──恩賜の瞳があれば、主宰の夢は叶うだろう。
──それでは、意味が無い。
──我らは我らの手段と思想により、階梯を昇らなければならない。
出立と登城
ホグワーツへの出立の日は、あっという間に訪れた。
狩人がそうであるようにクルックス達もまた『時間』の感覚が疎かった。そのため「早いな」と感じてしまったのかも知れない。
間もなく四人で荷物を確認し、最後に人形がチェックリストを埋め終わる。
くるくるとチェックリストの紙を巻き終えた後で、人形が四人の前に立った。
「狩人様から言付けがあります。……『血の加護がありますように』と」
控えめで穏やかな表情を浮かべ、人形はこの場にいない狩人の言葉を告げた。
「行って参ります」
異邦の狩装束のサスペンダーをしっかり肩にかけたクルックスは、代表して人形に応えた。この言葉は彼女から狩人に伝わることだろう。
「人形ちゃん、お父様のことよろしくねー」
テルミが明るく言って手を振る。
人形は同じように手を振り返した。
「その格好で行くのか」
ネフライトがテルミを見た。
彼女が着ているのは教会の狩装束だった。色は黒。即ち医療教会の中で予防を司る部のひとつ、下位の狩人が着るものだ。しかし、彼女は正式に洗礼を受けていないためであろう──教会所属の狩人達が着る装束との差異は、白と銀に輝く聖布が無いことだ。
「孤児院は決まった服が無いんですもの。けれど『所属の物を着ていくべきだ』と思って人形ちゃんに整えてもらったの。どう? 似合う?」
いつもと同じ学徒の正装を着ているネフライトは「いや」と言葉を濁す。言いたかったことはそこではない。聖歌隊に憧れているらしい彼女が、堂々と聖歌隊の服を着て歩けるのは外の世界だけだ。だから、それでなくともよいのかと聞きたかったのだが、彼女と気の合わないネフライトは、もう話すのも面倒になってきたので会話を投げた。
「似合っているぞ。けれど、テルミ。聖歌隊の服でなくともいいのか?」
セラフィがネフライトの言いたいことを全て言ってくれた。
こういう時に同列の存在なのだ、と彼は同胞のことを思った。
「それはわたしがもうすこし大きくなってからね。ちゃんと聖歌隊に迎え入れられたら着ようかと」
「そうか。楽しみがあるのは良いことだ」
セラフィは、騎士の装束──では無く都会の狩装束を着ていた。男性用のトップハットは置いていくことにした。「要るか?」と訊ねるようにハットをクルックスとネフライトに見せたが、彼らが固辞したからだ。
「人形ちゃん、お父様へ返しておいてほしい」
「はい」
「それとお父様に伝言を。──『女王様がお待ちである』と。くれぐれも伝えてほしい」
クルックスは、その言葉に少々ドキリとした。
連盟だけでは無い。こちらでも待ち人が発生していたようだ。人形は「分かりました」と言葉を受けた。
「それでは」
四人は、外へ繋がる墓碑に手をかざした。
間もなく、夢から醒めるようにその姿は揺らぎ、消えた。
「……狩人様、お見送りをしなくともよかったのですか?」
そろそろ。
聖杯の墓石の影から、這い出てきた狩人は曖昧な顔で笑うだけだった。
けれど、その後、水盆の使者達へ何事か指示を出したことから彼なりに気にかけることはあったようだ。
■ ■ ■
使者が灯に群がっている。
今日は九月一日。
イギリス。ロンドン、チャリング・クロス通りからキングス・クロス駅までは大人の脚で約四〇分であるという。十一時出発であるというホグワーツ特急に乗るため、念には念を押して三時間前に狩人の夢を出た四人は、当初の予定通り駅まで徒歩で移動していた。
四人の中で最も目を引いてしまうのはセラフィだろう。端正な顔立ちもさることながら、彼女の感性は華美そして大袈裟な貴族趣味こそを尊しとするものだ。ゆえに。都会の狩装束は、騎士やカインの装束に比べれば地味だったが、そもそも比較対象が貴族が袖を通すに値する物である。平らかに言えば、都会装束さえ非魔法族の闊歩する平日の白日下では、風景に溶け込みきれていない。もっとハッキリ言えば目立つ。
クルックスは、さっさと駅に行って目立たない日陰に座っていたかった。
「駅の……どこに行けばよいと書いているのか?」
「ちょっとまて。9と4分の3プラットホームと書いてある」
「そうか……ふむ」
セラフィは納得した口ぶりであるが、どうにも釈然としない雰囲気を纏っている。
何か気になることがあるのだろうか。クルックスが訊ねると彼女は「行き方の問題だ」と言った。
「入学案内が来た時、僕はそれだけで行けると思ったのだ」
「どういうこと?」
「『宛名の主だけが使うことの出来る許可証だ』と思ったということだ。わざわざこのような移動手段が必要だとは思っていなかった。『列車』というものは、恐らく相手を選ばない乗り物なのだろう?」
彼女が『仕えている』カインハーストは、ヤーナムの中でも特異な──狩人曰く「ことさらに不思議な」──土地らしい。そのことをクルックスは、ぼんやりとした知識で知っていたが具体的に何がどのように不思議なのか聞いたことが無かった。
彼女が感じた違和は、その土地で培われた体験から滲みだしたものなのだろう。
「……気になっていたのだが、セラフィはカインハーストで何をしているんだ?」
「騎士様と訓練している。僕は未だ勝ったことが無い」
「強いのか?」
純粋な技量を競う場合、クルックスは『セラフィには勝てないかも』と思うことがある。内臓攻撃──通称、モツ抜き──で相手に与える損害が大きいのはセラフィの攻撃だ。
力量を問う質問に、彼女は最も身近な存在を例に出して『騎士』の強さを示した。
「お父様が諍いを避ける程度には」
「……そんな人がいたとは」
狩人は、基本的に敵に区別をしない。獣は勿論、動物も、狂人も、上位者も、血に酔った狩人も、等しく狩る。正しく狩人だ。手間を惜しまず、道具を惜しまず、労力を厭わない。そんな彼が避けるならば、その騎士は『真っ当に強い』という意味なのだろう。
「まぁ、今はそんなことはどうでもいい。問題は、ホグワーツだ。お父様の意向に逆らう気は無いが……無いがな……」
セラフィは、わずかに顔をしかめた。
彼女は『獲物を狩りに行くのに』という顔をしている。
「面白そうなところよね。みんな『ホグワーツの歴史』という本を見たかしら?」
「……さらりと」
頷いたのはネフライトのみだった。セラフィなどは「そんな教本があったとは」とこぼす。前書きを読んだところで眠くなってしまったクルックスは、控えめな自己申告をした。テルミは楽しげに、その後の話を非魔法族に聞こえない程度の声でセラフィと話している。
ようやく駅に着いたクルックスは、息を吐く。
「もう疲労困憊のようだ」
「獣を相手にしていた方がマシと思える状況があるなんて知らなかった。さて、次はホームだ」
「これだけ非魔法族とやらがいるのだ。恐らく、隠し道があるのだろう。同胞にしか分からないような」
「では頼むぞ、ネフ。恐らく、我々の中で最も啓蒙高いのが貴公だ」
「……アメンドーズではあるまいに」
笑いながらクルックスは言う。
四人が改札近くのベンチに腰かけて非魔法族のなかに『同胞』の姿を見出したのは、出発の一時間前だった。
「クルックス、見ろ」
ネフライトが小突いた。
非魔法族の旅客にまざり、革張りトランクを満載している親子連れがいる。しかもフクロウを籠に入れているのだ。
「あれは……」
声をかけようと飛び出しかけたテルミを押さえる。
「な、なに? わたしが適任ではなくて?」
「今は違う。セラフィ、行ってくれ。理由は話せば分かる」
「承る」
彼女の背中で結った銀髪が一房揺れた。
驚いた顔をしたテルミとクルックスはネフライトと一緒に彼らの死角へ移動した。
「だいじょうぶ?」
「セラフィに行かせるなんて。絶対何かやらかすぞ」
ネフライトは、確信を持って言い、嫌そうな顔をした。
「──アイツ、私達の中でも戦闘以外からっきしなんだから。しかも狩人狩りの方が上手いなんて狩人の風上にもおけないヤツだぞ」
「それでも、これでいい。魔法族は、血統すなわち伝統を重んじるらしいからな。格式張っていて困ることはないだろ」
こそこそと話し、耳を澄ませる。
やがて、「──お初にお目にかかります」とセラフィの透き通った声が聞こえた。
「私はカインハースト家の夜警。月の香りの狩人が仔の一、セラフィ・ナイトと申します。この先、特急までの道についてご教授いただきたく。貴公、名家の子息とお見受けいたした次第にて」
形式張った言葉だが、滑らかに続ければ、妙な説得力を持つものだった。
その説得力に触れた時、クルックスは父がカインハーストに跪いているのは、ひとえに自分が持ち得ることのない歴史に対してかもしれない、と思った。
カインハーストで、いかな教育が行われているか。セラフィから窺える事情は少ないのだが、ひとまず彼らの足を止めることに成功し、なおかつ道を聞き出すことができた。
「ご教授、感謝いたします。良き学友と在れるよう尽力いたします。これにて失礼」
クルックスは、掴んでいたテルミの腕を放した。ホッとしたように彼女も力を抜く。
柱の陰に戻ってきたセラフィは、いつもの変わらない顔で「分かったぞ」と告げた。
「礼儀の分かる御仁で助かった」
「それで道は?」
セラフィは、指し示す。
プラットホーム上に「9」と「10」の案内板を下げた柱が立っていた。彼らが見ている間に、少年とその夫妻は柱の中に消えていった。
「隠し道はあれか」
「僕が行こう。テルミ、着いてこい」
「はぁい」
セラフィはテルミを連れだって柱に歩いていく。
ネフライトが「行こう」と視線を寄こす。
「すこし待ってくれ」
クルックスは、手記を開き何事か書き付けるとそれを床に放った。地面に落ちる直前にわらわらと使者達が現れて千切れた手記をつかまえた。ネフライトが見れば『ローリングの時間だ』と書いてあった。彼は唇を歪めるだけの笑みを浮かべた。
「どうせ俺達以外は来ないだろう。目印にひとつ置いておいても悪くない」
「たしかに」
二人は柱を越えた。
ぶつかるか。暗いな。そう思ったのは一瞬で道は続いていた。
雑多な音が聞こえて顔を上げた。
「これは……」
紅色の蒸気機関車が、乗客でごった返すプラットホームに停車している。ホームの看板には『ホグワーツ行特急11時発』と書いてあった。
「ようやく着いた……これ非魔法族出身の魔法族は分からないんじゃないか」
後続の邪魔にならないように柵から離れながらクルックスは独りごちた。
三人は思い思いの方向を眺めている。ひとつ、手を打って彼らの注目を集めると彼は潤すように乾いた唇を舐めた。
「これからは単独行動だ。俺達が固まっていても仕方が無いからな。良い学びを。良い出会いを。月の香りの加護の下、祝福あらんことを」
互いに祈りの言葉を告げ、彼らは散会した。
機関車の煙がおしゃべりな人混みの中に漂っている。
(お父様は、このような風景があることを知っているのだろうか)
まるで、正しく夢のなかの景色だった。色とりどりの猫が足下をすり抜けていく。昨日までヤーナムで獣を追っていたことが、まるで悪い夢の出来事に思える。
ここにいる誰もが血に塗れ、罪に濡れた潮の香りを知らない。クルックスは、訪れたことの無い漁村の潮騒が聞こえていた。
知っているワケがないのだ。彼らは、清潔な町で暮らしている。隣人が獣に変わっていく恐怖を、己が変態する恐慌を知らずに生きている。
狩人がヤーナムに閉じこもり二〇〇年以上、その間に人は技術を発達させた。
クルックスは、蒸気機関というものを初めて見たが四頭立ての馬車より速そうだと見ていた。
(──技術は、いずれ神秘に追いつくものだろうか)
彼が外の世界に多少の興味を抱いたのは、クルックス達の存在がきっかけとはいえ、時間の問題だったのかもしれない。
「……お父様の苦悩が偲ばれる」
クルックスは、人混みをかき分けて汽車に乗り込んだ。
出発時間に余裕があるせいだろう。前方の車両内で区切られている室内──コンパートメントと言うらしい、席は空いていた。
「初めまして! わたしはテルミ・コーラス=B! 貴女のお名前は?」
だが、テルミがいたので次の車両へ移動した。
この辺がいいだろうかと二つ目の車両に移動すると席を探しているらしいセラフィとすれ違った。
「僕はこの辺りに座るが、貴公が座るというのなら譲る」
「俺はもうすこし車両を見て回りたい。好きに座るといい」
「そうさせてもらおうか……おや、ネフがいるか。では、向こうへ」
セラフィは、右手をひらりと振った。
その背を見送り、クルックスは後方車両までやってきた。人は、いよいよまばらだ。
空いているコンパートメントに座る。時計を見れば、出発まであと四十五分もあった。
感傷的な思考から逃げ出すようにクルックスは衣嚢から、作りかけの投げナイフと工作用のナイフを取り出した。手を動かしていれば気が紛れるのだ。
投げナイフ。即ち、スローイングナイフだ。
遺跡鼠の骨を投げやすいように加工して、最後にギザギザの刃を削る。
狩人は、一般的に水銀と己の血を混ぜた銃弾を好むが、一方で投擲用の投げナイフを持つ者がいる。
連盟の同士、ヘンリックは名手として狩人の間で知られている。「行動の起点にするのだ」と言葉少なに助言を授けてくれた古狩人は、その後、スローイングナイフが刺さった罹患者の獣に銃撃を喰らわせて足を寸断した。精密な投擲と射撃は職人技の域であった。凄い。スローイングナイフ、凄い。技術にも振らなきゃ。あと血質。以降、クルックスはスローイングナイフの訓練を始めた。命中率は五分五分。つまり、一か八か。実戦導入には程遠い。
そんな経緯があり、スローイングナイフの工作はクルックスの数少ない趣味になった。ヘンリックがくれたナイフをお手本に削り続ける。狩人の夢のなかでは、たまにセラフィがどこかで手に入れた『匂い立つ血の酒』と交換する程度には形も整ってきた。
カリカリ、ゴリゴリと削っているとコンパートメントを叩く小さな音があった。
「そこの席、空いているかしら?」
顔を上げると栗色の髪がフサフサした女の子だった。
テルミを思わせる、利発そうな子供の申し出を断るクルックスでは無く「ああ」と答えた。
「そう、ありがとう。……あなた、荷物は?」
着替えが入っている手荷物を除き、彼女は荷物を持っていない。だが、対するクルックスは手ぶらだった。……もっともナイフは持っているが。
「収納しているだけだ。あるよ」
彼女は「そう」と言う。けれど「どうやって?」と問いかけたくて仕方が無いのだろう。目がキラキラと輝いていた。
「私は、ハーマイオニー・グレンジャー。あなたは?」
「クルックス。クルックス・ハント。月の。む……」
一瞬、セラフィの堂々とした名乗りを思い出し、そのように名乗ろうと思ったが、同じ二つ名で名乗る人物がふたりもいるのはセンスが問われる。今さらながらテルミの言い分が分かったような気がした。
「俺は、クルックスだ。そう呼んでくれ。君も一年生なのか?」
「ええ、そうよ。ねえ、あなたの家族は魔法族?」
「……。ああ、魔法族だな」
「そう。私の家族にも魔法族は誰もいないの。だから、手紙をもらった時、驚いたわ。でも、もちろん嬉しかったわ」
「…………」
非魔法族が、魔法に触れることは嬉しいのか。
クルックスは、上気しつつある彼女を見て意外に思った。生来、変化を求めない性質である彼にとって彼女の感性は不思議であった。父も「ただの人間が啓蒙的事実に近付くのは好ましくない」という旨のことをネフライトに言ったことがあるらしい。幸せにはならないだろうに、と思ってしまうのだ。
「最高の魔法学校だって聞いているし、教科書はもちろん、全部暗記したわ。それだけで足りるといいんだけど……。あなたは?」
「それは凄いな。俺は勉学があまり得意ではない……。君は、詳しいんだな」
「ええ。だって、知らないことばかり何ですもの。マグル生まれだからといって落第生になるのは悔しいわ」
「『ホグワーツの歴史』も全部読んだのか?」
クルックスは指に積もった骨屑を一息に吹き飛ばした。
「もちろんよ。とても興味深い歴史だわ。ホグワーツの天井のことまで書いてあるんだから」
「あの中に『ビルゲンワース』という学舎の名前は出てきたか、覚えているか?」
「……ビルゲン、ワース? いいえ、無かったと思うわ。他の学校の話は、外国の紹介文がちょっと載っているだけよ」
「そうか。ありがとう」
「どうして、その学舎のことが気になるのかしら?」
「あぁ、近所の学校なのだ。もう何百年も前に廃校になっているが。その昔、魔法族と非魔法族の区別が緩やかだった頃ならば、文献が残っているのでは無いかと思ったが……図書館に期待するしかないかな」
「そうね。もし必要ならその時は手伝うわ」
「ありがとう。……互助の精神は大切だとも」
独り言のようにつぶやく。
クルックスが『留学』するにあたり、そのことを伝えたのは所属する連盟の長。そしてビルゲンワースを守る最後の学徒達だった。
「ビルゲンワース、最後の学徒。正気のまま襲ってくる数少ない狩人であり、生きている聖歌隊だった。最後の周回時に俺は彼女を殺さなかった。……本当のところ最初から殺す必要が無かったのかもしれない」──とは、狩人の言葉だ。
そして、狩人がしばしば口にする『獣狩りの夜、最後の周回』時に何らかの条件を満たした狩人は、ヤーナムの現在の異常──『二〇〇年以上も同じ一年が繰り返されている』という状況を知っている。
クルックスの把握する限り、旧市街のデュラとビルゲンワースにいる聖歌隊のユリエがそれに該当する。他にもいるのかもしれないが、クルックスは知らない。狩人がしばしば会っているのは、その二人だけのようだ。──連盟の長? 彼は狩人をして判断に迷うようだ。直接的な質問をはぐらかし続け、カマをかけてもいるらしいが、成果はさっぱりだと言う。煙にまき続けている長が凄いのか、狩人の問い方が拙いのかは分からない。そもそも狩人にとって長、ヴァルトールは相性が悪いようだった。
話が逸れてしまった。
ビルゲンワースを守るユリエに留学のことを告げると彼女は、目隠し帽の下で古びた書架を見たようだった。
『私の時代には、もうビルゲンワース自体は廃れていたけれど、かつては若人の学び舎として外との交流があったそうね。それこそ留学のような往来もあったと。そのような文献を見たことがあるわ』
『なかでも天文学。外では宇宙と天体に関することに傾注していたそう。そして神秘。あなたの話を聞く限り、恐らく「魔法」と同質のものなのでしょうね。もっとも「魔法」という言葉は秘されていたようだけど、それでも神秘の片鱗は窺えるものよ。……「宙は空にある」という気付きは我ら聖歌隊発だけれど、発想に至る苗床の一部は、あるいは外からもたらされていたものかもしれないわね』
屋内で見えない空を仰ぐ美しい横顔を、クルックスはなぜか妙に印象的に覚えている。
「ところで。ねぇ、あなたのそれは何?」
「これはスローイングナイフだ。……ご、護身用のな」
そういえば、ヤーナムの外の世界では仕込み杖さえ過剰装備だったことを思い出した。ナイフくらいは許されないだろうかと思っていたが、ハーマイオニーは、かなり怪訝な顔をしている。まさかナイフさえ過剰装備だと言うのだろうか。
「護身? 誰かに襲われるの?」
「君は襲われる心配が無いのか?」
「襲われるって誰に?」
「それは幸いなことだ」
クルックスは、話をごまかすと作りかけのナイフをしまった。
出発間近のコンパートメントが開いたからだ。
丸顔の少年が所在なさげに立っていた。
「あ、あの、その席、まだ、空いているかな……」
「ええ。大丈夫よ。いいわよね?」
「ああ、どうぞ」
丸顔の少年はネビルと言った。彼は座席に座るなり、落ち込んでいるようだった。
あまりに暗い顔をしているのでハーマイオニーが、その理由を質した。
「んと……。トレバーって僕のヒキガエルがいなくなっちゃたんだ」
「ヒキガエル?」
そういえば。クルックスは思い出す。
ペットとして持ってくることを許されていた動物はフクロウだけではなかった。ヒキガエルもその対象だった。
「そのうち出てく──」
「それは大変ね。車両を探してみましょう」
クルックスは「あ?」と口を開けたまま、彼女を見た。
彼女は「困っている人を助けるのは当然でしょ」と彼を見返した。ただのカエルだろう。その言葉を呑み込むのには、苦労した。
ようやく気分が落ち着いてきたクルックスは眠くなってきたのだ。昼夜逆転の生活を送っていた彼にとって、今の時刻は日中やるべきことを終えて眠りにつく時間でもあった。
「……俺はここにいる。駅までずいぶん歩いてきて疲れているんだ。荷物の見張りも必要だろう」
「あらそう。それじゃあ、これもお願い。三十分経ったらいったん戻るわ。ローブに着替えないといけないと思うし」
「了解した」
クルックスはフードをかぶり、できる限り光を遮断すると目を閉じる。
車内はくしゃくちゃと話す子供達の声を満載し、ゆるりとはしり出した。
うっすら目を開けて窓の外を見る。
あまりの速さに驚いた。同じ瞬間、同胞達も驚いている様子が目に浮かぶ。
(あぁ、そうか……人は、このような技術を)
人の目は、馬より速く動くと景色が目に入らず、灰色に歪んで過ぎていく。お父様は知っているだろうか。
■ ■ ■
眠っていた時間は二〇分にも満たない。
けれど、頭の中がすっきりしていた。
ハーマイオニーとネビルは、まだ戻ってきていない。手足を伸ばしてみると関節がポキポキと鳴った。クルックスは、目を擦りながら通路を歩く人々を見る。手にお菓子を持っていた。そのうちの何人かがホグワーツの制服を着ていたので到着前には着替える必要があることを思い出した。
よっこいせ、と衣嚢から服を引き出してローブに着替える。やはり学徒の制服の方が動きやすい。しかも厚さでは聖歌隊の衣装を下回る防御力の低さだ。
「…………」
しかし、ここには獣がいない。小さなナイフさえ過剰だ。
クルックスはローブに納められた杖を意識した。
「…………」
穏やかな暮らしがあり、困難にあっては手を差し伸べることを厭わない。
ヤーナムからは失われていて久しい。いいや、そもそも、そのような光の時代があったのだろうか。そんな光景は連盟の同士の間でしか見たことがない。小さな小さな組織のなかでようやく見いだせる温かさが、ここではありふれたものとして施され、消費されている。
「……あなた、寝付きが悪かったの?」
「いや、別に、普通だが」
クルックスは車窓から、コンパートメントに戻ってきたふたりに視線を戻した。
どうして、そんなことを問われるのか心当たりが無い。
「何か?」
「何だか恐い顔をしていたわよ」
ハーマイオニーは、不吉なものを見たように声をひそめた。隣でネビルも頷いた。
「……職業柄そうなるだけだ。気にしないでくれ」
「職業って? 何か仕事をしていたの?」
「お父様の手伝いで狩りをしていた。それ以外のことを、あまり、学んでこなかった。こうして席に座っているだけでも落ち着かないだけだ」
生後半年にしては上手い言い訳だと思う。
クルックスの脳裏で狩人が「俺も赤ちゃんだ!」と言ったが、忘れることにした。
「狩りって?」
「それは、ぁ──」
前言撤回。失敗した。
獣狩りのことまで話すハメになりそうだと思った矢先。
天使が現れた。
「あら。ここにいたのね、クルックス」
教会の予防狩人の黒服を着たままのテルミがやって来たのだ。
汚れの無い真っ白な長手袋で菓子を抱えている。
何をしに来たのかと見ていると、彼女はまずネビルとハーマイオニーを見つめて微笑んだ。
「みなさま、こんにちは。わたしはテルミ。テルミ・コーラス=Bよ。みなさまと同じ一年生なの。よろしくお願いいたしますね」
クルックスは、顔を赤らめているネビル少年の臑を蹴り飛ばしたくなっている。テルミは、穏やかに微笑んだままだ。
彼女の笑みに、騙されてはいけない。
テルミ・コーラス=ビルゲンワース。
四人の中で最も弱いが、彼女の想いは純粋だ。同じ枝葉の存在である彼らでさえ情という執着は、種類こそ違えど分散された。クルックスであれば連盟、ネフライトであればメンシス学派、セラフィであればカインハーストに。だが、テルミは違う。聖歌隊は『ただの』所属団体に過ぎず、彼女が真に跪くのは上位者のお父様だけだ。ゆえに苛烈でもある。お父様に懸ける情熱の粋は、決して他人に施されるものではない。
よって。
彼女が他人のために起こす行為に感情は何も無い。打算と利益追求の権化が、偶然人間の格好をして歩いているだけだ。聖歌隊の教育の賜物だろうか。高位の医療者が時おり見せる傲慢が、彼女にも見える時がある。
誰の純情を弄ぼうと勝手だが、その誰かが少々可哀想だ。
「何をしに来た」
さっさと出て行けとばかりに声を低める。しかし、彼女は頓着しなかった。
「お菓子を買いすぎてしまったの。だから、食べて欲しくって。次の食事まで時間があるようだし」
「……これは?」
「かぼちゃパイだそうよ。あとはチョコね」
テルミは、クルックスに菓子を渡した。
用件は本当にそれだけだったようだ。
「組分けの話を聞いたの。ええ。ええ。とても楽しそう。同じ寮になったら特によろしくお願いしますね」
最後にそう言い残し、彼女は金色の髪を揺らして去って行った。
「──ところでカエルは見つかったのか?」
テルミのことを話題にしたくないクルックスは、話題転換を試みた。
けれど、空手で帰ってきた彼らを見れば気付くことだったことを思い出せば、途端に気まずくなった。彼らは肩をすくめた。
「あの子は?」
「親戚の、ようなものだ。……いろいろとキレているヤツだからな。万一、関わりになることがあったら気をつけたほうがいい」
「仲が悪いの?」
おずおず。
ネビルが初めてクルックスに向けて言葉をかけた。
「悪いワケではないが……突然優しくされると困るって感じだ。ロングボトムもグレンジャーも着替える前にパイを食べないか?」
「ちょっともらおうかな」
「私は歯磨き出来ない場所で食べないことにしているの」
「そうか。それは残念だ。……で、これはどうやって食べるんだ?」
クルックスは包装を解き、ネビルと四苦八苦しながらパイを割き等分して食べた。
その間、ハーマイオニーは『組分け』のことが気にかかるようだった。
「二人とも、どの寮に入りたい? 私、いろんな人に聞いて調べたけれど、グリフィンドールに入りたいわ。絶対一番いいみたい。ダンブルドアもそこ出身だって聞いたわ」
寮制ということは、クルックスも知っている。けれど、具体的なイメージが無い。テルミの話に聞く聖歌隊直轄の孤児院のような有様を想像しているのだが、恐らく違うだろう。
「グリフィンドール、スリザリン、レイブンクロー、ハッフルパフ……四つだったか。何が違うのだろうな」
ネビルが「あー」と小さな声を上げた。
「生徒に向いている寮に振り分けるんだよ……ってばあちゃんが言ってた。組分けの儀式があるんだって」
「さっきヒキガエルを探しながら、上級生に聞いてきたわ。グリフィンドールは勇猛果敢な騎士のような精神を重視するんだって」
クルックスは「ほお」と相槌をうつ。ネビルはしょぼくれた顔をした。ひょっとしたら彼はそこに入りたかったのかも知れない。
「スリザリンは、一番所属する生徒数が少ないんだって。グリフィンドールの人は『アイツらは、狡猾で抜け目のないヤツらだ。何だってやるのさ』なんて言っていたけれど、つまり、とても頭の回転が良いってことよね。でも『ホグワーツの歴史』によれば、創始者はマグル生まれのことをあまり良く思っていなかったみたい」
「なるほど」
ふむふむ。
クルックスは、頷いた。
「レイブンクローは……グリフィンドール以外だったら次にここが良いと思うわ。一言でいえば……ガリ勉なのよ。発明家や研究者を多く輩出しているし、個性的な人が一番多い寮だって。話した人のなかだと、たしかに、ちょっと変わった人が多いかもね。もちろん、良い意味でね」
説明された人柄でネフライトを思い浮かべたクルックスは、ここは彼に合っていそうだと思った。
「最後はハッフルパフね。他の三つの寮に比べて目立たないけれど、話してみると丁寧で優しい人が多かった気がするわ。特徴は、忍耐強くて、苦労を苦労と思わない大らかさみたいよ」
「いろいろな特色があるのだな。ふむ。グレンジャーはグリフィンドールかレイブンクロー……似合っていると思う。貴公は勤勉そうだからな」
「ありがとう。あなたは」
「俺はスリザリンだろう。話を聞く限り、性に合っていそうだ」
とあるグリフィンドール生が話した内容には既知の情報と似ている。
「獣を殺せ。虫を殺せ。どんな手段を使っても殺せ。殺し尽くせ。狩りを成就させる、その日まで」──狩人の教導を思い出す。
すると四人のうち三人は、スリザリンになってしまいそうだ。それは、面白みが無い。
パイを食べ終えるとクルックスとネビルは、再びヒキガエル捜索に駆り出された。なぜクルックスも駆り出されたのか。ハーマイオニーが着替えるからである。「俺は気にしない」と言ったら「そういう問題じゃないよ」とネビルに言われてしまった。彼らの心の機微は、よく分からない。
「後ろの車両はほとんど見たから、前の車両だけ行こう」
「俺が話すのか? そうか……」
先頭を歩かされていることでそのことに気付いたクルックスは「まぁ、いいか」と思う。獣に立ち向かう以外を大したことに思わないのだ。
コンパートメントを片っ端から開き「ネビル・ロングボトムのヒキガエルが逃げた。見かけたら彼に教えて欲しい」と告げ続けた。「分かったよ」と快諾する声半々、鼻で笑う面子もいた。ローブを見れば蛇の紋章がある。
次のコンパートメントには、セラフィだけが座っていた。けれど数分前は誰かいたのだろう。ほかに三人分の荷物がある。
置物のように静かに座っている彼女に用件を伝えると、鋭い目でクルックスの肩越しに──ネビルを見た。
「『お願い』ならば、君が言うのが正しい形ではないのかね」
まるで鞭で打たれたかのように彼は背筋をぴしゃりと正した。
「お、ぉ、お願いします……」
「機会があったら君に届けよう」
セラフィとの会話はそれきりだった。ネフライトは前方車両には見かけない。恐らくもっと後方車両にいるのだろう。
全てのコンパートメントに声をかけ終えた。
「いなかったな。残念だ」
「あぁ……うん……。あの、ありがとうね……」
「気を落とすな。乗りかかった舟だ。使い方が違うかな」
コンパートメントに戻るとハーマイオニーが着替えを済ませていた。
「それじゃネビルが着替えたら、残りの後ろ車両へ行きましょう」
クルックスは、席について待つことにした。
本音を言えば、ヒキガエルは誰かに踏みつぶされたと思う。
クルックスはナイフの工作に戻った。
■ ■ ■
小さく暗い停車駅に降りたとき、クルックスは衣嚢から携帯ランプを取り出した。
禁域の森の比では無いが、足下が悪い。恐らく数日前に雨が降ったのだろう。
辺りを確認すると人混みに外れた場所に使者の灯を見つけた。
ふらりと近寄ると使者が手記を広げた。
『お前の後ろに』
誰が手記を残したのかは分からない。『なんだこれ』と思って見ていると「何をしているの?」と声をかけられた。振り返れば見知らぬ上級生であり「ひ、人混みに酔ったんです」と言い訳をした。彼は「そう」と言い、去って行った。
(普通の人には見えないものだった。忘れていた)
素早く灯を点すとその場を離れた。
大きな声が聞こえた。ルビウス・ハグリッドだ。
「イッチ(一)年生! イッチ年生はこっちだ! さあ、ついてこいよ」
生徒のなかでも小柄な人影がわらわらと大きな髭面の下に集まっていく。
群集に警戒心があるクルックスは、それをやや離れた場所から見ていた。気のせいだろうが「ホワーイ」のかすれた声が聞こえる気がする。あぁ、病みそう。
すこしだけ遅れて着いていく。同じ思考回路に至ったのか、ネフライトとセラフィに並んでしまった。
テルミは、と首を伸ばせば談笑しながら群集に混ざり歩いていた。
「……適応力の高さは随一だな。ネフ、足下が滑るから気をつけろよ」
「あ、ああ。っうぁ! す、すまん……」
興味深そうに辺りを眺め歩いている彼は途端に足を滑らせて、セラフィに支えられた。携帯ランプを腰に吊した彼女は表情乏しく「気にするな」と言った。
「照明使うか?」
「だ、大丈夫だ。クルックスの歩いた道を歩くよ」
次第に生徒達の声は聞こえなくなった。険しく狭い小道で一列に歩かなければならないからだ。照明を持つクルックスとセラフィには大した苦難では無かったが、他の生徒は四苦八苦しているようだった。
「邪魔だな」
セラフィが髪に絡まりそうになった枝を握り折った。
彼女のすぐ後ろを歩いているのはドラコ・マルフォイだった。
「あぁ、まったくだ。こんな道を歩かせるなんて! 舗装路くらい作ったらいいだろうに」
「多少同意する」
ぶつぶつと不満を言いながら歩いている。
空が明るくなってきていることに気付けば、湖畔に出た。次はボートで移動するらしい。けれど、多くの生徒に映るのは湖の向こう。学舎、ホグワーツ城だ。
湖。学舎。
クルックスは、ホグワーツにビルゲンワースを重ねていた。
「あぁ……似ている……」
城には橙色の明かりが灯り、温度を感じさせた。
あそこには人がいるのだろう。自分でも思いがけなく感動してしまっている。心が震えた。
(かつてのビルゲンワースも、このような……こんな景色が、人が、学徒がいたのだろうか……)
ヤーナムにいる若者は少ない。子供はもっと少ない。市井でもろくに姿を見ないのだから、どの団体も後継者不足だろう。裾野広い医療教会でさえ。
目に見える明かりよりも多くの人がいることをクルックスは信じられない思いで見上げていた。
「貴公」
セラフィの涼やかな声に岸部を向けば、最後のボートになっていた。慌てて乗り込む。
ボートには、クルックスとネフライト、セラフィ、そしてマルフォイがいた。
マルフォイは下僕的に付き合わせているクラッブとゴイルと共に乗っていそうなものだったが、彼らの乗った舟がぐらぐらと揺れたのを見て、一緒に乗るのを諦めたようだった。
「あぁ、明るい……明るい……なんて明るさだろう……きっと温かいのだろうな……」
鏡じみた湖面をはしる波紋が、城の明かりを歪ませる。
ネフライトが気が塞いだ声音で言った。身が凍えた者のような台詞だった。その後、彼の言葉は不明瞭で独り言になった。聞き取れたのは「ミコラーシュ主宰……嗚呼、ビルゲンワー……きっと……次元……源流……湖……秘匿の……潮騒は……ース、あるいは……」というクルックスには理解が及ばないものだった。
クルックスは、彼が住まうヤーナムの隠れ街ヤハグルには足を踏み入れたことがない。けれど谷間のヤーナムにおいて、いっそう暗い街だということを知っていた。
四人のなかでも特にネフライトにとって光というものは、眩いものなのだ。
ぶつぶつと何かを呟くネフライトを軽蔑した目で見る者がいる。マルフォイだ。
「ネフ、すこし黙ってくれないか」
セラフィが注意すると彼は我に返ったらしい。素直に「すまない」と言った。マルフォイが得意げに笑う理由に心当たりが無いのでクルックスは不思議に思った。
「私は何か話していただろうか……」
「話していた。気をつけろ」
蔦のカーテンをくぐる。その先には、隠れた崖の入り口があった。明かりが無ければ、岩石の陰影と思えたかもしれない。
城の真下と思われる暗いトンネルを抜ける。人工物が見えた。水路だ。
ハグリッドのかけ声で順々に生徒達は下船し、岩と小石の上に降り立った。
「……カインハーストに灯がつけば、このようなありさまなのだろうか。転ぶなよ、ネフ」
「そ、そう何度も転ばない……あ、ひっ」
最後に小舟を下りるネフライトは、ぐらりと動いた舟で片足立ちをしてしまった。
にっちもさっちもいかない状態になったのでクルックスは岸辺に戻り、手を差し出した。
「あ、クルックス……」
「ほら」
「檻が無いと重心が違うんだ。テルミには内緒にしておいて……」
医療教会の対立構造がきょうだいの仲で生きているとは思わなかった。けれど真剣な声音では無い。彼らなりの冗談の類いだと判断し、クルックスは頷いた。
全員が降りた後でハグリッドが小舟を見回っていた。
そこでヒキガエルは見つかったそうだ。踏みつぶされていないとは、幸運であり驚きだった。
【解説】
『最後の周回』を生きたまま越えた狩人は、現在のヤーナムが陥っている異常について知っています。
そのため、クルックスが挙げた「旧市街のデュラ」と「ビルゲンワースの最後の学徒ユリエ」のほか『幼年期の揺籃』内で登場した「デュラの盟友」も現在までの登場人物では知っている人物に該当します。連盟の長? 弁論で彼に勝ったことが無い狩人には、まだ分かりません。
『来訪者、ヤーナムに至る』において狩人が来訪者の存在について思考しているとおり(一年間が二〇〇年以上続いていることに住民のほとんどは気付いていない。気付く『きっかけ』になりそうな外の来訪者の存在は、来訪者を元通りヤーナム外の世界に追放することで解決できるだろう。)
しかし、後天的に気づくことも可能ではあるので、狩人はあちこちに出没して変わった様子が無いか散歩しています。
……気付いたからといって、何かをするワケではないけれど。
【あとがき】
ハリポタ二次を書くとは、原作1巻のこのあたりを書きたいがために書いているんじゃないかと思えるほど、この辺りのワクワク感は他作品では得難いものです。ひとまず、『賢者の石』まで書き終えたので、コツコツ投稿していきます。お楽しみいただければ幸いです。