迸る。

 

 

「!?」

 

 その瞬間、ベヒモスの動きが止まる。

 

 

「! ベヒモスの動きが止まった……?」

 

「な、なんだあの赤いのは……?」

 

 

 見たこともない――そして莫大過ぎる力の奔流を前にベヒモスが前進を中止し、ちっぽけにも見え少女を威嚇する。

 ただ一人の人間相手にベヒモスが止まって明らかに警戒している状況に、メルドはマコトから感じ取れる莫大な力もあって驚愕する。

 

 そしてメルド達は見るのだ。

 

 異界のそのまた異界で頂点に到達した赤龍帝の力を。

 

 

「オラァッ!!」

 

「ガァッ!?」

 

「な!? ベヒモスが殴り飛ばされた……!?」

 

「な、なんて力だ……!」

 

 

 ベヒモスの巨体が小さな少女に殴り飛ばされる。

 その光景に光輝とメルドはただただ唖然とする。

 

 そればかりか、マコトは追い討ちのようにひっくり返ったベヒモスの顔面を殴り続ける。

 

 

「はははっ! 一撃で壊れなかったのは誉めてやるぜ畜生生物が!!」

 

「グルゥアァァァァッ!!!?」

 

 

 殴り、蹴り、放り投げ、また殴って蹴る。

 それも一方的に、反撃すら許さずに……。

 

 

「こ、これは夢なのか? あのベヒモスをたった一人で一方的に……」

 

「な、南雲はどこに……?」

 

 

 笑いながら、虫を潰すかのように叩きのめすマコトの姿に呆然と立ち尽くすメルドは、これが赤龍帝という天職なのかと――恐らく召喚された他の者達全員と天秤にかけても彼女一人の力が勝るだろうと、目の前の蹂躙劇を見ているだけしかできなかった。

 

 その横で光輝がハジメはどこに? もしや逃げたのかと勝手に呟いているが、そんなこと等どうでも良さげに、ズタズタにされ、威嚇しかできないベヒモスと、笑いながら眉間に拳をめり込ませているマコトを見つめる。

 

 そんな時だったか、生まれたての鹿状態のベヒモスと遊ぶのも飽きたとばかりに、マコトは後退し、唖然とするメルドと光輝を前に背を向けて立つ。

 

 背が二人よりも一回り以上低いせいでちょっと締まらないのはご愛敬だ。

 

 

「グ……グォ……ァァァ……!!」

 

「まあ、遊びはここまでだな」

 

「あ、遊びだと? ……い、いやこの際そんな事はどうでも良い! ここまでベヒモスを弱らせてくれた今なら逃げられる! だから後方のトラウムソルジャーを排除しに行くぞ!」

 

 

 そうマコトの肩を掴むメルドだが、華奢でかなり小柄な筈のマコトが全く動かせない事にメルドは驚愕するし、吐いたマコトの台詞にもギョッとする。

 

 

「なにを言ってんだよとっつぁん? アレぶっ殺したら良い石は確定なんだろ? 逃げたら意味ねーよ」

 

「ば、バカを言うな! お前の力が強大であるのは認めるが、ベヒモスはそんなに甘くは――」

 

「良いから良いから。見てろって……ちょうどハジメも一仕事終えてくれたみたいだしな?」

 

「何を――な、ナニィ!?」

 

 マコトが言い終えた瞬間、メルドはまたしても驚愕の光景を目にする。

 

 何故なら後方で逃げ道を塞いでいた筈のトラウムソルジャーが………一瞬でフラフラなベヒモスの傍に、まるでワープさせられたかの如く出現したのだ。

 

 

「!? !?!?」

 

 

 理性があるのかは知らないが、トラウムソルジャーが困惑しているように見えるし、光輝とメルドも――それから後方に居た騎士団や生徒達も同じようなリアクションだ。

 そんな中、悠然とやって来てマコトの隣に立つのは――先程から姿を見せなかったハジメだった。

 

 

「な、南雲!? お、お前今までどこに!?」

 

「後方であの骸骨達と戦ってたけど? ちょっとした仕込みも兼ねてだけど」

 

「仕込みだと? つまりこの数のトラウムソルジャーをお前がベヒモスの傍に強制転移させたとでも言うのか?」

 

「転移とは違いますけど……まー、概ねそんな感じですね」

 

 

 当たり前の顔してヘラヘラと笑って言うハジメに、メルドと光輝達――そして後方で直接ハジメの『起こした異常』を目の当たりにした生徒達は背筋に寒気を感じた。

 

 

「これで全員だよマコト」

 

「便利過ぎるし、使い方次第じゃマジこえーよな、ハジメの異常(アブノーマル)って」

 

「際限無く進化するマコトの異常(アブノーマル)に比べたら、細やかなものだと思うけどなぁ?」

 

(アブ、ノーマル……?)

 

 

 何やら聞き慣れない言葉にメルドの眉が潜む横で、呑気にやってる二人を見て何故か光輝が激怒する。

 

 

「な、何を二人して話してるんだ!? まだ魔物は――」

 

「あ、大丈夫だよ天之河君。

もう終わるから……」

 

「何を言って―――」

 

 

 焦る気持ちもわかるので、穏やかにハジメが宥めようとするが、まるで今の状況に恐怖せずに悠々としているハジメに、よくわからない感情を抱く光輝が詰め寄ろうとした瞬間、左腕に赤き装甲を纏うマコトの全身から更なる赤きオーラが爆発するように激しく放出する。

 

 その激しいオーラに吹き飛ばされそうになったメルドや光輝といった者達はなんとか踏ん張りながら、目撃する。

 

 マコトが両手を胸元の前に出し、赤く輝く小さな気の球体を生成する。

 そして生成したエネルギーを両手の中で徐々に大きくさせながら練り上げた赤い気を腰に持っていく。

 

 

「行くぞ!!」

 

 

 全身のオーラが激しさを増し、大陸全土を揺るがす程の気の奔流と共に、両手の間に輝く赤き球体が一気にサッカーボール程の大きさへと成長。

 

 

「ドラゴン………!!」

 

 

 まだ何も知らぬ子供だった頃に、テレビアニメを見て夢見た、アニメ主人公の必殺技(フェイバリット)

 

 ハジメには『それってかめはめ波じゃないの?』と言われたけど、それでも変わらない一撃。

 

 

「波ァァーーーッ!!!」

 

 

 エネルギーを赤い光線へと換え、突き出した両手から放つ。

 

 

『!?』

 

 

 そして地を抉りながら放たれた血の様に赤き光線は、ベヒモスとトラウムソルジャーの全てを跡形もなく消し飛ばしたのだ。

 

 

「超加減したから、魔石までは多分消し飛ばして無い筈だぜ?」

 

「でも何個か消し炭になってるね……」

 

「うーん、潰さない様に蟻を踏むのって意外とムズくてよ……」

 

「その例え方はどうかと思うけど、メインのベヒモスは原型残ってるから、これなら良い素材を取れそうだよ」

 

『………………』

 

 

 正真正銘の化け物。

 正真正銘の異常者。

 

 ただ目の前の光景が信じられずに立ち尽くす者達を背に、平然とした顔で残骸から素材を回収する二人の姿は、正しく異常であったという。

 

 

「南雲君が私を助けてくれた。よくわからなかったけど、南雲くんがあの骸骨の魔物の群れを移動させて、私を助けてくれた……! あは、あはははは♪」

 

『………………えぇ?』

 

 

 終わり。

 

 

 

 

 上質な素材をかき集める為に張り切った結果、ハジメは武器を作り上げた。

 その一つが銃であった。

 

 

「見てよマコト! この銃は使用者の声が起動の鍵になるんだよ!」

 

「へー? 器用な事するよなぁハジメって」

 

「それでね? 例えばこの銃に……『fire』って言うと」

 

『burst mode』

 

「ってな具合に機能が変わって、ワントリガーで三連射できるんだ!」

 

「ちょっとドライグっぽいな……」

 

「軽く参考にしたからね! そして発射される弾丸は所謂エネルギー弾なんだけど………こうして、『check』って言うと――」

 

『Exceed charge』

 

「最大出力になって、撃つと当たった敵を拘束するんだ。それで拘束した的に…………こう!」

 

「!?」

 

『一瞬だが完全に小僧の動きを見失っただと……?』

 

「……っと、こんな感じに相手を粉砕できるって訳」

 

 

 なんか色々とオーバーテクノロジーっぽくなったり……。

 

 

「うんうん、これだけの良質な素材があれば、マコトの禁手化の鎧みたいに、一瞬で鎧を纏う装備を作れそうだよ!」

 

「……。ハジメが嬉しそう」

 

「凝り性だかんな……」

 

 

 マジで生徒達に怖がられまくってしまった結果、最早居ない者扱いされてしまったマコトとハジメが、お散歩感覚で潜ったとある迷宮の下層地点で知り合った吸血鬼少女のおかげで良質素材をゲットできてしまったせいで余計オーバーテクノロジー装備に拍車がかかり……。

 

 

「こんな感じにシンプル『変身』って言うと……」

 

『Standing by』

 

「待機状態になるから、この銃入れに差し込んで……」

 

『complete』

 

「…………と、全身が強化スーツで覆われるって訳。

ちなみに、このスーツにはフォトンブラッドという力が循環していて――」

 

「お、おう、何だかわかんないけどスゲーな?」

 

 

 すごい発明をやらかしてしまうのだ。

 

 

「何で私がダメで、あのユエって人な良いの? どうして私だけ拒絶するの? どうして? 何で?」

 

「…………香織」

 

 

 その裏で、拒否られ方が日増しに半端なくなっていく美少女さんがおかしなことになり始めてるけど、ハジメはそれでも知らん顔だった模様。

 

 

「あの白崎って女、危険……」

 

「諦めるどころかストーカー化してるからなぁ」

 

「アナタも気を付けるべき。

あの女、アナタの事を憎んでる……」

 

「まあ、オレはちょっとやそっとじゃあ死なねーからな……」

 

 

 嘘です。




補足

着々と苦労人アザゼルさんポジになりかけるメルドのとっつぁん。

頑張れとっつぁん。


その2
素材集めに目覚めるハジメっち。

……そして武器作りにも目覚めるせいで――



その3
いや、別にルシファーズハンマーなんてやらんし、『3821』でジェットスライガーなんて出てこないよ。

だって嘘だもの
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