色々な没集   作:超人類DX

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ついやっちまった。

やらかし回スタート


ライバルの出現

 自分は今まで一体何をしてきたのだろうか。

 

 確実に『他人』を見限っている二人の生徒の本音をこの異世界にて初めて聞くことになってしまった社会科教師の畑山愛子は、結局はどう足掻こうが埋まることのない決定的な『溝』を前に、そして放たれたその言葉に何も言い返せなかった。

 

 

『大人なんて親以外信じるに値すらしない。ましてや教師なんて所詮は他人でしかない』

 

 

 確かにその通りだ。

 確かに突き詰めても所詮教師と生徒は他人でしかない。

 どれだけ綺麗事を並べても、本当の意味で手を差しのべられる教師なんて指で数える程度しかいないだろう。

 

 ハジメがクラスでイジメられていて、それをマコトが助ける。

 いや、本当はハジメは抗うだけのものを持っていたのだが、それ以上に教師には一切今まで頼らなかった。

 

 それは愛子にとって――例えハジメやマコトのクラスの担任ではないにせよ寂しく、そしてショックであった。

 

 だから愛子は、同じクラスの者達から『物理的に』離れようとしていた二人の旅に同行する事を決めた。

 

 自分は所詮頼りにはならない大人なのかもしれない。

 信じる価値も無い他人なのかもしれない。

 

 その考え方を改めさせるという傲慢な考えなんてありはしない。

 それでも……それでも畑山愛子は教師として――そして大人として二人を守る覚悟をした。

 例え二人には要らぬ事であろうとも……それでも。

 

 

 

「刑務所のお勤めを果たした釈放された気分だよ」

 

「どんだけ白崎さんが嫌いなんだよハジメは……」

 

「嫌いとかじゃなくて、ただ単純に関わりたくないだけだよ。

なんというか、彼女の人生に興味が無い感じかな?」

 

「……もっとヒデーぞそれ?」

 

「向こうからどう思われようが関係ないよ。

マコトだって言ってたじゃないか……『自分の生き方は自分でしか決められない。誰かの決めた正しさが自分にとって気に入らなければ、従う必要なんて無い』ってさ」

 

「まーな……」

 

「…………」

 

 

 そんな想いを悶々とさせている愛子は、交渉が決裂し、完全に単独行動をする様になり、トータスを出る前の最後の『お遊び』としてオルクスの大迷宮の――先日ベヒモスを排除した階層より更に下の階層へお散歩感覚で喋りながら進むハジメとマコトの後ろを歩く。

 愛子から見ても心底美少女だと思う香織の行き過ぎた告白すらも真正面から否定したハジメと、そんなハジメの意思を守ろうとするマコトの目に見えぬ繋がりは、こうして共に行動すればするほど、強固過ぎて割って入らないものであると悟らされてしまう。

 

 

「それであの……南雲くんと兵藤さんはこれからどこまで下に?」

 

「さぁ? ハジメはどこか行きたいとことかあるか?」

 

「ごめん、僕もあまりそこら辺の事は考えてなかった。

でもやっと周りの邪魔も無くマコトと一緒だから、暫くは適当にフラフラとしてるのも悪くないかな?」

 

「ええ……?」

 

 

 なるほど、香織が相手にすらされない訳だと愛子は、マコトを見るハジメの表情を見て悟る。

 要するに、ハジメはマコトに好意をもっているのだ。

 それも強固で、それこそ神か悪魔であろうが干渉を許さぬ程の強い想いを。

 

 肝心のマコトはどちらかと言えば兄弟や肉親に近い――親愛の情のようなものだろう。

 

 そこそこ何時もより鋭い愛子の推察はほぼ当たっている。

 

 そしてやっと気づいた二人の『異常さ』に。

 

 

「ここまで潜ると流石に『いきなり殺しにくる』魔物ばかりだねマコト?」

 

「だな。あの畜生には劣るっぽいが」

 

「69階層より下ならベヒモスより上の魔物が居るわじゃないかな?」

 

「レア鉱石もゲットできりゃあ潜る甲斐もあるんだがな。

んで? その銃の使い心地はどうなんだよ?」

 

「うん……今のところは予想した通りの威力だよマコト」

 

 

 飛んでくる蠅でも叩き殺すかのように、何の緊張感も無く喋りながら四方から襲いかかる様々な魔物を破壊するマコトとハジメ。

 マコトは肉薄する魔物を叩き落とすように軽く叩くだけで、絶命させ。

 

 ハジメは自作したという拳銃で撃ち落としていく。

 

 

「あんまり離れて歩かない方が良いっすよ畑山先生?」

 

「わ、わかってますけど、こんな簡単に魔物って倒せるんでしたっけ……?」

 

「そこそこ日本に居た時から『自衛』手段は持ってましたからね。

それが通用してくれているって事ですよ――っと『fire』」

 

『Burst Mode』

 

 

 口元で銃に向かって言葉を発すると、銃身から機械音声のようなボイスが発せられる。

 そしてそのまま飛びかかって来た魔物に向かってトリガーを引くと、レーザーのような光線が三連射され、魔物の身体が……赤い炎と共に灰化して消滅した。

 

 

「な、なんですか今のは? 魔力をその拳銃から発射したという事ですか?」

 

「えーっと、今はそうとだけ言っておきますね」

 

 

 曖昧な返答のハジメに、愛子は首を傾げる。

 そんな感じで魔物を狩っては魔石を取り出しつつ宛もなく迷宮の中を進み、いつの間にか50階層まで到達していた。

 

 

「ま、まさかこんな深くまで入るなんて……」

 

 

 作農師という、魔力こそ光輝と同等以上だが非戦闘天職である愛子は、まさかこんな迷宮の奥深くまで来ることになるとは思わず、マコトにしがみついていた。

 

 

「死にたくなければそのまましがみついてて下さいよ。

迷子になられても探すのとかダルいし」

 

「は、はい……!」

 

 

 自分より更に小柄なマコトに言われた通り、愛子は必死になってしがみつく。

 最早ここまで何のつまづきも無く到達できた現実は、ハジメとマコトが『強い』と嫌でも理解させられている。

 

「向こうに今までの階層では見なかった扉みたいなものがあるよマコト」

 

 

 そんな愛子を背にしながら歩いていると、不意に目をこらしたハジメが指を差した。

 その差した指の先には確かに――この迷宮内においては違和感すら覚える小綺麗な扉があり、如何にもな怪しさ満天である。

 

 

「あれか? ゲームで言う所の『お宝部屋』って奴か?」

 

「なら良いんだけどね、そろそろ目新しい素材が欲しいからそうである事を願いたいよ」

 

「あ、あの……本当に開けるのですか?」

 

「ここまで来たんだから開けるでしょう」

 

「『折角だから、俺はこの赤の扉を選ぶぜ……!』――ってね。

まあ、全然赤くなんて無いしこの扉ひとつですけどね……」

 

 

 どこかのデス様の主人公みたいな事を言える程度には余裕そうなハジメが、赤くもなければひとつしかない扉を開け放つ。

 その数秒前に一つ目のサイクロプスめいた魔物が襲い掛かってきたが、愛子を背負った状態のマコトが蹴り潰しておいたので問題もゼロである。

 

 

 そして開けた扉の中にはお宝が山程―――ではなかった。

 

 

「暗いな……」

 

 

 中は真っ暗であり、何があるのかは少なくとも見えない。

 ここまで来るのに手に入れた、鈍く輝く魔石をライト代わりに三人して目を凝らしていると、不意にマコトの左腕に赤龍帝の籠手が纏われ、ドライグが声を放つ。

 

 

『奥を見てみろ、何者かが居るぞ』

 

「ドライグ……?」

 

「うぇ!? だ、誰ですかっ!?」

 

 

 突然聞こえる渋く――でもどこぞのダメな親父っぽい声に初めて聞かされた愛子はびっくりして辺りを見渡す。

 しかし今愛子にドライグの事を説明している暇も無かったので、言われた通り奥へと進んでみると……。

 

 

「―――誰?」

 

「「「…………」」」

 

 

 石のような何かに半分程埋められたような姿をした少女がそこには居た。

 

 

「ひ、人!? こ、こんな所に!?」

 

 ここに来て人の形をした者と出会して心底驚く愛子。

 しかしそんな愛子のリアクションをマコトの左腕の龍は否定する。

 

 

『人間ではないなこの小娘は……』

 

「…………」

 

「まあ、どう見ても人じゃないよね。こんな場所に――いかにも封印されてますな出で立ちだし」

 

 

 見た感じ衣服を着ていない少女を前に動揺の欠片も無く、推察するハジメ。

 そしてマコトは―――――――――両目を赤く輝かせ、爬虫類を思わせる縦長に瞳孔が開いている。

 

 

「けど調べた限りはお宝なんて無さそうだし……マコト?」

 

「っ!? あ、ああそうだな……」

 

 

 人ではない……人型の生物。

 これまで魔物しかまともに相対していなかったマコトにとって――――――いや、『一誠』にとっても久方となる存在はマコトとして生まれ変わった今でも脊髄反射的に殺意を孕ませてしまう。

 

 ハジメが声を掛けた事で我に返ったが、このままでは反射的に殺してしまっていたとマコトは頭を振って『あの時の殺意と憎悪』を振り払う。

 

 

『………。小僧の推察通り、この小娘は封印されているようだ』

 

「封印って……。というか先程から聞こえるこの渋いお声は一体?」

 

『ここだ、イッ……いや、マコトの左腕を見ろ』

 

「左腕……あ、あれ? 兵藤さんの左腕にいつのまに赤い鎧のようなものが?」

 

『その鎧のようなものの意思が俺だ。

詳しく説明するのは後だが、そういうものだと今は思え』

 

「は、はあ……」

 

 

 マコトの背中にずっとしがみつく愛子は、その左腕に纏われた赤い装甲から聞こえる渋い声に呆然としつつ、興味本位なのか、つんつんと指でつついている。

 それは石像みたいななにかに埋められている金髪赤目の少女も同じく興味を持ったのか、しげしげとマコトの左腕の赤い装甲を眺め――ハッとする。

 

 

「え、えっとその……こんにちは?」

 

「あ、はいこんにちは……」

 

「どうも、えーっと、キミは何者かな?」

 

「……………」

 

 

 慌てて取り敢えず挨拶をしなければと思ったのだろうか、挨拶をしてくる少女に愛子とハジメが返し……マコトは目を逸らす。

 

 

「えっと、私は吸血鬼で、ここに封印されていて……」

 

「あ、やっぱり……」

 

「封印なんて……!」

 

「……………」

 

『……。偶然出会したという事か』

 

 

 

 ハジメや愛子に悟られぬように握りこぶしを握り、やがて爪が食い込んで右手が出血するマコトの精神状態をいち早く察したドライグが、マコトの代わりに話をする。

 

 

『つまり、俺達には関係の無い奴ということだな。

おい小僧、小娘、さっさと出るぞ』

 

「あ、うん」

 

「ま、待ってくださいよ!? 小娘呼ばわりは今は置いておいて、こんな子が封印されていると聞いてそのまま去るなんて……!」

 

『知るか。

どんな事情があったか知らんが、偶発的にこの場に来たまでの俺達には関係の無い――』

 

「ま、待って……! わ、私をここから出して欲しい! 何でもするから!」

 

「って言っているけど……。

………………マコト?」

 

「……………な、なんでもねぇ」

 

 

 マコトの様子が明らかにおかしいと気づいたハジメは、この封印されている吸血鬼らしき少女は二の次になる。

 しかし愛子は頑なにここから出たがる少女を助けるべきだと訴えて動こうとしない。

 

 

「わ、私は裏切られてここに封印された。

皆の為に頑張ったつもりだったのに……!」

 

「ほ、ほら南雲君も兵藤さんも彼女の言葉に助けたいと思うようになってきたでしょう?」

 

「罠でない確証なんて無いじゃないですか。

それに、さっきから彼女を見てからのマコトの様子が変です。

僕は当然マコトを優先しますよ」

 

「………」

 

 

 そう言ってハジメは俯いたまま動かないマコトの頭に優しく手を乗せた。

 そう、今会った吸血鬼よりもハジメはマコトなのだ。

 

 だが愛子はそれでも退かないし、同じようにこんなチャンスは二度と無いかもしれないだけに吸血鬼の少女も必死で助けを懇願する。

 

 これがもしマコトではなくて一誠であったなら――『彼』ならば事情等には耳すら貸さずに『殺害』していた。

 だがマコトとして生まれ変わり、ハジメと出会い、人であろうともかつての悪魔達といった、『人ならざる者達』と変わらない事を知った今、その葛藤に苛まれいた。

 

 それはハジメすらも知らない――ドライグのみが知る兵藤命としての全て。

 

 

「私は吸血鬼――力があったから国の為に頑張った。

けどある日、家臣達から私は用済みだって……。

これからは叔父様が王になるから、力を持つ私は危険で……そして何をしても殺せないからってここに閉じ込められた……」

 

「………!」

 

『この小娘……一誠と同じ……』

 

 

 そして語られる少女の過去は……少しだけ『一誠』に似ていた。

 その現実が――もしかしたら過去己が殺してきた者達の中にはそういう事情があった者も居たのかもしれないと、マコトとして『一誠』を客観的に考える事で、何かがマコトの中で崩れていく。

 

 

「ぐっ……!」

 

「マコト……! 大丈夫……!?」

 

「あ、ああ……大丈夫だよ。ちょっと昔の、嫌なことを思い出しただけさ……」

 

(マコトがこんなに震えているなんて……)

 

(兵藤さん……)

 

『…………』

 

 

 悪魔に支配された過去。

 縛り付ける為に強引に関係を持たされたトラウマ。

 

 『殺意』と『憎悪』に変換し、全てを破壊し尽くしたあの頃の記憶が呼び起こされてしまう。

 ハジメと出会う事で穏やかになっていった心がささくれ立つ。

 

 

(違う、違う……! 俺は――オレだ! 俺がしてきた事に後悔なんてしてねぇ! オレになっても、変わらねぇ! 変えられねぇんだよ!!)

 

 

 だがその沸き上がる感情を『マコト』として押さえ込む。

 『イッセー』である過去を含めた今が『マコト』。

 

 後悔も懺悔もしない……己の過去には絶対に目を逸らさない。

 そうでなければ、親友のハジメに幻滅されるのだから……ハジメの前では決して弱音は吐かない。

 

 それがマコトとしての気持ち。

 

 

「(震えが止まった……?)……マコト?」

 

「大丈夫だよハジメ……オレは変わらない」

 

「え……?」

 

「なぁドライグもそうだろう?」

 

『当たり前だ。お前がお前である以上、俺はお前のソバにずっと居る』

 

「? ??? ????」

 

「そ、それであの……助けては……?」

 

 

 前を向く。

 今さら過去を変えられはしない。

 自分の行ってきた事に綺麗事なんて並べない。

 

 ただ、気に入らないからぶちのめした――それだけの事なのだから。

 それは今も……そしてこの先の未来でも変えない。

 

 それが無神臓(インフィニットヒーロー)と名付けられた『心』なのだから。

 

 

「……………」

 

(今初めて私の目を見た……?)

 

 

 吸血鬼など、あのハーフを含めて絶滅させた事だってある。

 ならば今更怯える理由などありはしない……というか断じてビビってない。

 

 と、心を立て直したマコトは、戸惑う吸血鬼の少女としっかり目を合わせながら口を開く。

 

 

「で、助けるメリットはなんだ?」

 

「! ま、魔力を陣を介さず直接操れる。

回復さえすればアナタ達の力になる……! だ、だから――

 

 

 ――助けて。

 吸血鬼……いや、それ以前にただの少女としての懇願に、マコトは静かに……口を開く。

 

 

「お前の力なんぞ要らねぇ。

吸血鬼ごときに助けられる程、オレ達は弱くはねぇ……」

 

「じゃ、じゃあどうすれば……?」

 

「何も要らない。

ただ封印を解く……それだけだ。

それ以降はどこへなり好きに行け」

 

 

 あくまで封印だけは気紛れで解いてやるとツンツンしながら言うマコトは、ドライグを纏った左腕を封印さへている吸血鬼に伸ばし――

 

 

『待て』

 

 

 ドライグが止めた。

 

 

「………何だよドライグ?」

 

 

 ハジメと愛子が固唾を飲んでいた所に横やりを入れられた気分になるマコトの返事にドライグは深めにため息を吐く。

 

 

『迷う程度にはお前の精神が浄化されていたことに俺は嬉しいからな―――――』

 

 

 マコトが過去の事を思い返して葛藤してくれる程、人間らしさを取り戻してくれたのはドライグの本心として嬉しいことであった。

 だから――だからこそドライグはマコトに内緒にしていた秘密を教える事にした。

 

 

『この小娘の封印は今の小僧やそこの小娘教師の力では骨が折れる。

この状況で二人に無駄な体力を使わせる訳にはいかんし、かといって封印といった類はお前の専門外だ』

 

「そんなもん封印の元をぶち壊せば……」

 

『小娘にその『破壊』が伝染し、下手をすれば吸血鬼小娘が確実に死ぬぞ? それは()のお前とて本意では無いだろう?』

 

「…………」

 

『だから、だ……』

 

 

 マコトの左腕の籠手が赤く、激しく輝きを放つ。

 それはやがて、封印の部屋全体を眩く照らし、マコトを含めたその場の全員が目を覆う。

 

 そして――――

 

 

 

 

 

「サービスで俺がこの小娘の封印を解いてやる」

 

 

 赤き閃光が晴れれば、そこには目付きの鋭い赤髪の20代後半から30代半ばと思われる『茶髪』の男性が、渋い声で話ながら立っていた。

 

 

「ど、ドライ……グ……?」

 

「!?」

 

「え、えっ!? お、男の人が急に……?」

 

「な、なにがなんだか……?」

 

 

 その声はまさにドライグだった。

 しかしマコトが驚いたのはその『人型』として現れたドライグの姿だった。

 そう、まさに過去の――兵藤一誠としての己がもし順当に年を重ねたらこうなっていたという姿そのものだったのだから。

 

 

「ハジメの小僧が暫くはこの世界に住まう種族について調べていたろう? その中に竜人族――おおまかに言えば俺に近い種族が存在していると知った時から、俺もその竜人族のように人型に変身できるかと密かに試行錯誤した結果――制限つきながらこうしてお前と向かい合えるようになった訳だ―――っと?」

 

 

 ふふんと、どや顔しながらちょっとした特訓を内緒で行った結果可能にしたと語るドライグだったが、その直後、視界が完全に覆われてしまった。

 他ならぬ――マコトがドライグに飛び付いたことで。

 

 

「ど、ドライグ……! お前……!

あは、あはははっ! ドライグだっ! 触れられるドライグだ! あはははっ!」

 

「ま、マコト!?」

 

「あ、あら……な、なんだか見てはいけないものを見ている気分ですね」

「……………」

 

 

 ずっと一緒だった最愛の一人であるドライグと向かい合え、しかも触れ合える。

 その現実を前に理由なんかどうでも良いとばかりにマコトがドライグの顔面におもいきり胸を押し付けながら飛び付くものだから、見ていたハジメがショックを受けていた。

 

 

「おいおい、ガキじゃないんだぞ……って、お前は何時でもガキだったな」

 

「ドライグ……! ドライグぅ……!」

 

「ふ、父親の気分とはこういう気分なんだろうな……」

 

 

 両手で顔を覆いつつも指の隙間からバッチリ見ている愛子。

 よしよしと抱きついて胸元に顔を埋めているマコトを受け止め、優しげに背中を撫でるドライグ。

 いきなり出現し、確実化したラスボスに焦り出すハジメ。

 

 

「あ、あの……助けて……?」

 

 

 そして蚊帳の外感満載で軽く涙目の吸血鬼少女。

 こうしてドライグは引き出し感覚で人型――若干年喰ったかつてのイッセーの姿で実体化を可能にしたのだった。

 

 

「………それでだ小僧、俺はマコトを自分の子のような感情を抱いている。

―――――俺の言っている意味はわかるな?」

 

「ま、負けないよ僕は!」

 

「? なに張り合ってんだよハジメは?」

 

「後で聞きたいことが増えすぎて頭の中が……」

 

「…………」

 

 

 そしたもの次いでに吸血鬼少女はドライグの力により封印を解かれた。

 

 

「南雲くんは見ちゃいけません! ど、ドライグさんもですけど!」

 

「ガキの裸体なんぞ興味はない」

 

「え、えっち……!」

 

「聞いていなかったのか?

吸血鬼のガキ程度の裸体なんぞ何の興味も無いんだよ」

 

「うー……!」

 

 封印から解き放たれ、裸体状態の吸血鬼少女を本当に欠片の興味もなさげに見下ろすドライグに、なんだか悔しい気分で睨むが、効果はゼロ。

 

 

「それで、貴様の名はなんだ?」

 

「な、名前は無い……だから、私の封印を解いたアナタがつけて欲しい」

 

「なに? ………………………………………………………アルビオン」

 

「ドライグその名前って……」

 

「………ハッ!? 違う、今のは聞かなかった事にしろ! え、ええっと……オーフィス? いやウリドラ――アポカリュプス――えぇい長いわ!」

 

 

 そして名前を付けろと言われ、かつて一誠と共に勝利したドラゴンの名前を思わず付けようとしてしまうドライグは完全に手こずり、とうとう面倒になってハジメとマコトにに押し付ける事にした。

 

 

「な、なんで僕が?」

 

「そういうセンスはお前かマコトの方がある。だがマコトは――」

 

「あー、ギャスパー? い、いやいや、間違えた。

白音――じゃなくて、朱乃……って、日本人じゃねーんだよ!? ならリアス――――絶対にありえねぇ!! いや待て、ゼノヴィアかイリナ……?」

 

「結局どれ……?」

 

「だ、ダメだダメだ! ゼノヴィアとイリナだけは名乗られたくねぇ!! かといってあんな畜生共と同じ名前なんて死んでも呼びたくもねぇよ!!」

 

「ああだからな。だから自動的にお前がつけろ小僧」

 

「な、なーんか納得できないなぁ……」

 

「私は最初から戦力外なんですね……」

 

 

 結果、愛子は最初から戦力外認定されていた為、ハジメが考えることに。

 結果、吸血鬼少女の名はユエとなった。

 

 

「名はユエだ。つけた小僧には感謝しろよ?」

 

「わかった……それでドライグ? 私はどうすれば良い?」

 

「さっきも言ったが、お前の力なぞ別に要らん。

封印は解いたし、好きに生きろ」

 

「そう言われても、これからどうすれば良いのかわからない……。だから私を使って欲しい」

 

「チッ、とことん俺達の知る吸血鬼共と違うな貴様は。

まあ良い、生き方とやらが決まるまではついて来たくば勝手にしろ」

 

「……うん!」

 

 

 

 

 

「ユエさんに懐かれてますねドライグさん……」

 

「………………………」

 

「ね、ねぇマコト? さっきからユエを見てる目が怖いよ?」

 

 

 そして乳ならぬ父龍帝街道がまさかに開いたとはこの時のハジメ達は知るよしもなかった。

 

 

「て、テメェ……! オ、オレが最初にして貰うつもりだったのに、何でテメーがオレより先にドライグにおんぶして貰ってんだゴラァ!」

 

「ドライグ……マコトが怖い……」

 

「落ち着けマコト。お前には後で好きなだけしてやるから……」

 

「ね、ねぇマコト? 僕の背中が空いてるよ!?」

「一気に賑やかになりましたねぇ……」

 

 

 そしてみょーな四角関係も……

 

 

終わり




補足

地味にデルタドライバー的ななにかを作って魔物狩りをしちゃってるハジメっち。

まあ、別に強化スーツもフォトンブラッドも無いのですがね。


その2
色々とあったがユエさんがついてくるように。

尚、乳――ならぬ父龍帝化してるドライグさんに懐いたせいで、マコトが嫉妬し、ハジメっちはドライグに嫉妬し、ユエっちは……。


愛子先生は、地味にほっとしてるらしい。

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