トレーナーたちとウマ娘たち   作:メンタル弱々マン

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色々と崩壊してるから、許して。
(ただ書きたかっただけの駄文晒し)


疑われたトレーナーと有馬記念のハルウララ

 その日の景色は今でも覚えている。

 東京レース場でのことだ。

 圧倒的喝采、賞賛、そして数々のウマ娘たちに与えた希望。

 それは絶対に不可能と言われていたことを成し遂げた、ハルウララのことだ。

 

 有馬記念、大差を付けて一着勝利。

 うるさかったはずのレース場は一瞬で静まり返って、そして大地を揺るがす賛賞へと変えた。

 あれから大体一年ぐらい。

 プレハブ小屋でのこと。

 

「……ふ、ふざけるなァッ!!」

 

 机を力強く叩くと、後ろに座っていたハルウララが体をビクッと動かす。

 俺は怒りで、ただ怒りでどうにかなりそうで、そんなハルウララのことが目に入らなかった。

 キレていた理由は目の前の机に置かれていた雑誌にある。

 そこには大きく、こう書かれていた。

『ハルウララ、ドーピング疑惑か?』……と。

 

「あれは、あれはウララの出した結果だろうがッ! それにこっちだって、無実を証明している、検査結果突きつけてやっただろうがッ!!」

 

 如何にもこんな調子になり出したのは随分前のことだ。

 ハルウララが初めて、G1レースに勝利した時のことだった。

 ある記者にこう聞かれたのだ、『ドーピング、してるんじゃないですか?』と。

 

 当然その場は静まり返る。

 俺は一瞬、何言われたのかわかんなくなって、硬直した。

 取材を受けていたハルウララは驚いたような顔をしていた。

 だと言うのに、その記者は止めることなく、聞き続ける。

 プライバシーもクソもなく。

 

 当然すぐに追い出してもらった。

 だが、そのことが記事に載った、載ってしまったのだ。

 ファンたちは相手にもしてはいないが、最近それを騒ぎ立てる輩が増え始めていた。

 最初は俺、トレーナーに矛を向けていたのだからよかったのだが、最近はウララ自身に矛が向き始めている。

 どうにかするべきなのだ、どうにか。

 

「あいつか……あの、クソ野郎かッ!!」

「と、トレーナー。ダメだよ。そんなに怒っちゃ……」

「……あ、ああ。ごめん、ごめんな。ウララ」

 

 後ろに座っていたハルウララが恐る恐る、俺にそう言った。

 少し怯えている様子だった。

 そんなハルウララを見て、俺はあることに気づいた。

 いや、気づいてしまった。

 

「なぁ、ウララ。最近ちゃんと──笑ってるか?」

「……え?」

「あ、いや……なんか最近、笑ってる顔見たことないな、っと思って」

 

 ハルウララは最初、とても困惑していた。

 俺も一瞬、一体何を聞いてるんだろうと思ったが、ハルウララは少し硬直していた。

 なんて答えたらいいのか、わからなかったのだろう。

 だから彼女は笑みを作った。

 満面の笑みを貼り付けてこう答えた。

 

「大丈夫だよ……! ほ、ほら。ウララまだ、笑ってるよ……」

 

 苦しそうに、笑った。

 俺は何も答えることができなかった。

 だって彼女の笑みは本心を一切映していなかった。

 それどころではない、そこに感情はない。

 ただ、笑う、と言う『言葉』しかない。

 

「そう、か……ウララ、お前は今、走りたいか?」

 

 俺は本来聞くべき言葉ではない。

 わかりきっているはずのことを聞いた。

 だって、答えが変わっているって、そう思っているから。

 変わっていないで欲しいと、そう思っているから。

 

「う、うん! 走りたい、走りたいよ……ウララ、まだ。走れる、から……」

 

 その言葉に出会った日のこと、いやそれより前のことを思い出す。

 俺は勝利を絶対と定義づけた。

 勝利は人を喜ばすことができるし、勝利はウマ娘自身を前に進ませる。

 だからこそ、ハルウララのレースを見たときには驚愕した。

 

 負けたと言うのに、みんなに笑顔を振りまいて、その笑顔でみんなを喜ばしていた。

 だからこそ、俺は彼女に勝利を与えれば、それは絶対的な希望になると、そう考えた。

 その考えは半分正しかった。

 だがもう半分は、彼女自身を苦しめる結果に繋がってしまった。

 

 最初こそは勝利に喜んでいたのだが、その勝利が壊れるのに恐怖し出した。

 彼女が、ではない。

 俺が、だ。

 

 彼女は楽しんで走っていたはずなのに、俺が勝利に拘った故にそれをぶち壊してしまったのだ。

 

 だって、その証拠に。

 ああ言ったウララの顔は、走りたいという言葉とは裏腹に笑みを貼り付けながら泣いていた。

 

「……あ、あれ? おかしいな。ウララ、悲しくなんて、ないのに……!」

 

 直感的に理解してしまう。

 彼女は、勝利を失うことに対する恐怖より、走らされることに恐怖を覚えてしまった。

 

 走ることで、何を言われるのか。

 勝つことで、何て書かれるか。

 それら全てに、恐怖してしまった。

 

「ウララ。俺、ちょっと外に、出てくる」

「う、うん」

 

 その日、俺は彼女の元に現れることはできなかった。

 だって顔を合わせたら、俺が叫んでしまいそうだったから。




そのトレーナーは、あまりにも優秀過ぎた。
そのウマ娘は、あまりにも信じ過ぎた。

次、誰がいい?

  • アグネスタキオン
  • サイレンススズカ
  • トウカイテイオー(テイオー視点)
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