色々な没集   作:超人類DX

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チラ裏よろしく


同属嫌悪

 とんだ痴情の縺れに巻き込まれ、挙げ句の果てには協力しろと言うから協力したつもりなのに、あーだのこーだのと駄目出しされたので、ついイラッとして雫をブス呼ばわりしてしまう一誠。

 

 当然はっ倒されたのだが、反撃しないだけ少しは『やばい、ブスは言いすぎた』と思っているのかもしれない。

 

 しかしながら結局その痴情のもつれとなる中心の一人である南雲ハジメは、白崎香織を一応は振った形になり、解決した筈だった。

 

 だが一誠、恵里、ティオのどちらの側でもないはみ出し者チームは現在まだこの痴情の縺れに巻き込まれていた。

 

 

「私は南雲君が好きなの……。ずっと前から」

 

「あ、ああうん……」

 

 

 というのも、イッセーのせいで完全なる玉砕状態になってしまった白崎香織はこれにて失恋で幕を閉じた――という訳ではなく、それでもハジメに対する想いを絶賛ぶちまけ中だった。

 

 なんというか、却って燃え上がらせてしまったというべきなのだろうか……。

 それでも断れば良いものの、ハジメの対応も微妙なものなせいで、この縺れは今現在も縺れたままだったのだ。

 

 

「どうするのよ、アナタが白黒つけすぎたせいで、香織が余計南雲君に……」

 

「知るかよそんなの。

つーかほとほと迷惑な奴等だわ」

 

「流石に見ててイライラしてくるよホント……」

 

「なんというか、片方はしつこいし、片方な返答が曖昧になり始めてるせいじゃなこれは」

 

 

 どうしても付いていくと言って聞かない香織。

 最初こそユエが好きと言いきった癖に段々返答が曖昧になり始めるハジメ。

 

 既にあの南雲なんかに……といった意味での衝撃により、香織を狙ってたらしい男子の何人かの心は折れているし、意識を取り戻した光輝は懲りずに二人の間に入ろうとしては、話がこれ以上拗れても困るという意味でイッセーのヘッドバットでまたしても気絶させられるしと――見事にカオスな状況であった。

 

 

「わかってる。ユエさんのことが好きなのは十分に承知しているの」

 

「ああ、だから……」

 

でも、それは傍にいられない理由にはならないと思うんだ」

 

「なに?」

 

「だって、シアさんもハジメ君の事を好きだよね? 違う?」

 

「いやそれは……」

 

「ハジメくんに特別な人がいるのに、それでも諦めずにハジメくんの傍にいて、ハジメくんもそれを許してる。なら、そこに私がいても問題ないよね? だって、ハジメくんを想う気持ちは……誰にも負けてないから」

 

 

 そう言いながら、ハジメのお供であるユエとシアに真剣な眼差しを送る香織に、ハジメは静観を決め込み始めてしまう。

 

 

「いや何黙り始めてんだよ……?」

 

「まさかの逃亡とはね……」

 

「ああ、これはまだまだ時間がかかりそうじゃな」

 

「…………」

 

 

 いっそ歯でもへし折って黙らせれば良いものを、ハジメも香織には思うところがあるせいが、微妙な対応しかししない。

 それを見せられているというか、雫から『中立の立場として二人を見てあげて』と言われてるものだから黙っているが、そろそろ言いたくもなってくる。

 

 

「マジうぜーな、さっきから全然結論がでねーじゃねーかよ。

どうすんだよ結局よー?」

 

 

 一誠にとっては茶番にしか思えないやり取りに、そろそろ我慢の限界が訪れたらしく、再び香織とハジメに声を掛ける。

 

 

「あのよー? おたくのお友達の八つ墓村さんが金くれるっていうから、おたくらのしょーもない茶番に付き合ってやってんだけどよ、そろそろどうするのかハッキリしてくんねーかな?」

 

「だから八重樫よっ! いい加減にしてちょうだい! わざとよね!? わざと私の苗字を間違えてるわよね!?」

 

「ほら~ おたく等がさっさとしないから八代通さんもイライラしてるしー」

 

「アナタのせいよっ!!」

 

「「……」」

 

 

 その場に腰掛け、恵里やティオと共にムシャムシャとおやつを食べながらハジメと香織に文句をつける。

 雫がさっきから感情的になっているのは気になるが、香織からしたら本気の恋の駆け引きなだけにムッとなる。

 

 

「ひょ、兵藤君にとっては茶番なのかもしれないけど、私にとっては大事なことなの」

 

「そこで人生終わった顔しながら項垂れてるクラスメートの男子共なんてどうだって良いのかよ?」

 

 

 そう言いながら一誠が後ろを指差す先には、現在進行形でハジメに対するヘイトを増大させまくりな香織狙いだった男子達。

 

 

「そ、そういう訳じゃあ……」

 

 

 生まれてこのかたそんな口の聞き方をされた事がない香織は、心底毛嫌いしてるような顔を自分に向ける一誠に戸惑いながら否定しようとするが、一誠はそんな香織の言葉を鼻で笑う。

 

 

「そういう訳だから、カキタレが既にいる南雲にそれでも云々ほざいてんだろうよ?」

 

「か、カキタレ……!? て、テメー、さっきから――」

 

 

 つまりユエの事を言われたとハジメがキレかけるが、そんなハジメを心底どうでも良さげに一誠は続ける。

 

 

「じゃあ顔でも変形させて黙らせてから断れよ白髪?

そこの吸血鬼と……なんだっけ? 兎人族だったか? そこの奴とどんな仲なんか知らねーけど、無理なら無理だって言って突き放せよ?

さっきから見てりゃあ微妙な返しばっかしやがってよ? アレか、この頭ハッピー女の見た目がなまじ良いから断ったら勿体ねーとか思ってるのか? だったら『俺のカキタレ三号になってください』とか言ってさっさと引き取れや?」

 

「…………ぅ」

 

「お前……! ほ、ホントに殺すぞ?」

 

「兵藤!! あ、アナタはどうしてそんな言い方しかできないのよ!?」

 

 

 あんまりな言葉の数々に、香織は軽く泣き始めるし、ハジメは今にも一誠を殺しにかかりそうな形相だし、雫も親友と親友の想い人のあんまりな言われように激怒する。

 しかしイッセーは基本的にそこそこ短気だったので、そんな三人の反応をガン無視だ。

 

 

 

「わ、私は本当にハジメ君の事が好きなの……! 日本に居た頃からハジメ君が――」

 

「白鳥だか白鷺だったか? そのあきらかにつまんねー話は明日までかかりそうなのか?」

 

「……っ、うわーん!!!」

 

「か、香織!? 兵藤ォ!! いい加減に――うっ!?」

 

「…………さっきから人の頭をバカスカ叩いてるが、あんまチョーシこいてんじゃねーぞボケ」

 

 

 ついに泣いてしまった香織に激怒した雫が拳を振り上げるが、そこに来てイッセーの両目が猛禽類を彷彿とさせる縦長に開いた瞳孔と共に赤く妖しく輝いている事に気づき、そして振り上げたその手首を掴まれ――そのまま砕かんばかりに締め上げた。

 

 

「いっ……!? や、やめっ……!」

 

 

 掴まれた自分の手が真紫色に変色し、なにより激痛で顔を歪める雫は今更ながらに目の前の男が大嫌いな目をした男で―――――化け物である事を悟らされた。

 

 

「!」

 

 

 その瞬間、雫が危ないと理解したハジメが、自作した銃の様な武器を向け、一誠に向かって撃った。

 だが……。

 

 

「つまんねーガラクタだなオイ?」

 

「うっ……!?」

 

「は、ハジメ!」

 

 

 頭部を狙った一撃は一誠に掠り傷すらも許さず、ニヤニヤと獰猛な笑みと共に銃だけを一瞬で蹴り壊されてしまった。

 

 

「ちょっと力を得てウキウキなのはわからなくもねーが―――あんまりチョーシくれんなよ半チクコゾー?」

 

「う……ぁ……!」

 

 

 銃を蹴り壊され、今まで出会ったどの敵も豆粒にすら思わされるほどの――化け物の殺意を前にハジメもユエもシアも動けない。

 

 だがその殺意も一瞬だけであり、顔面蒼白となって意識を失いかけていた雫の手首を解放する。

 

 

「つーかさ、あんなバカスカと頭叩かれりゃあイラッとぐらいすんだろ?」

 

「っ……ぅ……うぅ……!」

 

「? 別にそこまでキレてねーぞ? 何急に怯えてんだよ?」

 

『…………』

 

 

 本人は悪戯をする幼子に対して親が抱くほんの小さな炎に過ぎないものだった。

 しかしたったそれだけの小さな怒気が、ハジメ達を雫を――クラスメート達を絶対的な恐怖に陥れた。

 

 

「あーあ、だから言ったのに。

八重樫さんも人選を間違えすぎだっての」

 

「仲介役なんて世界一イッセーに似合わんのにのう?」

 

「うっせーな、ちょっとしたお茶目だよお茶目」

 

 

 そんな化け物と普通に接する恵里とティオも相対的に異質さを彼等に覚えさせる。

 

 

「あれだな、もうめんどくせーから連れていけば? 言っても聞かねーし、つーかお前自身満更でもねーんだろ?」

 

「…………………」

 

「はい決定ー! 紆余曲折ありましたが、これにて白井さんは南雲白髪君のイチャコラチームに加わりまーすって事で閉廷ー! やったぜ!」

 

『……………』

 

「見事にお通夜状態なんだけど……というか白井さんじゃなくて白崎さんね?」

 

 

 誰よりも世界を舐めきっていて、誰よりも身勝手で、何よりも異質。

 

 それが兵藤一誠なのだと……。

 

 

 

 そしてこうしてハジメにしてみれば半ば強制的に、香織にしてみればまさかのアシストで互いに組む事になりましたとさ。

 

 

「つー訳で早く金寄越せよ八千代台さん」

 

「八重樫よ……はい……」

 

「っしい! やったぞ恵里! ついでにぽんこつ竜! 暫く豪勢な飯決定だぜ!!」

 

 

 そしてキッチリ金を雫から徴収した一誠は、恵里とティオにムカつく程に子供じみた笑顔を見せると、歯軋りまでしながらイッセーに殺意を向けているハジメに気付くこともなくさっさと去ろうとする。

 

 

「クソ……クソォ!!」

 

「な、なんて人……」

 

「あんなの人間じゃない……」

 

 

 地面を拳で殴りながら、その遠すぎる差に怒りを吐き出すハジメ。

 そんなハジメにユエやシア……それから香織が駆け寄るが、この件で彼女達もまたイッセーを完全なる脅威と断定したのは云うまでもないし、それは正しい判断だった。

 

 

「雫……その腕」

 

「……………」

 

 

 そして雫もまた『見下す目』をしていたと思っていた一誠が何を思っていたのか端的に感じ取れてしまい、くっきりとその手首に刻まれた彼の手の跡を見つめている。

 

 

「日本に居た時から変な人だとは思っていたけど、雫にまであんな酷いことをする人なんて思わなかったわ……大丈夫?」

 

「…………ええ」

 

 

 見下すあの目が嫌いだった。

 いや、それは今でも変わらない。

 だが先程間近で見た一誠の目を――その目に宿る感情を理解してしまった雫は小さく呟く。

 

 

「見下していた訳じゃなかったのね……」

 

「え……?」

 

「……!」

 

 

 ポツリと独り言のように呟く雫に、傍に居た香織はキョトンとし、ハジメは顔を上げて雫を見る。

 

 

「どういう意味だそれは?」

 

「…彼は――兵藤一誠は決して他人を見下していた訳じゃなかったのよ。

だって見たでしょう? あんな人間とは思えないなにかを剥き出しにした彼の姿と、どうしようもないと悟らされるほどの差を。

彼が私達を見下していたという認識は、私達の勝手な想像だったのよ。

皆だって牛や豚といった家畜を食べる時にわざわざ見下してから食べないでしょう?」

 

「…………」

 

 

 雫の言葉にハジメ達も意味を理解する。

 

 

「彼にとって私達はその程度の認識だったというだけ。

だから見下すとか見下さないとかいう以前に――私達はその対象にすら思われていなかった……ただそれだけだったのよ」

 

『……………』

 

 

 イッセーにとって自分達は、見下すという認識以前の問題でしかない存在だったのだと。

 見下されているという意識も単なる被害妄想でしかなかったのだと。

 

 

「ふ、ふふっ……! バカよね私って? それに気付かずに見下すような目が嫌いだってバカみたいに……」

 

「し、雫……」

 

 

 その現実を知ってしまった雫は、自分でもわからないが笑ってしまう。

 

 

「あはははっ! 本当に馬鹿みたいね私って? そんな事にも気づかず、日本に居た頃から一方的に嫌ってて……。

向こうは私なんて虫にも劣る認識しかしたなかったのに……あははははははっ!!」

 

「し、雫……! ど、どうしたのよ!?」

 

 

 まだ痛む手首を押さえながら、ほとんどのクラスメートが剥き出しにした一誠の殺意で泡を吹きながら気絶している中笑い続ける。

 

 あまりにも滑稽で、あまりにも一方的だった自分自身に。

 そしてきっと、初めて殺意という意味で自分を『見た』一誠に……。

 

 

 

「許さない……! やっぱり大嫌い……! 彼だけは……兵藤一誠だけは絶対に許さないしこのままでは済ませないわ。

兵藤一誠も、その兵藤一誠がちゃんと見ているあの二人も……絶対に……ふふ、ふふふっ♪」

 

『………』

 

 

 それは甘美で、そして猛毒のように雫の精神を変質させていく……のかもしれない。

 

 

 

 

 

「へーっきしっ!」

 

「大丈夫?」

 

「ずずっ……おう」

 

「しかし金を貰う為とはいえ、あの白髪の男と女を引っ付ける協力を仰がれたとはいえ、少々強引過ぎだったのではないか?」

 

「あそこら辺の人間関係なんて真面目にどうでも良いし、一応思う通りにしてやったんだから問題ねーだろ」

 

「それにしては白崎さんや南雲君に対して結構本音で言ってたよね?」

 

「まーな。つーかやっぱ苦手なタイプだったわ、あの白焼とかいう女子」

 

「白崎さんだってば……ホントそういう所は昔から露骨なんだから」

 

「うーむ、妾ってひょっとして奇跡なのかもしれないのじゃな……」

 

 

終わり




補足

勇者でもなければ、ハジメっち側でもないのは見てわかったからこそ、八重樫さんは中立側として暫く仲介してくれと金で釣ったのに、結果かき回されたという哀しきオチ。


その2

丸くなってる一誠のトレンドは食べ歩きらしい。

ちなみにご機嫌な時はそこそこティオさんにもそこそこ優しいらしい。

具体的には稼いだ金で食事を奢ってやる程度には。


恵里っち? 彼女には普通に優しいです。


その3
彼等に対する言い方は全部一誠の偏見です。

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