トレーナーたちとウマ娘たち 作:メンタル弱々マン
寛容な読者様が許してくれることを祈っています。
深夜テンションだとガバるのどうにかしたい……。
(今回はウマ娘が闇堕ちしなかったりする)
俺は一枚の写真をただ、じっと見つめていた。
血に濡れてはいたが、見えないわけではなかった。
「……なんだよ、これ」
理解を遥かに上回るその写真は、俺の部屋の壁に貼り付けられていた。
朝目覚めた瞬間、その景色だ。
数百枚という数の写真が、その壁一面に埋められた。
全ての写真は角度、多少の景色は違えど基本的には同じものを映していた。
そしてそんな数百枚の写真の上からはっきりと、赤い血で『彼女を救え』と大きく書かれていた。
現実的ではないし正直言って、この写真が本物だと認めたくはない。
写真の日付は全て、今日行われる天皇賞(秋)のレース中の時間帯。
見えるのは芝、つまりレース場。
映っているのは一人の少女が倒れ込んでいる姿だった。
俺はその姿に見覚えがある。
いや、見覚えがあるどころの話ではない。
彼女とは毎日一緒にいる。
名前を『サイレンススズカ』と言った。
「……あ」
そこまでの思考に至ると同時に、俺は思い出していた。
数百回に渡る、その光景の目撃に。
彼女の『死』に立ち会うその瞬間を。
あの日は、今日は運が悪かったとしか言いようがなかった。
あの瞬間の彼女を救える人がいなかったのだ。
元々その日、足の調子が悪かった彼女に、俺はやめるべきだと言った。
だが彼女はその先の景色を見たかったのだろう。
その説得に俺が折れてしまったのだ。
「……わかった。俺の負けだ、だけど絶対に無茶するなよ?」
「トレーナーさん……ありがとうございます!」
そのレースには、誰もが勝ちを疑わなかっただろう。
そして彼女はレース中、突然失速を始めた。
失速、と言うよりもあれはバランスを崩したと言うべきだろうか。
時速70、80kmを出すのがウマ娘だ。
もしその時、彼女を受け止められる人がいれば、俺は何度そう思ったか。
その速度を出したまま彼女は、倒れたのだ。
彼女にとって一番速い、最高速度を出していた状態で。
そんな状態で倒れたのだ、いくらウマ娘と言えどその速度で転倒してしまうのは、最悪な事故を引き起こしかねなかった。
気づいた時はもう遅く、既に事は潰えた後だった。
その後の事はほとんど記憶にない。
ただ強く刻まれているのはと、次の俺に記憶が引き継がれる寸前、三女神像の前に行ったことだけだ。
何百回と言う回数、全てにおいて。
一体なぜ、俺はこうも時を戻るのか。
どうして何度もここに帰ってくるのか。
そんな事はもはやどうでもいい。
今はとにかく、彼女を救うことが最優先だった。
何回もやり直しで、俺は気づいたことがある。
何十回目辺りから俺はレースを止めること自体は成功していた。
ただ、問題は俺が無理やり連れ出したり、無理やり出せなくすると彼女は『足の事故』で死亡している。
俺は無理やり止めることで、何度も何度も彼女は死んでいる。
だからと説得しようにも、彼女は止まることがなかった。
「どうにかして……いや違う、どんな方法を使ってでも止めないと、また彼女が死ぬ」
時間が経つにつれはっきりとして行く記憶。
今にでも発狂しそうだ。
『とれ……な……さ、ん……』
最後の言葉が脳裏に浮かぶ。
今すぐにでも自身の顔面を殴り飛ばしてしまいたいほど、気がおかしくなりそうだった。
何百回と言う記憶が頭の中ではっきりとし出しているのだ。
神様っていうのがいるんだとすれば、あまりにも趣味が悪すぎる。
『わた、し……』
聞きたくはない、見たくはない。
こんなもの思い出すくらいなら、死んだほうがマシだ。
だが、彼女を救わずして死ねるわけがなかった。
「トレーナーさん……大丈夫、ですか? 顔が真っ青ですよ?」
「あ、ああ……スズカ。俺は、大丈夫だ。それよりも……今日の天皇賞、出るのか?」
「はい。トレーナーさんと一緒に決めたじゃないですか。この天皇賞は勝ち抜こうって」
「あ、ああ……そう、だったな」
呪縛のようなものだ。
きっと俺の言葉は、呪縛のように、俺自身を苦しめている。
あの日あの時、そんなことを宣言しなければこんなことにならなかっただろうに。
一体彼女をどうすれば止められる。
『……ん、……、……かっ……、で……す」
彼女と別れた後、ずっと考え続けた。
そして考えついた事は一つ。
俺が無理やりやめさせてダメならば、彼女の意思で辞めたいと思えばいいんじゃないかって。
簡単な話だった。
実に簡単な話だった。
誰だって何もする気が起きなくなる方法がある。
実に簡単で、簡易的、
誰にだってできるし、なんなら今すぐできる。
やる事はただ一つだった。
彼女の控え室の中、彼女が準備にここ来るまでの間に成し遂げればいい。
今の彼女は俺が何をしても絶対に死ぬ。
なんらかの要因で、俺だけが生き残って彼女は死ぬ。
だとするのならば、俺が代わりに死んでやろう。
誰だって死ぬところを見れば、何もする気は起きなくなる。
きっとそうだ。
いや、絶対にそうだ。
ああ──違う。
気づいてるし、知ってる。
そう言って誤魔化して、現状から逃げようとしているだけだ。
椅子の上に登る足は、今までにないくらい軽快で、重かった。
天井からぶら下げた縄は随分と固く、ぶら下がれば解ける事はなさそうだった。
ああ──わかってる。
もう見たくないんだ。
目の前で死ぬ前に、自分が死んで現実から逃げたいだけなんだ。
なぁ、スズカ。
君は悲しんでくれるだろうか。
泣いてくれるだろうか。
そんなことが知りたいわけじゃないのに、頭の中は色々なことでぐちゃぐちゃにかき混ぜられていた。
一体どうすれば、君は止まってくれるのだろうか。
ここまで頑なにやろうとするのは、一体何故なのだろうか。
三女神像、か。
結局なんなのかわからないけど、俺はここで終わりにするとしよう。
俺は首にかけた紐を確認して、一歩先にと、前へ出た。
「トレーナーさん。レース前に少し話したいこ、と……が……」
そんな顔をしないでくれよ。
そんな酷く驚いて、泣いたらいいのか、驚いたらいいのか。
何をしたらいいのかわからない顔なんて。
だから、もう君は、二度と走らないでくれ。
そのトレーナーは、見たくないものまで見てしまった。
そのウマ娘は、見たくないものを突きつけられた。
今回独自設定として
三女神像は意思の引き継ぎを行います。
(ゲームを除いて)殆どの世界線で走りきることが叶わなかったサイレンススズカの意思は、この世界線に託されました。
今回のサイレンススズカがこの世界線に於いて、走ることをやめなかった理由はそこにあります。
結末を知っていながらも。
どのように末路を辿るか、知っていながらも。
トレーナーの役割はただ一つ。
三女神像は彼にある思いを託しました。
彼女を無事に、走り切らせる。
その思いを。
要するに、彼女が走りきるその瞬間まで、トレーナーの戦いは終わりません。
『トレーナーさん、一緒に走れて、楽しかった、です』
ネタ切れしそう、助けて
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ウマ娘やってネタ探ししよ
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キングヘイローかわいい
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サイレンススズカは何を思っていたのか