闇であるが闇でない男 作:主義
今日は珍しく休暇を貰えて僕は町へと繰り出している。でもそんな僕の隣には私服に身を包んだ…ウルティアがいる。こうなってしまった経緯の説明を始めようかな。
元々、ウルティアやメルディは僕が一人で町へと繰り出していく事をとても心配していた。僕はそれなりに年を取っているし、さすがに一人で町に出るぐらい大丈夫だと言ってもウルティアとメルディは全然「大丈夫じゃない」と言ってきた。
あの二人から見たら一体どんな風に僕は見えているのだろうか。見た目は二十代ぐらいのように見えているかもしれないけど目で見えているものが全てだとは思わない方が良い。人間は視覚から情報を得るのが一番多いがその目で見えているものが本当に正しいのかをよく考えた方が良いと僕、個人的には考えている。
そして最終的には両者の妥協点がこう収まった。僕とウルティアの二人で町に出掛ける事になった。本当は一人で町に出掛けたかったが二人が食い下がりそうにないのでどちらか一人だけなら良いと言うと二人で話し合いをしてウルティアが来ることになった。それが今の現状だ。
「マスターはもう少し色々と考えた方が良いと思いますよ」
「僕はそれなりに考えて行動していると思うんだけどな」
「いや、身の危険を考えてないです。私たちのギルドは表のギルドや表の連中に知られていないけど最近、よく私たちの周りを嗅ぎまわっている『ゴミ』がいるみたいですから」
僕のギルドは絶対に漏洩されないようにしている。下手にバレて討伐隊でも送られたら闘わなくちゃならなくなるから面倒だしね。
「これでもそれなりに長い期間の間、表にバレずに来たんだから大丈夫だとは思うけどね」
「今まで大丈夫だからと言ってこれからも大丈夫だとは限りません。マスターは少し楽観的すぎます」
ウルティアは少し心配性すぎるところがあると思うんだよな。会った頃はもっと大雑把な人間だと記憶しているんだけどな。ここ数年で急に心配性になったと思うんだよね。
「そうかな…僕は別に楽観的じゃないと思うんだけどな。君はもう少し肩の力を抜いた方が良いよ。それにそんなに気を張ってばかりじゃ疲れちゃうよ」
「私はマスターと違って自分の体は自分で管理できます」
痛いところを付いてくるな。僕はあまり体が良くない。体調を崩してしまう事も多々あったりして仲間たちに迷惑をかけてしまう事もあったりする。だから個人的にはなるべく体を崩さないようにしたいんだけど、どうしても体を壊してしまう事が多くある。本当に申し訳ないと思うがこればっかはどうしても直す事は出来ない。
「……それはそうだね」
「別にマスターを攻めているわけではありませんが………」
ギルドメンバーが居なければ…とっくにこのギルドは崩壊していたと思う。僕が倒れている間も誰かがしっかりとギルドを回してくれるから今の現状があるんだよね。
「いや、責めてくれても構わないよ。ギルドマスターなのにギルドマスターらしいことはあまり出来ていないしね」
「そんなことはありません!!私たちがこのギルドに席を置いている理由をマスターは知っていますか?」
急なそんな質問をされても僕には検討もつかないのが本音。だって正直、僕も疑問でしかない。なんでこんなギルドに皆が未だにずっと居てくれているのか。僕にはリーダーシップのようなものが壊滅的なほどにないのは自分が一番分かっているし。
「それはあなたを支えたいですからですよ」
「…?」
「私たちは知らずの内にマスターに心酔しているんですよ。確かに私たちの中には元々はこんな風に長く席を置くつもりはないという人が居たのも事実です。でもいつの間にか、このギルドはとっても心地いいものになっていたと皆が口を揃えて言っていました」
「別に僕には変わった才能があるわけではないよ」
「そんなことないです!!」
普段は声を荒げることなどほとんどない、ウルティアがこんな感情的になるなんて。
「…す、すいません」
「謝らないでください。ただ、私たちはあなたのことを信頼していることを知って欲しかったので…」
「うん、ありがとね。僕に付いて来てくれて」
なるべくウルティアを含めて…皆の期待を裏切らないように頑張らないと。