黒染めのメス
黒く塗り潰されたメス。カインハーストの鴉が用いる劇毒にまみれている。
メスは元より武器ではなく、医療器具である。
それを使うとは、かつての名残だろうか。
時はわずかに遡る。
──いったい、いつの頃からだろうか。
市井の狩人達のなかに見慣れぬ毛色の女が現れたのは。
妙齢の女子にしては、やけに背が高く肩幅も広い。銀色の長い髪を腰まで伸ばした女だ。
ヤーナムにありふれた狩人服を着ているところ、医療教会の息がかかった狩人ではないらしい。
いつもトリコーンを深く被っていることから顔色はおろか目の色も定かではない。
市街の狩人にとって。
狩人の女は女であるだけで目を引くものであるが、その女に近付こうと思う物知らずで命知らずな男はいなかった。
彼女が握る得物が問題なのだ。
古い狩人ならば、それが『落葉』と呼ばれるカインハーストの由縁の狩り武器だと知るだろう。
だが市井のただの狩人は、その名を知らない。
『教会の杭』がそうであるように、使い手が消えた狩り武器の情報とは容易く失伝してしまっているのだ。
それはそれとして。
夜における狩人の連想は、正しく、思いがけず正答に近付くことがある。
誰かが言った。
「あの女の仕掛け武器はカインハーストのものだ」
実際のところ幸運な狩人は気付くこともできただろう。
『落葉』と呼ばれるそれが、夜な夜な出没するカインハーストの血の狩人達が振るう『千景』に似ていることを。
『気付き』は三度の夜も越えないうちに、市街の狩人に広がった。彼らは彼らの理屈で、その女とカインハーストの関係を察したのだ。
──アイツは、カインハーストの女だ。
──出戻りってところかな。
──近付くなよ。
──碌なもんじゃあない。
──生まれついての悪なのだから。
──呪われているのさ。
──いまに捕まる。
──なんで捕まっていないんだ?
──医療教会が泳がせているのだろう。
かつてヤーナムの外からやって来た病み人由来の狩人であっても、陰険なヤーナム人らしい気質は、伝染するものらしい。
事実を冷ややかに見たつもりで、彼らの目には不幸を期待する好奇がある。
噂は、事実に掠りもしていない。
それでも話せば何かしらのボロが出る彼女にとっては、渡りに船と言ってもよい幸運だった。
カインハースト由来の落葉を振るう彼女の名前は、セラフィ。
自分と同じ顔だという『星幽、時計塔の貴婦人マリア』。彼女の情報を追うために今は市街を歩いていた。
そのためカインハーストの夜警は休業中だ。
業務外なのでカインハーストに由来する仕掛け武器、大型剣と銃が一体となったレイテルパラッシュを置き、一介の狩人として、市街へ飛び込んでいる。
今日も夕暮れが近付いた。
どこから聞こえる獣の声は、そのときどきによって印象が変わる。
セラフィが市街で過ごして知った数少ないことだった。
夜に歓喜する鳴き声が聞こえたかと思えば、血を吐く悲痛な咆哮に聞こえることもある。
石畳の隙間から生えた雑草を踏み、細い路地に入る。頭上のガス灯がジジッと音を立てて明滅した。集中が途切れてセラフィは息を吐き出した。
「…………」
セラフィが市街にいる理由は二つある。
まず一つ、レオーに伝えた市街探索は順調だ。もう一つの目的である古狩人探しはさっぱり成果が無い。獣の皮を被った男の姿はおろか教会の射手も見かけない。
父たる狩人は勿論頼れない。
唯一の味方と言えそうなのは、クルックスだ。彼ならば、彼らの行方を知っていたら教えてくれるだろう。教えてくれないのは、つまり彼にも情報がないのだ。
さて。
情報を得ようにもヤーナムの夜は土地勘の少ない自分には広すぎる。
──そろそろ後ろを付いてきている黒服の男達へ質問するべきだろうか。
南区を歩き、血の染みが滲む路地を曲がった。
「……おや。なんだ行き止まりなのか」
吹きだまりの路地に入り込んでしまったようだ。
セラフィは、手記に書き込んだ。
いつかの夜で体勢を整えるために死地に飛び込んでしまう危険はこれでひとつ減ったことだろう。
来た道を引き返そうとすると松明を持った医療教会の黒服が二人、道にいた。
「医療教会の狩人? ……僕に何か用事かな」
二人ならば始末することになっても問題はない。
頭を打ち抜いて、胸を貫いて、下水道に捨てればいい。
考えついたところで却下した。
今はカインハーストの夜警ではないのだ。むやみに力を振るうべきではなかった。
トリコーンに手をかけた。いつもならば深く被り直すところだったが、今日はわずかに庇を上げる。彼らには顔が見えたことだろう。
「噂より若いな。──ただの聴取だ。何度か医療教会の狩人が助けられたという話も聞く」
「ああ、そんなこともあったかな」
心当たりがある。
数日前、襲われていた狩人のそばを通りがかり、ついでに獣を殺したことがあった。
「しかし、聴取とはね。心証がよろしくないのかな? 善意を身から出た錆と言われるのは悲しいことだ。僕はこの街に来たばかりなのだ。輸血のせいか記憶も定かではない。だけど答えよう。何も得るものはないと思うけれど」
「聞きたいことはいろいろある。いろいろな。例えば、その仕掛け武器はどこで拾ったか、とかな」
「ああ、これ? ヤーナムに来る道中、落ちていたのを拾ったらしい。僕の日記に書いてあったよ」
「ほぉ。最近来たばかりにしては、ずいぶん使い慣れているな」
「体で覚えたことは忘れないものらしい。実に幸いなことだね」
信用がないのだから、話の内容は嘘と受け取られた。
セラフィは腰に差した落葉の柄に腕を置いた。
「ただの病み人ではないな。最近は市街をうろついている。何を探している?」
「人探しだ。僕より先にヤーナムに向かった親族がいる。女性だ。その人を探している。……僕と似た顔だ。ひょっとして知っているのかな?」
「知っている。聖堂街の娼婦と似た顔をしているな」
「……人違いの上に失礼なことを言う」
セラフィは、トリコーンを深く被り直した。
カインハーストの件を一時忘れるとしても、医療教会の医療者の高慢さというものは鼻につく。率直に言えば不快だ。
思えば、不遜な態度とはテルミやネフライトだから許せていたのだ。
見知らぬ男にされることは、このように不快なのだ。彼女は一つ学習した。
「目的は話した。僕は獣を殺しているのだ。咎める謂われはないようだがね」
セラフィは、手記をしまうと歩き出した。
彼らは行く手を遮ることなく見送るように松明を振った。
間合い以上の距離を歩いたところで、これまで黙っていた黒服が声を上げた。
「人探しか……。俺達も探している。仲間だよ」
「ほう。同じ医療教会の狩人を?」
「ああ、妙なことに顔も名前も思い出せないが……たしかに、誰か、いた……気がするのだが、もう分からなくなってしまった」
「…………」
彼には、思わず誰かに言いたくなるほどの違和感があるのだろう。セラフィにわざわざ話すということは、自分の身の内に留めておくには苦しい秘密だったと見える。
黒服の記憶喪失がいったい何なのか。セラフィには分からない。
しかし、勘は囁く。
見逃すには惜しいことだ。
「ごく最近、知ったのだが記憶とは掠れても意志ある限りなくなってしまわないものらしい。いつか思い出すといい。貴方のために。彼らのために」
「思い出せたらいいんだがな。──あまり目立つなよ。余所者め」
「暗い夜では落葉を見つけられないよ。人の目に夜はあまりに暗いだろう」
セラフィは、落葉を抜くと黄昏の街に消えていった。
この夜にも収穫はなかった。
■ ■ ■
狩人の夢のなかで、薪がパチリと乾いた音を立てて爆ぜた。
暖炉の傍にテーブルを寄せ、セラフィは薄い紅に色づいたハーブティーを一口含んだ。
市街は、再び夜がやって来た頃だろう。
セラフィは、明け方にカインハーストに帰るつもりである。
そのため情報を整理していた。──ひとまず市街の地図情報があればカインハーストの面々には、申し訳が立つ。仕事を休止した成果として十分だろうか。
打算的な思考に陥っていることを自覚して彼女は溜息を吐いた。
「いけないな。……僕は愛されているのに。騙し討ちのような言い訳を考えている……」
けれど、けれど。セラフィは考える。
決して口に出すつもりはないが、マリアのことを隠す先達にも問題があると思うのだ。そのくせ思わせぶりに遠い目をするものだからセラフィは気になってしまって仕方がない。彼らの瞳の先に何があるのか。セラフィはどうしても知りたいのだ。
(女王様にお伺いをしてみようか。でも、女王様は女王様だからな。僕がマリアを探っていることをお父様に話してしまうかも。しかし、獣皮の狩人も教会の射手も見当たらないのでは、僕の打つ手も限られる。時間をかければ……活路は開くだろうか? でも、女王様ならば……。カインハーストの血に関わることならば、やはり女王様が最も詳しいのではないだろうか)
セラフィはカインハーストの女王アンナリーゼのことを敬愛しているが、レオーや鴉からは「ほどほどにしておけ」との助言を受けていた。彼らの言葉を「血を受け、血族に列せられるまで出しゃばるな」という意味として理解しているセラフィは、女王アンナリーゼと二人きりで会わないように気を付けていた。
(僕は、先達の言いつけを破りたくない。女王様へのお伺いは……今すべきではないな。僕がきちんと騎士と認められてからだ)
ならば、手がかりは市街だ。どこかで誰かが見ている視線は感じていたので市街のどこかにいるような──気がするのだが。
手記に地図の情報を書き込み続けていると衣擦れの音が聞こえた。
見上げれば、よく似た顔の人形がそばに立っていた。
「小さな狩人様、お茶のお代わりはいかがでしょう」
「いただこうかな。ありがとう、人形ちゃん」
実のところ。もうひとつ。手がかりはある。目の前にいる人形だ。
だがセラフィは彼女に尋ねたことがなかった。
彼女はきっと全て知っているか、何も知らないか、そのどちらかだ。
また、彼女にとって無用の悩みであろうセラフィの苦悩を彼女には知られたくない。
他者の悩み事とは、所詮他人事だ。
どう悩んだところで、最初から最後まで問題と捉えた自分の問題だ。
クルックスのように互いに秘密を預ける約束をするでもない人へ相談はできなかった。
彼のことを考えていたからだろうか。
ふと小屋の外に人の気配が生まれた。
「おや。誰か来たみたいだ」
その言葉を合図にするように人形は古工房を退室した。
■ ■ ■
狩人における一流とは何を指すか。
それはヤーナムに工房を抱えていた各団体内で異なる見解もあろうが、常に最前に立つ狩人が得る見解には、どの陣営・団体であっても共通するものがある。
窶しのシモン。彼は一流の狩人だ。
正しく古狩人と呼ぶに相応しい存在だ。
決して準備を怠らず、最善を選び、努力している。
そのため、この日も彼を危機に陥れたのは誰かを助けようとした行いだった。
そして彼は、カインハーストの騎士達に捕まっている狩人を助けようと射った。
その初手を躱されたのは、あまりにも痛手だった。それは屋根の上で隠れていた場所が露呈しただけに留まらない。
二人いる騎士達を分断させることに成功したが、その後、追手となったのは巷を騒がせるカインハーストの狩人、流血鴉だった。
古狩人に油断はない。
だが、想定外は存在した。
二の矢を番えたところで、彼は異常に気付いた。
鴉の姿が消える。これは消えて見えるほどに足が速いことを意味するものではない。シモンは見たことがあった。もう失われていると思われていた、古い技術だ。
(『加速』! まさか、まだ使い手がいたとは──!)
どうりで誰も彼を仕留めきれないワケだ。
狩人殺しの業に長けたカインハーストの騎士が目にも止まらぬ速さで移動し、高い殺傷力のある千景を振るうのだ。
間合いに入り込まれたら、まず勝ち目はない。
シモンは射線を避けると素早く屋根を転がり落ちた。その頭上では数秒前に踏んでいた屋根が爆発音と共に爆ぜた。
「ぐっ……!?」
着地で受け身を取る。路地に散らばる石の欠片が背中を刺した。痛みに怯む体を何とか動かし走り出す。
そのすぐそばを銃弾が掠めた。
どうやら銃の腕も確からしい。
当たらなかったのは、ただの幸運だ。家屋の影に飛び込むと矢を番えた。
家屋の剥げた壁板の隙間からチラリと空を見上げれば、彼が屋根の上で弾を込める様子が見えた。それが終わったのだろう。──標的は屋根を飛び降りた。
その瞬間、シモンは影から飛び出し片膝立ちで弓を引いた。
かつて医療教会の英雄と讃えられた聖剣のルドウイーク。
彼と肩を並べて戦った医療教会最古参の狩人の経験は、時系列不明の現代ヤーナムにおいても当然通用した。その証拠に着地を射止める矢は鴉に届いた。
しかし。
狂気と混沌が手を取り合い乱舞したヤーナム末期において、強者として存在したカインハーストの傑作的騎士も決して見劣りはしなかった。
「な──ッ!」
ただ、一振り。
銀の矢と千景の刃が交錯する。
その結果、鴉羽の後方に銀の矢が弾かれた。シモンは口を開き、信じられない気持ちで見ていた。
血の滴る千景を構える鴉の姿が、再び消えた。足音は近付いている。行き先も見ずにシモンは駆け出した。
獣にも負けない市街の狩人が彼には負ける理由が、よく分かった。──あれでは正攻法では無理だ。
何度も角を曲がり、路地を越え、橋に出た。この先は水路だ。暗渠、下水道とも言う。
逃走路の宛てがなければ売らなかった勝負でもある。
──いいや。ほんのすこし、本心には嘘が混じった。
背中に冷えた汗をかき、粘つく唾液を飲み込む。
──たとえ逃走路がなかったとしても同じことをしただろう。
──狩人が犠牲になることをどうしても許したくない。
橋に手をかけて一思いに飛び越える。
その後、鴉が続いて橋を飛び越えた。
だが、鴉は板に膝を突くことになる。
橋を飛び越え、地下に続く下水道まで何もないと思えたそこには、実は足場があったのだ。
顔の見えないカインの兜でもよく分かる。──彼は、明らかな動揺を見せた。
彼が銃を手に振り返った時には、同じ板に伏せていたシモンが握った縄を力強く引いていた。
騎士が膝をついていた板が開き、足場を失った彼は暗渠に落ちていく。
縄に掴まり落下を免れながら、シモンは言った。
「見てのとおり、この先、暗渠もとい汚水溜まりでね。住民や教会にとってのゴミ捨て場でもある」
千景を手放した騎士の手甲が何かを求めるように宙を掻く。
月光を弾いた鈍い煌めきが、妙に印象に残った。
誰にも聞こえてはいないだろう。だが、言いたくなりシモンは続けた。
「アンタは知らんだろうが、近隣の住民にとって死体の悪臭問題とは実に切実でね。普段はこうして蓋をしてあるのさ」
そして、これは一度だけ使える搦め手である。
これで騎士が死ぬとは思わないが、運が良ければあり得る話だ。頼むから死んでくれ。そんな気分で見下ろした。
シモンは縄を便りに橋の欄干によじ登ろうとひとまず重い弓剣を地面に投げた。
その時だ。悪臭立ち上る汚水溜まりから何かが空気を切る音が聞こえた。
──いったい何が?
目をこらした先には何も見つけられず、その正体は左手の痛みで知ることになった。
鋭い痛みに思わず呻く。手の甲に突き刺さっていたのは、たっぷりと毒を含む歪んだメスだ。
通常、銀製に輝くそれは黒く塗り潰されていた。白日の下で投げられても視認には苦労するだろう。まして下水へ繋がる暗闇から投擲された物であれば、視認は不可能だった。
(悪あがきにしては的確だ。つまり悪あがきではなかったということだな……!)
騎士が落ちる先の暗渠は深い。打ち所が悪ければ死地になるのは必至。──だというのに彼は自らに迫る危機の回避よりも敵意を優先させた。その事実は、メスからは嫌というほどに感じられた。
彼らの執念を甘く見ていたワケではない。だが、シモンにとって衝撃だった。
(よくも、まぁ、腕の肥えた鴉もいたものだ!)
すぐさまメスを抜き、掴まっている綱を手放さないように右手で掴み直した。
「ぐゥっ、うッ!」
この時、わずかに呻き声を上げたのが良くなかったのだろう。
闇の中で炎が瞬いた。
照らされたカインの兜が閃光で赤白に染まったのが、目眩のように歪んで見えた。
反射的にシモンは不自由に身をよじった。
弾丸は直撃こそしなかったが、跳弾が左脚を掠めた。巻き付けている襤褸や包帯が弾け、皮膚が焼けたように痛んだ。
追撃は無かった。
やがて、市街の狩人が『流血鴉』と名を呼び恐れる狩人狩りが、汚水だまりに落下した音が聞こえた。
市街の一般的な狩人であればここで罵声のひとつでも掛けるだろうが、そんなことを迂闊にしようものならば声を覚えられてどこまでも彼が追いかけてくるだろう。そんな恐怖を抱いた。
(アレは関わり合いにならない方がいい手合いだな……頭がおかしいんじゃないか)
カインハーストの狩人にしては奇妙なほど執着的だ。
しかも殺意は、偏執的で冷酷な気配がある。
思い込みは現実を歪ませるが、事実を理解するために予想は必要だ。
シモンの経験上、彼は頭のキレている狩人に見えた。
つまり、まともではない。
頭を狙った銀の矢が、千景の刃で弾かれることなど狩人として生きた時間のなかで一度もなかった。
反応速度が異常だ。
薬や洗脳で人間の限界を超えているのかもしれないが、それにしては狙いが正確すぎる。そして、状況判断も概ね適切だ。
それでも普通であれば『長持ち』しないタイプの狩人だ。ならば歯牙にかける必要はないのだが現在のヤーナムは常が異常だ。死ぬまで待つ──そんな選択肢は存在しない世界になっている。
(カインハーストの穢れた女王が、まだ健在だという証明だな。あれこそ秘蔵っ子。『とっておき』というものかね)
シモンは努めて音を殺し、橋に足をかけると震える手で何とか欄干を掴み、地上に投げた弓剣を拾った。
血を流し続ける左手は腫れ始めている。この時点で最悪なのに左脚の銃創も嫌な予感のする熱を帯びていた。
毒が回りきる前に隠れ、身を休める場所が必要だった。
弓剣を背負い、彼は壁伝いに進み、やがて暗がりに消えていった。
夜警紀行あるいは理解ある犠牲者の後で
話しかけてきた黒服
昨年まで彼らのそばにいて、もういなくなった同僚のことをうっすらと覚えている様子。完全に忘れるワケではないようです。不思議ですね。
シモンvs鴉
レオーがクルックスと話している間の周囲の警戒をしていた鴉がシモンに気付いたのは、今日が月の出ている夜だったからです。有効射程内において銀の矢が光を反射したので気付きました。それはそれとしてヤーナムの狩人で最も遠くまで攻撃出来るシモンの完全有利から始まった遠距離戦闘を超近接戦闘まで持ち込んだのは彼の力量と言えるでしょう。病があろうと頭がおかしかろうと傑作的騎士は傑作だったようです。ところでその銃、違法改造して──何でもないです。
「愛せるなぁ~」とレオーはニコニコしそうですし、セラフィは後方後輩面でニコニコしそうです。
ここはカインハースト。アットホームな職場です。
クルックスが見ていた下水道の蓋は、市街にいるシモンも知っていました。普段、ヤーナムの屋根にいる鴉は気にしたことのない機構です。機転により窮地を脱したシモンに一本取られた格好。それはそうと自由落下中に追撃する執念を見せました。汚物臭に気付き、頭にきたのかもしれません。
市街でも目立つセラフィ
レオーが心配したとおりほどではありませんが、あらぬ注目を受けている様子。女性狩人はいないワケではないんですが、まぁ、それにしても目立ちます。穢れた血で娼婦をしている女性とどこか似た顔立ちも目を引いたことでしょう。まして銃をあまり使わない狩人なので、それはそれは目立つことでしょう。──音が出る狩りを厭うなんて何を標的としているか。考えさせられてしまいます。
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