チラ裏行き決定!
ぼくがわたしに変わった日。
でも、わたしがぼくに戻れた日。
理不尽を叩き潰すもっと強い理不尽。
誰よりも強くて、誰よりも凄くて『ボク』以上に歪んだ心を持っていた男の子。
それが僕でもある私が出会った運命。
浮世絵離れしていて。
いつもどこか物足りなさそうな顔をしている変な男の子。
でも私は――いや、僕だけは知っている。
父が死んで豹変した
我を通す為の力を持つあの姿が……。
だからこの世界に来たことは、ある意味で幸運だと思った。
だってやっと私――いや、ボクは少しずつ知ることができたのだから。
「恵里をこれ以上お前のやり方に付き合わせるな!」
「だ、そうだぞ? どうやら向こうはお前だけは仲間認定しているみたいだ」
「だから? 一誠くんの様に、ボクの生き方はボクが決める。
誰かの決めた正しさなんて知った事じゃないよ」
「お前、その口調は……」
「ふふ、懐かしい? ほら、もう別に取り繕う必要もなくなってきたからね?」
だから私もボクに戻る刻だ……。
紆余曲折あり、見た目からして豹変した南雲ハジメと光輝達がとある迷宮内で再会し、豹変しているハジメが出会したとある魔人族を蹴散らした直後だった。
元々いじめられっ子だったハジメの豹変さに戸惑う殆どのクラスメート達の中、ある事が切っ掛けでハジメに実は密かに想いを寄せていたりした、クラスでも指折りの美少女が、生きていたハジメに対して涙を溢していたりする。
が、そんな話は全て――
「あーぁ、見事に外れを掴まされたみたいだね?」
「………チッ、あのボケ老人が、今度会ったらタダじゃおかねぇ」
「ふむ、しかしこんな場所まで飛ばされるとはのぅ」
『っ!?』
この世界に飛ばされてからはどこまでも身勝手で、それでいて何を考えているのかさっぱりわからない一派――といっても二人組が、突然姿を現したせいで、色々とぶっ飛んでしまったのだから。
「ひょ、兵藤と中村……?」
「な、なんでここに? しかもあの女の人は……?」
ある意味クラスの中でも一番『話の通じない』二人組の出現は、ハジメを含めた全員が息を飲まされた。
「? あれ、向こうに皆がいるよ一誠くん?」
「あ? あっそ……」
「ほほぅ? つまりあそこで呆けた顔をしている者達がエリとイッセーの仲間か?」
「仲間……とは少なくとも向こうは思ってないと思うけどね?」
召喚人を出会い頭に半殺しにし、この世界の為に戦うことを当たり前の様に拒否し、そのまま去ってしまったイッセーと恵里。
そんな二人が何故この迷宮に居るのか――と困惑と少しの恐怖を特に一誠に対して抱いているクラスメート達を代表して、天職が勇者らしい光輝が恐る恐る話し掛ける。
「兵藤と恵里だよな? 何故二人がここに?」
「あ?」
「は?」
オルクスの迷宮の最下層地点に二人揃ってしかも軽装――それも傷や汚れといったものも無く居るのかが不可思議な為の質問に、一誠と恵里――特に恵里はいきなり名前で呼んできた光輝に対して嫌そうな反応だ。
「え……?」
その恵里の反応に困惑する光輝。
「え、どうしたんだ?」
「いや、いきなり『単なるクラスメートの一人だった人』からそんな気安く名前を呼ばれたら驚くし、気色悪いと思うでしょうよ?」
「き、気色悪い!?」
わざとらしく一誠の背中に隠れながら、ハッキリ言い切る恵里に、生まれてこの方、その恵まれた容姿で女子に拒否られた事が無かった光輝は多大なショックを隠せない。
「…………」
「悪いけど、『ボク』を名前で呼んで良いのは『ボク』が良いと認めた相手だけなんだ」
「ぼ、ボク……?」
それに加えて、恵里の口調がどこか違う事にもクラスメート達は違和感を覚えた。
そして一誠はといえば……。
「チッ、随分と遠い場所に飛ばされたみてーだな」
「うむ、ざっと世界の反対側じゃな。
ここは迷宮の最下層に近い地点じゃ」
見知らぬ女性とあまり機嫌のよろしくない様子で話し込んでいる。
「ここに来たのは単なる事故だから、すぐに出ていくよ」
「っ!? ま、待て! その事故がなんなのかはわからないが、せっかくこうして再会できたんだ、そこに居る行方不明だった南雲に言うことはあるが、とにかく待ってくれ!」
「だってさ、どうする一誠くん?」
「よくはわからんが、取り敢えず妾は腹が減ったぞ」
「……。アイツ等一人一人から金集れば、暫くは普通の飯が食えそうだな……」
加えてそのままどこかにまた去ろうとするので、光輝はその直前に再会したハジメを含めて一応留まらせようと説得する。
一誠が何気にここまで生きているクラスメート達を一瞥しながら、微妙に物騒な事を呟いていた気がしたが、少し離れた所で恵里と謎の女性と共に座り込む辺り、一応とどまるつもりではあるらしい。
それにホッとした光輝は、今度は行方不明で豹変しているハジメをキッと見据える。
「さっきは何故無抵抗だった人を殺したんだ? あの時点で勝負は決していただろう?」
どうやら一誠達が現れる直前にゴタゴタあったらしく、その事について問い詰めているようす。
しかしいじめられっ子であったハジメの答えはどこまでも豹変していたものだった。
とはいえ、無抵抗の人を殺した云々で責め立てる光輝と、敵だから殺したまでだと毅然と返すハジメの論争に発展してしまっており、正直一誠と恵里にとってはどうでも良すぎて欠伸が出てしまう。
「ねぇ……そういう話をここでするつもりなら、私達は出ていくよ?」
「っ!? じゃあキミ達に聞きたいが、魔人族であろうとも抵抗できなくなった相手を殺す事が正しいと思えるのか!?」
恵里のつまらなそうな顔に、光輝が問う。
よりにもよって恵里と一誠に。
「逆に生かす理由がわかんねーな」
「っ!? ではお前は南雲に同意できるというのか?」
「は? 南雲? 南雲ってどれ?」
「なっ!? か、彼がそうだ! ちょっと変わってしまっているが……!」
今更ながら、恵里以外のクラスメートの名前と顔すら全く認識してこなかったせいで、南雲とやらが誰なのかもわかってない一誠のあんまりな態度に、別の意味で憤慨した光輝がハジメに指を差す。
「ほら、前にイケイケのギラギラ状態だった一誠くんが殺しそうになっていた吸血鬼を庇ってた……」
「………。ああ、いつぞやに死にかけてた奴か。そういや居たね」
「……。本当に容赦が無かったのじゃな……」
光輝が指を指した先に佇む、こちらを警戒するように睨むハジメと、そのハジメの背に隠れながらこちらを睨む吸血鬼の少女に、一誠はああと思い出す。
「え、二人は南雲君と会っていたの?」
特にハジメ達が警戒した面持ちなのに困惑しつつ、香織が問い掛ける。
「だからお前も誰だよ?
……。まあ良いや、少し前にちょっとね。
まさかまだ吸血鬼と行動しているとは思わなかったが……」
そう言いながら、以前のような『うもはも言わさず殺す』というものではなく、関心のない目でユエと呼ばれる吸血鬼の少女を一瞥だけする一誠。
香織の事すら欠片も認識はしてなかったらしい。
そんな一誠の身勝手通り越した態度に、クラスメートの殆どは『敬遠』するような態度を見せ始める中、軽い因縁を持つハジメが強い眼差しでユエを庇うように一誠に声をかける。
「その様子からして、落ち着いたみたいだな? ………この世界の事を少しは知ったからなのか? どうやらそこの奴は人間じゃないみたいだし」
そう言って一誠の横で退屈そうにしている女性――ティオについて訊ねる。
互いに仲良くは無い――特にハジメから放たれる一誠への警戒心に、光輝達クラスメートも困惑したままだ。
「少なくとも、そこの吸血鬼を殺そうとは思ってはいないな」
「…………」
そんなハジメに一誠はどうでも良さそうに答える。
どこまでも興味がないとばかりに……。
「そうか……。
だが俺は、あの時お前がユエにしようとした事は許さない」
「あっそう、お前なんぞの許しなんぞ欠片も要らねぇな?」
「っ……!」
修羅場を潜り抜けて強くなった。
けれど一誠の目はあの時と変わらない。
どこまでも自分達を見下すあの目だけは……。
それが本能的にハジメのコンプレックスを刺激するのだ。
「やめてハジメ……大丈夫だから」
そんなハジメをユエが宥め、一誠を真っ直ぐ見据える。
「私はどうなっても良い。けれどハジメを傷付けたら許さない……!」
「うーん、悪役ムーブって奴かこれが?」
「まー、あの頃の一誠くんは普通に極悪人呼ばわりされてもしょうがなかったんじゃないかな?」
「妾も一歩間違えていたら殺されていたからのぅ……」
ユエの言葉を鼻で笑う一誠に、恵里とティオは苦笑いだ。
恐らくハジメと一誠の敵に対する考え方だけは同じである。
だが根本的に違うのは、一誠の場合はこの世界の事情を知った上でもやはり『人外』は嫌いなのだ。
それこそハジメとは相容れない程に。
「と、取り敢えず地上に戻らないか?」
そんな険悪ムードに耐えきれなくなったのか、誰かがそう言い、一旦ハジメ達は地上へと帰還するのであった。
「妾は竜人族じゃ。
最近現れた強すぎる同族の気配を辿っていたら、イッセーとエリに出会ってな? まあ、その強い気配がイッセーだったから、今はこうして同行しているのじゃ」
「……。殺されそうになったとかはなかったのか?」
「あったぞ? 下手をすれば本当に殺されてしまいそうじゃったが、エリとドライグのお陰でこうして生き延びられたぞ」
「ドライグ……?」
「ああ、ドライグというのは――ぎゃふっ!?」
「それ以上余計な事をベラベラ喋ると、その舌切り落とすぞボケ」
「ぅ、うぅ……! い、痛いのじゃ。
け、けど……また胸の奥が高鳴るのじゃ……ふふふっ♪」
『……………えぇ?』
ちょいと個性的な竜人族に若干引きながら。
終わり
当たり前の様に光輝達や、ハジメ達ともの相容れることなど無かった一誠一行は、『こうなった原因』となる神を引きずり出す方法を模索する。
「エヒトってのをぶち殺すのは確定した。
まあ、神なんて名乗る輩はそこそこ殺してやった事もあったし、何とかなるとは思うが、油断はしねぇ」
そう言う一誠は、無意識に封じてきた己の気質の封印を解きはじめる。
自分自身の自我そのものとも言える無限進化の異常性を。
その性質は共に居る恵里とティオにまで作用し始める。
「ねぇ一誠くん……聞いてもいいかな?」
「? なんだ」
「白音って人は一誠くんの元カノなの?」
「……………………あ゛?」
その過程で恵里がヤバイ方向に進み始めたり。
「だって、夢? みたいな場所でその白音って人が居て、元カノだって言い張ってたから……」
「ふざけろ、俺はあのガキを殺してやった程嫌いなんだよ……!」
「そ、そうなんだ? うん、安心したよ……ホント」
「では一誠は私のモノだとか、身体も重ねたと宣っていたリアス・グレモリーの言葉も戯言―――」
「…………………………………………」
「だ、だよな? うむ、妾はちゃんとわかっているからそんな顔はしないで欲しいのじゃ……」
ウザい過去から干渉されたり……。
「これが妾の龍拳爆撃じゃぁぁぁ!!!」
『ふむ、俺に近いだけあって技に関しては飲み込みが早いな、あの小娘は。ドラゴン波もいけるな』
「これ以上つきまとわれるくらいなら、戦力の駒くらいにはなって貰うつもりだったが……」
ティオには培ってきた技を。
「気に入らないし、俺はお前とあの白ガキを同一視はしていない。
だが、お前は確かに気質があの白ガキに似てる――だからこそだ」
「食べ尽くす異常……これがボクの?」
「ああ、俺がもっとも恐怖し、勝てないと一度は思わされた白ガキと同じ異常性だ」
恵里にはその心を。
その結果、人からも魔人からも亜人からも――神をも恐怖させる凶悪なチームが完成してしまう。
「あー、もう良いわ。お前の茶番にはもう慣れたし、何より飽きたわ」
「そ、そんな……! お、俺はっ!」
そのチームはハジメ達に挫折を与え。
「うう、不味いよぉ……。
あーぁ、やっぱり一誠くんの味を最初に知っちゃったせいで、全部が不味いや」
「ま、魔法を喰った……だと?」
「取り敢えずさ……ボクもそろそろ鬱陶しく感じたし、皆死んでよ?」
光輝達には恐怖を。
「どーもぉー? そこいらのチンケな赤龍帝でーっす。えーっと、あんたが神様? 取り敢えず――死ねや?」
『神ごときに絶滅タイムを与えてやる。光栄に思え』
世界に後悔を。
「ま、まだだ……兵藤……まだ俺は……!」
「しつこい奴だな。
この際だから言ってやろうか? 無駄なんだよ無駄。
大事なお仲間は殺すつもりはねーし、好きなだけ仲良くヤってりゃあ良いだろ?」
「俺は……! お前だけは……!」
「うっせーな、お望み通り世界から出ていってやるってのに。
なんだ? そんなに自分を肯定してくれるこの世界が気に入ったのか? まあそりゃあ気に入るよなぁ? 女――まあ、畜生ばっかだけど女に囲まれて、強い力も手に入れられて振り回してキャーキャー言われりゃあそりゃあ気分も良いわなぁ? 何時だかあの勇者に対して偉そうに言ってたが……まあ、結局お前も――そして俺も奴と同じ穴の狢なんだよ」
「…………」
「自分だけは違うみたいな位置に居ようとしてんじゃねーよ? 俺もお前も、力を持っただけのチンケなチンピラだ」
没集――終わり
補足
考え方というか、敵への対処こそ似てるけど、その対象がD×S一誠の場合は無差別レベルだから、ハジメっちとはまさに相容れない。
その2
取り敢えず神様破壊したら世界からおさらばする気ではあるが、覚醒しても散々煮え湯を飲まされたハジメっちは一度は勝ちたいと思っているらしい。
……まあ、チート化しても無神臓の適応速度においつけずに結果負けるのですが。
その3
力を持って我を通すやり方なんてどんな形であろうが同じだという持論をこの一誠は持ってます。
だから自分自身も、勇者もハジメっちも所詮考え方ややり方こそ違えど『同じ』だと見なしています。
だからそこいらのチンケなチンピラと自分を評しているのです。