鈴木悟の職場の先輩が、ユグドラシルのサービス最終日に新規ユーザー登録しました   作:挫梛道

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閑話です。
実は、24話を書いてる途中で思い付き、先に書き上げていました(笑)。
 
…24話は読みました?
 


【閑話】ナザリック大侵攻

 

…それは、ユグドラシルが人気絶頂だった頃の話。

 

▼▼▼

『DQNギルドに裁きの鉄槌を!』

…この言葉の下、ユグドラシルを形成する世界の1つ、ヘルヘイムの一角に聳える遺跡(ダンジョン)に総勢1500のプレイヤー、NPCが集結していた。

 

「あのクソ鳥ぶっ死なす!」

「厨弐堕天使がぁっ!」

「山羊野郎だけは絶対に許さねえ!」

「「「「「「おのれ骨おのれ骨おのれ骨おのれ骨おのれ骨おのれ骨おのれ骨おのれ骨おのれ骨おのれ骨おのれ骨…!!」」」」」」

ナザリック地下大墳墓。

その巨大遺跡を拠点(ホーム)とするギルド【AOG(アインズ・ウール・ゴウン)】のメンバーに対しての怨みの節を、呪詛の様に唱える面々。

 

「…皆。気持ちは解る。解る…が、キリが無いから今は もう、それ位にしておこう。」

「「「「「「「……………!」」」」」」」

それを、1人の少年が静めた。

それはスキルなのか、その声は1500という人数に綺麗に行き渡り、プレイヤー達は彼に注目する。

白と銀を基調とした鎧、竜翼を連想させる飾りの付いた冠兜を身に着けた、翠の髪の少年。

彼こそが、今回の大侵攻の発起人である。

彼個人や彼が長を務めるギルドは、AOG(アインズ・ウール・ゴウン)に何かしらの恨みを持つ訳では無い。

しかし、余りにも聞きしに渡る悪行悪評に、憤りを感じての行動だった。

彼の言葉に、先ずはギルドメンバーも そのギルドの特色である、義心から殆んどの者が賛同。

その後は件のDQNギルドに知られぬ様、密かに参加者を募り、最終的には この大人数となったのである。

これもゲーム内に於ける、この半天使(ハーフエンジェル)の少年の人徳やギルドの評判、更にはAOG(アインズ・ウール・ゴウン)の憎まれ具合故なのだろう。

 

≫≫≫

「よし、行こう。」

「「「「「「…………。」」」」」」

 

コクン…

 

リーダーの少年の号令に、無言で頷くプレイヤー達。

ナザリック地下大墳墓攻略の最初の難関、それは遺跡周囲、約2㌔を取り囲んでいる、広大な猛毒の沼地である。

飛行能力を持つ者や、装備かスキル等で毒耐性を持たぬ者は此処で、被爆地帯(ダメージゾーン)無効の魔法等を使う事になる。

 

ズ…ズズズ…

 

「クソが…」

「腐れDQNギルドが…!」

集団の中から誰と無く、吐き捨てられる声。

毒のダメージは無効化(キャンセル)されても、沼の泥は重油の様に足に絡み付き、歩みを鈍らせていた。

そして一団の先頭が毒沼を越える迄、残り100㍍となった時、

 

カァァッ…

 

「「「「「「「「「!????」」」」」」」」」

突如、黒紫の泥が一瞬、眩しい白に煌めく。

 

「「「「うぐゃぁぁあっ?!」」」」

「「「「きゃあぁっ!?」」」」

そして直後、集団の彼方此方で響く断末魔(ひめい)

 

「あれは…まさか、ダメージ無効が無効化(キャンセル)されたのか?」

沼地の上を飛んで移動していた、天使種の男が叫ぶ。

実際その通り、この光は猛毒地帯の移動によるダメージ無効を、更に無効化させる物。

これにより、耐毒を持たぬ者はダメージを受け、中には猛毒状態になる者も居た。

 

「な…なんて厭らしいの?!

()()()()()()()で、こんな処置をしてくるなんて!?」

「腐れDQNギルドがっ!」

あと少しで毒沼を乗り切る…そのタイミングでの この手口に、純白の翼を持つ天使種の女が、そして その横に居た茶黒の猛禽類の翼に全身装甲の男…頭上に黄金の輪冠が浮いているから、この男も天使種なのだろう…も、怒りを露に。

 

「落ち着いて!兎に角走ろう!

急いで この沼地を抜けるんだ!

回復と治療も忘れないで!」

これに対して、リーダーの少年が指示を飛ばす。

それに応じて、皆が動こうとした時、

 

ズズズ…!

 

「「「「?!!」」」」

その前方から、無数のドロドロの手が沼の中から生え出てきた。

 

「ベノムハンド…!」

「面倒なの飼ってやがる!!」

ベノムハンド…それは泥土の手(マッドハンド)系モンスターの亜種。

その系列のモンスターの特性と同じく、集団で獲物に襲い掛かり、劣勢になると仲間を呼び、そして その闇紫の毒々しい外見通り、猛毒を孕む攻撃を繰り出す厄介なモンスターである。

レベルカンストの上級プレイヤーからしても、その集団攻撃…しかも ぬかるみと言う足場の悪い戦闘では、十分に脅威に成り得ていた。

 

「ぎゃぁ…(ぼぼぼ…)

そんな中、プレイヤーの1人が足を掴まれ、その儘 泥沼の中に引き摺り込まれた。

 

「……………………。」

 

そして彼は毒泥の中で、その姿を消す。

窒息からの戦闘不能と断定されての、強制ログアウト。

戦線離脱(リタイア)第1号だ。

 

≫≫≫

「「「「ハァ…ハァ…」」」」

最終的に、この沼地の戦闘で、約70人が離脱(ログアウト)

これが多いのか微々たる損害なのかは まだ、誰も判断出来ない。

そして沼地を進みきった彼等の前…墳墓城壁の上から現れたのは、武装した骸骨兵(アーマード・スケルトン)の一団。

 

スチャ…

 

「「「「「!!???」」」」」

完全に統率された動きで弓を構えた不死属(アンデッド)達は、鏑を侵入者達…で無く、暗黒の天に向け、

 

バァッ!

 

そして放たれた多量の矢は弧を描き、プレイヤー達の背後…毒沼に矢の雨(アローレイン)となって降り注ぐ。

 

ドッゴォッ!

 

「「「「「!!」」」」」

その直後の大爆発。

どうやら矢の先に爆薬か、爆裂系の魔法を仕込んでいた様だ。

 

「あれは、『逃げたら射つ』って言ってるんだろうねぇ?」

「しかし、これは もしかして、攻めてきてるの既にバレバレ?」

「仕方無いさ。これだけの人数だ。

目立つのも、見つかるのも無理は無い。」

「上等だよ!まだ これだけの人数が、しかも、有力ギルドの強者だって居るんだ!

負ける筈が無い!」

「そうだ!それに いくらAOG(アインズ・ウール・ゴウン)と言っても、いきなり この数で攻め込まれて、対処出来る訳が無いさ!」

「そうだ!殺って殺るぜ!」

「見てろよクソ骨!テメー等の好き勝手も、今日が最後だ!」

「むっ潰してやりゅ!」

退路が絶たれた中、それは本心か強がりか…

未だ戦意衰えず鼓舞するかの台詞を各々が掲げ、

「よし、突入だ!」

「「「「「ぅおおぉぉっ!!」」」」」

リーダー格の少年の言葉と共に、1000人越えのプレイヤー達は、墳墓の中に突入した。

 

▼▼▼

「ははは…これは、笑えば良いのですか?」

「本当に、来ちゃいましたね?」

「全く…あの掲示板の遣り取りが、実は罠の可能性だと疑ってました。」

第10階層。

侵入者の一連の動きを、使い魔の眼を介して水晶珠(モニター)で見ているのは、AOG(アインズ・ウール・ゴウン)のメンバー達。

 

「【(^∀^)】これ、本当に姉ちゃんの お手柄だよね。」

「【(≧▽≦)ゝ】私、ぐっじょぶ?」

「【(ー∀ー)】何故に疑問形なんですか?www」

黄金の鎧姿の鳥人間(バードマン)のアイコンを交ぜた言葉に、ピンク色の やや卑猥な造型のスライムが おどけた口調で応えてみせた。

()()の名は『ぶくぶく茶釜』。

現実世界(リアル)では地上波アニメからエロゲ…男勝り姐さんキャラから天然ゆるふわ系にツンデレ幼馴染み、果てには妹属性ロリまで、幅広く活動している実力派人気声優である。

彼女が自身のラジオ番組で、『私も実は、ユグドラシルをプレイしてるんですぅ♡』とコメントした際に、彼女のファンであるプレイヤー数人が…まさか、彼女がDQNギルド所属のDQNプレイヤーだと思う筈も無く…運営公式のゲーム掲示板で無く、一般プレイヤーが立ち上げた"裏"掲示板の存在を教えてしまっていたのだ。

 

「多分ですけど、茶釜さんは【声優ギルド】の所属と思われてたんでしょうね~?」

「残念!AOGでした!(笑)」

所謂 良識的常識的プレイヤーによる、"クソ運営"の管理外での情報交換を、更に言えば、AOG(アインズ・ウール・ゴウン)その他、悪質ギルド、プレイヤーに対しての不満や対策等を語る為に設けられたサイト。

今回の1500人でのナザリック大侵攻も、このスレを通して計画された物。

しかし、彼女を通して この掲示板はAOG(アインズ・ウール・ゴウン)メンバー全員に知れ渡っていた為、それも既に…決行日時等を含めて全てがバレバレ。

故に()()()()は…常日頃からギルドの方針として、対プレイヤー、対ギルドの争いに関しては事前に相手の情報収集を最優先事項としていただけあり…万全だった。

 

「一番大変だったのは、如何に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だったからね。」

「ああ。奴等、俺達が知らないと思って、好き勝手言いやがって。」

「ええ。その辺も含めて、きっちりと落とし前は、着けて貰いますよ?」

 

▼▼▼

第1階層。

石の煉瓦で構築された このエリアは、幾つも分岐路から成る迷宮(ダンジョン)となっている。

発起人の少年が率いるギルド【セフィラム】の主要メンバーをリーダーとする複数のグループ、更には それ以外の強豪ギルドが指揮を執るチームに別れ、その途中、不死属(アンデッド)との遭遇、戦闘をこなしながら、其々の道を進んでいた。

 

ガタガタガタ…ッ

 

『『『う…ぅわぁっ!?』』』

『『『きゃあぁっ?!』』』

その内の複数グループが、突如 床が崩れた事により空いた穴に飲み込まれ、落下。

 

「はい、黒棺(ブラック・カプセル)逝き、決定~♪」

「「「【(=人=)】南~無~♪」」」

その様子を笑いながら観ている、AOG(アインズ・ウール・ゴウン)のメンバー達。

 

≫≫≫

「くっ…!」

それでも約1200のプレイヤー達は、第3階層迄、足を進めていた。

今までの狭い通路とは違う、大広間。

 

『『『ガァァアッ!』』』

其処で待ち構えていたのは、やはり無数の武装をした骸骨(スケルトン)動死体(ゾンビ)

中には魔法を操る者も居る。

 

「でぇいやっ!」

 

斬っ!

 

『ぎゃっ!』

そして この大集団のリーダーが相手をしているのは、薄絹のワンピースドレスを着た美女の集団。

しかし それが、只の美女な筈も無く。

この吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)を雷撃を帯びた剣で、少年が斬り裂く。

 

ガァン!

 

「…っ!?」

その少年の背後に新手が。

白の鎧を纏い、奇妙な形状の槍を持った少女だ。

 

真祖(トゥルーヴァンパイア)…なのか!?」

僅かに違和を感じながらも、少年は槍を払い、構え直す。

 

「ソロ君!」

「ソイツはヤベェ! 加勢するぜ!」

この少女が この階層の主と判断した彼のギルドメンバーの天使2人、そして他のプレイヤー達が戦闘に加わろうとするが、 

『『『『グラァァァアッ!!』』』』

「ちぃっ! そりゃ まぁ、そーだろうけどよ!?」

吸血鬼の少女は魔狼と邪蝙蝠を大量に召喚。

それ等が壁役となり、一騎討ちの形勢を崩そうとしない。

 

≫≫≫

 

ガィンッ!

 

その後 幾度、剣と槍が交差する。

この吸血鬼は通常モンスターとは違う…NPCの様だが、レベルはカンスト。

戦闘力は自分と同等…そう分析した少年が、バックステップで少し距離を開けて魔力集中、そして攻撃力増強の()()を始めた時、

 

ズブ…

 

「がほぁっ!?」

少年の足元、影から伸び出でた紅の槍が、少年の腹部を貫いた。

 

ずずす…

 

そして影から姿を見せたのは、対峙していた少女と同じ顔…違うのは白で無く紅の槍と鎧を装備した吸血鬼(ヴァンパイア)

 

「分身…いや、此方が、本体か!?」

最初に少年が感じていた違和感の正体。

それは、それ迄 戦っていた相手が実は、分身体だった事だった。

そして その本体の登場。

互角と見積もっていた敵が、もう1体増えた。

一騎討ちの最中の その展開は、完全に戦局を覆される事であり、その後は正しく、前後に挟み込まれての まるで合わせ鏡の様な連携攻撃(コンビネーション)

武器に徒手、魔法による一方的な蹂躙だった。

 

斬!

 

「そんな…こんな、筈は…クソ…」

それでも少年は一瞬の隙を突き、渾身の雷撃剣の一撃を吸血鬼の少女・本体に炸裂(クリティカル・ヒット)させる。

結果、相討ち。

翼を持たぬ半天使(ハーフエンジェル)の少年と真祖(トゥルーヴァンパイア)の少女は、その場から姿を消した。

その間に他のモンスターもプレイヤー達が全て蹴散らし、第3階層は攻略出来たが、プレイヤー連合はリーダーを失った事になる。

 

「これは仕方無いわ…副長、後は任されて?」

「…そうなるよな。

大丈夫だ。まだ、慌てる損失じゃない!

どの道、もう後戻りは出来ないんだ、先に進むぞ!」

これは直ぐ、ギルドの副マスターが後任して指揮を執る事で対処し、一同は奥の階層へと進んでいく。

残り人数…約1000人。

 




 
ベノムハンド…マドハンド(ドラクエシリーズ)を濃紫にしたイメージ
 
次回『【閑話】ナザリック大侵攻②』
乞う御期待!感想よろしくです。
 
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