甘き夜明けよ、来たれ   作:ノノギギ騎士団

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工房のネジ
仕掛け武器に使われるネジ。
仕掛け武器の可動部に使われている。



医療教会の2人組(下)

 

 初めて父たる狩人と言葉を交わした記憶をネフライトは、よく覚えている。

 

「修理をしているのかと思えば。……これはこれは、興味深い」

 

 狩人の夢の工房。

 ネフライトは、整備の油で顔が汚れることも厭わず熱心に行っていた作業を中断した。

 狩人はネフライトの作業台に散らばる仕掛け武器──だったものを眺めた。

 

「よくバラしたものだ」

 

 可動部は全て単独の部品に解体されていた。装飾部に至るまでの、全てが。

 

「はい。月の香りの狩人様、または助言者様、あるいは、この夢の主。──失礼。私はあなたに対する適切な呼称が分かりません」

 

「何でも構わない。しかし、こんなことをしたのは君が初めてだ」

 

 布が敷かれた床に広がるのは医療教会の仕掛け武器シリーズ、作業台には火薬庫の仕掛け武器シリーズが並んでいた。いま解体に取りかかっているのは回転ノコギリだ。

 

「私は、これらがどうやって動いているのか気になっています。だから、ですから、こう……」

 

 ネフライトは『怒られるかもしれない』と思い、身を縮こまらせ、持っていた工具を手の中でくるくる回した。だが杞憂のようで狩人は興味深そうに作業台を見つめるだけだった。

 

「感心、感心。機構も壊れていないようだ。君は手先が器用だな」

 

「ハァ。そうかもしれません。──ああ、そうだ。お願いしたいことがあるのです」

 

「ん? 何か」

 

 いくつかのネジを取り上げて比べていた狩人が、ネフライトのために腰を屈めた。

 

「我々の中身がどうなっているか知りたいので、他の三匹のうちどれかをこのようにしてもよいですか?」

 

 かつて火薬庫達が命を賭して秘め、ヤーナムの闇に葬られた回転駆動の秘密は、いま窓から差し込む白銀の月光によって残酷に照らされている。

 綺麗に解体した回転ノコギリを指差したネフライトに狩人は「ああ」と返事ではない声を漏らした。

 

「できれば同性が好ましい。だからクルックスを私にお貸しいただけませんか。開いたら閉じて、お返しします」

 

 月の香りの狩人と同じ顔をした少年の存在は、ネフライトにとって生まれながらの特別だった。この時は、まだ言葉を交わしたことはなかったが、存在の特異性は理解していた。──それについて彼が無関心であることが許しがたく、怒りを抱いてしまうほどに。

 狩人は驚いたふうに目を細めた。

 

「なるほど。君は中身が気になる性質なのだな。そうか。ヤーナムにおいてそれは命取りではあるが、直裁とは手っ取り早く確実な手段でもある。よい選択かもしれない。……さて。君の願いは、俺が返事すべきものではない。クルックスに直接依頼したまえ。けれど開かずとも分かることはある。それを理解してからでも遅くはないだろう」

 

 ネフライトの小さな頭に手を乗せ三度ほど頭を撫でた後、手の甲でも頬を撫でた。

 

「彼らは、それぞれ素晴らしい仔だ。君にとっても素晴らしい存在になるだろう。彼らにとっての君がそうであるように」

 

 言外の却下と受け取り、ネフライトはそれから興味を失ったように振る舞った。

 

 

 

■ ■ ■

 

 

 

 たとえ同じ枝葉の隣人であっても興味を持てなかった彼は、狩人の言葉でようやく他の三人について考え、よく見るようになった。

 彼らを知れば知るほどいつか『開きたい』願いは増したが、その行いの前後で彼らがネフライトに抱く感情は変化してしまうことが予想できた。自分でも意外に思ったことだが、日を経るごとにその変化を厭うようになった。

 

 ──私は、彼らに嫌われたくないのだ。

 

 機会があれば何でも費やせる自分が、いまだ誰にも依頼しないのは彼らに抱く愛着のせいである。そう認めざるをえない。

 

「君が見下すそれに、いつかすくわれるのではないかと僕は案じているのだ」

 

 夏休みに海で言ったセラフィの言葉が思い出される。

 

 ──ああ、君は正しい。

 最高のタイミングで、それは私の手元を最悪に狂わせた。

 なぜなら。

 まさにそのせいで窮地に陥り、終いには死を願うほどの苦痛を招いてしまったのだから。

 

 

 

■ ■ ■

 

 

 

 クルックスは、口の中に広がる森の土の味を知覚して目を覚ました。

 体には、かなり激しい戦闘をした後のような熱がある。敵を打ちのめしたいという欲と心を律する規範の意識が、互いを食い合った直後のような高ぶりだ。

 いったい何をしていたのか、痛みのせいで思い出すことが出来ない。唯一、覚えているのは鈍い銀色の銃口と火花の炸裂だ。

 

(あ? ああ……思い出してきたぞ……)

 

 側頭をかすめた銃弾は、クルックスの意識をしばし暗転させるには十分な威力を持っていた。

 しかし。

 

(なぜ……?)

 

 地面に頭を寄せると温度の低い土と風が、体の熱を奪っていく。

 記憶が正しければ、クルックスとネフライトはお互いに殺意をもって戦闘に及んだ。どちらが死んでもおかしくない争いだった。クルックスは全力で挑んだ。ネフライトも死に物狂いだっただろう。そして、先に殺意が命に届いたのはネフライトの方だった。銃弾を決して避けることの出来ない距離は、銃弾を決して外さない距離でもある。そこで引き金が引かれるのを見たというのに、クルックスの体にはどこにも穴が空いていなかった。テルミに壊された顎以外の怪我はないようだった。

 

(もし、外れたのだとしたら……)

 

 至近距離は『外さない距離』であって『外せない距離』ではない。

 クルックスにはもう分からなくなってしまったが、きっとネフライトは銃口を逸らしたのだろう。それ以外に体に穴が空いていない理由は、とても考えられないからだ。

 身を起こそうとすると銃弾がかすめた側の耳の中は、ひどい耳鳴りがあった。

 全ての音が遠く、天地は斜めで世界がぐらつく。

 安静が必要だと再び目を閉じようとしたとき、林の向こう側から悲鳴が聞こえた。

 クルックスの意識は、泥のように沈み込んでいた微睡みから覚醒した。

 

「わ、私達は『きょうだい』だぞ! 分かっているのかっ!? セラフィ! 同じ枝葉の隣人を──や、や、ぁ、やめ、やめろ。やめろ……やめ──ッ!」

 

 次の瞬間。暗い森に響いた絶叫は、自分を下したハズのネフライトのものだった。

 立ち上がり、よろけ、木々に掴まりながらクルックスは起伏のある地形を乗り越えた。

 

「やぁ」

 

 場違いに朗らかな挨拶で迎えたのはセラフィだ。ネフライトの得物である教会の杭を持っている。

 彼女の編み上げブーツの下で正常ではない呼吸をしているのはネフライトだった。引きつけを起こしたようにときおり背中が震え、辛うじて息をしている。クルックスに気付くと涙と涎を拭うこともせず、苦しげに顔を歪めたまま彼は地面を掻いた。彼は何度もそうしていたのだろう。指はとうに泥に汚れ、爪は割れて血が滲んでいた。

 

「クルック、ス……クルックス……た、たすけ……」

 

「いけない、ネフ。殺すつもりだった彼に縋るなんて恥だと思わないのか? 死んでも濯がれない恥だ。君は頭がよいハズなのに愚かなことをするのだね」

 

 教会の杭が振るわれた。クルックスはひどい頭痛と耳鳴りで反応が遅れた。空気を切る音、そして再び悲鳴。ネフライトが「ぎッ!」という声を上げた。

 杭の先端は錐状だが、杭頭は平面だ。

 杭頭で打ったのはネフライトの膝だ。こちらは、さらに正常ではなかった。

 

「君の得意な勉強の時間だ。君がいい子になるまで続けよう。大丈夫だよ。僕は最後まで君に付き合おう」

 

 セラフィが杭頭を落とした先は、通常曲がるべきではない方向へ折れた脚だった。

 クルックスは唸りセラフィに向かって止めるように手を振った。

 

「何か。……喋れないというのはこういう時に不便だ。けれど君のことだ。『やめろ』と言っているのだろうね」

 

 クルックスは身振り手振りで肯定した。

 

「僕は見逃してもよい。世の中のたいていのことがどうでもよいのだからね。けれど彼は、またやるだろう。ここで躾けておくのは君のためでもある。どうせ全ての艱難辛苦は、お父様か君が飲み干すことになるのだ。君にとって悪い話ではないと思う。そして、彼にとっては善い話だと思う」

 

 足掻くネフライトの頭蓋を潰しかねない圧でセラフィは脚に力を込めた。

 

「見よ、瞳や啓蒙、智恵の何するものぞ。いま僕を止める力があるものか。よく感じろ、よく覚えろ、記憶せよ。忘れることなかれ。痛みのなかに真実はある。そこで唯一、理解の暁光は現れるのだ」

 

 長い髪に遮られ、彼女の顔は見えない。

 何かに取り憑かれたようにセラフィは言う。

 実際のところ。

 これは彼女の言葉ではないのだろう。

 

「…………」

 

 彼女の語る先達の言葉は、彼らの真実なのか、セラフィに吹き込むために作った狂言なのか。クルックスは判断ができなかった。する必要もないのだろう。……恐らく、当分は。

 首を横に振り、クルックスはネフライトのそばにしゃがみ込んだ。そして、彼女の編み上げブーツを叩く。長い脚を退けた。「世の中のたいていのことがどうでもよい」と言った彼女の言葉に嘘はない。だからこそ、クルックスが望めばこうしてすぐに退いてくれるのだ。

 

「君は損な人だ。いずれ愛で破滅してしまうのではないかと……僕はレオー様を案じるように、君のことも深く案じているのだよ」

 

 喉の奥でクルックスは低く唸った。礼を告げたつもりだった。

 啜り泣くネフライトを慎重に抱え上げ、樹木を背に座らせた。それから衣嚢に入っていたハンカチーフで彼の顔を拭う。その間、ネフライトは意識朦朧でぐったりとしていた。だが、膝の骨折──実態は粉砕状態のようだった──の患部を確認していると彼の意識は浮上した。

 

「私はっ……間違ってなど、いない、からな……!」

 

 歯を食いしばり絞り出した声はセラフィにも聞こえたことだろう。

 クルックスは泥と血に汚れたネフライトの指を弱く握った。

 

「君だって分かっているんだろう。お父様の方法では、悪夢をもってしてヤーナムは手詰まりだ。どの団体も組織も現状を打破する成果が上がらない。いいや、誰も諦めはしないだろうが。それでも『外の神秘を取り入れる』。そういう方法だって検討されるべきだ。停滞を打破するために……だから、私と君は争った。君は、私を止める理由を持たなかったからだ。君が現状の継続を望むから……!」

 

 声は嗄れ、疲れきった声だった。ネフライトのこんな声は聞いたことがない。

 セラフィが苦痛により切り開いたネフライトの心の柔いところは、彼が常日頃に抱えている本音なのだろう。クルックスが考えていたよりも真摯に、そして真剣に、誠実に彼はヤーナムのことを憂いていたのだと痛いほど知ってしまった。

 だからこそ、疑問が起きた。

 

『なぜ俺を撃たなかった』

 

 無力に広げられた手にクルックスは文字を書いた。

 するとネフライトは、まるで深い眠りから覚めたように、大きく目を見開いて虚空を見つめた。

 

 

 

■ ■ ■

 

 

 

 初めて笑った時の記憶をネフライトは、よく覚えている。

 

「俺もネフの真似をしていつも使っているノコギリ鉈を整備ついでに解体してみたんだが、なんと! ひとつネジが余った! ハッハッハ!」

 

 父たる狩人が、あまりに愉快に無邪気に嬉しそうに笑ったのでそれにつられて彼も笑った。

 生まれて初めて彼は笑った。

 同時に、彼は危惧を覚えたのだ。

 

 

 

■ ■ ■

 

 

 

 ものは。ひとは。

 解体して、それきりではないのだ。

 減ることもある。

 変わってしまうのだ。

 それは、もう、どうしようもなく。

 手の施せないまま。

 何が足りなくて何が変わってしまったのか。

 何もかも、分からないままに。

 

 

 

■ ■ ■

 

 

 

 クルックスは、宙に伸ばされたネフライトの手を取った。

 腕は絶望的なまでに短く、遙か暗澹の地に届かない。

 

「あぁ、お父様。私のお父様。私はネジが……ひとつ、足りなくなるのが……怖かったのです……っ」

 

 メンシス学派の祈りがそうであるように。

 彼が声を届ける相手も間違っていた。

 ネフライトは、クルックスを父たる狩人だと誤認しているようだった。痛みによる意識の混濁は続いている。

 彼は休むべきだった。

 怪我を忘れたように立ち上がろうとする体をクルックスは押さえつけた。片手で十分な抵抗だった。

 

「私が、最も新しい悪夢の主をお支えする幹になります。……責は全て私に。呪いは全て私に。ですから……ですから……」

 

 握られた手は、微かに握り返した。

 

「他の三人が自由に振る舞うことを、どうかお許しください……。彼らは弱く、幼いのです。だから私は……このネフライト……必ず、貴方のお役に……」

 

 考えすぎた頭に堪えきれず、彼は樹に頭を預けた。

 虚ろに開いた目には、銀灰の夜空と星々が映っていた。

 

「彼らに夜明けを……。あぁ、我らの夢の主……ヤーナムの夜は彼らに暗すぎるのです……」

 

 力尽き落ちた手を重ね、クルックスは被っていたトリコーンを外した。

 ネフライトは完全に意識を失ってしまった。痛みによる失神だった。

 

 思いがけず知ってしまったネフライトの心をクルックスはどう受け止めてよいのか分からなかった。

 かつてテルミは言った。人には向きと不向きがあるのだと。

 その果てに三人の誰よりも智恵を蓄積できる彼は、彼にしか出来ないことを拝領したかったのだ。

 しかし。

 

「彼は賢いのに愚かなことを考えている。彼の献身を感謝する『きょうだい』はいない。君も僕もテルミも。お父様のことを厭う仔はいないのだから」

 

「…………」

 

 セラフィの言葉は、他者が聞けば誤解を招きかないほど『あけすけ』で、しかも真実だった。

 クルックスが驚いたのはネフライトが『きょうだい』に向ける感情の大きさであって、彼の願いではなかった。

 狩人が、いずれ夜明けを迎えるため父の事業に携われることは幸いだ。

 その過程がいかな苦難であろうと、望んだ夜明けがどんな悪夢であろうと、後悔する予定はないのだから。『きょうだい』は同じ気持ちだろう。

 だからこそ、セラフィは不可解に首を傾げる。

 

「……愛おしいものだね。彼がこんなに僕らのことを案じているとは知らなかった」

 

 この言葉には頷くことができた。

 セラフィが微かに笑う気配がした。

 カインハーストの紋章が刻まれた外套を外し、ネフライトに被せた。夜が来た。森は冷えるだろう。

 

「皆、ヤーナムを案じている。形は違えど愛している。こうした思想の違いが諍いを呼ぶのだ。だから僕らに罪はないのだろう」

 

 罪と罰に関わる難しい話を、たった今からしたくはなかった。

 クルックスは、唯一感情表現のできる手を振り、その時になって初めて霧が出てきたことに気付いた。

 

「霧……湖かな。視界不良は狩りの天敵だ。硝煙の香りも追えない。だが、テルミも同じ条件だ。彼女にルーピン先生が見つけられるとは思わないな」

 

「…………」

 

 クルックスもそう思う。

 校内とはいえ森のなか、たった一匹のルーピンを見つけることがテルミに出来るだろうか。

 可能性は低い。

 けれど、だからこそ。

 クルックスは、正面を指差した。

 

「行くのか。いいだろう。付き合おう。僕らはどうも間が悪いらしいから、『まさか』の事態にはいつも備えるべきなのだろうね」

 

 そして二人の姿は、夜霧のなかに消えていった。

 

 

 

■ ■ ■

 

 

 

(ああ、楽しいっ!)

 

 少女の手には余る銀の連装銃を片手にテルミは森のなかをスキップしていた。

 夜の気配は気分が高揚する。

 鳥が鳴き、獣が唸り、いまは狼男がひそむ森であろうと高揚は止めどなく、テルミの心をくすぐった。

 

「お父様、ご覧になって! わたしを見て! ご存じかしら!? ビックリかしら!? わたし、いま、生きているの!」

 

 小川を飛び越え、何に憚ることなく歌う。

 この森のなかでたった一匹のルーピンを見つけることは一般的に困難だ。

 だからこそ、標が必要だ。

 

 

 O Meiteli, liebs Meiteli, wo hesch au dis Haerz ?

 ──おぉ、メイテリ、愛するメイテリよ、貴公の心は何処にあるのか?

 

 “Es ist mir huett abhande cho, i gspuere no de Schmaerz.

 ──今日なくしてしまったの! まだ胸が痛むのよ。

 

 Si hend pfifelet, hand truemmelet und’s Schwyzerfaehndli gshwaenkt,

 ──兵隊は口笛を吹き、夢を見て、太鼓を鳴らしていたわ。

 

 do ha-n-is der erste Freud im Traengtrommpeter gschaenkt.”

 ──わたしはラッパ手に初めての歓びをあげたのよ。

 

  Di-ri-ril-lel-lal-lal-la

 ──ディ・リ・リル・ル・ル・ル・ル!

 

 

 おかしいくらいに声は裏返ってしまい、まるでファルセットだ。

 テルミは振り返った。彼女の耳はどんな些細な音も聞き逃さなかった。

 

「──ご覧になって。そこにアルプスの山麓が見えるようね?」

 

 薄い霧の向こうから現れたのは、父と同じトリコーンを被るセラフィだった。

 

「僕には可愛い君が見えるよ。もっともやろうとしていることは、あまり可愛いことではないようだ。僕の妹君」

 

「あら。小生意気にお姉様を気取る心算なのね? お説教かしら。最近はわたしにお説教したがる人が多いわ。フフ、聖職者に説教なんておかしいですね?」

 

「そうかな。聖職者は医療者なのだから誰かの話に耳を傾けるべき機会は多いだろう。君は話せなくする方が好みのようだが」

 

「ウフフ、クルックスがあまりに可愛いことを言うのだもの。二度聞いたら自分が止められなくなりそうですから仕方ないことでした」

 

 テルミは気まぐれに握っていた仕込み杖を宙に振った。幾枚もの刃が雲間からのぞく光を弾いた。

 

「君を見逃すワケにはいかない。これから君は大人しくハッフルパフの寮に帰る。そして寝る。全てが丸く収まるのだ。どうか? ネフは対価を払った。君は?」

 

「ならばわたしは愛を差し出しましょう!」

 

 歌うようにテルミは言う。そして手を広げ、楽しそうに彼女は微笑んだ。

 

「お父様がわたし達を愛するように、わたしも人間を愛するのです。人間は弱くて、幼いわ。だからすぐに死なないように、支えてあげましょう。きちんと守ってあげましょう。清潔にしましょう。そして、愛してあげましょう。人間は、ほんのちょっとの情があれば救われるのですから、その『ほんのちょっとの情』をあげたり、あげなかったりしましょう」

 

「僕はどうでもいいけれど。さては君、人間を滅ぼしたいのかな?」

 

「まさか。──わたしは常々思うの。クルックスは、ヤーナムとヤーナムの外の違いに苦しんでいるわ。辿った歴史が違うとはいえ差異は激しく悲しいものです。けれど、ただひとつ。ヤーナムと外界の隔たりを取り除く方法があります。──さぁ、再び血の医療を広めましょう! お父様の夢を世界に広めましょう! 名付けて、全世界ヤーナム化計画!」

 

「なるほど滅ぼしたいようだね」

 

 顎が壊されていなければクルックスも遠慮なく「は?」と言い放ったことだろう。しかし、口を動かすともれなく激痛がはしるため、彼はテルミの意見に対し不服従を示すため顔を顰めるのがやっとだった。

 セラフィはテルミの話がどこに辿り着くのか見守っていたが、もう見切りを付けたようだった。落葉を分離する大きな音が響いた。

 

「滅ぼすことも交流の一つだ。不可逆的で無益で実に非効率的な悪手だろうが」

 

「いいえ。お父様が定義する『幸せ』を広めたいだけです。絶対的で偉大なお父様の庇護下で服従することだけが、新しい人間の幸せなのです。わたしは血で酩酊する愚を繰り返さない。今度は、お父様の血で全てを興しましょう。ここを新しいトゥメル=イルにしましょう。ここを新しいローランにしましょう。ついでにイズと僻墓をほんのり添えて。それから、新しいヤーナムを降誕させましょう。全ての人々を病み人に再誕させ、かつてのお父様と同じにしましょう。瞳が足りないのならば与えましょう。そして幼年期の先へ。全ての人間は、唯一偉大なお父様からの拝領によってのみ次の階梯へ昇る価値を得るのです。皆で夜明けを迎えるために。──貴方達も一口、協賛いかが? 『きょうだい』は特別です。わたしの愛と献身に掛け値はありませんわ」

 

 テルミは手を差し出した。

 白い手袋に包まれた小さな手だった。

 

 テルミの言葉に嘘はない。心の底から本当にそれが真実だと信じているのだろう。

 テルミを知るホグワーツの人々は彼女を「優しい」と言う。彼らは正しい。テルミは優しい。なぜなら、テルミは『彼らは無知で瞳は蒙昧で、世界は最初から最後まで全部が悪い』と思っている。だからこそ彼らに寄り添う彼らに彼女は優しい。哀れんでいるから、底を失った優しさを与えることが出来るのだ。

 

 しかし。それでも。

 クルックスは、あの朝、彼女の震える手を握り眠ったことも覚えていた。

 

「言いたいことはそれで全てかな。昨年度話したことを今こそ実現しよう。──僕は三〇秒で君を湖に沈めるよ」

 

「あら。ご理解いただけないのね? 悲しいわ」

 

「……カインハーストの騎士が、医療教会の繁栄を泣いて喜ぶと思ったのかい」

 

「そういえばそうでした! うっかりしていました!」

 

 テルミは、悪戯っぽく唇に手を当てた。

 

「──貴女は敗者の女王に跪いて、わたしが勝者の枝にいることをときどき忘れそうになりますね?」

 

「血を吐いて歌うがいい、テルミ。君はネフより教育が必要のようだ。……?」

 

 獰猛に突き刺さる殺意をテルミも感じ取ったことだろう。

 それでも笑っていられるのは、夢を見る狩人であり『死んだことがなかったことになる』という月の加護があるからだ。

 

 ──我々が争うことは全くの無益だ。

 

 かつてクルックスは言った。

 この言葉は、正しいと信じたい。

 クルックスは、セラフィを制した。

 争えば、勝てるだろう。テルミが『きょうだい』のなかで最も弱いことは周知の事実である。クルックスも当然そのことを知っていた。

 だが、それだけなのだ。

 ネフライトと戦って分かったことだが、力で負かしただけでは意味がない。

 考えは混じり合わず、互いの理解もない。

 もしも、痛みが懲罰として機能するならば痛みの先には、永続的な死が保証されていなければならない。

 だが、狩人が厭うべき死から仔らは限りなく遠ざけられている。また、セラフィが推奨する痛みによる理解は獣の調教と同じ、ただの抑制だ。

 

 古狩人の言葉にも多少の誤りはあるものだ。『きょうだい』の間の諍いは、力によって解決できるものではなかった。

 その結論に辿り着き、クルックスは獣狩りの斧と散弾銃を手放した。武装を解除したことを意味する。

 

「君──」

 

 動くな、と視線で伝えた。

 クルックスは、セラフィの射線上を歩いた。

 

「あら、最初はクルックス? 素手なんて! わたしを甘く見すぎではないかしら? ……なに。なぁに?」

 

 寄生虫を取り出したテルミが不快そうに口の端を歪めたが、クルックスに敵意がないことに気付き、眉をひそめた。

 

「な、なに……?」

 

 ひと言も言葉を話す必要はなかった。

 日は遠くの地平線に消え、いまは自分の掌を見るのがやっとの暗闇が三人を取り囲んでいる。

 たった一歩。恐れたテルミは後退りした。

 彼女が自分の失態に気付き、取り繕う暇はなかった。

 

 クルックスは、テルミの小さな体を抱きしめた。

 彼女が、ほんのすこしも身動ぎできないように抱きしめた。

 昨年度校長室を出た後でテルミがそうしてくれたように。

 居心地悪そうにもぞもぞとテルミはしばらく動いていたが、やがてぱったりと動きを止めてしまった。

 

「ああ、もう。顎を壊したのは失敗でした。貴方が何か言ってくれたのなら、わたしは千の言葉を弄して反論するでしょう。貴方が怒ってくれたなら、わたしは万の言葉をもって褒め殺してあげたのに。失敗です。本当に失敗でした。わたしは夜に使えない才能で満ちている。だって、こんなに……貴方が何を言いたいのか分かってしまうもの……」

 

 クルックスがいま『やめてほしい』と思っていることは、テルミに正確に伝わった。ささやかな抵抗のつもりなのか、それとも甘えているのか、テルミはぐりぐりと頭を押しつけた。

 

「けれど、どうしてもダメ? ネフも言っていたでしょう。狼人間は考察に値するわ。ユリエ様やコッペリア様も喜ぶと思うし……」

 

「…………」

 

 クルックスとて希少性は理解している。狼人間と出会えることは、そう多くない。

 しかし、クルックスは彼の中に間違っても虫を見出したくないのだ。

 首を横に振り、テルミに向かって瞬きをした。

 

「……ふぅん。ああそうですか。最初から私と争う気はないのですね。敵ではないと……」

 

 ──同じ夜明けを目指しているのに、違う手段を取ったというだけで傷つけたくない。ネフには悪いことをしたと思う。

 喉の奥で低く唸った。声を出すのは、やはり痛い。

 

「わたしにも、悪いことをしているわ」

 

 テルミは傷ついた顔をした。

 なぜそんな顔をするのかクルックスには分からなかった。

 彼女のように人の心が読めたらよいのに。こんな時は強く思った。

 

「残酷な人。お父様に似ているわ。……とても残酷。わたしを小さな子供のまま、大人にしてくれないの。けれど許します。貴方だから許すわ。ええ。わたしの恋しい人。クルックス、ねぇ、最もお父様に似ている枝葉の貴方にだけ……」

 

 腕を解くと彼女は最後にクルックスの手の甲にそっと唇を触れさせた。

 そばに歩いてきたセラフィは銃をしまう。ついでとばかりに軽く握った拳を縦に振り落とした。それはコツンとテルミの頭に落ちた。

 

「セ、んフィっ」

 

「諦めたかい。全世界ヤーナム化計画とやらは」

 

「今度はクルックスの見えないところでこっそりやります。ネフと一時共闘する理屈も見つかりましたし、次回はうまくやるでしょう」

 

「ああ、頑張るといい」

 

 クルックスは、セラフィが「すわ心変わりしたのか」と咄嗟に腰のベルトに手を伸ばしたが、武器を地面に放ったままだったことに気付き、背中を向けて拾いにいくかどうか迷った。

 

「ルーピン先生の件は……ともかく。僕は全てに反対しているワケではないのだよ。ただ突拍子もないことをしてほしくないだけだ」

 

「では、医療教会魔法界支部の設立は、三年後くらいにはじめましょうか。──こういう言い方ならばよろしくて?」

 

「できれば工程表も欲しいな。血の医療が栄えるということは『悪夢が増える』ということだ。お父様の生息域が増えると思えば悪い案ではないと思う。どうだろう、クルックス」

 

 どうもこうもクルックスは大反対だ。

『虫が少ないように見える』魔法界に『虫が多いようにみえる』ヤーナムの風土病の元凶を放流しようという行為は、連盟員として当然許容できない。連盟員としての父もそう考えるだろう。ならば強硬に反対しなければならなかった。

 

「クルックスも大賛成だそうだ」

 

「あらあらっ、ウフフ、忙しくなっちゃうわ」

 

 人の心を知らないセラフィが真逆の意見を代弁したのでテルミが失笑した。

 そうして彼女はしばらく笑っていたが、ある時、風が吹いた。

 誰よりも耳がよいテルミの耳には、小さな枯れ木が砕ける音が届いていた。

 

 振り返る先の木々の隙間には、狼よりも長い手足が見えた。

 風下で獣の臭いが届かなかった。音もなく近寄ってきたなら、気付かなかっただろう。

 小枝が体の重みで砕ける音でようやくテルミだけが気付いた。

 

「あ──まって──」

 

「何か?」

 

「今、そこに……あの樹の裏に……ルーピン先生がいる……と思う」

 

 テルミが指差した先へクルックスが素早く二人の前に立った。

 脚のベルトからスローイングナイフを抜き出し、二人を指差し、次にとある方向を指した。

 

「テルミ、行こう」

 

「で、でもクルックスを置いてはいけないわ。怪我が……」

 

「ネフのほうが重傷だ。そして君は方向音痴で一人ではネフの場所に辿り着けない。いざとなればクルックスは自分の頭を撃ち抜けばいい」

 

「それではダメなのよ。いえ、クルックスが死なないのは分かっているけれど、そうではなくて。ハリー・ポッター達がこの森にいるのを見かけたわ。彼らが危険だわ」

 

「おお、ポッター。どこでもいるのだな。さては遍在する概念に成り果てたか。──クルックス、作戦変更だ。ネフを避難させたら僕は戻ってくる。それまで足止めだ。どうせそうするつもりなんだろう?」

 

 クルックスは頷いた。

 セラフィは地面に放られたままだった獣狩りの斧を拾い上げ、柄を伸ばしたものをクルックスに握らせた。

 

「行くぞ」

 

「クルックス、噛まれちゃダメよ。……お父様に似た貴方の血に混ざり物が入るなんて嫌だもの……」

 

 喉の奥で低く唸ってクルックスは「杞憂だ」と伝えた。

 セラフィがテルミの手を取って、反対側へ駆けていく。

 

 油断なくクルックスは、太い樹木の裏側を意識した。

 狼人間が獣とも人間とも言えない仕草をして、こちらを窺っている気配がした。

 

 獣との争いにおいて後手に回るのは賢明ではない。

 そのため先に手を出したのはクルックスだった。

 

 投擲したナイフは狼人間の鼻先を危うく掠めた。

 敏感な鼻を攻撃されたことが分かったらしい。狼人間が鼻息を荒く、攻撃的になるのが分かった。

 長柄に伸展した斧を両手で持ち、クルックスは狼人間が飛びかってくることに備えた。

 

 そんな時、森の虚ろに獣の遠吠えが聞こえた。

 

「……っ……」

 

 狼人間は、チラとクルックスを見て、それから二度と振り返らず背を向けて森の霧のなかに消えた。

 

(待て!)

 

 追いかけたが、森のなか平坦ではない地面で四つ脚の獣に勝てるほど人間の脚力は優れていない。

 毛皮が焦げた臭いは森林の香りと湖の水気を含んだ霧に溶けていく。間もなくクルックスは、狼人間を見失った。

 

「ぐぅ……」

 

 ──探すことは難しい。

 これは狼人間はもちろん、ハリー・ポッター達の捜索も困難だ。

 

(霧が……)

 

 このままではセラフィとテルミに合流することさえ困難になりつつある。

 クルックスは斧を握ったまましばらく立ち尽くしていたが、そのうち踵を返した。

 

(これ以上は、何も追えまい。……俺の手には余る事態となってしまった)

 

 しかし、父たる狩人ならば駆けただろうか。

 その思いが一瞬だけ足を止めた。

 

(ネフとテルミの暴走を止められた。今は、それだけを成果とすべきだ。狼人間の脅威は本人とダンブルドア校長の責任だ。そして、深夜に冒険するハリー達は自己責任と監督不行き届きというものだろう。……虫がいないのであれば、今の俺が追うべき獣はいない。ならば負うべき責もない。そう……そのハズだ)

 

 クルックスは、わずかに頭を振り撤退を決意した。

 結果として、彼の常識的判断は正解だった。

 間もなくシリウス・ブラックの存在を察した吸魂鬼の大群が森と湖に溢れた。

 彼らの処刑に巻き込まれていたら、事態は更に深刻になっていただろう。

 

 

 

■ ■ ■

 

 

 

「クルックス?」

 

 霧による視界不良のなかクルックスの気配に最も早く気付いたのは周囲の警戒にあたっていたセラフィだった。

 テルミに介抱されるネフライトの折れた脚は、腫れていたがひとまず異常な角度は治っていた。ただ、荒療治をしたのかもしれない。ネフライトは妙に汗をかいて苦しげな呼吸をしている。意識はまだ戻っていないようだ。

 

「どうした? 見失ったのか? ならば仕方ないな。──テルミ、ネフを連れて撤退する」

 

「待って。ここまですればよいでしょう。ふたりは先に帰ってください。……輸血液では骨折まですぐに治せませんから、ネフが自分で歩けるようになるまでわたしはここにいます。彼には杖が必要ですからね」

 

「夢に送ればいいだろう」

 

「……誰が介錯しても嫌な気分になるので却下です。それにネフはセラフィと違い、夢から這い出て来るのに時間がかかるのです」

 

「ならば城に帰るのは一人だ。クルックス、先に帰って医務室に行った方がいい。二人は僕が見張っていよう」

 

 テルミはネフライトの頭を膝の上にのせて柔らかく微笑んだ。

 

「杞憂ですわ。この視界ですからね。ネフにもここまで読んだ先の策はないわ。また、この脚では追えないでしょう。……彼が起きた時に貴女がいるのは過ぎた罰になります。だから、お二人は先に帰って……ね?」

 

 この状況で二人を残していくことに不安がある。

 だがセラフィは「いいだろう」と告げた。

 問い詰めるようにクルックスはセラフィへ視線を投げかけた。

 

「二人は反省が必要だ。……僕なら、そっとしておいてもらいたいからね」

 

 セラフィはテルミに手を振り帰路についた。

 クルックスは彼女の背を数秒見つめていたが、すぐにテルミとネフライトのそばに膝をついた。

 

「……クルックスもいいのよ。痛かったでしょう。輸血液は肉や血を治すことができますが、骨はすぐに治りませんから。早く治してもらってね」

 

 ネフライトはお腹の上で手を組んで休んでいる。

 彼の手に触れかけて、手を引っ込めた。

 先に行く、と心の中で呟いてクルックスも背を向けた。

 彼らの足音が聞こえなくなった後で。

 

「──ごめんね、クルックス、セラフィ」

 

 テルミは、ネフライトの頭を膝の上から退けた。セラフィから与えられた外套を羽織らせ朽ちていく葉と湿った土の上に置かれた彼は微かに身動ぎした。

 

「ネフは厳密な人だから……ううん。違うわね。貴方はいつも何事にも真摯だわ。昨年度、『報われたいワケではない』と言ったけれど……わたしは貴方が報われないのなら、とても悲しい。愛にさえ見返りは必要だわ。血を流すことならば、尚のことね」

 

 だからこそ。

 

「わたし達が最初に願った成果をあげることはできないでしょう。けれど、貴方が尽くしたようにわたしも尽くさなければ天秤はいつまでも傾いたまま。……クルックスやセラフィに挑むのは貴方にとって恐ろしいことでした」

 

 狩人同士の争いを避けることは、尊い行いだ。

 血に酔っているワケでもないのに争うなど無益なことだ。ましてそれが『きょうだい』の間のことならば。

 実際、テルミやセラフィ、クルックスは無駄な血を流さずに済んだ。

 去った二人に告げたことに嘘はない。

 だが一方でネフライトの献身に応えなければ彼からの信頼を失うことだろう。

 彼にもセラフィやクルックスと戦わずに済ませることができたハズだ。実際にクルックスを行動不能にしたのは争いを疎んだからだ。だが、彼は争った。どのような経緯で戦闘が行われたのか分からないが、ネフライトは最後の最後で武器を取った。彼の最も厭う手段を選んだ。──お父様のために。

 

「わたしだけは、貴方の献身に応えなければなりませんね」

 

 汗の浮かぶ額に口づけを落とし、テルミは「好きよ、貴方。ええ、本当に。愛しているわ」と囁いた。

 

 

 

■ ■ ■

 

 

 

 ヤーナムの四仔が出身地と生誕理由に相応しい血の応酬を繰り広げている間。

 ハリー・ポッターと仲間達、先生、そして脱獄囚を取り巻く状況は変化し続けていた。

 

 長年、ハリー・ポッターの父母を裏切ったと思われていた狂気の大量殺人鬼にして最新の脱獄囚であるシリウス・ブラックは、親友である彼が死んだ今でさえ彼に忠実な親友であり続けており、同じく父母から信頼を寄せられていたピーター・ペティグリューこそが真の裏切り者であったという真実は、ハリーの精神に重大なダメージを与えた。

 そのうえ。

 シリウスが控えめに提案した、ささやかな未来の計画はハリーにとって夜明けとハロウィーンとクリスマスが一緒になってやって来たような高揚感をもたらしていた。シリウスという父の親友だという『新しい家族』は魅力的だったし、ダーズリーのところに戻らない選択があるなんて考えたことがなかったからだ。もっとも、この幸福な想像は数十分しか保たなかった。

 

(ピーターが逃げたっ……!)

 

 冤罪と認められたシリウスと過ごす未来がぶち壊されただけでもう頭がいっぱいなのに、そのうえ真の仇の一人と言うべきピーター・ペティグリューは非合法の『動物もどき』であり、再び姿をくらましたのだ。──ロンのペットとして長年親しんだであろう──鼠の姿になって。

 

 ピーターを追うことは難しい。

 いくつか要因がある。

 まず鼠となったピーターが向かったのは、人では近付くのが躊躇われる森が近くにあること、霧が出てきて視界が悪いこと。今日が満月であり、ルーピンが狼人間であったこと。だが、何よりの困難は、吸魂鬼がシリウスの存在を嗅ぎつけたように群がってきたことだ。

 狼人間に変身してどこかへ行ってしまったルーピンは、もはやハリー達にはどうしようもなかった。ピーターは逃げていった。ロンは城に辿り着いただろうか。シリウスとルーピンを追いかけてやって来たスネイプも失神状態だ。

 頼れる人は誰もいない。動けるのは最早ハリーとハーマイオニーだけだった。

 だからせめて。

 遠くから犬のキャンキャンという悲鳴が聞こえたとき、ハリーとハーマイオニーは気まぐれな雲が月を隠してしまった暗闇のなか、目配せをして駆けた。

 

 

 

■ ■ ■

 

 

 

「平和だ」

 

 とてもそうは思えない事態が続く本日。最も縁遠い言葉を聞いたクルックスは隣を歩くセラフィを見た。皮肉だろうか。しかし、彼女に蔑む色はない。彼よりまたほんのすこし背が高くなった彼女はわずかに彼のために身を傾げた。

 杖の灯りを点し、セラフィはクルックスを先導した。

 

「ネフとテルミのこと、恨んでいるか」

 

「…………」

 

 クルックスは首を横に振った。

 

「優しい君。……君は以前、優しさによって滅びる価値があると言った。けれど君がいなくなったら僕は悲しい。……樹に吊り下がっている君を見た時に思ったんだ。優しさなんていらないから生きてくれないか。情さえなければ君はネフとテルミに負けることはなかっただろう」

 

「…………」

 

 ──無理を言うな。

 クルックスは「それは叶えられない」と手を振った。

 

「お父様の気持ちが……僕はすこし分かる気がする。生きているのならば、それでよいだろう、とね。死んでいるよりずっと──」

 

 セラフィは不意に言葉を切り、足を止めた。

 ──どうした?

 足を止めると途端に寒さが身を襲った。

 

(『寒さ』……?)

 

 太陽は沈んだが、季節は夏に向かいつつある。

 空は、ほとんど晴れていた。

 冷気の原因は何なのか。

 

「吸魂鬼」

 

 セラフィがポツリと言い、左手に握る落葉の短刀を自らの首に当てた。

 

「クルックス、すまないが自力で帰ってくれ。介錯が必要ならば僕がやる」

 

「……!」

 

 クルックスはセラフィの腕を掴んだ。

 

「僕に恐怖はないが……! でも……吸魂鬼はダメだ。とてもとってもダメだ! 君に弱い僕の姿を見せたくない。お願いだ。死なせて……死なせて……!」

 

 クルックスがセラフィを止めることが出来たのは、筋力の差だった。今にも自らの首に刃を突き立てようとするセラフィを制して「待て」と手で伝えた。吸魂鬼は存在し、漂っている。だが、近付いてこないのだ。存在は認識しているようで彼が彼女を引っ張って左右に動くと吸魂鬼のボロボロのローブに包まれた頭部がつられるように動いた。

 

「……?」

 

 セラフィが落ち着きを取り戻した。

 

「……よく分からないが好機だ。シリウス・ブラック以外を狙わないよう命令を守っているのだろうか。行こう、クルックス」

 

「…………」

 

 二人は城に向かって全力で走り、クルックスは振り返った。吸魂鬼は追ってこなかった。

 

「ぅ、ぁ……あ……」

 

 クルックスは呻いた。痛みではない。いいや、ある意味で痛みだった。胸が痛かった。

 

(──俺達に魂はないのかもしれない)

 

 クルックスは、もしも、この考えが真実だとすれば吸魂鬼の動きが説明できるような気がした。『守護霊の呪文』について詳しく書いていた本では、呪文が有効な存在についても記載があった。レシフォールド──肉食の魔法生物だ──と吸魂鬼が上げられ、後者には生態が書いてあった。

 吸魂鬼に目玉はない。シリウス・ブラックの人相を見分けて襲っているワケではないのだ。 

 

(俺達は……いったい……)

 

 クルックスは考える。

 ──上位者の生きている肉片から誕生した動く血の遺志だとでも言うのだろうか。

 その答えはいつまでも知りたくないと思えた。

 

 

■ ■ ■

 

 

 

「吸魂鬼……!」

 

 それもすごい数だ。目視で確認できる限り、ざっと百体はいる。

 ハリー達を取り囲み、渦を巻いて周囲を彷徨い、獲物が冷気と精神の衰弱を起こし、動けなくなるのを待っているのだ。

 テルミは方向音痴だったが、ネフライトの休息地と自分が歩いてきた歩数と城の場所は分かる。

 だからネフライトが眠っている場所を振り返った。

 

 ──吸魂鬼は命令に忠実だろうか。

 ──許可されている獲物は、シリウス・ブラックだけ。

 ──同じ場所にいるハリーとハーマイオニーをあれらは見逃すだろうか。

 

 仕込み杖を握りしめ、テルミは備えた。物理攻撃はまったく有効ではない。吸魂鬼を傷つけるよりも、近寄ることで受ける精神汚染のほうが酷いのだ。もし、吸魂鬼と争えば立ち上がれなくなる可能性のほうが高い。

 シリウス・ブラックはともかく、ハリーとハーマイオニーは助けたい。もし、死んでしまったり吸魂鬼に魂を吸い取られでもしたらクルックスが悲しむだろう。

 策を練ろうと木々の影に隠れ、そっと湖畔を迂回して吸魂鬼達の背後に回り込もうとしたその時。

 人の声が聞こえた。

 頭上の遙か上でザアザアと音を立てて揺れる広葉樹のさざめきや湖の畔で絶望に喘ぐシリウス・ブラックの叫びでは紛れない、聞き慣れた人の声だった。

 

「どうなっているの? 森の中はヤーナムの連中が銃撃戦の殺し合いをしているし! 魔法使いなら魔法を使う方が絶対にいいのに──!」

 

「分からないよ! でも、まだバックビークが目撃されただけで何も問題はないと思う。それより父さんがそろそろ来るんだ!」

 

「恐ろしいわ……。きっと、いまボガートがいたら……わたしの前でも吸魂鬼に変身するでしょうね……」

 

「大丈夫。もうすぐだ、父さんが現れて、僕を──」

 

 ハリーとシリウス、そしてハーマイオニーが苦しむ湖の畔、その反対の岸辺に現れたのはハリーとハーマイオニーだった。

 テルミは、湖畔を振り返った。

 視線の先には、気絶して倒れ込むハーマイオニーと薄くぼんやりした守護霊さえも出せなくなったハリーがいる。

 テルミは、前を向いた。

 視線の先には、息を飲み込むハーマイオニーと期待に溢れた顔をしているハリーがいて──ハリーは顔を強ばらせた。

 テルミは、混乱した。

 

「えっ──まさか──いえ、でも、そんなっ、あなた達は、あそこに──」

 

 同じ時間に同時に存在する可能性について。

 解決できる存在をテルミは既知の存在しか知らなかった。

 そのため彼女は空を見上げた。

 

「ああっ!? やっぱりそうなのね!? やはり魔法界には、魔法界の上位者が根付いて──」

 

ペトリフィカス・トタルス!  石になれ

 

「いうッ!?」

 

 最も狩人の才能に恵まれなかった事実は、この瞬間に発露した。

 辛うじて上げた右手の仕込み杖を握ったまま、テルミは岸辺にバッタリ倒れた。

 

「どうしよう、私、ついにやっちゃったわ! 見られた!」

 

「ハーマイオニー、落ち着いて。吸魂鬼のせいでパニックになって錯乱していたことにしよう。それにテルミがここにいることがバレるのは彼女自身、好ましくないことだと思うし──こんなことはどうだっていい! そこに、父さんがもうすぐ……!」

 

 そこまでがテルミに聞き取れたことだった。

 冷えた地面の感覚が最後に残り、次に起きた時は二人のハリーもハーマイオニーも、それどころか吸魂鬼まで姿をなくしていた。不可解なことに死体のひとつとして落ちていない。凍てついていた湖は解け、木々の影がゆらゆらと水面に映っていた。

 

「いたた、た……」

 

 固まったままだったせいか節々が痛みを訴えたが、ネフライトのことを思い出し、テルミはよろけながら走った。岸辺に来るまでに振り返りながら、城までの方向を確認し歩数を数えていたので、辿り着くまでにはさほど時間はかからなかった。

 それに。

 ネフライトはすでに起きていて光源として杖に灯りを点していた。

 

「ぎ……ぐぅ……」

 

 杖に口を咥え、震える手で輸血液に注射針を打ったが、押し子をうまく引き抜けないでいるようだった。見れば右手は親指と人差し指が動いていない。

 テルミは普段物怖じしない性格だが、今ばかりは何と声を掛けるべきか迷った。

 彼女の手にはなにもない。それはつまり、何も果たせずここにいるワケで──ネフライトの献身に応えることもできず、彼にとっては文字通りの骨折り損と言ってしまえる状況だったからだ。

 

 狩人は、後手に回るべきではない。

 クルックスの心がけはこのような時にでも幸いなもので、テルミが知らないのは不幸な出来事だった。

 

 人の気配に遅れて気付いたネフライトが振り返る。

 拭う余裕のない唾液が顎のあたりでテラテラと怪しく光っていた。

 彼は実に嫌そうな顔をしてコルクから注射器を抜くことを諦め、瓶を地面に置き、杖を口から外した。

 

「……君、こんな時ばかり惨めな顔をするものではない。いつものように笑いたまえよ。ハハハ……」

 

 ネフライトは袖で顎や口元を拭った。

 言葉の割に覇気のない声は弱々しく、痛みが続いていることを露わにした。

 

「でも、わたし、何も出来なかったわ。ネフには痛い思いばかりさせてしまったし、クルックスもセラフィも呆れてしまったでしょうね……」

 

「君に愛想を尽かすなど今さらのことだ。そんなことより早く輸血してくれないか。いくつか指を折られていてね……」

 

「ああ、ごめんなさいね。すぐに。……指は、クルックスに?」

 

「セラフィだ。まったく……穢れた血族、貴族どもめ……セラフィに無駄なことばかり吹き込む。痛みは真実で理解の暁光だと……馬鹿馬鹿しい限りだ……セラフィはいよいよ狂気めいてきたぞ……」

 

「まぁ」

 

 いつもならばもうすこし遠回しの罵倒をするネフライトが直接的な言葉しか使えないあたり、思考に割く集中力を著しく欠いているようだった。

 テルミは本当であれば今すぐに二人のハリーとハーマイオニーについて報告したかったが、ネフライトの治療を優先した。

 

「入れますね。力を抜いていてください」

 

「……自分がされる側になることは、慣れない、な……」

 

 通常であれば戦闘中なので無造作な筋肉注射を行うが、今日は『普通』である血管への注射を行った。

 慎重に針を進め、押し子をゆっくり押し込んだ。

 

「……テルミ、そう泣きそうな顔をするな。私まで調子が狂う……」

 

「どうしてクルックスとセラフィと争ったの? わたしを呼ぶ手だってあったハズです。鐘を使えば、わたしはここに辿り着けたのに」

 

「別に。君に遠慮したワケではない。勝算があった。魔法があれば多少の手数で圧し負けることはないと──」

 

「嘘でしょう? 貴方は負けると分かっていて仕掛けた」

 

 疲れ切ったネフライトの緑色の瞳は、闇の中で虚ろに輝いて見えた。

 

「君には使えない才能ばかり溢れているな。人の嘘が見えるのか? 嫌な瞳だな。……勝算があったのは本当だ。ゼロで仕掛けるなどバカのすることだ」

 

「では、なぜ?」

 

「ヤーナムを憂う私の気持ちは君たちに劣らない……なんて。知らしめてやりたいと思った。それだけだ」

 

 嘘ではないけれど、本当でもない。中途半端な真実だとテルミには分かった。

 けれど、心の内を深く暴くのは善い行いではなかった。

 テルミは目を閉じて「うん。わかりました」と告げた。

 

「君が無事なのは幸いだ。私がこうも動けなくなったからな。君まで動けなくなっていたらと思うと自害も視野にいれなければならなかった」

 

「ええ……そう」

 

「……調子が狂う。君こそ武器を取るべきだった。なぜ戦わなかった?」

 

 理由は、たくさん浮かぶ。

 どれもが言い訳として使えそうだと思うと口を開く気力がなくなってしまった。

 

「当ててやろう。怖じ気づいたのだろう。お父様と同じ顔のクルックスと戦うのは、怖かったのだ」

 

「違いますっ! クルックスが『やめて』って言ったから、わたし、あの人のためでもあったのに──」

 

 ──ああ、言ってしまった。

 ネフライトの言葉は挑発だとテルミには、きちんと分かっていた。

 乗ってしまった後で気付いても遅い。ネフライトは軽蔑しただろう。

 恐る恐る注射器から腕を辿り顔を見ると彼は予想に反し、穏やかな顔をしていた。

 

「『彼の顎は君が壊したハズだ』と言うのは野暮なことだな。……人の願いを叶えるのは君の性だ。お父様から最も遠い可能性の君。君に断りきれるとは思わない。まして彼が願うのだ。君は叶えるだろう」

 

「ネフ……ごめんね。送った手記でわたしから提案したのに。わたしが梯子を下ろして、天秤を傾けてしまったわ」

 

「……君を恨むことなどしない。お互い『敵が悪かった』だけだ。二人が相手でなければ、こうはならなかった。次回は二人が敵に回らないよう気を付けるとしよう」

 

「……変なの。ネフが優しいわ」

 

「ちょっと考えれば分かるだろう。もはや結果に至った今、ここでお互いの非を責め合って何になる。傷の舐め合いの方がマシだ」

 

「嘘でも『君が好きだからね』と言ってくれたら嬉しかったわ」

 

「私が君に奉仕する理由は特に見当たらない。だが、君は私への義理を果たしてくれたようだ。さっきから何か言いたげな顔をしているが、何か見たのか?」

 

「上位者がね、いるみたい」

 

「ハァイ、ヘェアッ!? ど、どこで見たっ!? どうやって!?」

 

「ハリーとハーマイオニーが、二人いたの! 絶対おかしいわ! 知らない間に魔法界の悪夢の生地が溶け出していたのかもしれない──」

 

「あー、そう。ハァ~ッ……ハァ~ア……」

 

 今日最大の疲労を感じさせる溜息を吐いた。

 しかも『これから無知で蒙昧の輩にどうやって説明しようかなぁ』と困り果てた吐息だった。

 

「な、なぁに。……なによ?」

 

「説明が……面倒くさい……。しかも上位者は全然関係のない話だからなぁ……」

 

「えっ。それじゃわたしが見たのは……何……?」

 

「ただのハリー・ポッターとグレンジャーだろう。過去か未来か。知らないが」

 

「貴方は患者なのだから! 医療者に! 分かるように言いなさいっ!」

 

 テルミが力強く注射を進めたので、ネフライトは溜息を吐いてもいられなくなった。

 

「えっ。痛いッ!? なっ!? この、ばかっ! 注射器を押し込むなっ! このっ! やーめーろーっ!」

 

「うるさい! ネフが悪いの! わたしを怒らせるネフが悪いの! ちゃんとお話しないネフが悪いんだから!」

 

「だからって──ウワアアアアっ! 内出血してるっ!? へたくそ! 聖歌隊のクセにへたくそ!」

 

「ちょうどいいわ! この調子で瀉血しましょう! ね! 瀉血! 瀉血はだいたい全ての問題を解決に至らせるってブラドーおじさまもおっしゃっていたもの!」

 

「瀉血なんて時代錯誤だ! ヤーナムで時代錯誤ということは、無茶苦茶という意味だぞ! うわっ、やめろ!」

 

 不自由に抵抗するネフライトに跨がり、テルミは彼の襟首を掴んだ。

 ローブの背中を霧で湿った土で汚しネフライトはテルミを見上げた。

 ──雨だろうか。

 頬に落ちた雫をネフライトは拭えなかった。

 

「……わたし、真剣だったのに。貴方に報いたかったのに。……戦う前に、負けちゃった。狩人なのに。わたしだって……遠くてもお父様の、仔なのに……」

 

 懸命に殺していたハズの感情は、ささいな弾みで殺しきれずに膨らみ、それが雫となってネフライトの頬を濡らした。

 

「……ごめんね……ごめんね……ネフ、ずっと、痛かったのにね……」

 

 言葉は、無力だった。

 ネフライトは、折れた指でただテルミの涙を拭った。

 表情も言葉も何も作れなかった。経験がないことは出来ないのだ。参照すべき比較対象さえ分からない。

 

(こんな時。クルックスならば、何を言うだろうか)

 

 余ってしまった思考の端で、使い途のない空想をした。

 

(きっと涙を止めて……いつもの調子を取り戻せるのだろうな)

 

 クルックスほど他者の心情に理解がないことは欠点かもしれないとネフライトは思い始めた。

 ──それさえあれば私でもテルミの涙を止めることができただろうに。

 ネフライトが語るのは、たいていの場合、ただの事実だった。

 

「二人で共謀し、二人で挑み、二人で敗れた。……私達には、これだけでいいだろう」

 

 テルミが泣きじゃくる声が大きくなった。

 言葉は、無力だ。

 正解なのか不正解なのか、ネフライトには何も分からなかった。

 




プロフィールが更新されました
名前 ネフライト・メンシス
性別 男性
所属 医療教会(メンシス学派)
一人称 私
得意武器 教会の杭、慈悲の刃、弓剣、仕込み杖
苦手武器 獣狩りの斧、獣肉断ち、回転ノコギリ、寄生虫
趣味 読書、聖杯文字の整理と分析、裁縫、掃除
好きなもの 家族、学派、知識、タイプライター
嫌いなもの 夜、暗闇、人混み、人間関係
夢 人間が獣性を克つすること
まね妖怪 ミコラーシュの遺体
みぞの鏡 ヤーナムの幸福な人々


ネフライトと狩人
 クルックスほどではありませんが、彼とはしばしば言葉を交わしています。手紙はもちろん、対面での報告は狩人の思惑を知る機会でもあるため、欠かさず行っています。とはいえ、狩人はそうした仔らの『仕事』を抜きにもっとネフライトの好きなことや楽しいことについて話したいと考えています。そんな話題を振ったこともありますがネフライトは「私のことはお気遣いなく」と話を断ってしまいました。これはクルックスとネフライトの『違い』でしょう。──乳母車……? 何のことです?


魂、とは?
 魂なんて高尚なものはない。生ける上位者の肉片から生まれた動く血の遺志なのでは?と思いついたクルックス。
 自分の正体は、まだ知りたくない気分です。


ネフライトとテルミ
 そのうち、きっと反省会をするのだと思います。上位者は関係無ないし。『動物もどき』か。ハァ~ア。


ところで口からダークソウルの人間性が出ているシリウスのイラストが1枚くらいあるんじゃないかと探し回りましたが見当たりませんでした。
ご感想お待ちしています(交信ポーズ)
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