鈴木悟の職場の先輩が、ユグドラシルのサービス最終日に新規ユーザー登録しました   作:挫梛道

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【悲報】今回の後書きでボケようと思っていたネタを、前回の感想にて先に やられちまった件(泣)
 
 
小説オリジナル設定、入りまーす。
 


番犬

▼▼▼

『悪いが この先、私の命に代えても、通す訳には往かない!』

『…それなら、死んでもらうだけだよ!』

ナザリックの第2階層と第1階層を繋ぐ扉の前で、第7階層の牢獄から脱走したプレイヤー、テオドラント・アスベストと、白銀の鎧を纏った少年が対峙する。

 

「さあ、笑劇(ファルス)の始まりですよ!」

それを第9階層のリビングで、遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)を通して観ているのは、階層と領域の各守護者達。

 

「まさか、こんなに私の想定通りに動いてくれるとは。

逆に何か不安ですがね。」

眼鏡のズレを直しながら、デミウルゴスが笑みを含みながら呟く。

 

「…極限に迄 追い詰められれば何者で在れ、全く同じ思考、行動を取ると言われています。

今回も、それに当たるのでしょう。」

「そ、そうなんですか?」

「単純なんだね~?」

「ソレヨリ ヤツガ、アノ場ヲ 抑エキレルト思ウカ?」

「さぁ? 別に あの愚か者を『殺せ』と命じた訳じゃありんせんし、通せんぼくらいなら あの小僧でも、出来るのではないですかえ?」

そして思い思いに話す守護者達。

 

「…………………………………。」

その中、内面に渦巻く複雑、様々な感情を殺して、無言無表情で(モニター)を見る少女が1人。

 

≪≪≪

時は、少し巻き戻る。

 

「…そんな訳で、()()()()()()()()()()()()()かも知れない。

それに備えて、そちらの彼にも少し、動いて欲しいのだよ。」

第9階層の一室。

領域守護者の1人、ラナー…元は魔導国の地で在った王国の姫君だったが、()()()を棄てる事でナザリックの一員に。

王族を示す当時の長い名を捨て、今は只のラナーである。

彼女の私室を訪れたデミウルゴスの言葉に、ラナーは にこやかな表情を少しだけ崩す。

 

()()()()()()で無く、そうなる様に、貴方が仕向けたのですよね?デミウルゴス様?」

その脱走者というのが、デミウルゴスの()()()に嵌まり行動を起こすのを、その言葉だけで既に彼女は見抜いた。

ラナーにとって、今は至福の時だった。

自分の ペット 従者であり夫でもある少年、クライムと2人だけの時間を過ごしていたのだ。

そんな愛する者との語らいの時に邪魔者(デミウルゴス)が現れ、そして何用かと思えば、自身が企画(プロデュース)した茶番劇に、自分の大事な存在をその役者として巻き込むと言ってきたのだ。

自分の大切な時間が奪われる…それは普段の()()()()()笑顔を変える理由には、十分過ぎた。

 

「それは、どうですかね?…ん?

ふふふ…ふはははははは!

成る程、そうか!そういう事でしたか!!」

「???」

「…いや、失礼。」

そんなラナーを見て、デミウルゴスは何かを納得したかの様に、急に笑い出す。

それは その叡知を以てナザリック入りを認められたラナーですら、どの様な意味が有るかは解り知る事が出来なかった。

 

「其処まで察しているなら、尚の事、お願いしますよ。…では。」

そしてデミウルゴスは それに触れる事無く、一方的に自分の頼み事を了承させると、 

「…ラナー。貴女には感謝します。

いいえ、これは皮肉等で無く、本当に純粋な意味でね。」

「??」

去り際、この言葉を残して この部屋から姿を消した。

 

「ラナー様?」

再び2人だけとなった部屋。

この部屋の もう1人の住人であるクライムが、己の主に話し掛ける。

 

「聞いての通りです。

クライム。その痴れ者とやらを屠る準備をなさい。」

「はい、承知しました!」

そしてラナーの言葉に力強く応えると、部屋の隅に置かれている、人間サイズの犬を象った白銀の置き飾り(オブジェ)の前に立つ。

 

ス…

 

そしてラナーと同じく200年前、ナザリック入りに際し人間を辞めた代償に得た魔力を掌に込め、それに触れると、

 

カシャァッ…

 

その白銀の犬は複数のパーツに分離され、クライムの身体全身に鎧として装着された。

この鎧の銘は【地獄の番犬(ケルベロス)】。

アインズからラナーを介して渡された、ユグドラシルに於ける神器(ゴッズ)級の鎧である。

彼が まだ人間だった頃にラナーから授かった純白の鎧も、人間界で見れば、最上級の一品だったが、それも あくまで人間の社会での話で、ユグドラシルの基準からすれば、紙装備も同然。

それ故に これは『ナザリックに属す者』として、そして一応は領域守護者の従者という立ち位置を踏まえ、それに相応しい代物と考えての授与だった。

尚、彼が以前 使っていた純白の鎧は、今も人間社会では一級品とされ、只の人間である彼の遠い孫が、冒険者として着用している。

 

ガシ…

 

そして鎧装着の次は、壁に掛け飾られていた、立派な装飾が為された鞘の大剣を手にして携える。

 

「それでは、ラナー様…」

「ええ、気を付けて。」

この後、クライムはラナーの術式により、指定された場所(ポイント)に転移するのだった。

 

≫≫≫

「九光連斬!」

 

ズバァアッ!

 

「くっ…馬鹿な?!僕の天使を!?」

そして刻は現在に戻る。

身体強化系の武技から、クライムが瞬時に繰り出すのは8つの斬撃、そして仕上げに刺突を織り交ぜた合計9の剣閃が、テオドラントが召喚した熾天使(ガヴリエル)を斬り裂いた。

 

「な…何だよ、その剣は!?」

「私が最も尊敬する武人から、引き継いだ宝だ!」

剃刀の刃(レイザーエッジ)】。

鎧とは違い、ユグドラシルのアイテムで無い…見た事も無い、且つ最上級天使を撃破した剣に驚くテオドラント。

それは嘗て、アインズが『我が身を斃す事が出来るアイテム』と言わしめた逸品。

今は滅んだ王国、リ・エスティーゼの至宝の1つとされていた、青に輝く刀身の大剣だ。

 

「脱走者、覚悟ォッ!

断罪覇斬(クライム・ストラッシュ)!!」

 

斬!

 

「ぎゃんっ!?」

そしてトドメとばかり、両手持ちの剣を片手逆手に持ち変え、至近距離での斬り上げの斬撃…自身の編み出したオリジナルの武技を放つが、

「ぐ…よくも…高が小悪魔(インプ)如きが…!」

「浅かったか…!」

これは必殺には至れず。

しかし それは決して技のパワー不足で無く、技を完成させてから…いや、彼がナザリック入りして以来、この日が初めての、本当の意味での実戦だった故の、熟練、精度不足が原因だった。

これに対して上級悪魔(グレートデーモン)種のプレイヤーは怒りを露にして、黒い炎を放っての反撃に出た。

 

▼▼▼

「…盛り上がっているな。」

「「「「「アインズ様っ!」」」」」

視点(カメラ)は再び、第9階層の広間に。

デミウルゴス達がクライムの戦闘を観ている中、その日の魔導国を治める施政者としての仕事を終えたアインズが、アルベドと この日の『アインズ様当番』であるメイドを伴って やってきた。

 

「いや、その儘で良い。」

その登場に跪こうとするシモベ達を制し、自分の専用のソファに座った魔導王が、(モニター)を見据える。

 

「クライムか…

そう言えば、私はヤツが戦ったのを見た事が無いが、実際の処は どうなのだ?」

「はい…それは…」

アインズの問い掛けに、応じたのはセバス。

 

「確かに あの者…クライムは武の才は皆無と言って良いでしょう。

しかし、ナザリックに加入してからの200年、決して怠る事の無い鍛練の成果は牛歩なれど、確実に蓄積されております。」

「そうか…羨ましい事だな。」

「「「「「アインズ様?!」」」」」

このセバスの応えに対する感想に、他の守護者達が、驚きな反応を見せた。

 

「私達のチカラは既にカンストされており、精神面は兎も角、肉体的な成長は不可能だ。

先パ…タナカも そうだが、未だ限界を極めてない者が、鍛練や実戦でレベルアップする有り様は、見ていて面白く、そして羨ましい。

これは創られた時 既に、能力(ステータス)が固定されていた お前達には解らぬ思考だろうがな。」

「至高なる御方の考えに至れず、申し訳有りませ…

「良い。その様に創ったのは私達だ。

お前達は それを悔いる必要も無くば、私には責める資格も無い。

フッフフ…懐かしい。

これは私にも、そういう時期が有ったからこそ、そう思える事なのだ。

それに お前達も、精神の成長は、未だ止まっておらぬだろう?

ならば、それで良いじゃないか。」

「「「「「あ、ア、ぁ…アインズ様!!」」」」」

このアインズの言葉に その場の者達は感動、

「ぅ、うぅ…アインズ様ぁ~~~っ!」

「や、やっぱりアインズ様は、凄く優しいですぅ~!」

涙を流せる者は、号泣である。

 

ガガァン!

 

そうした中、鏡の中では、テオドラントが再度 召喚した天使…今回は最上級天使で無く、中級天使の集団が、クライムに無数の火炎弾を放つが、クライムは それを(ケルベロス)の耐性で凌ぎ、剃刀の刃(レイザーエッジ)で斬り棄てる場面が。

見た目は自分と同年代な少女達を何の躊躇いも無く斬ったのは、それが敵、或いは造られた存在と割り切っていたのか、或いは己にとって女人とは、仕えるべき唯1人のみという考え故か。

 

ダダダッ…

 

『しまっ…?!』

しかし その隙に、テオドラントは その場から逃走を開始。

クライムが慌てて鎧の附属品(オプション)である、刺球鎖を投げての捕縛を狙うが、それも躱されてしまった。

 

ガタッ…

 

「も、申し訳有りません、アインズ様!

何卒、クライムに御慈悲を!」

それを見たラナーが、即座に起立してからの土下座、魔導王に自分の従者の失態の赦しを嘆願する。

 

「アインズ様。その前に、私からラナーに言うべき事が有りますので、失礼ですが先に お話しても宜しいでしょうか?」

「うむ。デミウルゴス、話せ。」

しかし、それに対するアインズの声の前に、デミウルゴスが会話に入ってきた。

 

「ラナー。先ず私には、何を以てクライムを許せと、アインズ様に申し上げているのかが解らない。」

「そ…それは…」

「どうやら君は、勘違いしている様だね。

私が彼に課した命令は『脱走者抹殺』で無く、『プレイヤーの第1階層への進入阻止』だ。

そしてアレは今、現在位置よりも外で無く、更に奥側に進んで行った。

つまりクライムは、今は まだ任務失敗は していないのだよ?

寧ろ現段階では、その命を為し遂げている。

それは誉めるべきで有り、決して咎める事では無い。」

「……………………………。」

「うむ。デミウルゴスの言う通りだ。

クライムは何も、裁くべきミス等は犯していない。

故にラナーよ、お前も私に頭を下げる必要は、何も無い。」

そして続くデミウルゴスの言葉に、アインズも同意。

 

「アインズ様。

恩には恩を、仇には仇を。

そして信賞必罰が我等ナザリックの流儀ならば、この度のクライムの働き、この儘 あのプレイヤーの処刑が終了した時には、僭越ながら何らかの褒美を与える事を、提案させて戴きます。」

「ふむ? …ふ、ははははh…チィ、また抑制されたか。」

デミウルゴスが自分に…しかも己より下の者に対する労いの意見を発する事に驚き、同時に それは自身にとっては喜ばしい事なので、思わず大笑い…の途中、感情抑制され、残念そうにアインズが呟く。

 

「そうだな。それは当然な事だ。…ラナー?」

「は、はい!」

「クライムには如何程な褒美が良いか、後で相談に…一緒に考えてくれるか?」

「は…はい、アインズ様!」

 

▼▼▼

「しかし、本当に素晴らしい役者ですね。

何の打ち合わせも無しに、アドリブだけで私が思い描いた脚本通りに演じてくれるのですから。」

「これは、私達の出番が来るかな~?

マーレ、そろそろ用意しとこうか?」

「そ、そうだね、お姉ちゃん。」

その後もテオドラントは戦闘と逃走を重ね、地上とは別方向の、地下深くに進んでいた。

現在 第5階層。

極寒の吹雪が壁となり、さながら迷宮を形成しているかの様な、氷の大地を彷徨っている最中である。

その様子を見た闇妖精(ダークエルフ)の双子姉弟が、部屋を出ていく。

 

≫≫≫

「此処は…」

そして氷の階層を抜けた先の第6階層、今度は草木が深く生い茂るジャングル。

その中、猛獣に毒蟲、食虫(人)植物と遭遇しながらも それを撃退、或いは回避していた時、

 

ヴォ…

 

「…っ?!」

不意に、足元に魔方陣が展開された。

転移トラップ。

テオドラントの目の前の景色は一瞬に切り替わり、天井、床、壁、全てが石煉瓦の造りの、狭い通路に。

 

「クソ、前に進むしか、ないのか…」

後方は壁で塞がれており、一直線の通路の彼方、光が差す出入口を目指すしか選択肢が無いと判断したテオドラントは、意を決して前に歩を進める。

 

わーわーわーわー…!

 

「!!?」

そして その先は、古代ローマを彷彿させる闘技場(コロシアム)

その客席は既に、満員御礼。

しかし それは、人に非ず。

リザードマンにドワーフ、ゴブリンにオーガ、そしてエルフ。

異形の亜人達によって、埋め尽くされていた。

テオドラントは その、コロシアムの選手入場口からの登場である。

 

うぉーーーっ!!

 

選手(イケニエ)の登場に、客席から大歓声が沸き起こる。

 

『はぁ~い、会場の皆さん、大変 長らく御待たせしました!』

この雰囲気の中、場内に響き渡るのはアウラの声。

 

 

うぉおーーーーーっ!!

 

闘技場中央、ノリノリでマイクアナウンスをする階層守護者の登場に、歓声と拍手が巻き起こる。

 

「さて今回、愚かにも魔導国…我等が魔導王、アインズ・ウール・ゴウン様に、敵対しようと考えていた者を捕らえましたが、その者、更に重ねて愚かにも、このナザリック地下大墳墓からの脱走を企ててしまいました!

…よって この場で、公開処刑と致します!」

 

うおーぉーーーっ!!

 

『先ずは東門から姿を見せたのは、件の脱走者!

名前は…えーと、知らされていません。

ま、直ぐに殺されるから、知る必要も覚える必要も無いよね!

えーと、とりあえず東側、愚か者1号~おぅ!』

 

ぶーぶーぶーっ!

 

このテオドラントの紹介(コール)?には、会場からはブーイングが。

 

『「そして西側ぁっ!その処刑を務める執行役(バウンサー)は、コイツ!

名前は…ごめん、こっちも正式な名称は、実は知りません!』

 

ゴゴゴゴ…

 

そして続く、アウラの呼び出しに応じるかの様に、闘技場に転移魔方陣が現れ、1体の巨大な存在が姿を見せた。

闇色の衣を纏い、髑髏の首飾り。

頭部の それは兜の飾りか、自生なのか、巨大な2本角。

枯れた様な青黒い肌、その痩せこけた顔は虚ろで、生気は見受けられず。

その代わりなのか、額に宿る巨大な第3の眼(サード・アイ)が、周囲をギロリと睨み渡している。

 

…………………………。

 

『…ですよねー?(笑)』

その異形過ぎる異形な姿を見て、客席は今迄の盛り上がりを打ち消すかの様に静まり返り、アウラも それには納得かの様に苦笑。

 

『それじゃ、いきます!処刑開始(イッツァ・パーリィータァイム)♪!』

「ガァグガァアッ!!」

そして ()()はアウラの掛け声と同時に、奇声とも謂える雄叫びを上げ、テオドラントに襲い掛かった。

 

「アレは…ヤb、不味いっ!?

[鎧強化(リーンフォース・アーマー)]! [吐息からの守り(ブレスウォード)]![上位魔法盾(グレーター・マジック・シールド)]! [上位抵抗力強化(グレーター・レジスタンス)]! [上位硬化(グレーター・ハードニング)]! [上位全能力強化(グレーター・フルポテンシャル)]! [上位幸運(グレーター・ラック)]! [聖域加護(サンクチュアリ・プロテクション)]! [獅子如き心(ライオンズ・ハート)]! [魔法からの守り・神聖(マジックウォード・ホーリー)]!」

危険と察知したテオドラントが、自身に防御系補助魔法を連続で施し、

「[第2位階天使召喚(サモン・エンジェル・セカンド)]!」

更には肉壁役か、下級天使を多数召喚。

 

ゴッゴォオオオオオォッ!!

 

それに対して ()()は、両掌を前面に翳し、そこから凍てつく様な波動を放出。

 

「な…馬鹿な?! 僕の、僕の天使達が…!?」

すると、それを浴びた武装した白い翼を持つ少女達は、まるで最初から その場に存在しなかったかの様に姿を消し、更にはテオドラントが自身に施した魔法効果も全てが無効化(キャンセル)されてしまう。

 

ブォオオオ~ォッ!! 

 

「!!!!??」

そして その防護効果を失った…唖然とした顔のテオドラントに向けて、極寒の輝く吐息(ブレス)が放たれた。

 




 
テオドラント・アスベスト…ディオドラ・アスタロト・開眼ver.(ハイスクールDXD)のイメージで
 
クライムの鎧は、地獄の番犬星座(ケルベロス)白銀聖衣(シルバークロス)(聖闘士星矢)のイメージで
 
 
次回『第8階層の あれら(予定)』
セイジョ★スキーの運命は如何に?
乞う御期待!
感想よろしくです。
 
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