やったね
蛍に素材集めのためにこき使われた数日後、俺は単独でとある遺跡の調査をしていた。
なんでも最近発見されたものの、中は未知の敵対的な生物が居る他危険なトラップが多数仕掛けられているとの事だった。深度もなかなかのようで数日間食べずに活動できる俺に騎士団から直々に依頼が来たのだ。
最初は意気揚々と遺跡の中を探索していたが気づいた時には迷ってしまい、しらみつぶしに襲い掛かる敵を倒して回っていた。中にいた不気味な姿の原住民に対し、始めは声をかけていたが全て話を聞かずに襲い掛かってきたため意思疎通を図るのは諦めた。
「本当におかしな遺跡だな…かなり古いがあいつらはどうやって生きてきたんだ?」
通路には何らかの彫刻が飾られている。文明があったことは確かのようだが襲い掛かる原住民のような何かからは知能のようなものは感じられない。
「白いガリガリに白いデブ、赤いクモを出す鐘女にでかいネズミ…本当に不気味だ。それに…! うおッ!」
考えながら歩いているとトラップを踏んでしまい、物陰に隠されていた彫刻から火矢が飛んでくる。本当に油断も隙も無い。他にもギロチンや落とし穴など敵意満載のトラップに気を付けて進んでいく。
安全だと思える小部屋を見つけ、一旦休憩し状況を整理することにした。道中で手に入れた血の入ったパック、銀色の弾丸、血が固まったような見た目の石の様なものなど不可解なものばかりだった。
「この血の入ったパックは輸血用か?腐敗もしていないし、直接刺して使うみたいだ。弾丸についてはそもそも銃が無い。そしてこの石はなんだ?後でアルベドに調べてもらおう」
分からないことは賢い奴に丸投げして、先に進むことにした。
丸一日戦い続けたため、鉄棒に纏わせるだけにしておいた赫子もガス欠気味であり、鉄棒自体もガタが来始めている。できる限り早く脱出しなければ。そう考えているとふと遠くに人影が見えた。
先ほどまで相手していたデブやガリは布切れくらいしか纏っていなかったが遠くの人物は何らかの意匠が凝らされた服を着ており、腰にランタンを着けている。依頼を受け調査しているのは俺一人だと聞かされていたが、迷い込んだのだろうか?出口を知っているかもしれない、淡い思いを抱きつつ声をかけることにした。
「おーい 迷ってしまったんだが出口を知らないかー?」
「…」
「大丈夫かー?」
返事がないため近づこうとした時、急に振り返ったかと思うと男は右手に持った剣で切りかかって来た。慌てて鉄棒で防御したが大きく歪み、使い物にならなくなってしまった。
「ああクソ! 此処に居る奴は皆話が通じねえのか! 大人しくしろ!」
赫子を発現させ男を気絶させるために攻撃しようとした時、いつの間にか左手に持っていた銃で撃たれ、動きが止まってしまう。その隙に近づいた男は右手を俺の腹に突き刺し、中身を抉り出した。
「がああああ! 糞が!テメェはぶち殺す!」
すさまじい痛みに襲われるが即座に傷口を赫子で覆い、あまりにも怪しい為使いたくなかったが、この状況では仕方がないと先ほど拾った輸血液を注射する。すると圧倒的な速度で傷口が塞がってしてしまった。さらに摂取した血からRc細胞が体をめぐり鎧を纏えるくらいには回復した。そして怒りのままに男に向かって突撃した。
「この血が何なのかは後で考えよう。テメェのはらわたぶちまけた後でな!」
こちらの攻撃が当たる直前に男は先ほどと違う散弾銃を撃ち全身に衝撃が走り、またも動きが一瞬止められてしまう。再度俺の腹に腕を突き刺そうとしたが鎧に弾かれた。腹部に走る衝撃とともに火花が飛び散る。恐ろしい威力だったが何とか耐えた。
一方男の方は体勢を崩し、その隙に全力の一撃を叩き込もうとしたがすんでの所で回避されてしまった。だが致命傷ではないものの、かなりの痛手を負わせることが出来た。
「…」
しかし男は懐から出した輸血液を太ももに刺したかと思うと、あっという間に治してしまった。
「はあ!? そんなのありか!」
どうやら男にとって輸血液は失った血を補充するためではなく、回復薬としての役割を持っているらしい。
「これは…かなりの長期戦になりそうだ…」
「…」
相手が輸血液をどれほど所持しているかわからない以上一撃で仕留めなければ決着はつきそうにない。ただ相手の回避能力は半端ではなく、それから数分間確実に当てられるタイミングを狙っているうちに男はこちらの動きに順応し始め、今では確実にこちらが劣勢だった。
「オラァ!」
「ッ」
攻撃を回避した男に追撃しようとした時再度銃で撃たれ、こちらの動きを止められてしまった。しかし前回と違い、腹に拳を突き刺すのではなく、こちらの首を刎ねようと武器を振り被ろうとしていた。
先ほどまでの隙が無い攻撃とは違う大振りな攻撃。
「ここだ!」
此方も大きいダメージをくらうためにあまり使いたくなかったが急凍樹を倒した時の赫子の爆発を使うことにした。これなら相手に回復させることなく仕留められる。
そしてすさまじい衝撃と肌を焼く熱風、爆音が遺跡の中で轟いた。
決着はついた。
胸に大穴が空き、盛大に血を噴出して男は倒れた。
此方も少なくないダメージをくらったが、輸血液を注射して回復した。
「はあ、はあ、 …服も武器も駄目になっちまった。 いや、こいつから武器は貰えばいいか」
倒れた男から剣を取ろうと近づいた時、男が白くなり溶けだしあっという間に消えてしまった。
「はあ!? 本当に何なんだ…いやまずはいったん落ち着こう…いろんなことがありすぎた…」
壁にもたれ掛かり、ため息をつこうとした時、口の中が甘いことに気が付いた。男の噴出した血が口に入ったのだろうか、いや全身血塗れになっているようだった。
「本当についてないな…」
悪態をつきながら口周りについた血を舐め取ると急激に意識が遠のいた。
土の匂いで目を覚ました。どうやら長時間地面で寝ていたらしく、体の節々が痛むが先ほどまでいた場所とは明らかに違う場所で目覚めたのだ。異常な事態だと思い、周囲を確認するとどうやらここは庭園のようだった。あちこちに白い花が咲き、古びているが丈夫そうな家、その後ろには大樹があった。
「ここは…?」
始めて訪れた場所のはずだがどこか懐かしく安心する場所のように感じる。
それに先ほどの爆発で駄目になったはずの服はもとに戻っており、全身に浴びたはずの血もきれいさっぱり消えていた。戦闘で歪んで使い物にならなくなった鉄棒は無くなっていた。
ふと気が付くと家から降りた階段の下、その段差には人間と見紛う今にも動き出しそうな人形とその膝には青黒い色をしたイカともナメクジともとれる軟体生物が居た。
「なんだこの…イカ?」
近づくとその軟体生物は触手をこちらに伸ばしており、まるで握手を求めるようなそんな気さくさを感じ、恐る恐るであるが指先で触れた。
すると大量の情報を頭に叩き込まれたかのような衝撃が走り意識を手放した。
気が付くと草原に寝ころんでいた。どうやらいつの間にか遺跡の入り口に移動していたらしい。夢だったのではないかと思いポーチを確認したが、輸血液や弾丸、奇妙な石が入っており、現実であったと再認識する。
「何がどうなってるかわからないが無事に戻れたならよしとするか」
考えても仕方ないと気持ちを切り替え、ジンに報告をしにモンド城へと帰ることにした。
「それで例の遺跡はどうだった?」
「殺意満点のトラップに冒涜的な魔物ばかり。それに話の通じない殺人鬼が中をうろついている。宝箱はあったが中身は誰かの頭骨や瓶に詰められた背骨等のまともじゃないものばかりだ。立ち入り禁止にするべきだと思う」
「そうか。報告ありがとう。今日はゆっくり休むといい」
「そうするよ」
宿に戻り荷物を整理しているとポーチから奇妙なランタンの様なものが出てきた。
「なんだこれは?こんなもの拾った覚えはないが… それに中のろうそくに火を点けるみたいだが、そもそも開けられるような機構がないな」
そう考えていると頭にこのランタンの使い方が浮かんできた。どうやら指を鳴らし、手をかざすらしい。
その通りにやってみると視界が暗くなり、目を開けるとあの庭園に立っていた。前回と違うのはあの精巧な人形が動いていることだ。驚愕していると人形が話しかけてきた。
「初めまして、播磨様。」
ボイスとか考えたので一応書いときます
思いつき次第、追加していきます。
初めまして…
俺は播磨。外の世界から流されてきた喰種だ。ああグールと言っても人は喰わないから安心してくれ。これからよろしくな。
世間話・食べ物
何かいい匂いがするな…少し見に行ってもいいか?
世間話・依頼
喰種の身体能力は良いものだぞ。なんせあっという間に依頼を遂行できるからな
雨の日
ここまでずぶ濡れだと、かえって清々しいな
晴れの日
暑い…少し休まないか? じめじめとした暑さは苦手なんだ
こんにちは…
おはよう ん?もう昼? すまない寝過した。酒の飲みすぎはいかんな…
こんばんは…
これから酒場で一杯付き合わないか?今まで旅してきた話が聞きたいんだ
シェアしたいこと
何かおすすめの料理はあるか?ここに来て色々な物を食べられるようになってからは何もかもが旨そうで堪らない。例えばパイモンとか… ハハハ、冗談だ。
料理について…
何か食べたいものはあるか?材料はそれなりにあるからリクエストしてくれれば作れるぞ。その代わりといっては何だが感想やアドバイスをくれないか?もっとうまいものを作りたいんだ。
クレー
播磨について…
ハリマお兄ちゃんはクレーと一緒にお魚をどっかーんしてくれるんだ!それにハリマお兄ちゃんと一緒だとジン団長にバレないんだよ! これはジン団長にはいわないでね!
蛍
播磨について…
頼れる存在かな。ドラゴンスパインでは放熱瓶要らずだし、移動しながら料理ができる、素材集めも楽になったし、崖も赫子を使ってあっという間に登れるし…
…本当にいてくれてよかった。
モナ
播磨について…
彼の運命ですが、復讐を果たし、それまでに謳歌できなかった人生を満喫しているみたいですね。今は平和なひと時を過ごしているように見えますが彼の人生はいつも返り血に濡れている。
こんなこと言いましたが、私は彼に感謝してるんですよ?彼が来てからは料理も食べられますし、何より素材集めが圧倒的に楽になりましたからね…