甘き夜明けよ、来たれ   作:ノノギギ騎士団

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ギルデロイ・ロックハート
華々しい経歴を持つ魔法使い。そしてノンフィクション作家。
売上は彼の人気を現わし、一時の時勢を作る。すなわち今をときめく時の人でもある。
覚えているだろうか。
サクラの木、ドラゴンの琴線。己の持つ杖は、強い自制心を必要とすることを。
人心は移ろいやすい。ライラックの花の如く。




ギルデロイ教室

 九月二日。

 

 夏の日差しが天上から降り注ぐ。

 夏休みの間に、すっかり夜行性の生活に順応していたクルックス・ハントにとって最初の一週間は、眠気との戦いでもあった。

 先ほどの授業、スプラウト先生の「薬草学」ではマンドレイクの植え替えをしたが、気が遠くなるのが眠気のせいなのか、マンドレイクの悲鳴のせいなのか、クルックスは結局分からずじまいだった。

 

 マクゴナガル先生の「変身術」の授業は、シャッキリしていた。コガネムシ──くれぐれもクルックスの憎む虫ではない──を洋服のボタンに変える課題は、歪ながら平べったい物になったので、まあまあの出来だった。

 教室を移動する間に体を伸ばした。

 

「あぁ……清々しい……ここは血の臭いもしないのだ……」

 

 彼は教科書を抱える手を見た。爪先にこびりつく血の黒ずみは、あと数日もすれば落ちるだろう。

 狩人服を脱ぎ、仕掛け武器を置いたクルックスにとって己を狩人たらしめるモノとは、脳裏に刻んだ『淀み』のカレル文字と指先の汚れだけだ。

 連盟の誓いはいつも胸にあり、銀灰の夜空に浮かぶ月が天上にある限り、心細いと思うことはない。だが寂しいものだった。

 

 ヤーナムと言えば、ひとつ用事を済ませていないのが心残りだった。

 ロン・ウィーズリーに休暇中の送付先になってほしいと頼む予定だったが、ホグワーツ行の便に彼の姿はなく、夕方の新学期の歓迎会にも姿がなかった。ようやく現れたのは今日だった。話す機会をうかがったが、ハリー・ポッターと共に空飛ぶ車でホグワーツに来たという噂のせいか彼らは好奇心旺盛な生徒に囲まれていた。

 トドメは朝食時の「吼えメール」だ。

 ウィーズリー夫人と思しき女声の怒鳴り声が大広間一杯に聞こえたのでクルックスも噂の真偽を知ることになった。ロンはじっとするのも難しい気分になったのだろう。そんなことがあった午前中は、話しかける機会を完全に逸してしまった。

 

 今学期初めての「闇に対する防衛術」は、午後の最後の授業だった。

 

 クルックスが教室に入ろうとしたところ、テルミ・コーラス=ビルゲンワースに呼び止められた。

 同じ枝葉の存在であるテルミが、妙に慌てた様子で駆けて来る。彼女が慌てること自体、珍しい光景だった。

 

「闇に対する防衛術の先生、ロックハート先生だということは知っているわよね。後で説明するから、貴公は授業で指名を受けた以外に発言しないで」

 

 早口で述べたテルミは、クルックスの胸に指を突き立てた。

 

「は。それはどういう……?」

 

「と、に、か、く。一言も話しちゃダメよ。迂闊なこと言っちゃダメなの。……あのチャランポランは役に立たないけど、面倒事はしっかり起こすタイプなのよ」

 

 面倒事はごめんである。

 クルックスは避けられる危険には触れないことした。

 

「分かった、分かった。ひとまず言うとおりにしよう」

 

「ひとまずでは困るのですけど」

 

「大人しくする」

 

「ちゃんとしてくださいね? くれぐれもネフのようなことは……できないと思うけれど」

 

「はいはい」

 

 テルミは、念押すると手をひらひら振って別れた。

 彼女の様子からすると、たいていのことをそつなくこなすネフライトは、何かしくじったらしい。

 

 疑問は、授業を受けて氷解した。

 

 新しい「闇に対する防衛術」はギルデロイ・ロックハート先生が教鞭を執るのだという。

 ダイアゴン横町のフローリシュ・アンド・ブロッツ書店へ教科書を買いに行ったとき、『ここでサイン会が行われました!』という内容の日刊預言者新聞の切り抜き記事が掲げてあった。そのためクルックスは、彼の顔を知っていた。

 授業準備室から降りてきたロックハート先生は、拍手を催促するようにチョイチョイと手を振った。まばらな拍手が起こった。

 

「ああ、どうも! 皆さん温かい歓迎をありがとう!」

 

 クルックスは教本であるロックハート先生の著書『トロールとのとろい旅』の表紙を見ていたが、心ここにあらずの拍手と彼の嬉しそうな声を聞きつけて顔を上げた。

 真っ白な歯を見せて笑いながら、彼はウィンクをした。

 

 周囲を見れば困惑した顔がいくつもある。

 クルックスには、どう見ても『温かい歓迎』には思えなかったのだ。しかし、聞くところによるとヤーナムでは、異邦者が道端を歩いている際に、石と靴を投げることを『歓迎』と呼ぶ風習があるらしい。民度が高くて結構なことである。……嘘か本当か分からないが、それに比べれば『温かい』と言えるかもしれない。しかし、ホグワーツに通い多少の知識を得た彼は比較対象が『あんまり』であることを知っていた。

 ──恐らく、この想像は見当違いだろう。

 テルミの忠告を思い出せば、迂闊に言葉を発することは好ましいことではない。

 

 クルックスは、口を固く引き結んでロックハート先生の説明に耳を傾けた。

 

「私はギルデロイ・ロックハート。勲三等マーリン勲章、闇に対する防衛術名誉会員、そして『週刊魔女』五回連続『チャーミング・スマイル賞』受賞──もっとも、私はそんな話をするつもりではありませんよ。泣き妖怪バンシーをスマイルで追い払ったわけじゃありませんしね!」

 

 まばらな拍手より少ない笑い声が起きた。

 クルックスは、ロックハート先生が中身のない微笑を絶やさない理由が分からなかった。生徒に歓迎されていないという事実を彼は気付いていないのではないか。あるいは、まったく無視をしている状態に思える。

 

「皆さん、全員が私の本を全巻そろえたようだね! 大変よろしい!」

 

 クルックスは本の表紙で輝く白い歯を見せて笑うロックハート先生を見て、本を裏返した。今日だけでヤーナムにおける一年分の笑顔を見てしまった気がした。笑顔ばかりあっても食傷だ。彼は一つ賢くなった。

 

「さて。今日は最初にちょっとミニテストをやろうと思います、心配ご無用──君たちがどのぐらい私の本を読んでいるか、どのぐらい覚えているかをチェックするだけですからね」

 

 手元にやって来たテスト用紙。そして、三十分後に回収されたほとんど白紙の解答用紙。

 クルックスは悟った。ネフライトの失態。それは。

 

「──私の好きな色は、ライラック色だということを、ほとんど誰も覚えていないようだね。しかし……! おぉ! 素晴らしい! ミス・ハーマイオニー・グレンジャーは、私の密かな大望を知っていましたね! この世界から悪を追い払い、ロックハート・ブランドの整髪剤を売り出すことだとね! よくできました! しかも満点だ! グリフィンドールに一〇点あげましょう! 満点は二人目ですよ。レイブンクローのミスター・ネフライト・メンシス! 彼も満点でした。みんなもこれからも励むように!」

 

「…………」

 

 クルックスは額に手を当てた。

 これまでの一年と半年程度の──便宜上──『人』生において、クルックスがネフライトを哀れむことはなかった。彼の頭の出来はたいそう良く、数多の学生を凌ぎ、ビルゲンワースの学徒達とも討議に耐えうる頭脳を持っているからだ。

 今回ばかりは頭が良すぎるのも考えものだ。

 

(俺なら恥ずかしくて自害する)

 

 クルックスの脳内では、セラフィが「銃口を口に突っ込むのがオススメだぞ」とソッとエヴェリンを握らせてきた。

 自分のことではないのに消え入りたい気分になった。ネフライトが心配である。……意外と気にしていないのかもしれないけれど。

 

 名指しされたハーマイオニー・グレンジャーを見れば、「光栄です!」とポッと顔を赤らめている。

 あれが通常の反応なのかもしれない。

 

 気分は晴れないが、テストが終了した。

 まだ授業時間は数十分ある。

 しかし。

 クルックスは、手元の教科書に目を落とした。

 教材がこれでは何をさせられるのか分からない。まさか教科書の音読などさせられるのだろうか。

 

 期待せずに彼を見ていると教卓の後ろから覆いの被った大きな籠を持ち上げ、机の上に置いた。

 

「気をつけて! 魔法界の中でもっとも穢れた生き物と戦う術を授けるのが、私の役割なのです。この教室で君たちは、これまでにない恐ろしい目に遭うことになるでしょう!」

 

「…………」

 

 籠のなかからキーキーと甲高い鳴き声が聞こえていた。

 標的は小さい。

 懐からスローイングナイフを取り出そうとしたが、ロックハート先生が幕を開ける方が速かった。

 

「捕らえたばかりのコーンウォール地方のピクシー小妖精!」

 

 芝居がかった声は「どうだ!」と言わんばかりだ。

 ピクシー小妖精は、二〇センチくらいの群青色の体躯だ。籠のなかで数十匹にもなるそれが暴れ出した。

 多くの生徒にとって拍子抜けだったらしく、あちこちから今日一番の笑い声が聞こえた。

 

「チッチッチ。こいつらが『危ない』と皆さんは知らないようですね。連中は、厄介で危険な小悪魔になりえますぞ。さぁ、杖を持って! 君たちがピクシーをどう扱うのかやってみましょう!」

 

 彼はそう言って籠の戸を開けた。

 途端に数十匹のピクシーは四方八方に飛び散った。

 弾丸のように顔面めがけて飛んできたピクシーをつかみ潰す。紫色の体液が出てきた。

 

「なんだ。青ではないのか」

 

 周囲を見ると上から下への大騒ぎでピクシー小妖精がさっそく一匹死んだところで誰も注目していなかった。

 ピクシー小妖精も仲間のことなど知ったことではないようだ。頭上ではインク壺が飛び交い、羊皮紙がばらまかれ、本が引き裂かれた。

 最も危険判断能力に優れた生徒の何人かは、自分の荷物を鞄に詰め込み教室の外に繋がる扉に殺到した。

 

「授業どころではないなっ」

 

 懐のスローイングナイフでネビル・ロングボトムの体を持ち上げようと企むピクシー小妖精を打ち落とす。

 クルックスは、ネビルを急かしながら教科書を回収して外に脱出した。

 

 ちょうどよく終業を告げるベルが鳴った。

 ピシャリと閉めた後でロックハート先生が何やら叫ぶ声が聞こえる。

 どうやら逃げ遅れた生徒があれを捕まえなければならないらしい。

 クルックスは廊下の窓を開けると手の中で死んでいるピクシー小妖精を窓の外に捨てた。

 

「無事か。ロングボトム」

 

「ひ、酷い目に遭った……」

 

 ネビルは、ピクシー小妖精に捕まれていた耳先が真っ赤になっている。

 ヒリヒリ痛むという患部を確認しながらクルックスは、ぼやいてみた。

 

「『闇に対する防衛術』とは、ああいうものの対処を教わるべき授業だと思っていたが、どうやら俺の思い違いだったらしい」

 

「それ、間違っていないとは思う。というか僕もそう思っていたんだけど……」

 

「昨年度のクィレル先生は、まあまあ、普通の授業をしてくれていたように記憶するが」

 

「すごく聞き取りにくかったけど、たしかに。あんなのと──ファンだったらごめん──に比べれば『まとも』だった」

 

「まとも。まともね……」

 

 クルックスの脳内では再びセラフィが「まともであることのなんとくだらないことか」と鼻で笑った。

 しかし、初学習者に必要なものは、そのくだらない『まとも』さなのだと学んだ。

 

「ピクシー小妖精を俺は知らない。患部の腫れが続くようならば、毒を持っているものと推察される。一応、医務室に行った方が良いだろう」

 

「ありがとう。授業一回目からこれなんだから……はぁあ」

 

 ネビルは、とぼとぼと歩いて行ってしまった。

 

 

 

■ ■ ■

 

 

 放課後になった。

 ロンと送付先の契約を取り交わすためには、学徒達が作成した契約書が必要だ。

 グリフィンドールの談話室に戻ると談話室は、盛り上がっていた。──新しい授業はどうだ。あの授業が難しい。蛙チョコカードの交換会はいつだ……等だ。

 

 その一角。

 見たことがない機械を抱えた少年が数人額を寄せ合って話し合っている。今年入学した一年生だ。

 

「──何をしている?」

 

 尋問するかのような声を出してしまった後でクルックスは、すぐに(しまった)と思った。

 テルミから、さんざん「貴公ってぶっきらぼうで損をしているのよね」と言われていたのを思い出した。ホグワーツは、ヤーナムの制圧的なコミュニケーションが求められる現場ではないのだ。とはいえ、他の言葉も見つからない。官憲でもあった連盟の長には、言い換える言葉があるだろうか。取り返しの付かない時間に遠い同士を思う。クルックスは話しかけながら困った。

 

「あ、あ、僕、コリン・クリービーです」

 

「何をしているのか。聞いてもいいだろうか」

 

 ──もう聞いているじゃないか。

 自分の不器用さに呆れるが、相手は自分以上にパニックになっているようだった。

 コリンはテーブルに置いた機械を大事そうに抱えた。

 

「写真! 写真が、僕は知らなかったんですが、でも、撮ったら、ちゃんとした方法で、魔法の薬で現像したら写真が動くんだそうです。だから、それを聞いていたんです」

 

「しゃしん……しゃしん……?」

 

 クルックスは、すこし考えて鞄のなかにあった『狼男との大いなる山歩き』を取り出した。

 表紙には登山服姿のロックハート先生が歯を見せて笑っている。

 

「写真とは、この、こういう、絵のことか」

 

「そうです!」

 

「そうか。それで?」

 

 再び鞄のなかを探りながら、クルックスは問いかける。

 自分のなかでは明確な質問であったが、言葉が足りないことに気付いたのは、財布をたぐり寄せたあとだった。

 真っ青な顔をした三人の一年生が口をパクパクさせていた。

 

「そ、そ、それで? 僕、コリン・クリービーです?」

 

「知っている。……すまない。俺はどうも言葉の扱いが……むぅ。いくらなのか知りたかったのだ」

 

「いくら!?」

 

 彼はますますカメラを大事そうに抱えた。

 

「俺は写真が欲しい。撮ってくれないか。……いえ、今ではない。土曜日の早朝、湖畔に人を集める。俺を含めて四人だ」

 

「ああ、いいですよ!」

 

 コリンは輝くような笑顔を見せた。

 

「お代は?」

 

「取りません、取りません。動く写真にしてみたいので」

 

「…………」

 

 このような場合について、どのような対応をすべきか。

 週末にテルミと相談しよう。

 コリンとの話をまとめたところハリーとロン、ハーマイオニーのいつもの三人組が寮に戻ってきた。

 

「ロ──」

 

「ハリーッ!? 元気かいッ!?」

 

 クルックスの声をかき消すほどの大声で叫んだのは誰であろうコリンだった。

 思わずコリンを見ると「もうハリーしか目に入らない!」と言い出しそうなくらい興奮した様子だった。

 ハリーは、明らかに迷惑そうな顔をしつつ律儀に「やあ、コリン……」と片手を上げて返事した。

 コリンは友人達と「やった……! 挨拶してもらえた!」と喜びを分かち合っている。

 

「……その。人気らしいな」

 

 ハリーと目が合った。

 沈黙が耐えきれずクルックスは言った。

 言ってしまってから再び(皮肉っぽいことを言う場面か?)と自問自答して難しい顔をしてしまった。

 

 彼は肩をすくめて螺旋階段を昇っていった。ロンも続いた。荷物を置きに行くのだろう。

 クルックスも彼らを追い、荷物から契約書の書類を取り出した。

 ローブを脱いで一段落しているロンの前に立った時、できる限りの『感じの良さ』を心がけた。

 

「な、なに」

 

 逆に警戒されてしまった。

 頑張るだけ無駄に思えてきたクルックスは、取り繕うことをやめた。

 

「ウィーズリー、貴公に頼み事がある。相談に乗ってくれないだろうか」

 

「……それ、僕じゃないとダメなやつ?」

 

「ぜひ貴公に頼みたい。無論、ただ働きなどさせない。それで用件だが……夏休みの間、郵便の預かり先になってほしいのだ」

 

 それからクルックスは、あらかじめテルミと学徒達と定めた設定を話し始めた。

 

「ふくろう便が届かないくらい遠方? 君、外国に住んでるの?」

 

「それくらい遠くのイメージだ。ふくろうが届かないので今年はスネイプ先生がわざわざ来訪してくださった」

 

「うえ~」

 

 ロンと隣で話を聞いていたハリーは、家に来たスネイプが突如、宅内に乱入し周囲を油だらけにした光景を思い描いているようだった。とても嫌そうな顔をしている。

 

「俺が週に一度、来訪して郵便物を回収する。期間中、十ガリオンでどうだろうか。つまりは一年、十ガリオンだが」

 

「十ガリオン!?」

 

「足りないのであれば交渉しよう。……ただし変更契約を作成する必要があるので、ひとまずこの書類にはサインをしてもらうのだが」

 

「十ガリオンあったら杖が買えるよ……!」

 

 ロンは惨めな顔でスペロテープで何とか繋がった杖を出した。

 彼は、空飛ぶ車で『暴れ柳』に衝突して杖が折れたと呪文学の授業でぼやいていた。

 クルックスも壊れているのは知っていたが、杖の壊れた状態は見たことがなかった。

 彼の杖は呪文を唱えてはいないのに緑色の煙を吐き出し続けていた。

 

「残念だが……支払い予定は、契約終了時つまりは次回の夏休み終了後となる」

 

「あ、うん。郵便の受け取りは、僕『は』いいけど。でも、受け取るのはママだと思うから……うーん、契約書、くれる? 送ってパパとママに聞いてみるよ。それで、パパとママがオーケーなら契約書にサインして君に返す。どう?」

 

「了解した。今、君の家人に宛てた手紙を書こう。……俺達が困っていることであるからな」

 

 契約書をロンに渡すとハリーが隣でその内容を見た。

 

「でも、郵便が届かないほど遠くに……ヤーナムだっけ……いるのに、一週間に一度、ロンの家にどうやって来るの? 煙突飛行?」

 

「いえ、普通に家の外の扉をノックするぞ。俺達が移動する分には問題が少ないのだ。現にロンドンまで歩いたことがあるし、スネイプ先生も来ることができる。……どうにも、ふくろうに問題があるらしい」

 

 設定では、ふくろうに問題があることになっているのでこのように話した。

 実際、ふくろうが辿り着かないのでまるきり嘘の話ではないと思っている。

 五分程度で簡単な手紙を作成し、ロンへ渡した。

 

「よい返事を期待している」

 

「ああ、うん」

 

「後ほど家人からお礼の手紙もある。俺からも、ありがとう」

 

 ロンはごにょごにょと「まだ決まったワケじゃないから……」と言った。

 

「すこしだけ肩の荷が下りた気分だ。……それでは失礼。返事があったら、いつでも言ってくれ」

 

 クルックスは、テルミに用事を済ませたことを報告するために階下へ向かった。

 

 

 

■ ■ ■

 

 

 

「郵便が届かなきゃそりゃあ困るだろう。だって、ナイトとコーラスのお兄さんの買い物がいつ入荷したか分からないからね!」

 

 クルックスの足音が螺旋階段からしなくなったあとで、ロンは「ヒュー」と口笛を吹いた。

 

「ボージン・アンド・バークスなんて闇の魔法使い御用達みたいな店なんだ。尻尾を出したらパパがしょっぴくぞ!」

 

「…………」

 

 ロンはそう言って、ふくろう小屋に向かった。

 とてもではないが、ハリーは彼についていける気分にはなれなかった。空飛ぶ車がマグルに目撃された件で役場に尋問されたウィーズリーおじさんのことを思い出してしまい、複雑な気分になってしまったのだ。




ギルデロイ教室

ギルデロイ・ロックハート氏:
 皆大好きギルデロイ・ロックハート。
 正直なところ、筆者は彼のことをとても見ていられない。
 何というか……言語化し難いのですが、非魔法族でも実際にいそうな生々しい感じがあって……え? 彼には実在のモデルがいる? そっかぁ。
 彼は、ヤーナムに来ることができる人です。幸運です。可愛いですね。

 ちなみにDVDやBDの特典映像で小テストの描写(英語のみ)があります。
 持っている人はチェックだ!

ご感想お待ちしています(ジェスチャー 交信)

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