鈴木悟の職場の先輩が、ユグドラシルのサービス最終日に新規ユーザー登録しました   作:挫梛道

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言うならば、伏線回?
 


歪んだ正義

▼▼▼

「私は言ったぞ?

あのアンデッドに係わる様な…ましてや否定する様な真似は、絶対に避けるべきだってな。」

「いや…でも!」

「…でも、何だ?

結果、タイセツナ・ナカマを、喪った。

しかも その屍の回収も出来ず、一生復活も叶わない。」

「…それでも、それでも僕は悪くない!

悪いのは全部、アイツ等だ!

そう、アイツ等が、アイツ等が…全部!」

浮游島の水晶の城。

その玉座の間で、城の主は()()かと会話していた。

姿は見えないが、その声は女の それだ。

 

「善悪は自分で決める物じゃない。

最終的には周囲が、結果が、歴史が決めるのさ。

あの場で魔導王を討っていれば、また それも違ってきただろうが、あの時 逃げた お前は、少なくともスレインの奴等からは、完全に『悪』と認定された。

余計な真似をしてくれた厄介者としてな。」

「う、うるさい!

そんな事は無い…皆、僕に感謝してくれていたんだ!」

「魔導王が現れる…迄はな。

私が お前に魔導王の事を教えたのは、奴を討つ様に唆した訳じゃないぞ?

関わると碌な事が無い…それこそ命を落とす危険が有るからの警告だったのだがな…

まさか他の国なら兎も角、選りにも選って あの国で、あんな真似をするとは…

救世主扱いが、そんなに心地好かったか?」

「………っ!」

自分を『悪』呼ばわりされ、自己弁護する城の主、ソロ。

しかし女の声は悉く それを否定。

 

「幸い この城は、動かさない限りは不可視の結界が張られて、探索には掛からないのだろ?

だったら この砂漠の中、この城で一生 隠者の如く生きるのを奨めるぞ。

既に魔導国は、お前を敵認定しているだろうからな。

お前では、あの魔導王には勝てない。

そして私は まだ、死にたくない。

しかし これ以上お前と関わっていると、それも危ういみたいだ。

もう、此処に来る事も、会う事も無いだろう。

じゃあな。」

「あ…待っ…」

この言葉を最後に、その女の声も気配も、この場から消え失せた。

 

≫≫≫

「……………………………………。」

その後、永い沈黙、静寂が場を支配。

 

「クッッソォオッ!!」

 

弩ッ轟々々々々々々々々々々怨!!!!

 

それを破ったのはソロの怒声と、それを体現したかの様に迸った、極大の雷。

超位階魔法の轟雷が、ユグドラシルの超硬質素材で造り飾り、神聖さを醸し出していた広間を、廃屋の様な無惨に荒れ果てた空間とした。

 

タタタ…

 

「な、何なの? 今の音?!

…って、何ぃ?これぇ?何が有ったの?!」

その轟音を聞き付け、少女が1人、入ってきた。

天使では無い。

長い耳が特徴的な、エルフの少女だ。

完全破壊された玉座の間を見て、大きな声で驚いている。

 

「クソ…あのアンデッド…

何処まで僕の、邪魔をするんだ…?

僕が悪い…違う!

僕は皆の為、皆の事を思って…

僕は悪くない…僕は悪くない…」

「ソロ…様…?」

立ち尽くして下を向き、虚ろな瞳で何やらブツブツと唱え事の様に呟くプレイヤーの少年を見て、NPCの少女が不安そうに近寄る。

 

「ねぇ…僕は、何か間違っていたのかな…」

少女に気付いたソロが、今にも泣き出しそうな顔で尋ねる。

現実社会(リアル)での彼が どのような人間だったかは分からないが、今は その10代半ばの見た目相応に、精神が牽引されている様だった。

 

「ソロ様…いえ、ソロ…」

 

ぎゅ…

 

そんな彼を少女は静かに、優しく抱擁。

 

「大丈夫。貴方は常に、正しいわ。」

「うん…うん…」

そして母親の様に、或いは姉、若しくは恋人の様に、慈しむ笑顔で話し掛け、少年は その胸の中で涙を堪えながら頷く。

 

 

「大丈夫。この天空水晶城(クリスタル・キャッスル)に暮らす者は皆、貴方の味方よ。

だからソロ、自分に自信、持と?」

「うん…」

「さぁ、元気を出して、ソロ。」

「うん…」

 

 

 

 

≫≫≫

「さ・て、この部屋も修復しなくちゃね。

シモベ、呼ばないと。」

「いや、この儘で良いよ。」

「はい?」

…それから暫くした後、エルフの少女は着崩れ乱れた衣服を整わせながら、無惨に破壊された玉座の間を直そうとするが、落ち着きを取り戻したソロが、それを止めた。

 

「この部屋は、モモンガ…いや、今はアインズ・ウール・ゴウンか。

アイツに対する怒りを忘れない為にも、暫くは この儘にしておく。

アイツは絶対に、赦さない。

アイツは、悪だ。

そして、アイツを王様と崇める奴等も、皆 悪だ。

悪は、滅ぼさないと、いけないんだ…絶対に!」

「ソロ…」

 

▼▼▼

 

◆アインズside◆

う~む、あの浮游島…。

やっぱり、ユグドラシルに元々 在ったギルド拠点じゃないみたいだなぁ。

 

「てゆーか、移動可能な拠点てのが、相当レアだろ。

しかも空飛ぶなんて、尚更だぜ?」

「有りそうで、無いですわね。」

「うむ。例えば方舟型の様な、乗り物系が無いのも意外だな。」

「ペロロンチーノ様の百科事典(エンサイクロぺディア)にも、それらしいのは記されてないでありんす。」

現在、シャルティア、先輩、アルベドと4人で、最古図書館(アッシュールバニパル)にて公式やギルメンが書き記したユグドラシルの設定資料集を紐解いてる。

浮游島について、何か記録が無いか探しているのだが、運営公式は愚か、設定厨タブラさんや探索マニア弐式さんの作った資料集にも載っていない。

やはり あれは先輩が言ってた、アイテムで創ったオリジナル拠点と見るのが正解なのか?

 

「でも そうなると、ステルス性能とかにも かなりな設定盛ってるだろうから、見付け出すのは普通に無理ゲーだな。」

「でしょうねー。」

「「………………………………。」」

「浮游島もですが、あのソロ…どう思います?」

「どう…って、あぁ、今後の動向とかか?」

「はい。」

「あの時の『も、も、モモンガぁっ!』からして、お前、相当に嫌われてるみたいだからな?(笑)

近い内、このナザリックかエ・ランテル辺りに何か仕掛けてくるかもな?

それを踏まえて、警戒レベル上げてんだろ?」

「そうなんですけどね…」

「「……………………。」」

「それと もう1つ。」

「はい?」

「向こうの戦力、どう分析してる?」

「あ、そういう事ですか。

それについては…」

「「…クス…クスクス」」

「ん?」「へ?」

先輩と話している途中、シャルティアとアルベドが小さく笑いだした。

 

「2人共、どうかしたか?」

「いえ、すいません。

アインズ様とセージ様、喋り方が"素"になってらっしゃって…」

「それを見ていたら つい、安心と言いますか、何となくですが、嬉しく感じたでありんす。」

「特にセージ様の口調が、弐式炎雷様と武神建御雷様が会話されている時の それと そっくりで、懐かしく感じます。」

…だ、そうだ。

 

「あの…」

そして口を動かしながらも、きちんと手も動かしていたアルベドが、何かを見つけた様だ。

 

「どうかしたのか?」

「いえ、浮游島の事は書かれてませんでしたが…」

そう言って、1冊のノートを先輩に渡すアルベド。

 

「何だ これ? プレイヤー日誌か?

…何々? ◎月☆日…」

先輩は そのノート、数ヶ所に付箋が貼られたページを開いて読み出した。 

 

 

※※※

 

◎月☆日

フレンドのアザ坊が、今度新設されるギルドに加入すると言ってきた。天使系プレイヤーだけで組まれたギルドだとか。…って、お前、堕天使じゃん?良いのか?天使の基準、緩くないか?ついでに言えば私が言うのもアレだが、あんな変人を受け入れるギルドが有ったとは。そっちの方が驚きだ。更についでに、そのギルドとやらに私も誘ってきた。勧誘か?引き抜きか?私達みたいな ぶっ壊れキャラが同じトコに2人も居たら、壊滅待った無しだぞ?我々みたいなキャラは1ギルドに1人だけだからこそ、スパイスになり良い感じに活きると云う物。そんな訳で断った。

 

※※※

 

¥月$日

アザ坊んトコのギルマス主導な大連合、その数なんと1500人が、ナザリックに攻めてくると密告が有った。あくまでもギルド主導で無く、ギルマス個人主導と強調して。つまり『俺は参加しないから関係無ぇからな!』と言いたい様だ。ただな、侵攻の話なら もう知ってるから。リアルの方でウチのギルメンに侵攻とか詳しく書かれた『裏』掲示板の事を教えてくれたバカの御陰でね。既にオ・モ・テ・ナ・シ♡の準備は万端。てゆーか あの裏掲示板、此方が見てないと思ってか、私達の事を好き勝手書いてくれている。貴様等の死刑は確定だ。

  

※※※

 

¥月@日

1500人を返り討ちにした翌日。アザ坊から再び『俺は参加してないから関係無いぞ!』とメッセージが入った。いや、知らないから。私個人は別に…って感じだが、モモさんをはじめ、殆どのギルメンがキレてるからな。はい、お前んトコのギルド、敵決定www 中でも茶釜ちゃまとエロリ鳥が超ブチギレ…特に茶釜ちゃまは、怒らせると誰も逆らえないから、宥め透かす気も無い。一応、知り合いのよしみで お前の事は黙っていてやるよ。せいぜい無事に逃げて…運悪く捕まったとしても、相手が話の通じるヤツなのを祈ってくれ。オススメは、たっちサン、一番のスカはウルっちだ。てゆうか、お前んトコのホーム、動かさない限りは捜索不可なんだろ?ほとぼりが冷めるまで引き籠ってろよ。動かしたら最後…ウチのTHE・ニンジャの探索・捜索スキルはマジ半端無いぞ?

 

※※※

 

£月∬日

例の大侵攻の報復も首謀者ギルド連中以外は一通り終わった。しかし、セラフィムだったか?…の関係のヤツは、未だ見つからずだ。さてはマジにビビってインしてないか?どうやら少しばかり、派手に殺り過ぎた様だ?

 

※※※

 

∽月¢日

あの祭り(笑)の余韻も、そろそろ鎮まっただろうと思い、課金ガチャのモンスター(大当たりのレアモン1発GET!…それを見たモモさんが『何でだぁっ?!』って怒泣w)をお供にレア素材採集していたら、その祭り関係者…報復喰らったか、とばっちり受けたかと思われるヤツが、私を例の首謀者ギルドの一員と勘違いして『お前等のせいで!』とか言って襲ってきた。全く…確かに私も天使系だが、天使だったら誰も彼も あのギルドのメンバーと思われたら、たまったモンじゃない。全くアイツ等、他人様に迷惑掛けるなって話だ。誤解を解く為、『私は天使ギルドじゃない!アインズ・ウール・ゴウンだ!』って、証明しようとウィンドウ開いて見せたら、尚更キレて襲われた。解せん。…当然、その者達は返り討ちにしたが。

 

※※※

 

♯月∮日

久し振りに公式掲示板を見ていたら、例の天使ギルドが無茶苦茶に叩かれてた。私達は もう、ヘイトな書き込みは止めたのだけどな。ついでに裏掲示板も見てみると、此方も然り。『AOGと同レベルな糞DQNギルド』って…一緒にしないで欲しい。

 

※※※

  

「…おしまい。

あんまり大した事、書いてなかったな?」

関連している部分を読み終えた先輩。

手掛かり無しに思ってるけど、『お前んトコのホーム、動かさない限りは捜索不可なんだろ?』の部分は、それなりに大きな情報ですよ!

…他にも少し、突っ込みたい部分が有るけど、今は触れないでおこう。

 

「…つまり、動かす様に誘うんですよ!」

「どうやって?」

「それは…次の会議の議題にしましょう。」

 

 

◆アインズside・了◆

 

▼▼▼

 

◆???side◆

おーぉ♪

派手に八つ当たりしてるなあ?

城の()な筈の玉座の間が、見る影も無いぜ。

だから俺は一方的、自己満な善意はトラブルの元だから止めとけって、最初に言ったんだけどな?

そんなに自分のした事を否定されたのが悔しかったのかね?あのマジメ君は?

…で、あの骨の顔を見た瞬間、ブチギレか?

どんだけ連中、嫌ってんだか。

いや、解るけどな。

でも、そもそもの原因も、掲示板等の連中の悪評を見て勝手に正義感燃やして、『DQNギルドは赦さない!』とか憤慨したのが事の起こりだからなぁ…

ウチは少なくとも あの時点では何の絡みも無かったんだから、放置しときゃ良かったんだ。

まあ、それにホイホイと賛同した奴等も奴等なんだがな。

後からウチのギルドに責任押し付けてたが、ありゃ ぶっちゃけ自業自得だよ。

てゆーか、これから どうすんだ?

今回の あれで、こっちの世界でも もう、激突は避けられんぞ?

また ずっと、それこそ世界終了まで引き籠る心算か?

はぁ~…

こんな事なら、『最後は皆さん、集まりませんか?』な誘いも蹴っときゃ良かったぜ。

しかも来たの、俺だけだったしw

その辺り、ヤツは凹んでいたが、逆にラッキーだったと思うぜ?

ゲーム終了と同時、異世界転移?なんて、誰が思い付くよ?

だから俺は、その辺を責めたりは しないが、他の奴等だったら間違い無く、『お前のせいだ!』って問い詰めるだろうからな。

尤も俺も、これ以上に巻き込まれたり振り回されたりは、真っ平御免だ。

宝物庫で手頃なアイテムを失敬した上で、オサラバさせて貰うぜ。

あ、その代わり、()()は餞別で置いといてやるよ。

…で、問題は その後の身の振りだな。

この世界、意外と戸籍関連は きっちりしてる様だから、下手な場所には紛れ込めない。

あの(ガキんちょ)を訪ねるか、それとも いっその事、()()()のフレンドだと名乗り出て、向こうに身を寄せるか?

…………………………………。

いーや、やっぱ止めとこう。

何だか【セラフィム】所属って以上に、()()()が理由で余計にボコられる気がするぜ。

 

 

◆???side・了◆

 

▼▼▼

数日後。

 

ドッガァアアッ!!

 

「「「「きゃあああぁっ!?」」」」

「「「「な、何なんだよ?!」」」」

当然、エ・ランテルの中心に それ等は現れた。

全身武装の天使…ユグドラシルのモンスターの集団だ。

それが、街中で破壊行為を始めたのだ。

当然、街は一瞬にしてパニックに陥る。

魔導王(アインズ)統治の下、初めてと言って良い非常事態だ。

 

「住民の避難は?」

「既に終了しています!」

しかし、魔導国戦士団が直ぐ様 駆け付けての働きで、人的被害は最小限に抑えられていた。

そして駆け付けたのは、戦士団だけでは無い。

冒険者組合からの要請を受け、ミスリル級以上の冒険者チームも、この場に現れた。

 

バギィッ!ドゴォッ!

 

「うおおぉっ!」

「でぇい!」

「ぎゃあっ?!」

しかし、今 街で暴れているのは、ユグドラシル基準でレベル30相当な天使(モンスター)

如何に鍛練、そして経験を積もうが、"常人"の枠を抜け出せない彼等には、全くとは言わないが、その相手をするには、少しばかり無理が有った。

1体の天使に対して4~5人で編成されたパーティーで、漸く五分に渡り合える具合だ。

 

シュィィン…!

 

「「「「「!!?」」」」」

そんな中、現場に新たなモンスターが姿を見せた。

金色の武具に身を包んだ、骸骨兵(アンデッド)の集団が転移で現れたのだ。

 

「「「「「うおおぉぉーっ!!」」」」」

しかし、それを見た者達は、絶望する事無く、逆に歓喜の雄叫びを上げる。

そう。これは敵で非ず。

魔導国直属の援軍だと、彼等は知っていた。

 

ザザザッ!

 

この骸骨兵団が、天使を次々と蹴散らしていく。

 

「うぉーっ!」

「やってやるよ!!」

「これで勝つる!」

それにより、戦士団、冒険者達も士気が向上。

 

「オラオラオラオラ!」

「エ・ランテルの冒険者は、守護スル者(ガーディアンズ)や獣神だけじゃない!」

「てゆーか そのタナカ君達は、まだなのかい?!」

「直ぐに来るさ!」

この戦闘に参加しているオリハルコン級冒険者チーム、バビロンの面々もチームプレイで、目の前の敵を確実に仕留めていく。

 

ブォン…

 

「「「「………!!」」」」

そんな彼等の前に、また新しいモンスターが召還された。

人型だが天使では無い。

身の丈約4㍍。

左右の手に大剣を1本ずつ持ち、頭部は無表情な(フルフェイス)だが、代わりに巨大な怒鬼面を体前面に張り付けた、装甲機人兵(メタルゴーレム)だ。

その全身から感じさせる殺気は、明らかに魔導国からの援軍で無く敵の其れ。

 

「ボスキャラの御出座しか?」

「よし!四方を囲んでの、全体同時攻撃だ!」

「「「応!」」」

 

ダダダッ…

 

チームリーダーの指示の下、異形の敵に この4人の冒険者は突撃して行った。

 




バビロンについては、19話を参照。
 
次回『奮戦!バビロン!(予定)』
乞う御期待!
 
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