トレーナーたちとウマ娘たち   作:メンタル弱々マン

1 / 6
※トウカイテイオー持ってないです。


落ちぶれたトレーナーと皇帝になったトウカイテイオー

「トウカイテイオーって、雰囲気変わったよな」

「なんと言うか、シンボリルドルフみたいになった? って感じ」

 

 街中の電気屋さんに展示されているテレビを見ていた二人の会話が、耳に届いた。

「トウカイテイオーが変わった」そんな言葉を最近、そこらで聞くようになった。

 聞きたくもない言葉だ。

《皇帝》に《帝王》なんて。

 

 俺は元トレーナー。

 既に落ちぶれて、堕落した生活を送る毎日だ。

 あの日以来、ウマ娘と言うものを見たくなくなってしまっていた。

 だが残酷にも、街中では相変わらずウマ娘の話で盛り上がっていた。

 

「……テイオー。お前は、なんでそんなのに」

 

 

 

 

 あの日は、十二月七日。

 日本では雪が降っていた日のことだった。

 俺とトウカイテイオーは今後の計画を立てるために、小屋の中にいた。

 もうすぐクリスマスだね、って話をして、これからのことに期待していた。

 そんな時に一本の電話がかかってきた。

 

「ボクが出るよ!」

 

 そう言って電話に出たテイオーの顔色は、どんどん悪い方へと変わっていった。

 俺はなんだか嫌な予感がして、テイオーの横に立っていた。

 

「て、テイオー? どうかしたのか?」

「……え、遠征に行ってる、カイチョーが、怪我、したって。もう、走れないかも、しれないって……!」

 

 泣きそうな顔をしているテイオーに俺は何も言えなかった。

 ただ突っ立ってることしかできなくて、その日はお互い帰ることにした。

 そこから数週間ぐらい経った頃だろうか。

 新聞が届いた。

 

「……引退宣言、だと」

「どうしたの、トレーナー……」

「……い、いや。なんでも、ない」

 

 あの日から明らか様に元気が無くなっているテイオーに、それを見せることはできなかった。

 その行いこそが、間違いだと気づくのに、そう時間はかからなかった。

 この日本は、いや世界は今やウマ娘のことで溢れている。

 少し街に出歩けば嫌でもウマ娘の情報が入ってくる。

 だから、そこから数時間後、少し外に出ていたテイオーはその日、帰ってくることがなかった。

 

 心配になって各地に電話を掛けて、すぐに見つかった。

 駿川さんが見つけてくれていた。

 彼女は生徒会長のところにいたのだ。

 

 俺が駆けつけた時には既に、会長、シンボリルドルフは居らず、そこにいたのは生徒会長の席に座るテイオーだった。

 

「……ねぇ、トレーナー。ボクは、ううん。私は、あの人の代わりになれるかな?」

 

 そう言って俺を見つめるテイオーは髪を下ろし、その雰囲気を全く別人のものへと変化させていた。

 感じていたのはただ、悲しみとも、苦しみとも、恐怖とも言えない、濁った感情のみ。

 そして俺は置いていかれた、ついていけなくなっていた。

 だから誰にも告げることなく、トレーナーとしての座を降りた。

 逃げ出したのだ、俺は。

 

 

 

 ふとテレビを視線を移した。

 そこに映っていたのは、新たな生徒会長になっていたトウカイテイオーの姿だった。

 あの時のように髪を下ろし、新たな勝負服に身を包んだ姿だ。

 後ろには、新しいトレーナーの姿も見える。

 

『今回のレースも圧倒的でしたね。トウカイテイオーさん』

『……私の目標はシンボリルドルフさんみたいになることですから。それに連勝続きなのはただ単純に、運が良いだけなんです』

 

 

 そう言って苦笑いする彼女の顔は、もう既に昔の姿はなかった。

 昔のトウカイテイオーの姿はどこにもない。

 別人だった。

 本当にトウカイテイオーなのか、あれがそうなのか。

 何度も自身の目を疑った、耳を疑った。

 だけど、現実は本物だ。

 

「なぁ、トウカイテイオー」

 

 届かないはずのテレビに向かって語りかける。

 

「お前は一体。何を目指しているんだ?」

 

 既にその姿はシンボリルドルフを超え、ありとあらゆるウマ娘の頂点に立っていた。

 だと言うのに彼女の目はまだ、何かを欲していた。

 求めていた、探していた。

 だがそんなテイオーに俺は、あの時と同じように、悲しみと、苦しみと、恐怖の感情が混ざって見ていたのだった。




好評だったらトウカイテイオー視点でも書くかも。
書くかな?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。