色々な没集   作:超人類DX

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前回のその後みたいな……


ちょっとその後

 起きるつもりなんて欠片も無かった眠りから覚めた時、目の前は異世界でした。

 

 そんな経験を絶賛体験中である人辞めの青年は、異界レベルで伝説化している己の話を聞かされ、微妙に恥ずかしくて引きこもりたくなる気分にさせられたりと、まあまあに他では経験できなさそうな事をしながら、取り敢えず寝過ぎて二度寝が全くできない日が続く。

 

 自分で自分に愛した悪魔の少女から受け取った消滅の魔力でバラバラにしても瞬く間に元の姿に再生してしまうのでどうにもならない。

 これも、勝つ為に――そしてなにより、彼女との寿命の差を完全に無くす為に進化し続けた事がここで災いしてしまったとしかいえない。

 

 まさに死にたくても死ねない半魔の龍人ことイッセーは、ふと思い出したので冗談半分に伝説化していた自分を呼び出した竜の――愛した悪魔の少女に声質が似ている少女からこの世界についてを教えられながら……ニートみたいな生活をするしかないのだ。二度寝したくても今のところ眠くないから。

 

 眠く無いし、かと言って何時までもこんな秘境じみた洞窟の中でゴロゴロばっかりしているのも飽きる。

 なのでここ最近は最早仮死レベルで永いこと寝ていた事への『運動不足』がどれ程のものなのかを取り敢えず確かめてみるため、自分を呼び出したらしい竜の少女を相手に軽い運動をしてみた。

 

 

「うっお……!?

やっぱりあの時に『スキル』もろとも冬眠状態にしてやったせいか、完全に鈍ってるぜ……」

 

「こ、これで鈍っておるのか? 妾、何をしても平気な顔をしているお主に殆ど泣きそうになりながら抗ったのに……」

 

 

 結果はいくら『無限の進化』という異常があれど、冬眠状態が永いこと続いた事と、リアスとドライグが傍に居ないという現実が『分かりやすいまでの燃え尽き症候群』を発症しているせいで殆ど機能していないせいで、全盛期の20%以下にまで落ち込んでいた。

 

 あらゆる環境と状況と力に即時適応し、際限なき進化を促す異常性かほぼ薄れている現在、全盛期を取り戻すだけでも暫く時間が掛かりそうだ……とボロボロになって地面にひっくり返って半泣きになっている竜の少女ことティオの視線を流しながらイッセーは今の己にそう判断を下していく。

 

 もっとも、今のイッセーに全盛期を取り戻す意欲はその薄れた異常性共々薄れているのだが。

 

 

「それにしたってキミはちょっと貧弱過ぎやしないか? 今の俺なんて全盛期の二割以下なんだぜ?」

 

「お主が規格外過ぎるだけじゃ……」

 

「そうかぁ? 俺が全盛期の頃に戦ってきた連中は総じて反則じみた奴等ばっかだったぞ? 全知全能で何でもできまーすみたいな奴とか……」

 

「時代はそれなりに変わったのじゃよ……」

 

「ふーん?」

 

 

 そんなイッセー的に、この竜人族なるティオはちょっと貧弱というか、現代的なもやしっ子に思えてならなかった。

 ティオに竜の姿なって貰い、そのまま暫く遊んで貰ったのだが、ちょっとひっぱたけば生まれたての牡鹿みたいにプルプルするし、ちょっと小突いただけで数十メートルは吹っ飛ぶくらいに軽いし……。

 

 ティオ曰く、イッセーが二割以下まで力を落としていても伝説レベルに頭がおかしいとの事だが、それにしたってである。

 

 

「ちょっと歪んじゃいるけど、そこそここの世界が平和な証拠ってところか。

それより悪かったな、軽い運動に付き合って貰っちゃってさ?」

 

「……。あんまり役に立てた気がせんがの」

 

「十分だよ。

今の自分の力の程度も知れたし」

 

 

 既に竜から人型に戻り、あんまり役に立ててないと軽く落ち込んでいるティオにお礼を言いながら、肩を回す。

 

 

「結論はこのままだな。戻す意味もそんなに無いし。

―――というかもう戻せそうもないし、メンタル的に」

 

「?」

 

 

 20%以下にまで落ちた今なら、この世界の神によって『イレギュラー認定』でもされて殺しにきてくれやしないか――と、ふと一瞬だけ期待したのは内緒だ。

 

 

「えーっと、それでなんだっけ? キミが俺を呼び出したように、別のところでこの世界に呼び出された人達がどんな人間なのかを見に行くって話だけど……」

 

「ああうむ……。一族にとって伝説となっているお主がまさか実在していたばかりか、本当に呼び出せてしまった衝撃が強すぎて、微妙にそっちの関心が薄れているのじゃ」

 

「おいおい、そんなアバウトで良いのか?」

 

「仕方なかろう……? 本当に召喚に成功したばかりか、見た目は妾とそう変わらない男だったなんて衝撃的過ぎるのじゃ。

もっとこう……年を重ねた歴戦の戦士みたいな出で立ちを想像していたし……」

 

「そりゃあご期待に応えられずに申し訳ないね……。

こちとら昔からガキっぽいって言われてきたよ」

 

 

 ところどころ擦り傷ができているティオを軽く手当てしながら、イッセーは苦笑いをする。

 

 

「会えば伝説じゃなくなる、現実に直面すれば幻滅するものだってドライグが言ってたぜ」

 

「別にそこまで言うつもりは無いんじゃが……」

 

 

 こうしてイッセーはティオに食料を持ってきて貰いながら、とある山脈の再奥の洞窟で暮らす日々が続く。

 別にこの世界の事を知りたい訳でも、見てみたいけでもなかったし、何より今根城にしているこの洞窟は随分と懐かしくて居心地がよかった。

 

 肉親や同族に見捨てられ、逃れてきたリアスと隠れるように住んでいて色々と楽しかった日々を過ごしたあの場所に少し似ているから。

 

 

 

 

 知れば知るほど俗っぽいというか、思いの外普通というか……。

 いい意味でそれまでの想像を裏切ってくるイッセーという伝説の龍の帝王に、最近すっかり行動を共にするようになってしまったティオ。

 

 無論故郷の者達にはまだイッセーのことは報告していない。

 報告したらとにかく連れてこいとか言われそうだし、そうなったらイッセーと過ごす時間が無くなりそうで嫌だったから。

 

 

異常(アブノーマル)?」

 

「そう。感情のある生物が個々にしてもつ人格によって形成される――えーっと、わかりやすく言うと『心の力』ってやつ」

 

「そういった力をイッセーは持っているのか?」

 

「今は殆ど『燃えカス』同然で殆ど無いに等しいけど、俺が――いや、俺達が神やら神に力を与えられて転生してきた奴等に対抗できた大きな理由のひとつなのは間違いないぜ」

 

「俺達? ……その異常とやらはリアス・グレモリーや赤い龍も持っていたのか?」

 

「ドライグは無かったが、リアスちゃんは持っていたよ」

 

 

 神をも葬り去った異界の赤き龍の伝説は一族でも眉唾ながらも『存在していたことを夢想』される程のものであったのだから、馬鹿正直に報告なんてしたら間違いなく騒がれるのは目に見えてるし、エヒトの事もある。

 

 

「なんとなくじゃが、どういったモノなのかはわかった。

しかしどういった異常だったのじゃ?」

 

「リアスちゃんは相手の能力を即座に『模倣』できる異常だったよ。

凄かったのは、種族違いだろうが天敵であろうが関係なくその性質を完全に扱えていたんだぜ」

 

 

 恐らくエヒトといった連中達は既にこの世界に彼が現れた事は把握しているだろう。

 正しくエヒトといった神にとってイッセーの存在は毒そのものである為、本当なら既に排除にかかってきてもおかしくはない。

 

 

「この世界の神がどんなのかは知らないが、多分俺の存在は既に把握してる筈なんだよな。

そろそろ誰か殺しに来てもおかしくは無い筈なんだが……」

 

「どうじゃろうな――神にとっては悪夢のような存在がお主じゃし、手出しすることを躊躇っているのやもしれないぞ?」

 

「へー? やっぱり馬鹿ではねーのか」

 

 

 しかし今のところそんな気配は無い。

 それはきっと、全盛期の二割以下まで落ち込んだとはいえ、それでもイッセーを殺すのは難しいと考えているからとティオは思う。

 

 

「ましてや今の時点で本来の二割以下だとしても、この世界では間違いなく上位の強さじゃ」

 

「時代遅れのロートル……って訳でもないわけか。

うーん、どうも昔のような情熱が無いから、取り戻す気は起きねーんだよなー」

 

 

 そして自分が、寝ている所をたたき起こすように呼び出してしまった以上はその責任を果たすつもりだ。

 

 本人は『眠くなるまで適当に生きるから別にいいぞ』と言うが、そう言われて『はいそーですか』と言えるほどティオは無責任はなれない。

 ましてや、伝説の存在なのだから。

 

 それに彼と過ごす日々は実に刺激的だ。

 

 

 『キミは少し貧弱過ぎるし、暇すぎるからちょっとだけ此方側の戦い方を教えてやるよ』

 

 

 そう言って今人格の力とというものといった、こちらの世界には無い戦い方――というよりは力について教えてくれたりもした。

 それによりティオ自身も地味に強くなれたりもしたし、これもティオにとっては意外な事に、教える時のイッセーはとてと親身になのだ。

 

 

「ほほーぅ、魔法ね。

レベルを上げで物理でぶん殴るしか能がなくて専門外過ぎたが、魔力自体はあるぜ? ほれ」

 

「む……禍々しいの」

 

「おっと、触るのはおすすめしないぜ? これはリアスちゃんの母方の実家が持っていた消滅の魔力だから」

 

「? 何故イッセーが?」

 

「あーうん、俺の異常とリアスちゃんの異常が噛み合ったというか、リアスちゃんから分けて貰ったというかー……ハッスルしてたら使えるようになったっつーか」

 

「ハッスル? ……………ああ」

 

「今思えば、奴等をぶちのめす為にリアスちゃんとドライグの三人で隠れながら修行していた日々が一番楽しかったかな……」

 

 面倒見が良いというか、包容力があるというか……。

 

 知れば知るほど、何故リアス・グレモリーという悪魔の女がイッセーに惹かれたのかがよーくわかった気がした。

 

 そう……わかった気がしてきたからこそ、ティオは少しずつ不満を感じ始めるのだ。

 

 

「え、リアスちゃんについて知りたい? おう、教えてやるぜ? リアスちゃんと出会ったのは、あの子が神に力を与えられて別世界から転生した人間に嵌められて、同族から見捨てられて逃げていた時に出会ってな?」

 

 

 自分の声は喋り方こそ違えど、そのリアスにとても似ているらしい。

 最初は妙な偶然もあったものだとティオは軽く考えていたのだが、イッセーを知れば知るほど……思いの外親身で思いの外優しくて、思いの外ドSで、思いの外子供みたいに笑う姿を見ている内に、そのリアスとの関係を羨ましさのようなものを感じるようになった。

 

 

「ここみたいな洞窟で逃亡生活やったり、一枚の毛布に二人して寒さを凌ぐ為に抱き合って寝たり…………ふふ、あの子と出会ってからは辛いことも含めて全部が幸せだったぜ」

 

 

 簡単に言えば、ティオはリアスが羨ましかった。

 神の寄越した転生者がリアスの同族に取り入り、やがて支配し、何故か毛嫌いされていた事で陥れられた彼女がイッセーと共に生きた日々が。

 

 心底イッセーに愛され……そしてイッセーを愛していたのだろうリアスが。

 

 

「今でも好きなのか? リアス・グレモリーが」

 

「そんなの当たり前だろ?

クサイ台詞になってしまうが、もう二度と会えなくなっても、あの子の心もドライグの心も俺の中にちゃんと在り続けてくれる。これまでも、そしてこれからもな……」

 

「………そうか、少し羨ましいのじゃ」

 

「心配しなくても、キミだって好きな男が見つかりゃあ解るようになるさ。

なぁに心配すんなって? リアスちゃんにはちょっと負けるけど、キミは十分美人だぜ」

 

「その言われ方はなんだかムカつくのじゃが……。それに子供扱いはやめて欲しいのじゃ」

 

「あっはっはっはっ! わりーわりー!」

 

 

 知れば知るほど。

 声が似ている事が逆に辛いと思う。

 

 

「イッセー」

 

「のわっ!? リ、リアスちゃん!? ―――って、ビックリしたキミか。

やっぱり、普通の口調で喋るとまんまあの子だな……」

 

「…………」

 

「ご、ごめんごめん、別に重ねてる訳じゃないぞ? 髮の色だって違うし」

 

 

 いっそ、暴君で残虐で酷い男であってくれた方が良かった。

 そう思ってしまうほどに……。

 

 

 

 

 

 本来の歴史とは違い、ハーレム王というものには何の興味も示さない。リアスが居たから。

 

 どれだけの美女やら美少女に迫られようが、彼は浮気なんてしない。リアスだけしか見なかったから。

 

 かつてリアスを裏切った眷属連中が挙って転生者に抱かれたのを目の当たりにした嫌悪感のほうが強すぎるし、そもそも最後まで何であの転生者がリアスを毛嫌いして陥れてていたのかが理解不能だった。

 お得意の知識の中でのリアスがそいつにとって気に入らない性格をしていたかなのか――それとも意味なんてたかったのか。

 

 どちらにせよ、一誠にとってリアスには例え死に別れたとしても変わらぬ想いを抱くし、またリアス以外の異性とはそうなることは絶対に無いと思っている。

 

 異世界にリアスの声にそっくりな竜族の少女に呼び出された時は『色々とデキすぎだ』とも思ったが、別にこのティオという少女は声こそそっくりだけど中身はまったくのリアスとは別物なのだ。

 

 時折ティオが自分の名を呼ぶ時にそっくりすぎてビビる事はあるけど、決して重ねてはないし、重ねては流石にリアスにもティオにも失礼すぎる。

 

 そんな、意外な程そういった生真面目さを見せるから、ティオに懐かれているとは気づかずに……。

 

 

「これが迷宮って奴かー! 鍾乳洞みたいなんだなー?」

 

「お主にしてみれば遊びにもならんじゃろうが、あの洞窟に籠りっぱなしも飽きるじゃろうと思ってな」

 

「別に飽きなんか無かったけど、うーん……こういう所に来ると妙にワクワクしてくるから割りと来て正解だったかも」

 

「取り敢えず散歩がてら、下へと進んでみたらどうじゃ? 下へと進むほど魔物の強さも上がってくる」

 

「まるでゲームみたいだな……よーし」

 

 

 

 異世界にて目を覚ましてから約半年。

 それまではずっととある山脈の奥深くにあった洞窟から出ようとしなかった一誠は、散歩がしたいというティオに付き合う形で、奇しくも今現在異世界から召喚されたとある少年少女達が訓練の為に入っている迷宮にやって来ていた。

 

 地味に久々となる生の人間達が出入りしている所に然り気無く混ざり、迷宮に入場する団体客に然り気無く紛れ込んで入ったオルクス大迷宮は、一誠にとってはあまり見慣れない魔物やら鉱石やらに溢れていたので、意外にも新鮮だった。

 

 

「俺達の世界にもこんな施設があったらなぁ。

もうちょいリアスちゃんにひもじい思いをさせる事もなかったのに……」

 

 

 等と横を歩くティオが何か言いたげな顔をしているのも気づかず、過去を思い返すイッセーは、本能的に姿を見て『アレはヤバイから襲えない』と出会す度に逃げ出す魔物のお陰で特に足止めも無くどんどんと下層へと降っていく。

 

 

「お? 向こうで団体のお客さんが居るみたいだが、アレが例の?」

 

「うむ、例の召喚された者達じゃ。

どうやら外で聞いた通り、かなりの人数を召喚したようじゃのう……」

 

「へー? ……どう見てもまだ子供な気がするけど、大丈夫なのか?」

 

「さてな、エヒトの考えなぞ知りたくもない」

 

 

 そして特に何もないまま、二十階層まで降り、少し開けた場所に出ると、向こうの方で数人に分かれて魔物を狩っている集団を発見する。

 どうやらティオの言う、イッセーとは別の異世界から召喚された者達らしい。

 

 別に隠れる理由なんてこれっぽっちも無いが、何と無く物陰からティオと一緒になってどんな者達なのかと観察してみると……どう見てもただの子供にしか見えなかった。

 

 

「あんま戦い慣れて無いし、見たところまだ学生くらいの年齢じゃないか?」

 

「召喚された者達の殆どはエヒトによって、こちらの世界の一般人の数倍から数十倍の力を既に持っているのじゃ」

 

「ふーん? ああ、今先頭で剣振り回してる彼は確かにそうっぽいな」

 

「しかし……ふむ、困ったのじゃ。

イッセーのインパクトが強すぎて全く興味が持てないのじゃ」

 

「そこで俺のせいにされてもな……」

 

 

 天翔閃! と言いながら魔物を吹き飛ばしている少年を見ながら、イッセーはティオの言葉に対して困ったように笑う。

 

 

「うむ、もう良い。

どういった連中なのかもわかったし、そのまま通りすぎて下に行くのじゃ」

 

「ん? おう」

 

 

 当初の目的がイッセーのインパクトが強すぎてほぼ形骸化してしまった。

 結局ティオ自身も予想した通り、今更異世界召喚者達を見た所で、インパクトの欠片も感じず今回はそのまま彼等を放置して散歩を続けようとイッセーに言い、ちょうど通り道になっている彼等に近づき……。

 

 

「どうも、寒いですねー?」

 

「…………」

 

 

 道端で出会したご近所さん感覚の挨拶をイッセーとしながら、『え?』って顔になっている少年少女と大人数人達の視線を背に奥への進もうとしたのだが……。

 

 

「な、なんだこりゃあ!?」

 

「!? い、いかん! それはトラップだ!!」

 

 

 通りすぎてから約数メートルを歩いていたティオとイッセーの耳に、突然の騒然となる音と声が聞こえたの『はて?』と振り向くと、何やら彼等の足元に巨大な魔方陣が展開しているではないか。

 

 

「ありゃなんだ?」

 

「強制転移の陣が発動したようじゃな。

どうやら誰かが罠に掛かったようじゃが……妙じゃな、こんな場所にあのような罠があるのは」

 

「普通じゃないのか?」

 

「意図的に何者かが仕掛けたにしては『デキすぎている』のじゃ。

まるでこうなることを見越しているかのように……」

 

「ふーん?」

 

 

 この世界のトラップ事情なんてさっぱりなイッセーがティオの話を聞きながら、騒然としている者達を見つつふと足下に視線を落とし――――ティオに話しかける。

 

 

「ねぇ、俺達の足下にまで広がってるって事は、俺達にもそのトラップの影響があるってことなのか?」

 

「へ? ……あ」

 

 

 悪魔がよく昔やってた気がする転移の魔方陣が自分達の足下にまで展開されていることへの影響を訊ねられ、珍しくティオは今になって気づいたらしい。

 

 

「……おーけー、そのリアクションからして影響あるんだな?」

 

「す、すまん……ちょっとボーッとしていたのじゃ」

 

「気にするな! ボーッとして見落とす事なんかよくある事だし?」

 

 

 慌てて謝るティオに、ヘラヘラしながら気にするなと、ジュラルの魔王みたいな事を言うイッセーはそのまま慌てふためく団体さん達と共に転移された。

 

 

「結構下層地点まで来たのか?」

 

「じゃな。そしてどうやら今の奴等では対応できない魔物が現れたようじゃ」

 

 

 そして彼等に気づかれる事無く巻き込まれて一本橋のようなフロアに転移したイッセーとティオは、骸骨みたいな魔物に後ろ塞がれ、兄弟な獣タイプの魔物が前方から突進してくるのにパニックとなっている人達を、呑気に眺めている。

 

 

「おいおいちょっとヤバイんじゃないか? あの子等全然歯がたたないじゃん」

 

「あの獣はこの迷宮内でもそこそこ強い部類じゃ。

今の彼等では対応しきれんのじゃよ」

 

「あらま、運が悪いねぇ……」

 

 

 急に訪れた死ぬかもしれない修羅場に、経験が圧倒的に足りていない子供達はパニックになり、大人組達はなんとか守ろうとしているが、苦戦している様子を事実他人事のように眺めているイッセーとティオ。

 

 

「ま、この国の騎士達がおるのじゃから、生きては帰れるじゃろうて」

 

「ま、何事も経験だわな。精々頑張れよ勇者達ー」

 

 

 お互い手助けするつもりは無いらしい。

 助けない理由は無いが、助ける理由も無いというそんな理由で。

 故に地上で買っておいた変な果物を二人して食べながら、そのまま橋から更に下の階層に降りようとしたのだが……。

 

 

 

「ま、待って! この骸骨達の後ろに人がいるわ!!」

 

「アレはさっきすれ違った……!? ま、まさかあの二人が俺達をここに!?」

 

 

 が、間が悪いとはまさにこの事なのか、必死こいて戦っている中、襲われることもなくただ此方を見ている二人組というシチュエーションは、この状況を作り上げた元凶として見なされるには彼等的には充分だったらしい。

 

 

「お、おい!! お前らは誰だ!? 俺達に何の理由があってあんなトラップを仕掛けた!?」

 

 

 

 

 

 

「え、うそん? 俺等が黒幕みたいに言われてないか?」

 

「間が悪すぎたのじゃな……まあしかし無視すれば別に――」

 

 

 

 必死な顔でこちらに向かって叫んでいる子供達が明らかに自分達を疑っているものの、スルーしてしまえば別に問題は無いと、改めて橋から降りようとしたのだが……。

 

 

「神威!!!」

 

 

 自分達を倒せば魔物が消えると判断したのだろう。

 先頭の剣を持っていた少年が、その切っ先をイッセーとティオに向けると、光線のような光を放ってきた。

 

 

「え……?」

 

 

 その瞬間イッセーはほぼ本能的に一緒になって棒立ちしていたティオの手を取ると、守るように彼女を抱きながら少年達の攻撃を背で受けた。

 

 

「や、やったか……!?」

 

 

 どうなら彼等は自分達を人に化けた魔物か何かだと思っているらしく、事実二人は似たようなものだったりはする。

 だからこそあの妙に怪しい二人組を倒せばこの魔物達は消えると思っての攻撃だった。

 

 だが……。

 

 

「う、嘘だろ……光輝の放った一撃だぞ?」

 

「ま、まったく効いてないの……?」

 

 

 魔物達は消えず、そしてその攻撃は片方を守る様に覆い被って背で受けた者の服をちょっと破った程度しか効いてないのだ。

 

 それはある意味の絶望であり――

 

 

「きゅ、急になんじゃ……?」

 

「あ、悪い……つい反射的に」

 

 

 恐怖であった。

 

 

「しょうがねーな、ボランティアしてやるよ……まったく。おいティオ、敢えて正面から渡るぞ?」

 

「……へ? え、えっと……う、うむ。

そ、そうしたいのなら妾もついていくのじゃ……」

 

 

 割りと優しめに離されたティオは、なにげに『キミ』呼ばわりから初めて名前で呼ばれて色々な意味で動揺してしまう。

 イッセーからすれば、ついリアスを庇うような感覚でやっただけで他意はまるでない。

 

 無いし、同じように動揺する異世界人達の方へとゆっくりと歩きながら、邪魔な骸達を虫でも叩き殺すかの様に片手でバラバラに粉砕していく姿は、攻撃を仕掛けた側からしたら殺しに来たと恐怖するに十分だ。

 

 

「こ、こっちに来るぞ!!」

 

「ちょっと待って、何故髑髏の魔物を倒してるのかしら? まさかあの二人は関係ないんじゃ……」

 

「だ、だとしてもこちらから仕掛けてしまった時点で、敵と見なされいる可能性は高い! つまり俺達を……」

 

「ぜ、全員構えて一斉に攻撃をするんだ!!」

 

「待って光輝! まずは話を―――」

 

 

 イッセーは別に彼等の攻撃に対してなんとも思ってはいない。

 ちょっと服を焦がされた事には思うところは無くはないが、状況的に敵扱いされても致し方ない部分もあるとは思えるし、今こうしてよくわからない髑髏魔物を粉砕しながら歩いているのも、ちょっとしたボランティアのつもりなのだ。

 

 だが、パニックになった光輝と呼ばれる少年に言われるがままに魔法だなんだを一斉に放ってきた彼・彼女達ちしてみれば、化け物が殺しに来たとしか思えないし、必死になって迎え撃とうとする。

 

 

「…………」

 

「う、嘘でしょ……き、傷ひとつついてない」

 

「だ、誰なんだよアレは!?」

 

「ひっ!? こ、こっちに来る!?」

 

 

 しかしイッセーはそんな彼・彼女達の攻撃を平気な顔で受けきりながらテクテクとティオを背にしながら歩き、やがてパニックになって前方で獣の足止めをしていた者達の方へと逃げてしまう。

 

 

「なっ!? お、お前達!? 何故こっちに……」

 

「き、聞いたくださいメルドさん! このトラップを仕掛けたと思われる二人組が……!」

 

「トラップを仕掛けた!? 何を言って――」

 

「き、来た! や、やめろこっちに来るんじゃねぇ!!」

 

 

 普通に阿鼻叫喚状態になってしまい、前方で錬成師を天職にしているステータスが貧弱だと馬鹿にされている少年と足止めをしていた騎士団長が必死にパニックになる生徒達と、咆哮を上げながら襲いかかるベヒモスに挟まれながら落ち着かせようと声を張り上げ――

 

 

 ド――

 

 

「む!?」

 

 

 悠々とトラウムソルジャーを叩き殺している、二十階層ですれ違った青年と、その青年の後ろをなんだか動揺した様子でついていくる少女と思われる者を見る。

 

 

 ラ――

 

「あ、アレは二十階層ですれ違った……」

 

「お、恐らくはあの二人が俺達をここに転移させた筈です! その証拠に俺達が魔物に教われている最中、遠くから見ているだけでした!」

 

 ゴ――

 

「見ているだけだった? 待て、それは偶々トラップに引っ掛かった俺達に巻き込まれただけでは……」

 

「そ、それに! 俺の攻撃がまったく通用しなかった! それはつまり人に化けた魔物でしょう!?」

 

 ン――

 

 

 と、あーだこーだとやっている内に、メルド達にとっては謎の青年と女性になるイッセーとティオはカタカタと絶望に震える子供達や警戒して武器を構える騎士団の間を普通に通りすぎ……橋の材質を錬金で作り替えてベヒモスの足止めをしていて疲弊している少年横も通りすぎ――――

 

 

 

「波ァァァァッ!!!!」

 

 

 

 強大な赤き閃光を両手から放ち、ベヒモスを文字通り消滅させた。

 

 

『……………………』

 

「げー……ホント弱くなったな」

 

「う、うむ……。で、でも凄いのじゃ。びっくりじゃ……」

 

「まあ、無事に上手いこと消し飛ばせたし、ボランティアもここまでだな」

 

「じゃ、じゃな。

しかしこ奴等が全員して唖然としてしまったまま動かぬぞ?」

 

「そっとしとけよ……パニックで疲れたんだろうし。

これで取り敢えず誤解が解けたらそれでいいし」

 

 

 道端に偶々落ちてたゴミを拾って指定のゴミ箱に捨てたかのように魔物達を絶滅させたイッセーは、そのままずっと目が泳いで動揺しまくりなティオと共に奥へと去る。

 

 彼等の視線を背に。

 

 

 

 

終了

 

 

 

 その生きた環境が、リアス一筋な性格へとさせた影響だろうか。

 それ以外は地味に誠実なせいで、一人の竜の娘さんが日増しに複雑な気分になっていくとは知らないイッセーは、ひょんな事から出会った少年少女と共にちょっとした冒険をすることになった。

 

 

「はぇー……。

モテるねぇ彼は? 吸血鬼ちゃんに兎ちゃんに元の世界のクラスメート……? すっげーな?」

 

「む、羨ましいのか?」

 

「いーや全然?

昔ぶっ殺してやった奴があんな感じで何人の女と寝てたのを見たせいか欠片も思わないな。

まあ、彼はソイツとは違って小賢しい洗脳なんざしちゃいないから全然状況は違うけど。

第一俺にはリアスちゃん以外に異性としての魅力なんて感じなかったし、あの子以外の異性なんて全部同じにしか見えなかったわ」

 

 

 目の前でハーレムモードになってる少年を眺め、特にどうとも思ってない反応に『やっぱりな』と思わされるティオだったり。

 

 

「同じ、か。寝ぼけてそのリアス・グレモリーと間違えられる妾は何なんじゃろうな?」

 

「ぅ……! わ、悪かったって……」

 

 

 微妙な認識にモヤモヤさせられたり。

 

 

 

 

 

 

 

 

「初めましてになるかしら?」

 

「そうか、お主がリアス・グレモリーか……。

なるほど、確かに声は似ている……」

 

「本当ね……。ごめんなさいね? あの子が迷惑をアナタにかけているみたいで……」

 

「全くじゃ。

毎度毎度寝ぼけて妾をお主と間違えるし、太っただなんだと言われるしで、妾は何度ひっそりと涙したか……」

 

「直接あの子と会えるのなら、怒ってあげたいけど、私はもう――」

 

「わかっておる。

この状況も所詮は『夢』でしかない。

それに……お主に間違えられても良いから妾は……」

 

「私が言えた事ではないけど、ここから先も辛いわよ……?」

 

「構わん、とっくにその『覚悟』はしているのじゃ……!」

 

 

 夢で彼が愛した女と会ったりと。

 竜の少女の冒険は続く。

 

 

終わり




補足
 お散歩感覚でこの世界の食べ物なんか食べながら、ティオさんと遊んでるだけのお話です。

合間にティオさんを色々と調教(意味深)したりもするだけの話です。


その2
眠ってる時にティオさんの声で『起きてイッセー?』と普通口調で呼ばれながら起こされると飛び起きるらしい。

 理由は……まあ、そういう事。


その3
これでもかなり弱体化してます。
無神臓も現在心が燃え尽きてるので全く機能していないですし、本人も戻せるとは思ってはいないらしい。

 そして、誤解で攻撃を仕掛けられた際、つい反射的にティオさんは庇ってしまうのは――リアスさんにやってたことをついやってしまっただけです。


その4
まさかそうされるとは思わなかったので、暫くドキドキさせられてしまった模様。

 基本的にリアスさんかドライグさんの事を話す時しかテンションが上がらなくてモヤッてたから余計に……。

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