闇であるが闇でない男 作:主義
今日は年に一度の珍しくうちのギルドに所属している者が一同に会する日だ。でも、さすがに全員を同じ場所に居させることをリスクがあるし、何よりも多すぎるから無理。だから一同に会すると言っても幹部と呼ばれている者たちが集まるだけ。まあ、その幹部だけだとしてもかなりの人数が居るから面倒なんだけどね。だからその中でも選ばれた幹部が集まって来る。
僕のギルドには少なくとも幹部と呼ばれているような奴が十人は存在する。全員がそれなりの実力は保持していると僕は思っている。全員の実力をこの目で見る機会はあんまりないから確実なことは言えないが『幹部』になるには少なくとも『一人でS級クエストをクリア』が条件。闇ギルドにもS級クエストのような高難易度のクエストがあったりする。闇ギルドに回って来る仕事は命に関わる仕事がほとんどで生きて帰れない事も少なくない。
そんな中、最高難易度のクエストをクリア出来るようなら『幹部』と呼んでも差し支えのないだろうと思い、僕が決めた。
そして今回集まるのはその中の七人。残りの三人はどうしても予定が会わなかったために欠席という事になっている。
ある一部屋に七人の男女が椅子に腰を下ろしている。七人は誰かを見るわけでもなく自分たちの大頭が来るのを待っている。お互いに仲が悪いわけじゃないけど仲が良いわけでもない。同じ主に仕えるようなメンバーだけどお互いの交流はほとんどないと言っても良い。
だが、一つだけ七人に共通している事があるとすればそれは………『主への忠誠心』。七人はそれぞれどんな形であれ主に命を救われたり、拾われたりした。自分の命を犠牲にしたとしても主を守る。それだけが七人共通の考えだった。ここに居ないギルドのメンバーも主のために死ねるのなら喜んで命を差し出すような者ばっかだ。このギルドは主に救われた人物の集まりと言っても良いかもしれない。
そして僕が七人との待ち合わせの部屋まで行くとそこには……七人全員が腰を下ろしていた。さすがにここにいる七人は早いな。いつもこういう時にはこいつらが僕より遅く来る事はない。もう少しのんびり来ても良いと言っているんだけど未だに僕より遅くなることはない。
「ごめんね。遅くなって」
そう口にしながら僕はいかにも一番高価そうな椅子に腰を下ろした。
「約束の時間ですので『主様』が謝る必要はありません。私たちが来るのが速いだけなので」
僕から見ると斜め右に座っている黒髪の女性が口にした。世間一般から見えば美女の部類に入るであろうが彼女を一般の女性だと思って近づけば痛い目にあってしまうであろう。
彼女の名前はウルティア・ミルコビッチ。僕と彼女が知り合ったのは偶然に偶然で僕の協力者である男から紹介されて出会った。別にあった日からこの人をスカウトしようとかウルティアから「仲間にさせてください」と言われたわけじゃない。ウルティアが僕のギルドに入ったのは色々とあってその話をすると長くなってしまうそうだからまた時間がある時にでもその話をするとしようかな。
「ウルの言う通り。私たちの事なんて気にしなくて良いと思います」
そう口にしたのはウルティアの右隣に座っているピンク色の髪をしている少女が言った。彼女と出会ったのはウルティアと同じ時。名前はメルディ。とても大人しい子で初対面の時は話す事はなかったと思う。知り合って一か月ぐらいが経ってから少しずつ話し始めたぐらいに人見知りな子だ。
「そうか。それではそれぞれ報告してくれ」
「じゃあまずはリチャード、君から報告してくれ」
「わかりました…のデスネ。六魔将軍の方はあまり大きな動きはない…のデスネ!」
この顔が角ばっている人物はリチャード・ブキャナン。六魔将軍の一人で実力はうちの『幹部』たちの中では丁度真ん中ぐらいか、少し下ぐらいだと思う。所謂。平均の男だ。語尾にデスネを付けるのが彼の特徴で
少し変なところもあるけど意外と良い奴だ。
「私とランディーの方もほとんど問題ないと思うよ。今のところわね」
「スプリガン12の方もそれほど活発的に動いてないわ」
この二人も本当に変わらないな。よく二人を見かけると喧嘩をしている事もあったりするがやっぱり仲が良いのだろう。この二人と出会ったのはいつだがもう忘れてしまった。この中で一番このギルドに入ったのが速かったと思う。もうかなり前の話だから憶えていないな。
この二人の名前はディマリア・イエスタ、ブランディッシュ・μ。実力だけで言うならこの二人はギルドの中でTOP5に入る事は出来ると断言できる。それほどにこの二人は実力が高い。
「さっきホットアイも言ったがこちらに問題はない」
このいかにも一番怖そうな男はゼロ……いや、ブレインと言えば良いのだろうか。どちらと言えば分からんがそんな名前の奴だ。六魔将軍のギルドマスターであり実力も高い。こいつの裏にある人格は破壊を愛するような人格だ。闘いには向いているが知能戦には向いていない。それに仮にも『幹部』と呼ばれている人物が無差別に人を殺すような事実が生まれるのは避けなければならない。だからこそ、こいつの裏が出てこないようにこいつの裏の人格には封印が掛けてある。
「私とメルディの方もそれなりに問題はないと思うわ」
「うん。悪魔の心臓も大きな動きはないかな」
この二人はさっきも紹介したがウルティアとメルディだ。さっきは紹介し忘れたがこの二人は悪魔の心臓という闇ギルドに所属している。悪魔の心臓と言えばバラム同盟の一つで闇ギルドの中ではTOP3に入るぐらいの実力を保持していると言われているほどのギルドだ。では、何でそんな二人がこちらのギルドにも所属しているのかと言うと色々理由はあったりする。
「私も問題ないと思う。聖十大魔道の中にも不審な行動をする者は今のところいない」
これが最後の幹部。ハイベリオン、聖十大魔道序列2位の人物であり冷静な判断が出来る人物。能力は『吸血』、間接的な吸血鬼も出来るためにそれなりに強い。僕が指揮できない時はハイベリオンに任せる事も多々あったりする。それぐらいは僕が信頼を寄せている人物。他の『幹部』を信用していないわけではないけど一番うまくまとめる事の出来るのはハイベリオンだと思ってたりする。
え……全員なにもないんだとしたら態態、集まる必要なんてないじゃん。まあ、毎度思うことなんだけどな。一年という期間で僕たちを揺るがすほどの事件が起こるような事はほとんどないと言ってしまっても良い。だけど一応、建前上報告だけはしてもらわないといけないからこの報告会を続けている。
もうこんな報告会ならこれからは本当に辞めても良いかもしれない。