カルデアの男子高校生の日常   作:柳瀬悠

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前回から結構日日が経ってしまいました。今月は年末調整やらで職場でも家でも時間をとれず、この小説を待ち焦がれている読者の皆さま、すみません。

今回は夏のイベントのお話です。タダクニ達のバカンスはきっと上手くいかない様です(笑)

良かったら最後まで見ていって下さい。


男子高校生とお約束

「よし、お約束やるか」

 

日差しが照りつける島の円形に伸びる砂浜、透明度が高く海の中の色鮮やかな魚達が透け透けで見え美しい、背中には獣の声が鳴り響く生い茂ったジャングル。

 

砂浜には水飛沫に打たれても、逞しい肉体を輝かせる美丈夫達。男子は、日々鍛えた歴戦を潜り抜けた筋肉を、女性は日々磨き抜かれた美しい四肢で朝日に照らされ更に輝きを増している。

 

そんな時、メガネの青年ヒデノリは容赦なく降り注ぐ常夏の太陽から身を守る為に建てられたビーチアンブレラの下に引いたビーチシートで寝転がる2人に聞いてみる。

 

太陽に反射して輝く眼鏡を不意に上に、蒼夜の南国をイメージしたデザインの海パンを履きながら、そう告げる

 

「お約束?」

 

「お前らは疑問に思わないのかこの状況を、報われ過ぎてはいないか?」

 

「いきなりなんだよ、またアホな事言い始めるつもりか」

 

日々の戦いの中でカルデアに入る以前よりも傷が増えてた。引き換えに、上半身は鍛えられ、綺麗に割れた腹筋から流れる水をタオルで拭きながら、また始まるしょうもない会話にやれやれと呆れるタダクニとヨシタケ。

 

そんな視線を気にせず彼は続ける

 

「よく見てみろ。この照りつける太陽、サファイアの様に輝く海、そして海のちょっと向こうにはそこら辺の美人モデルにも負けない美女、美少女達、が戯れている、どう思うよタダクニ」

 

「えっ、そりゃ……お前、別にいいんじゃねえか。楽園じゃん」

 

軽く答える。それもそうだ此処でバカンスできるまでの行程を考えてみれば、この休息は当然の権利だ。これは数日前の事カルデアで微小特異点が発生、施設内にいたサーヴァントも吸い込まれる形でレイシフトしてしまったという。

 

小さな綻びみたいなものだから大した事ではないらしいが、あったらちょっと困るしカルデアのリソース不足解消とサーヴァントと達の安否確認が急務で、マシュと共にレイシフトする事に。

 

目を開けてみるとそこは気が生い茂る無人島で、島からは出る事は出来ず、連絡も何かに妨害されて出る事は出来ず、調査も兼ねて無人島を開拓する事になった。

 

「なぜ開拓するの、そこはサバイバルでしょ」っとお馴染みのタダクニのツッコミが冴えるが、無人島開拓リーダーになったスカサハ姉さん指導の元急ピッチで開拓が始まり。

 

炎天下の中、木を切り倒し、食料の魚や猪を狩り、手に入れた材料で生活を築き、今はなんと巨大なツリーハウスで生活できている。

 

しかも人口的に作った水道、太陽発電、罠、電気でなんかもうサバイバルみたいな緊迫したワクワクした感じは何処かに消え去るレベル。

 

高校生の自分達にとってはサバイバルも開拓もワクワクしてしまうもの。最初はうだうだ言っていたヨシタケも武道の師匠のスカハサと同様に、開拓に参加。

 

それでやっと生活の基盤ができた。カルデア無人島開拓チームは、今日は海でバカンスを楽しんでいる。今日までの血の滲む日々が報われる様に、心底楽しんでいる。

 

それの何処が悪いのか理解できない。その幸せを何故、疑問視するのだろうか。タダクニは理解できず大きな口を開けて欠伸する。

 

「舐めてんじゃねえぞ。このアモスやろうぉ!」

 

「あ、あべ………痛い。砂、砂飛ばすなよ馬鹿、てかアモスって何!」

 

怒りのままに足を振り上げ地面に叩き落とすと砂が巻き上がり、目と口に直撃する。目に入った砂を手で落としながら、目の前の男が怒っている理由を考える。

 

「お前はさぁ、プライドってのはないのか。別の作品のイベントにあやかり、それに従っている自分に呆れないか。恥知らずか貴様は」

 

「いや言っている意味分かんねえよ。ちゃんと説明しろよ」

 

理不尽すぎる状況に対応できない2人は目の前の男に抗議する。ヒデノリはやれやれと首を振って呆れてみせる。少しイラッとくるが黙って聞く。

 

「いいか、俺達の学校生活の9割以上が同じむさい男連中だろう。なのに今は多少イケメンもいるが美女達とキャッキャできる男子の誰もが羨む状況にいるしかし、それが俺達の日常だったか、違うよな」

 

まぁそうだなっと頷く。タダクニの脳裏には月に一回しか話さないツインテールの妹の姿が思い浮かんだ。そんな華やかな女性などほとんど居なかった。

 

「そこが問題なんだよ。いいか「男子高校生の日常」の3人組で通っている俺達がただキャッキャウフフの状況をただ満喫している姿を見て、読者は何を感じると思う、何も感じない!」

 

「いや感じるだろう。何俺たちの幸せまで否定すんだよ」

 

真っ向からの否定に思わずツッコまずにはいられない。太陽の光でメガネがキラリと輝いても彼は止まりはしない。

 

「男子高校生の残念でオモロい日常を切り取って放送してただろう。この今の状況の残念で面白い事態がない。言うなれば、無個性主人公、友人キャラがラブコメの世界で光り輝くヒロイン達に主導権を握られた状態なのよ」

 

この男の言いたい事はつまり、男子高校生の日常らしい事をしないと「fgo」っという作品のノリに染まってしまう。

 

それはいけない俺達は男子高校生、ならば盛り上げ、残念な状況にして、笑と共感を得なければ。

 

その場に置かれている量産型の男子キャラになってしまう。そこまで深刻な事なのかとあんまり危機感を感じていないタダクニは「はぁ〜」っと気に抜けた返事をした。

 

「そ、それやばいじゃねえか。俺達唯の漬物みたいにされちまうのか、いてもいなくてもいいどうでもいい奴に」

 

「いや、漬物ならまだいい俺達は言うなれば今は料理の間を塞ぐあのプラスチック‥‥の葉っぱ?みたいなどうでもいい存在になっちまう」

 

「いや、そこまで深刻な話なのか?イマイチ実感が湧かねえっていうか」

 

「このおバカ魔王!」っと言った彼はタダクニに向かって砂を浴びせる。また蒸せながらも、必死に顔の砂を叩き落とす

 

「お前はこの作品を期待している読者どう思われたいんだ。「あれぇ〜これただのパロディじゃん」って失望されたいのか。こんなしょうもない作品を見てくれている物好き読者に報いたくないのか。恥ずかしくないのか」

 

「読者の悪口は辞めろ。一番読者大事にしてねえのはお前だからな。こんな作品でも見てくれる人達否定すんな」

 

「よしぃ、分かった俺女子達の水着、被ってしばかれるよ。面白いだろう」

 

自分達の危機に素早く反応したのはヨシタケは、検討違いの話をする。そんな事すれば先日起こった事件の再現だ。ヒデノリは彼に手を伸ばして静止する。

 

「馬鹿か、同じネタの多様は笑いではなく失笑だ馬鹿。そこで俺は「日常」のお約束展開を考えてみました」

 

「お約束展開」聞き覚えのない単語が出てきた。それ事態は漫画など創作物に多用される分かりやすいものだが、どうにもいやな予感がした。

 

「例えば俺達が今バレーボールに興じている女子達の輪に入ろうと、海に入るとしよう‥」

 

ヒデノリがびっしと真っ直ぐに挿した指の先には、煌びやかな水着に身を包んだ女性人達が、青いビーチボールを弾いて遊んでいる。

 

タダクニ目線は1人の少女のある部位に集中してしまう。白いワンピースを着るその少女は片目が隠れる程の髪をたなびかせながら、水に飛び込みながら、手を伸ばしてバレーボールを弾く。そのつど揺れる双丘が目に写って離れない。

 

他の3人も一応巨大な果実を水着の奥に隠しながらも、激しく動く事でなんとも揺れる揺れる。そのつど男子の目はそこに集中する。

 

「タダクニ、お前マシュの水着に見惚れて体の一部を、濡らすな」

 

「え、いや、別に見惚れてねし、濡らしてもいねえよ下ネタ言うな馬鹿」

 

顔を赤くして慌てて否定する。顔に登った血液で赤くなったタダクニは見続けている。

 

「いや眼福でございますなぁ、あははは」

 

ニヤニヤいやらしい笑みを浮かべながら、すけべなおっさんみたいなヨシタケに触れずに話を続ける。

 

「話をちゃんと聞け、いいかそこでヨシタケが遠くの女子達に手を振って「おーい俺達も入れて」っと誘うわけよ。するとその時大きな波が」

 

ザッバーン。その場にいる全員を飲み込む程の大きな波だ避ける時間はなく巻き込まれる。全身をびしょ濡れで咳こむ。

 

「そこでヨシタケは手には変な感触が、見上げると手には何やら布切れの様なものがある。何だと確認しようとすると、女性陣達の方から叫び声が」

 

其方を向くと女子の1人が胸元を隠して「水着がさっきの波で拐われちゃった」っと胸元を恥ずかしいそうに赤らめて隠す。

 

ま、まさかと手に持つものをゴシゴシと人差し指と親指で確認する訳、すると何かの布切れの様だ。

 

「衝撃で電撃が走ったお前は、目で確認せずそれを被るんだよ」

 

「いや被んなよ変態じゃねえか。てかネタ的には大体同じじゃん。ヨシタケもなんか」

 

「うーん、やっちまうかもな」

 

「やっちまうのっかよ。相当な変態じゃねえか」

 

ガシッと掴み勢いよくそれを被る。頭皮から感じる湿っている布それは麗しい女性の肢体を隠すための聖なる装備畏れ多くそれを被ってしまうスリルと背徳感鼻息が荒くなっていく。

 

「しかっしっ!彼の期待を裏切る様に女性達の声で落とされる。「わぁーあった、水着」っとオレンジ色のビキニを露になった女子に返すんだよ」

 

渡された女性は慌てて自分の体に装着する。

 

じゃ、これは一体何だ。女子の水着じゃないとしたらこの布はっと動揺するヨシタケ達。今度は冷静に布を手に取り、開いてみるとそれは女性ものではなく。男性用の黒い水着だったんだよ。

 

真顔になる面々こんなモノに期待して頭に被ってしまった情けなさと空虚は口では説明出来ないほど衝撃的で悲しく悔しいモノだ。

 

「すると今度は水面から此方に近寄ってくる影が、それは俺たちの前にザバーンっと浮上してくきた」

 

パチクリと目を開き、目に入った水を手で擦り見ると、逞しいに筋肉を身に纏い荒々しい傷が彼方此方に刻まれている、顔を見ると見覚えのあるどっしりした顔の糸目の男が満面な笑顔を浮かべているんだよ。

 

ケルト神話に名を刻む「フェルグス」が此方を見て手に取っている水着を手に取った。

 

「おぉ〜マスター達、俺の水着を見つけてくれたのかぁ、全くさっきの水飛沫で飛んでいってしまった」

 

「いやー気にしないで良いすよ。兄貴では俺達は」

 

警戒なんてしなくても良いほどの笑顔を浮かべる兄貴分しかし、どうにも嫌な予感をしていたお前はその場から逃げようとする。しかしガシッと肩を掴まれしまった。

 

「遠くでお前達の姿を見ていたが俺の水着を被るとは、まさか‥‥そのそんな趣味があったのか、自分でも魅力的な肉体だと自負しているが、そうか‥」

 

っとぐいっと顔を近づけてくるそして両手を広げて俺たちを抱きしめようと、その余りの巨体に水を掻き分ける腕も痺れて動かない。

 

「や・ら・な・い・か」

 

全身の毛穴という毛穴が逆立ち背中に強烈な寒気がした今はギラギラと太陽が照りつけるのに、一瞬ブリーザードに打ち付けられる感じだ。

 

「っとなる訳だよ笑いを取るってこういう事だよ」

 

「なるほどな」

 

「いや、怖すぎるは!」っと納得しそうになっているヨシタケに向かってツッコミを繰り出した。あの絶倫マッスルに追いかけられる恐怖は尋常ではないから、

 

「何だよいいじゃねえか、面白さを意識するならそれくらいの危険を覚悟しろよ」

 

屈強な男に尻を狙われて、必死に逃げる姿が脳内に現れる。魔術で強化してもサーヴァント相手に逃げ切る事はほぼ不可能に近い。

 

こんな事で大切なナニかを失う何て馬鹿を通り越してかなりやばいいかれ野郎だ。

 

「ならお前はこのままでいいのか。fgo のメンバーに手綱を引かれ、ヒモ野郎に成り下がっても、オレ達でこの作品を盛り上げたくないのか」

 

「そんな事したくねえよ。当たり前だろうが」

 

「なら俺達3人で取り戻してこようじゃねえか。男子校生の日常の主役の俺たちが」

 

必死に訴えかけるヒデノリ、彼の熱意は何処から来るものだろうかしかし、友の進言に首を振う事など流石のタダクニでもできない。

 

「分かった。わかったよ、やるよ」

 

いやいやながらも、押しには弱い彼は仕方なく立ち上がり、今回の案に載ることにした。おぉ、っと言って提案にのってくれたタダクニ感動しながら、同時に3人は頷き海に向かって歩き始める。

 

「っで、これからどうするんだ」

「安心しろタダクニお約束ってやつはあっちからくるもんだ。ジタバタしてもしょうがない」

「いや、そんな女子の水着が流される事態、漫画やアニメの話じゃねえか」

 

自分達の青春の中でそんな漫画の様な事が起きるのか。自虐しているわけではないが不安が起きる。

 

ヒデノリは冷静に歩き続ける。まぁ仕方がないと半ば諦める2人は遠くで遊んでいる3人の水着少女達に手を振り始める。

 

「おーい、師匠、マシュ、立香俺達も入れてくれぇー」

 

そう言おうとした瞬間海の向こうから大きな津波が迫ってきた。ドッキとしたその場の全員が亜然としてしまった本当に津波がきたそれも人を軽々飲み込む巨大な津波

 

「本当に来やがった!お約束展開スゲェー」

 

「感心してる場合じゃねぇ。早く岸に戻らねえと巻き込まれぞってあぎゃっ!」

 

急いで岸に避難しようとするタダクニは感心する2人にそう呼びかけるが津波の方が断然早く、その場にいる全員を飲み込んでしまった。

 

ぐぼぼっと口の酸素を出しながら、水中の波に揺られ続け、海に沈んでいく。波の勢いが弱まった時意識を取り戻して急いで海面まで泳いだ。

 

「プハッー!ゲホゲホ!‥‥はぁマジで死ぬかと思った。あっほかの皆んなは」

 

海面に出たタダクニは塩水で蒸せながら他の全員の姿を確かめようと周りを見渡した。近くにいた2人はそう流されていないはず。

 

「プハァァァァ!マジで死ぬかと思った」

 

「ゲボっ!お約束展開にしてもマジすぎんだろう。深海の藻屑になるかと思った」

 

水面から飛び出してきたのは自分と同様にびしょ濡れの2人だった。生存が確認されて安心したタダクニはほっと一息息をはく。

 

「お前ら無事で良かった。ヒデノリ、ヨシタケ、怪我とかしてねえよな‥‥ん?」

 

ふっとタダクニはもう一度2人の顔を見渡して怪我などがないかと聞いてみたが、ふっと違和感を感じたヨシタケの頭の上に海藻の様なヒラヒラとしたものがべちゃっと付いていた。

 

「おい、ヨシタケお前何か頭に引っ付いてんぞ。何だそれ」

 

「ん、あ、マジ、何だよこれさっきの津波で流され来やがったのか。何か布みたいで水着の様な」

 

っと頭に上に密着したそれに手をかけようとすると、向こうの方で女性陣の声が聞こえてきた。其方を振り向くと先程自分達と同じ様に津波に襲われていたマシュ達が見える。

 

彼女らの無事にほっとしながら見ていると、マシュの大きな声が響いてきた。

 

「スカサハさん大変です。前、前の水着が取れちゃってます。ま、まる見え」

 

「あっ、そうか先程の波で紐が取れてしまったのか。これは困った。これではビーチバレーができん」

 

「いやもっと重要な事があります。探しましょうこれじゃ海出られないですから」

 

此方からは遠くで見えないが背中を向ける彼女の後ろにはある筈の布がない。

 

まっ、まさか同時に電流が全身に迸る。この上にあるのはスカハサのビキニあの豊満な胸それを密着させ多い隠していた水着。

 

3人は言葉を交わさず目で、ヨシタケにそれを触る様に合図を送るとおそるおそる手でそれに触れる。ぬちゃっとしながらもしっかりと表面は布だ。

 

顔を赤らめつつそれを両手で掴み入念に確かめる。まさかこれは本当にビキニかもしれない。少年達はお約束展開を忘れ唯ドキドキしながらそれを広げて見せろっとヨシタケに訴えかける。

 

目を閉じてそれを自分の前まで持ってきた。心拍数が跳ね上がるゆっくりと思い瞼を開いていく。ぴっかと目を見開いたと同時にそれが実際に視界に入る。

 

あれ?その場の全員が唖然と成る。確かに人工物の布で、確かに水着だったそれはビキニではなく、女子のパンツだった。

 

するとまた遠くの女子の方から声が聞こえてきた。するとスカハサの元に朱槍が回転しながら彼女に近づいてきていた。

 

スルッと彼女の手に収まるっと矛先に何か布が、それを手に取ったスカハサは自分の胸に装着しようと後ろに手を回す。

 

「まさか、ゲイボルク回転させて流れた水着を回収するなんて凄い」

 

「ふん、私ぐらいだとこれくらいは朝飯前、褒める程のことじゃないさ」

 

じゃあこの水着は一体遠くの女性陣を見ていたタダクニ達はこの水着の所在はっと疑問が残った。ふっと脳裏には先程の想像していた最悪の状況思い浮かび全員の顔が青ざめていく。

 

「‥ヨシタケ、俺達はお前を忘れない」

 

「いや、おかしいだろうお前ら何で俺1人が犠牲になるみたいな話に何だよ⁉︎いやだぞ俺フェルグスの兄貴に襲われるなんて」

 

「この作品を盛り上げる為に犠牲になってくれ」

 

「おいっ!」その場から泳いで逃げようとする2人の肩を強引に掴む。此処まで想像通りに行くと嫌な予感が頭をよぎるならせめてこの2人を捉えて、生存率を跳ね上げようと試みる。

 

「さっき、この作品の為に賭けに出ようって言ったのはオメェだろう。ヒデノリ、お前が犠牲になれ」

 

「ふざけんな。俺が犠牲になったらこの作品の主人公誰がやるんだよ!タダクニお前が犠牲になれ、そうなっても誰も困らねえ」

 

「おい、ふざけんな主人公は俺だろうがいくら俺が地味だからって主人公の座はやらねえ。いつも馬鹿騒ぎ起こしているんだ、お前がやれよヨシタケ」

 

二つの指で鼻フックしたり蹴りを食らわしたり、関節技をかけたりと男同士の醜い争いが展開している。実際自分の身が危険に成ると人は罪の擦りつけあいするものである。

 

そんな3人に近づく影があった。此方に真っ直ぐ泳いできた。それを見た瞬間3人の毛穴は急激に冷え始めた。

 

「おいっ!何かこっちに向かって泳いでくるぞ」

 

「ま、まずいあれはもしかしたら兄貴、フェルグスの兄貴だ早くこの水着をお前に擦りつけねえと」

 

「ふざけんな地獄の鬼ごっこなんてして、生きて戻れるか分からねえだぞ。お前が逝け」

 

逃げようとするお互いの肩を掴み決してその場から逃さない様にする。ま、まずいもう10m程の距離まで近づいてきた。

 

「だ、だめだ。もう逃げれね‥」

 

これが鮫なら良かったかもしれないそれも命の危険ではあるが、貞操が脅かされる心配はない。一気に深く潜った大きな水飛沫と共に3人に襲い掛かる。

 

「「「ギャァァァァァ、お助けぇぇ!」」」

 

もうダメだと目を閉じて襲われる覚悟を決める。でも聞こえてくる声はとても聞き覚えにある可愛らしい声だった。

 

「ばぁぁぁ、遊んでいるぅぅ、マスター達!」

 

「ギャァァァァァ‥‥んオメエは」

 

可愛らしい女の子ぽい声そこでふっと目を開けるとピンクの短髪の一見見たら美少女と思うであろう存在アストルフォがいた。

 

「お前、アストルフォ一体此処で何してやがる」

 

「いやぁ、さっき向こう側でマスター達を見つけて何か喧嘩してるから驚かして止めようとしたんだよね。どう、驚いた驚いた」

 

自分のドッキリに思いっきりビビっているか目を輝かせながら聞いてくる。この一見美少女の様な見た目をしているが歴とした男性の彼に容赦にないツッコミを喰らわしたいとヨシタケは半ばキレ気味で話す。

 

「驚いた以前にビビったは、お前な驚かせるタイミングとかもっと上手く測れよ。こちとら寿命が20年縮まったはどう責任取るっていうだよ」

 

「そうだ。お前が可愛い女の子の顔して、ビキニつけてもな容赦するつもりはねえよ。俺達‥」

 

「いやいや落ち着けお前ら、別にアストルフォ悪くねえだろう勝手に俺達がビビっているだけだし」

 

勝手に想像して、全く事情を知らないアストルフォを攻めるには全くお角違いだ。怒る2人を抑えるタダクニは説得する。

 

「あはは‥」まさかここまで怒られるとは思っていなかったアストルフォは困って頭を掻く。

 

「そうだ。マスター達こっちに水着流されてこなかった?」

 

「水着まさかお前も、波にさらわれたのか」

 

「うん。こっちに来たついでに聞こうと思ってたんだ。ピンクのパンツの筈だけど見なかった。あれはないと流石に沖に戻れないから」

 

理性が蒸発している彼でもフルチンで女子の前に出るとどうなるかわかっている為、それぐらいのモラルがあるらしい。

 

そうだっと先程ヨシタケが広げた水着がピンクのパンツだった筈だ。女子が着用してると思ったがこれはきっと彼のだ。

 

「何だよ。これお前のパンツかさっき俺の頭の上でひっついてきたぞ」

 

「ありがとうマスター、これで陸地に戻れる。僕の水着の恩人だね。良かったら僕のパンツ嗅いでもいいよ。着たてだから汗の匂いも染み付いて」

 

可愛らしい悪魔の様に笑ってみせるが、ヨシタケは動揺などせず、顔に血管を浮かべる。

 

「するかっ!俺達も立派な男子だ男に発情する程落ちぶれちゃいねえよ。さっさと受け取って陸に戻れ!」

 

軽く辛かっただけでこんなに怒られるとはあははと呑気の笑う彼に、パンツを差し出すヨシタケ。これでパンツの所有者は見つかり最悪な状況ではなくなった。

 

「さて、これからどうするか」

 

「じゃ、この後女子達と遊ぶのどうビーチボールに誘うって話だったし」

 

あんな漫画みたいなハプニングは二度は起きないだろう。ならもう女子達と遊んでしまう方がいい、「そうだな‥」っと何処か残念そうにするヒデノリ。

 

「おい、2人ともこれからあっちでビーチボールしねえか‥ってヨシタケ!」

 

っと後ろを振り返り遊びに誘おうとしたが、先まで怒っていたヨシタケが水面に顔をつけて体の力が抜けて寝ていた。

 

慌てて駆け寄り水面から顔を上げさせると白目を剥きながらボコボコ泡を吹き出している。

 

「おい、どうしたんだよ。何があったんだ」

 

「ま‥‥マン、モス‥‥が、巨大な‥‥鼻が‥‥」

 

譫言で何かを言っている。マンモス既に絶滅していない古代のマンモス、陸地の生物でもあるそれがこんな水面にいる筈がない。

 

「おい、アストルフォ一体何があった何でヨシタケが気絶してる?」

 

「いや僕も何が何だかさっき僕に水着を渡そうとしたマスターがちょっと下を見た時「ガッ!」っと驚いてそのまま気絶しちゃったんだ」

 

下だって、それはアストルフォの下半身を見たからそうなったっというのか。馬鹿なそんな事で大の高校生が気絶なんて、もう既に男と判明している奴の股間を見ても、男子校に通う自分達には見慣れたものだ。

 

軽くそう考えてみると、一瞬波が引き少し体が浮き上がった。すると一瞬彼の股間が目に入ってきた。すると2人の視線はある一点に集中した。

 

衝撃だったその細くまるで女の様な繊細の身体、でそれに似合う美貌を持つ筈の彼、似つかわしくない「巨大」過ぎる獣が長く太い鼻は此方に見えたのだ。

 

「「‥‥ギャァァァァァ!」」

 

叫び声が海の真ん中で響いた。まるで巨大な獣に見つかり恐怖のあまり叫んでしまう一般市民の様に。

 

「ふぅーやっぱり海はいい!さっぱりする」

 

その30分後泳ぎ疲れた立香、マシュ、スカハサが砂浜に戻ってきた。水に濡れる姿はまさにハマっている。

 

休憩所まで歩いていくとお馴染みの3人組の姿が見えてきた。

 

「はぁー、楽しかったねぇ。タダクニ、ヒデノリ‥‥どうしたの」

 

ビーチバレーを終え海から帰ってきた立香達は、ビニールシートの上で横たわる3人を見つけた。一人一人がただ寝ているのではなく譫言で「‥‥大きな‥‥大きな像が‥‥」っとまるで悪夢でも見ている様に苦しそうに魘されている。

 

まるでこの世の全ての悪夢が流れ込んでくる様なもう壮絶な顔で恐怖で全ての肉が硬直してしまっているのだ。

 

「あっ!マスターお帰り」

 

「うん。それよりも皆んなどうしたの。何か3人めちゃくちゃうなされているけど、何またなんかやらかして絞られでもしたの」

 

女性モノの水着が似合いすぎているアストルフォが、3人に団扇を仰ぎながら立香に挨拶すると、また3人がやらかして女性陣に搾り取られたのかと聞いてみる。

 

するとアストルフォは困った顔で乾笑いでしている。彼にも正直何故彼らがうなされているのか一切わからない様だ。

 

「いやぁー、さっき僕が水着流されて拾ったマスター達に近づいたら何故かいきなり絶句して気絶しちゃったんだよね」

 

「顔を見ただけで気絶!一体先輩達はアストルフォさんを見て一体何を感じたんでしょう」

 

ギラギラと輝く太陽の元陽に照らされ続ける未だ悪夢に苦しむ男達。彼等の野望は結果的には成功を‥納めたのかもしれない。

 

その後半日以上魘され続けて暫くアストルフォと顔を合わせる事もしない様になった様だ。

 

「なぁ‥ヒデノリお約束ってやるもんじゃねえな」

 

「そうだな‥‥二度としねえ」




次回はこの話の続きでスイカ割りをテーマにします。次回予告してから急に忙しくなってしまい。現実と小説を両立しようとすると中々上手くいかずこんなに時間が経ってしまいました(悲)次は出来るだけ早く投稿したいので、長い目で見てください。

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