「…というわけだ。」
「外の世界…栄誉騎士と同じだな。しかし、喰種か…本当に人しか食べられないのか?」
「いや、そうでもないみたいだぜ。最初は嫌がって食べようとはしなかったが、一口食べた後は泣きながら掻きこんでいたしな。ああそれとハリマから神の目を預かっている。どういうものなのかよく分かっていないみたいだったからな。」
「ガイアから見てハリマはどんな人物だった?」
「悪い奴ではないのは確かだ。まあずっと何が何だかわからないって感じで混乱していたがな。面白い奴だ」
「そうか…明日私が直接会って確かめよう。囁きの森で何があったのかも知りたいからな。」
「代理団長自ら行くのか。あいつも緊張するだろうな。」
「むっ だが実際に自分の目で確かめるのが確実なんだ。」
「まあ それもそうだな。 俺はこれで失礼するよ」
「酒は飲みすぎないようにな。 …よし、残りの仕事を片付けるか」
昨日は夕方に眠ったせいか朝日がまだ出ておらず、薄暗い時間に目が覚めた。
「それにしても神の目、テイワット、元素の力、そして喰種でも食べられる食事…」
ガイアから教えてもらった情報はどれも聞いたことのないものばかりであったが、状況を理解するうえでは有益なものだった。しかし、最も気になることとしてなぜ喰種の身でありながらあの食事を食べることが出来たのかが甚だ不思議だ。目を赫眼にしてみたり、赫子を出すことは今まで通りできるようだった。
「まあ一人で考えても仕方ないか。 ん?もうこんなに明るくなってる」
太陽の位置的に2時間ほど考え込んでいたみたいだった。するとドアがノックされ、二人女性が入ってきた。
「おはよう。私は騎士団の代理団長ジン。そしてこの少女はノエル、騎士団のメイドだ。君の人となりの確認と食事を持ってきた。」
「ありがとう。 ん?その珈琲すごくいい匂いがするな。」
「それは私が淹れたものだ。コーヒーには自信があってね。飲んでみるといい。ガイアから君の話は聞いている。珈琲は飲めると聞いたのでな、朝の目覚めにもいい。ノエル、彼に食事を」
「はい!今お持ちしますね」
ノエルと呼ばれたメイドからサンドイッチを受け取り口に運んだ。昨日のあの出来事があってから口に運ぶのに躊躇がほとんど無くなっていた。
しかし、
「うッ! ゲホッ! ゴホッ」
「「大丈夫か」ですか!」
まるで頭を殴られたかのような不味さにえずき、口の中のサンドイッチを吐き出そうとしてしまい、大きくせき込んでしまった。
「ゴホッゴホッ …あれ?」
「どうしたのか?」
耐えきれない嘔吐感に襲われていたものの、二人が心配して近づくとその不快感がきれいさっぱり消えてしまった。
「やはり体調が悪かったのか? すぐに助けを呼んでくる。」
「ちょっと待って。ッ‼ ゲホッ! ジン団長待ってくれ!」
ジン団長が助けを呼びに離れた瞬間再び強烈な吐き気に襲われた。
最初、サンドイッチを口に入れた時ジン団長は少し離れていた。そしてえずいて駆け寄った時は口の中の不快感は消えた。しかし再び離れた瞬間、また吐き気に襲われた。
もしかするとジン団長は俺に何かしたのか?
「ジン団長… 俺に何かしてないよな?」
「私は何もしていない!」
「だよな すまない疑ってしまって。 ん?何か光ってるけどそれは?」
よくわからない状況につい苛立ってしまいあたってしまった。これはいけないと落ち着こうとするとジン団長の腰のあたりで何かが光っているのが見えた。
「ああこれは昨日ガイアから預かっておいた君の神の目だ。しかしなぜ? …! 君!これを着けて食べてみてくれないか?」
光っていたのは俺の神の目だったようだがジン団長からよくわからない提案を受けた。
不安ではあるものの、その提案に従ってサンドイッチを口に入れた。
「うまい! でもなんでだ?」
「君は昨日神の目がポケットに入った状態で食事をしたのだろう?もしかすると神の目が君の体に何らかの影響を与えているのかもしれない」
神の目が体のすぐそばにあるとなぜか普通に食べられることが分かった。テイワットでは外付けの魔力器官ということくらいしか解明されていないと聞いたが、自分にとっては普通に生きられるかもしれない希望の光である。
数分後、サンドイッチを食べ終わり、珈琲を味わったのちジン団長との話に入った。
「単刀直入に言おう。君はこのモンドに害を与える人物か?そして囁きの森で何をしていた?」
「順番にこたえよう。まず俺は喰種だが今までに人間を殺して喰ったことはない。ほとんど共喰いをして生きてきた。人間を食べることはしないさ」
「! 君はそんなつらい道を…」
「そして、森では… 記憶がややおぼろげだが、極度の飢餓状態にあった俺は暴走していたところヒルチャール?だったか、あのよくわからない生き物のボスを喰ってほかの逃げだした奴らを追いかけたところで記憶が途切れている。 もしかしてあの森を燃やしてしまったか?」
「いや、雨が降っていたし、少々焦げ目がついていただけで燃えてはいない。だがあのクレーターはなんだ?何をした?」
「クレーター? ああ思い出した。確か板が立てられた穴を掘り返そうとして爆発したんだ。」
「爆発? そういえば最初に知らせに来たのもクレーだったな。 まさかまた爆弾を埋めていたのか… あとで反省室だな」
あの爆発で赫者からもとに戻れたとはいえ、普通の人間なら木端微塵になる威力の爆弾を埋めて反省室に入れられるのは致し方ないと思う。
その後、ジン団長からの質問に答えたり、こちらからいくつか聞きたいことを聞いたりして情報交換を行った。
「ふう これで君の素性もある程度わかった。ハリマ、君はいたって善良な旅人として歓迎するよ。」
「看病までしてもらって感謝する。先ほど聞いたその冒険者?とやらになって落ち着いたら騎士団に何か恩返しするよ。そうでもしないと気が済まない。」
「それならもう少し待ってくれないか? 栄誉騎士がそろそろ来るはずだ。」
「俺と同じ外から来た旅人がなぜ?」
「彼女も冒険者協会で様々な問題を解決しているし、君も自分の体と神の目の関係性を知りたいだろう?ちょうど栄誉騎士もドラゴンスパインにいるアルベドという錬金術師に調べてもらう用があるみたいだから同行するといい」
「それは都合がいいな。でもドラゴンスパインってどこだ?」
「窓から見えるだろう。あの雪山のことだ。」
「なるほど。 何から何までありがとう。この珈琲もとても美味しかった。重ね重ね感謝する。またご馳走になってもいいか?」
「構わない。 さて私はそろそろ仕事に戻る。何かあったらノエルに頼むといい。彼女は優秀なメイドだ。」
ジン団長はそう言うと仕事をしに部屋から出ていった。
その後しばらくノエルと世話話をしていると、ドアがノックされ金髪の少女と宙に浮かぶ白いのが入ってきた。
「お前がハリマか? 変な服だな!」
「ちょっとパイモン、謝ったほうがいいよ…」
別に怒ってない。と言おうと口を開こうとした時、
グウゥ~~
「ひぃっ! おいらはおいしくないぞ!」
「パイモン…」
思い切り腹を鳴らしてしまった。
第一印象はあまり良くないものになりそうだ。
パイモンがいれば三大欲求すべて満たせるのでは?
美味しそうだし、抱き枕にできそうだし…