甘き夜明けよ、来たれ   作:ノノギギ騎士団

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狩人の栞
『しおり』は古くにおいて木の枝を折り、道しるべとすることであり。
転じて、読みかけの本の途中に挟むしるしとなった。
いつ、どこで、何を、どうして見誤ったのか。
見返すにはいくつあっても足りはしない。



列車は午前十一時発

 

 ビルゲンワースの学舎。ほとんど晴れることのない空は、今日も曇りの様相だ。

 

「諸君、おはよう。今朝はよく眠れたかな?」

 

 教室の一室にて。 月の香りの狩人の問いかけに仔らは、口々に肯定を述べた。クルックスやテルミは元気に答えた。日頃、眠りが浅いというネフライトでさえ「ええ、まあ、すこし」と述べる。セラフィは「十日ぶりに眠りました。睡眠はよいものだね」とネフライトの視線の先で薄く微笑んだ。彼は嫌な顔をした。

 

「それは結構。狩人ならば、休めるときに休むべきなのだ。さて、思い思いに休んだ君たちには当分ヤーナムの外で生活してもらうことになる。……ところで普通の親ならばこういう時にこそ君たちの体調のことなど気に掛けるべきなのだろうか……未だ親心の片鱗を解さない私には、よく分からないところだ。それに夢に捕らえた君たちのことを私は心配しないことにしている」

 

 彼は話題を変えるように小さく手を叩いた。

 

「さて、今年こそは穏やかな日々となることを祈っている。そして、学び多き一年となることを期待する。新しいもの、珍しいもの、懐かしいもの、さまざまあるだろう。ここにはないものをよく学び、楽しんでくるといい」

 

「はい。分かりました。行ってきます」

 

 クルックスが代表して答えた。

 それに対し、狩人は頷きをひとつ返し、今年の別れの言葉は終了した。

 学徒の二人は目隠し帽子の下で目を押さえた。

 

「最近の狩人君、仔らの前で話すのが板に付いてきた気がするよ。くぅ、立派になっちゃってさ……ッ!」

 

「目頭が熱いわ」

 

「磯臭い演技はやめてくれ。俺も頑張れば人前で話すことができる。そう、成長期だからな」

 

 狩人は珍しく立派なことを言った自覚があったので胸を張った。

 

「お父様はいつでも頑張っています。なのでお休みがあってもいいと思います。カインハーストの納税も終わったことです。しばらく俺達の見守りもお休みできるのではないですか。狩人の夢で一息入れることも大切だと思います。今日は人形ちゃんとゆっくり過ごしてはどうですか? きっと人形ちゃんも喜ぶと思います」

 

「ありがとう、クルックス。俺には早急にしかも長期の休暇が必要だ。実は、まだ作りかけの椅子があってね」

 

「椅子? 椅子って何だい?」

 

「あっ……」

 

 狩人は明らかに「失言をした」という顔をした。

 クルックスは狩人の言う『椅子』とは、大砲を搭載した車椅子であることを知っているが、それに言及したところで現状が好転することはないので黙っていた。そのうちに学徒は誤った答えに辿り着いた。

 

「ああ、ひょっとして懲罰椅子?」

 

「ああ、うん、それだ。クィレル先生の椅子が最近ガタついているとか何とかで、作っていたんだよ、ねぇ、先生?」

 

「懲罰椅子を? 何でしたっけ、魔法史の授業で習ったような、習わなかったような……?」

 

 十数年前のことを思い出そうとウンウン唸っているクィレルの肩を叩いたのはコッペリアだ。

 

「先生のための懲罰椅子か。いいねいいね。尋問が捗るね。全然関係ない話なんだけど水責め好き? 僕は好き」

 

「泡頭呪文──な、何でもないです。嫌い、ですね……っ。……されたことはもちろんありませんが」

 

「そっかぁ」

 

 クルックスは、咳払いした。

 それに気付き、コッペリアは悪いことを思いついた顔をひそめ「僕の可愛い子、どうしたんだい?」と優しく訊ねた。

 

「先日の許可証のことです。ホグズミード村へ行くための許可証。セラフィとネフライトはもう夢に消えましたが、あれをいただいたら俺も出発します」

 

「あれ、僕、受け取ったっけ?」

 

「え……ッ」

 

 狩人とユリエ、クルックスとテルミ、コッペリアとクィレル。

 全員の間に気まずい沈黙が生まれた。

 クルックスは目をぱちくりしながら額に手を当てた。

 

「お、俺は、たしかに、昨日渡して……? コッペリア様がペンを探すとおっしゃったので俺は学徒室のテーブルに置いたような……」

 

「あー? あーッ、言った気がするよ! そうそう! あの後、ペンが見つかって、せっかくだからと部屋の掃除をしたんだよね!」

 

 コッペリアの言葉を反芻したクルックスは、いつまで経って彼のポケットから許可証が出てこない理由にとうとう思い至った。

 

「まさかとは思いますが……掃除のついでに捨てました? 俺の許可証、捨てました?」

 

「捨て、て、て、は、いないと思うなぁ! していないといいなぁ!」

 

 コッペリアが、希望的観測を述べたところで。

 誰からともなく全員が扉の外へと走った。

 

「マズいんじゃないか? いま何時だ」

 

「はーい、お父様! テルミがただいま十時五十分をお知らせします!」

 

「お、おおう、ありがとう。──では先生、列車の時間って何時?」

 

「ま、毎年十一時です! 魔法省とホグワーツの取り決めでもうずいぶん昔からそう決まっていますので……」

 

「十分あれば探せると思います。……たぶん」

 

 クルックスは三〇秒あれば列車に駆け込めると算段した。

 テルミがクスクスと笑った。

 

「線路を爆破してきましょうか? 多少遅れても大丈夫になりますよ」

 

「いま君の面白くない冗談に付き合っている時間はない。いざとなればホグワーツのホームの灯りに飛ぶことができるから、君は何もしなくていい。ただ、俺は列車で行きたいと思っている。俺は大鍋ケーキが食べたい。──あっ。いえ、これまでもそうしてきたので列車で行きたいです」

 

 クルックスは狩人の顔色を窺った。彼は気にしていないようだった。

 

「君は食べ盛りの育ち盛りなのだから隠すこともないだろう。ところでコッペリア、何を捨てたか覚えているか?」

 

「だ、だから捨ててないってば! 書架から出しっぱなしになっていた本を戻しただけだよ。ついでに書き物が散らばっていたからテーブルの上に片付けた。君こそクルックスが許可証を置いた場所の近くで読書していただろう? 何か覚えていないのかな」

 

「うーん。君が本を片付けるから手伝えと言ったから、手伝ったな。読書はそれっきりだ」

 

 狩人が学徒の研究室を開け放つ。

 室内に広がる光景に全員が息を呑んだ。

 

「うわ。すごく片付いている」

 

 クルックスの感想が全てだった。

 乱雑に散らばっていた本はテーブルにある一部を除き、あるべき書架に納められていた。

 

「一見したところ床には落ちていないようですね。では本と本の間に挟まってるとか……」

 

 壁の四面に納められた書架にはギッシリと本が詰められている。自然とクルックスの声は小さくなった。

 

「コッペリア、本棚に戻した本はどれだ?」

 

「おいおい狩人君、僕がいちいち覚えてるワケないだろう? ネフじゃあるまいし。片付けにやる気が出ちゃってさ、本を分類ごとに並べ直したんだよねぇ!」

 

「こんな時に限ってやる気を出さないでくれ。まずどこから手を付けるべきか」

 

「──クィレル先生?」

 

 テルミの甘い声にクィレルが大袈裟に後ずさりした。

 

「捜し物に便利な呪文はないのかしら?」

 

「あ、あ、ありますが、今はうまくいけないと思いますよ。念のため、やってみましょうか。──アクシオ 許可証よ、来い!

 

 どの書架からも許可証が飛んでくることはなかった。

 そのためクィレルは「ほらね」という顔をした。

 

「先生の杖って壊れてるんじゃない?」

 

 責任転嫁を試みたコッペリアがニヤッと笑った。

 

「イメージが出来ていないのでうまくいかないのだと思います。私は、きょきゅ、許可証を見ていませんでしたから」

 

「うまくはいかないものですね。さて、テルミが皆様にただいま十時五十五分をお知らせします」

 

「ワーッ! もう、あと五分じゃないか!」

 

 狩人が近くの書架から本を取り出し、一冊ずつ調べ始めた。

 クルックスもそれに倣った。

 とはいえ。

 

(これは間に合わないな)

 

 冷静に考えた結果、クルックスは列車に乗ることを諦めた。

 奇跡的な出来事が起きない限り、許可証が見つかることはないだろう。

 そのため、クルックスはまずテルミに指示を飛ばした。

 

「君は先に行ってくれ。俺に付き合って君まで遅れることはない。列車に乗ることは諦める。もし、俺に関して何か聞かれたら誤魔化してくれ」

 

「そうするしかなさそうね。ホームの灯りで会いましょう。──では、お父様、学徒の方々、先生。行って参りますね」

 

「ああ、学び多い時間となることを期待する。だが気楽にな」

 

 狩人が不自然に高い声で言い、控えめに手を振った。

 それを丸い目で見たテルミが微笑んだ。

 

「まあ、嬉しいお言葉です。お父様、愛していますわ」

 

「ああああ、わっ、おっ、うん、あ、ありがと、う、ね!」

 

 身震いした狩人の尻をコッペリアがつねて、ユリエが脇腹に鉄肘を喰らわせた。完璧な攻撃で気を取り直した狩人が何とか言葉を紡ぐ。幸いテルミにはうずたかく積まれた始めた本に阻まれて見えなかっただろう。クルックスにはよく見えたので、その後、溜め息を吐いた。

 

「さぁて。何だか期限がなくなったら気が軽くなってしまったな。とりあえず皆お茶にしない? 何か思い出すかもしれない」

 

 コッペリアが明るい声で言った。書架から本を取り出したばかりのクィレル先生が「とんでもないことを言いだしたぞ」と恐々とした顔で彼を見上げた。

 

「──湖の水でも啜っていなさい。こうなったら総当たりよ。書架を片っ端から調べるわ。狩人君も本を持って来てちょうだい」

 

「厚い本に挟まっているんだろうかね」

 

 テーブルに置かれた本を抱え、狩人は一冊ずつ本を取り上げた。

 

「本のなかということも考えられるわ。書類を捨てていないのは私も見ていたから、この部屋のなかにあるハズよ。確認した本は向こうのテーブルに。まだの本はこのテーブルに載せなさい」

 

「ユ、ユリエ様、そこまで……」

 

「クルックス、何事も息抜きは必要よ。あなたの充実した休暇を私達は応援しているわ。ね、狩人君」

 

「ああ。狩人は休めるときに休むべきだからな」

 

「ほとんど寝ていない狩人君が言うと説得力が違うねぇ」

 

「あなたは責任を取って人一倍働きなさい!」

 

「はぃっス……」

 

 結果として。

 許可証はこの学徒の研究室で発見された。

 ホグワーツ到着五分前。

 狩人が「許可証はカインハーストの招待状の如く消えたのではないか」と疑い、主張し始めた矢先。

 

「あっ」

 

 探す人々が絶対に聞きたくないと思っている種類の声を上げたのは、昨日まで読んでいたテーブルの本を何気なく開いた狩人だった。

 彼らの視線を受け、ぎこちない動きで、しかし覚悟を決めたように彼は振り返った。

 

「すまない。あった。本の栞に使っていた……」

 

「お父様……」

 

「狩人君……」

 

「おめでとう僕! 僕は無実だった! いや、でも実は、てっきり食べちゃったかと思っていたよ……」

 

 全員が多いに時間を費やした捜索は、こうして幕を閉じた。

 大人達はそろって脱力して、だらだら歩くとソファーや椅子に深く座った。

 その日はもう誰も立ち上がれないと思えた。

 

「では、ええと、俺は行きますね」

 

 クルックスは出発前からすでに気疲れしていたが、ともかく見つかったのだからと気を取り直した。

 出発の挨拶に対し、大人達は「ああ」とか「いってらっしゃい」と力なく言い、彼らはぶらぶらと手を振った。

 

 

 

■ ■ ■

 

 

 

 時は、遡る。

 クルックスがコッペリアに対し、許可証の受領を申し出ている頃。 

 セラフィはホグワーツ特急列車の後方車両を歩いていた。

 カインハーストの豪奢な狩装束を脱ぎ、今はごく標準的なヤーナムの市街で狩人達が着る装束に腕を通している。父たる狩人と同じ枯れた羽を模したトリコーンだけは変わらない。

 まだ発車しない車両には、久しぶりに出会った友人とぺちゃくちゃとお喋りする生徒で溢れかえっている。

 通路から車両の窓を見る。セラフィには、もうもうと上がる蒸気しか見えないが、その向こうにはホームで別れを惜しむ人々を眺められることだろう。

 窓際が空いている席を探して歩いていると先頭車両から歩いてきた一年生か二年生の小さな男子生徒が見上げていた。

 

「わっ」

 

「背が高いっ」

 

 たしかに。

 セラフィは自分の背丈が同じ学年の男子生徒より高くなりつつあることを自覚している。

 だが、まだ大人ほどではないと思う。

 何と答えるべきか分からずトリコーンを深く被り、彼女はすれ違った。

 

 ──あれくらい背が高くなりたいよなぁ。

 ──でも女の子なら、もうちょっと小さい方が……。

 ──見下ろされるのは嫌じゃない?

 ──そうかなぁ。

 

 彼らの声を拾ってしまうのは、未だ停車した列車だからだろう。

 セラフィは「なるほど」と独りごちた。

 背丈と共に伸びる手脚の長さは、狩人にとって重要な要素だ。リーチの長短が生死の別れとなる場合があるからだ。しかし、平穏な世界においては女性の背の高さを疎む人もいるようだ。

 とはいえ。

 セラフィは、対極に位置する体格のテルミについて「小さすぎてちょっとな」という否定的な声を聞いたことがあった。

 そういうワケで。

 

(個人の好みの問題だろうな)

 

 身内と認めた人以外の意見とは、彼女にとってそよ風のようなものだ。

 背の高さで困ることは今のところスリザリン寮のベッドが手狭に感じられることだけなので、やはり気にすることではなかった。

 列車を見回っている間にちょうど窓際が空いている席を見つけた。約四人が座れるコンパートメントだが、そこは通路側を熱心に見ている一年生と思しき女の子が座っているだけだった。

 

「その席、座ってもよいかな」

 

 コンパートメントが開いてようやく彼女は相席となる可能性があることを思い出したように見えた。ハッとした顔をあらためると手を濃紺のスカートの上に行儀良く揃えた。

 

「え、ええ、どうぞ」

 

 斜め向かいの席に座った。

 眺めの良い窓際の席だ。

 トリコーンを脱ごうと思ったが、窓は燦々と夏の日差しを注いでいる。もうしばらく被っていることにした。窓の向こうからは、カートを引きずるくぐもった音が聞こえてきた。見たところクルックスとテルミは、まだ到着していないようだ。

 時計を確認しようとして視線を感じる。コンパートメントに注意を戻せば、斜め向かいの女の子と目が合った。まじまじと互いに見つめる時間が訪れた。

 青白い顔、ブルネット色の髪の女の子だ。

 気の弱そうな青い瞳がセラフィを見つめている。

 

「こんにちは」

 

「あなたは、スリザリンの人?」

 

「そうだよ」

 

「よかった」

 

 おや、とセラフィは内心で呟く。

『スリザリンでよかった』とはホグワーツにおいて、滅多に聞かない言葉である。

 ホグワーツでは、近年──具体的に言えば十数年前の暴力的な歴史によって──スリザリンは他寮にとって嫌われ者の寮であるからだ。

 そんな事情を汲めば、彼女の立場も見えてきた。

 例えば。

 

「アストリアには姉さんがいるの。姉さんはダフネ・グリーングラスよ」

 

「アストリア……ダフネ? ああ、知っている」

 

 緊張した面持ちが、ふわりと和らぐ。

 セラフィはダフネ──それはギリシア神話の美しいニンフにして『月桂樹』の名に冠する──同級生の顔を思い浮かべた。

 見つめる少女をよく見つめれば、彼女の面影があった。

 

「そうか。君は彼女の妹なのか。ダフネには、とても世話になっているよ。僕は見てのとおり世間知らずだからね」

 

「そのようね。その恰好、とっても田舎者だわ」

 

「数世紀の溝は埋めがたいようだ。野暮ったい恰好なのは認めよう。けれど普段の僕はもう少しだけ華やかな恰好をしているんだ。……誰か僕にファッションを教えてくれると嬉しいものだね。それとも背が高すぎて僕に似合う服はないかな」

 

「雑誌をめくることをお薦めするわ」

 

「雑誌……なるほど。そういうものもあるのか」

 

 都会育ちの余裕が出てきたのだろう。

 青白い頬は朱が差し、ツンと尖った顎を上げた。けれど体は前のめりだ。

 

「アストリアはダフネ姉さんに聞いたわ。同じ学年でとっても田舎から出てきた子がいるって」

 

「そう。きっと僕のことだね」

 

 薄く笑うセラフィは、アストリアを可愛い生き物だと思った。

 セラフィが何事も注視するのは彼我の力量だが、この尺度を理解するのはヤーナムの狩人である『きょうだい』達以外に存在しない。これはクルックスならば心を病む想像だったが、同じ『きょうだい』でも発生する感情の受け取り方は異なる。

 

「どんな顔の田舎者かと思ったけれど、顔はそこそこ──」

 

「君、可愛いね」

 

 上機嫌で顔面評論をしていたアストリアが意表を突かれた顔で「ふぁっ?」と高い声を上げた。

 

「君たちの幸せな姿を見ることは僕にとって幸運なことだ。もっと僕に話しかけてほしい。笑顔を見せてほしい。君の笑顔も、とても素敵だ」

 

 アストリアは、自身の長い髪を両手でギュッと握った。

 その心の中は「この人、ひょっとしてアストリアのことが好きなのかしら?」と考えていた。

 アストリア・グリーングラス。

 彼女はセラフィのことを田舎者と侮ったが、とある理由で虚弱体質ゆえに彼女はセラフィに負けず劣らず箱入り娘だった。

 衝撃が過ぎ去った後の理性はやや鈍い。次の言葉を考えようとしたアストリアのすぐそばでコンパートメントが開いた。

 

「あらあら。ウフフ、夜警様の甘い言葉が聞こえたわ」

 

 現れたのは姉妹という設定になっているテルミ・コーラス=Bだ。

 セラフィはさして驚きはしないが、月の光もないのに煌めく蒼い瞳は淡い好奇心を浮かべている。

 

「やあ、テルミ。遅かったね」

 

「ええ。コッペリアお兄様がクルックスの許可証を無くしたようで今頃は大騒ぎして探していますわ」

 

「ほう。それは大変なことだ」

 

 セラフィがあまりに軽く言ったのでアストリアは、書類の重要性を理解していないことを察した。

 だが「実は君が隠し持っている、なんてことはないのだね?」と問い詰める声には妙な迫力があることに気付く。そのため、ただの田舎者という印象はやや陰りを帯びた。

 

「まあ、怖いわ。許可証を隠すなんて意味がないのでやりませんよ。本当に。単純にまったく意味がないですからね? ホグズミードのお店を探すためにここ数日ぱたぱたしていたわたしをご存じでしょう?」

 

「そういえばそうだった。では違うのだろう。クルックスには頑張って失せ物探しを頑張ってほしいね。この列車には間に合うだろうか」

 

「間に合わないでしょうね。ですからこれを貴女に」

 

 セラフィはテルミから小さな包みを受け取った。

 小さいが重量が感じられる。

 

「小腹が空いたときに食べてください。本当は、クルックスのために作ったのですが」

 

「ありがとう。いただくよ」

 

 テルミは、ひとつ頷きを返した。

 そして。 

 

「ご機嫌よう。ご挨拶が遅れてしまいました。貴女はグリーングラスさんの妹さんかしら。わたしはテルミ。コールミー、テルミーってね。気軽に呼んでくださいな」

 

「ええ、お見込みのとおり。アストリアはダフネ姉さんの妹よ。あなたは……この……この人の……ええと」

 

 セラフィは自分が名乗っていないことを思い出した。

 動き出した列車のなか窓の日差しが弱まった為、彼女はトリコーンを脱ぎ、長い銀色の髪を払った。

 

「僕とテルミは姉妹だ。僕が姉。君たちほど似ていないけれどね。こういうこともあるのだ」

 

「テルミは今年入学するのかしら?」

 

 クスクスとテルミがおかしそうに笑った。

 それから「ごめんなさいね」と眉を寄せて困った顔をした。

 

「テルミは僕と同じ、そして君のお姉さんと同じ三年生だ。僕らは双子──のようなものなんだ。恐らく、分類上は」

 

「でもっ、アストリアと同じくらい小さいのに」

 

 アストリアがショックを受けた顔でテルミを見つめる。つま先から頭のてっぺんまで見た。

 アストリアの顔は驚きの他に恐れが多分に含まれたものだったが、人間経験が少ないセラフィは察せず、テルミは察していても優しげに微笑むだけだった。

 

「だから可愛い妹なのだよ。僕にとってはね。──さて」

 

 まだ何かを言いかけたアストリアは、テルミが挨拶した先を見た。

 

「ダフネ姉さんっ」

 

「──あなた、先に席を取っていたのね。ずいぶん探してしまったわ」

 

「アストリアはちゃんと姉さんに『先に席を取っておくわ』って言ったわ。……なのに姉さんはお友達とばかり話して」

 

「当然よ。家でずっと話していたあなたと外でまで話すことはないでしょう」

 

 ぴしゃりとダフネは言う。叩かれたようにアストリアは肩を跳ね上げて「あうっ」と呻いたきり、肩を落とした。

 

「おやおや、ダフネお姉さんは妹君に手厳しいようだ。──テルミ、僕もそうするべきなのかな。一般的な姉妹ならば」

 

「わたしは、食傷するほど甘い方が好みですね」

 

「では引き続きそのようにしよう」

 

 ダフネはコンパートメントの入り口に立ったままのテルミに席を薦めたが、テルミは断った。ハッフルパフ寮生が集まるコンパートメントに席を取っているのだと言う。

 

「残念ね。あなたの夏休みが充実していたかどうか聞きたかったのに。新しい授業のことも」

 

「ええ。授業で一緒になったらお隣の席に行きたいものだわ」

 

 テルミは去った。

 ダフネはコンパートメントに入るとアストリアの隣に座った。

 そして。

 

「では、アストリア。このコンパートメントを出て行きなさい」

 

「えっ!? な、な、どうして!?」

 

「同じ一年生を見つけて友達を作ってきなさい。年上にばかり甘えていてはダメよ」

 

「でも、でも、アストリアはスリザリンだもの。他の寮の人なんて関係ないわ──」

 

「そんなことはないわ。さっきまでいたテルミは学校の誰とでも話せるくらい人脈が豊かよ。どちらが優れているかなんて言わなくても分かるわね? 閉じこもってばかりではいけないわ。さ、行きなさい。……大丈夫。最初から全部上手く出来る子なんていないもの。失敗してきなさい」

 

「ひどいわ。失敗を薦めるなんて」

 

「リラックスさせてあげようと思って言ったのよ。成功させたっていいのよ、別に」

 

 アストリアは、どうするだろうか。

 興味深く見ていたセラフィと彼女は目が合った。

 

「自己紹介がまだだったね。僕はセラフィ。女王様の夜を守る忠実な僕だよ。セラフィ・ナイト。今やただの学徒でもあるのだけど」

 

 余裕がすっかりなくなってしまったアストリアの顔に『ワケが分からない』という色が浮かぶ。

 セラフィの発言の意味不明さは、彼女に外への交流を決心させた。彼女の言動を解明するよりも恐らく楽だったからだろう。

 

「次はスリザリン寮で会いましょう、夜警さん。その時までご機嫌よう」

 

「頑張るといい。僕もそうやってダフネお姉さんと出会った」

 

「『お姉さん』だなんて。馴れ馴れしいわ……!」

 

 それを捨て台詞にアストリアは去って行った。

 彼女が去った途端、ダフネは心配そうに目をうろうろさせた。

 

「アストリアは体が弱くていつも家の中にいる子なのよ。でも、ホグワーツの長い生活のなかで友達は必要だわ。だから今日が一番のチャンスだと思うの。どの寮の人でもいいわ。上手く出来るとよいのだけど……。そうだ。あなたに失礼しなかった?」

 

「楽しいお話をさせてもらったよ」

 

「あなたに聞いたのは失敗だったわ。パンジーにからかわれても同じことを言うのだから……」

 

 ──信用できない語り手ね。

 セラフィは薄く微笑むだけだった。

 

「君の姉らしさに僕は驚いている。彼女にとって良い経験になることを祈りたい。対して僕は飴ばかりだ。鞭は使い慣れない。厳しくすべき場面だろうかと思うことはあっても結局は何もできないことが多い。きっと鞭を使われている側だからだろう」

 

「そう。夏休みは楽しかったかしら?」

 

「ああ、充実していた。君は?」

 

「いつも通り。すこしの旅行、そして休養ね。高原の静養地に行っていたの」

 

「それは素晴らしいことだ。高地は涼しいのかな。寒かったかな」

 

「ちょうどいい感じかしら。温度も湿度も。あなたは……寒いところから来たのね」

 

 革と厚手の布で作られた狩装束は、通気性を考慮した結果に見えない。

 今どきの魔法界も誰もが、ジーンズや化成繊維の大量生産の成果物であるそれらの服を着ている。それらに見慣れているとセラフィの姿はいっそう浮いて見えた。

 

「ああ、万年氷と風雪が僕の故郷だ。けれど、温かい場所は好きだよ。高原、きっと素敵なところなのだろう。いつか僕も行ってみたい。そうだ。旅行と言えば、家族と海へ行ったよ。砂浜を歩いただけだが海は不思議な場所だった。また行ってみたいものだ」

 

 セラフィはテルミから受け取った包みを開いた。

 重量感の中身はクッキーだった。

 

「……なるほど。僕に投げて寄越すワケだ。とても固い」

 

 会話の片手間につまむ程度の固さではなかった。

 膝の上で割ることでようやく口の中に収まる大きさになった。

 

「味は……まあまあだ。むぅ、お茶の味がする。テルミは料理が上手なのだな。僕も教えてもらおうか、どうしようか……」

 

 ひとつの欠片を食べ終わり、ふと視線を感じて顔を上げるとその先に意を決した顔のダフネがいた。

 

「──ねぇ、セラフィ。あなたの妹のことなのだけど……。昨年度から気がかりにしていたわ。だって、成長、していないわよね?」

 

「ああ、そういう体質ということになっている」

 

「それは何かの病気ということ?」

 

「さて……」

 

 セラフィはテルミが成長しない理由について、うっすら勘付いていることがある。

 彼女が『成長したくないから成長していない』という極めて単純な動機だ。

 テルミが焦っているように見えない理由もネフライトが原因解明に躍起にならない理由もクルックスが頭を悩ます理由も、それが原因ならば説明できそうだ。

 学徒は来年から調査を行うようだが、原因が明らかになる可能性は低いだろう。上位者の願いから生まれた生き物に通常の生き物の定規を当てようとするから狂うのだ。

 セラフィは、カインハーストの女王と騎士の先達に望まれているので成長している。

 クルックスは、人間は成長するものだからという思い込みで成長している。

 ネフライトは、成長した方が生活も研究も捗るので成長している。

 テルミは成長してしまえば、孤児院にはそぐわなくなってしまうので成長していないのだろう。

 しかし、この場合、正直に生態を話すべき場面ではないことは、セラフィにも分かる。

 そのため。

 

「病気だね。きっと僕らのことだから血の病、血の呪いなのだろう」

 

 テルミには『セラフィの妹』の設定に加え『呪われた病み人』の設定も付与された。

 後ほど報告しておかなければ、と思う一方。ダフネの顔色は、深刻なものに変わった。

 

「血の呪い……そう……家系には、少なからず存在するのね」

 

「君は、いや君たちは……? まさか──」

 

「わたしの家のそれは珍しい話ではないの。純血の人々の間ならば、特に。ことグリーングラス家において古い言い伝えは、ただの事実なのよ。血の呪い。……家が、血が、呪われているの。だからアストリアは体が虚弱なの。そう。今代の呪いは……全部あの子に」

 

「そうだったのか。……他の子に比べてやけに体が小さいと思ったが……なるほど。呪いか……」

 

 期待を込めた目に気付き、セラフィは考え込むように顎に手を当てた。

 

「ん? ああ、テルミの体もそういうものの一種なのだろう。傍目から見れば、やはり『呪い』だろうか」

 

「どうして?」

 

 傍目から見るまでもなく当人にとって重い呪いだろう、とダフネは言う。

 セラフィは首を横に振った。

 

「呪いとは、何かの怒りに触れた時に引き起こされる。……人間が自分に都合の良いものを『祝福』と呼び、悪しきものを『呪い』と呼ぶ。だが、最後は本人の気の持ちようだ。成長しない体をテルミは呪いだと悲観しない。『するべきではないのだ』と言うだろうね」

 

「そう。強いのね。……わたしなら成長できないなんて気が狂いそうよ」

 

「おや。年を取らないのを羨ましがると思っていた。不老不死は人間の夢だと聞いた」

 

「そうだとしても小さいままは嫌よ。……わたしは、早く大人になりたいもの」

 

「ああ、それには同感だ。分かるよ。僕も早く女王様の騎士に列したいからね」

 

 ダフネの細く整えられた眉がピクリと神経質に動いた。

 そして、彼女は肩を竦めて窓枠に寄りかかった。

 

「……その設定、まだ続けているのね。もう三年じゃない。かなり、ビックリしているわ……」

 

「うん?」

 

「あなたの『自分には仕えるべき女王様がいて先達の騎士の下で鍛錬している』という設定のことよ」

 

 セラフィは、スリザリンの女子のなかでは特異な存在になりつつある。

 一年生の時分、組み分けが終わり迎えた最初の夜。

 彼女は将来の夢を語り合う少女達を図らずも笑いの坩堝に突き落とした。

 

『僕はセラフィ。セラフィ・ナイト。女王様の夜を守る夜警だ。そして学徒でもある。ひとまず今は。だが、僕は必ず先達に並ぶ騎士となり、最も優れた剣としてかの女王様に仕え、名誉と共に永遠の繁栄の礎となるだろう。魔法界を訪れたのは、唯一偉大なる父がそれをお望みになったから、そして君主たる女王様が盟約によりお許しになったからだ。よって僕は外なる神秘に見え、早晩上奏するだろう。──君たちと善い関係が築けると嬉しい』

 

 魔法使いに憧れるマグルの十歳児でも考えつかない、盛りすぎた素性の設定だと笑ったのはパンジー・パーキンソンだった。彼女の失笑をきっかけにスリザリンの女子の間で彼女は空想家で夢見がちな人──これはやや優しい表現だ──と言われるようになった。

 実際のところ、魔法界の常識的に考えて『空想』と呼ばざるを得ない事情があった。

 魔法界に自称王族のブラック家はいるとして、実態としての王はいないからだ。それでも存在するのならば、彼女の頭の中に存在するモノとして取り扱うしかない。頭のおかしな生徒として排斥されなかったのは、彼女の所属する寮が身内の情に厚く、そして打算的な交流も厭わないスリザリンだからだ。多少のイレギュラーがあったとしていつか使い道があるだろう。──スリザリンの生徒には、そんな考え方をする者もいる。

 

「──設定?」

 

「なんでもない、なんでもない。忘れてちょうだい」

 

「ではこれも引き続きそのようにしよう」

 

 ダフネが、セラフィを気に入っている理由はまさにこれだった。

 彼女は、たいていのことがどうでもいいのだ。

 そのため、古くから続く魔法族が縛られがちである、様々なしがらみなく話せる。誰かの悪口を言って団結を深めて盛り上がるような湿っぽさや秘密主義が存在しないところも好ましい。常に泰然として、集団の価値観から浮いている彼女と話すのは楽だった。この会話は未来のどこかで面倒なことにならない──そんな確信を持って話せる人は、ダフネにとって多くない。

 この手の人間は集団生活において必要だ。

 人間関係に気疲れしているらしい生徒が、セラフィと話している様子も談話室では珍しい光景ではなかった。空想家に思われているセラフィだが、短所と言えば魔法界の常識に欠けていることがとても目立つだけで基本的には誰に対しても礼儀正しく接することができた。ドラコ・マルフォイの腰巾着のように振る舞っているクラッブやゴイルに挨拶をする人物は、彼女のほかに存在しているかどうか怪しい。それから、とても重要なことだが──頭の回転は速い方だとダフネは見ていた。

 

「穏やかな生活になるよう祈っている。昨年は随分とハラハラしてしまったからね」

 

「もうちょっとバジリスク騒動が長引いていたらわたしは家に帰ることになっていたわ」

 

「純血なのに?」

 

「純血だからこそよ。どんな手段で生徒が石になっていたか分からないけど、手違いで死んでしまったら堪らないわ。けれど今年も……物騒な話が聞こえているわ。脱獄囚だとか。毎年毎年これだもの。嫌になるわ」

 

「そうだね」

 

 毛ほども脅威だと感じていないセラフィは、適当な相槌を打った。

 空返事よりはマシな返答にダフネは気持ちが楽になって話した。

 

 

 

■ ■ ■

 

 

 

 汽車は午前十一時きっかりに出発した。

 スリザリン生が集まるコンパートメントが嫌になって、お手洗いのついでに抜け出した生徒がいる。やや筋張った青白い顔、グレーの髪、彼の名前はセオドール・ノットと言った。

 大して重要でもないのに大量に詰め込まれた情報で頭の中がガンガンと痛む。

 スリザリン生の話は、牽制と見栄ばかりだ。やれ外国に行ってきただの、魔法省の高官と何回パーティーをしただの、高価な何を買っただの。

 

(どいつもこいつもくだらない)

 

 何よりも面倒なことは、彼らの口から出る名前を頭に叩き込まれた家系図といちいち照合して勝手に疲れてしまう自分だ。

 通路でバッタリと同じスリザリンで同級生のパンジー・パーキンソンと出会った。

 

「マルフォイのいるコンパートメントが空いたぞ。俺は列車酔いしたのでその辺をぶらついてくる」

 

 パンジーは嬉しそうな顔をして、急ぎ足で駆けていった。

 これで席に戻らずに済む。

 途中でお菓子のカートを押す魔女に会ったので蛙チョコを購入した。セオドール自身、付録のカード集めに興味は無いが、これは生徒間の交渉に使える場合がある。特急列車内においていくつか常備しておくのは良策だろう。

 通路を歩いていると後方車両のコンパートメントにダフネ・グリーングラスがいた。

 彼女の生家であるグリーングラス家は「間違いなく純血」である『純血一族一覧』にも記述されている聖28一族の一つで──。

 セオドールは頭の中にある『純血一族一覧』を閉じた。こうして姓から純血かどうかを考えてしまうのは、思考の癖になっている。 二年間の付き合いで知っていることは、彼女とは格別に気が合うほどではないが、悪気の無い付き合いが出来る魔女だ、ということだけだ。

 対面にいるのは誰だろうか。歩みをゆっくり進めた。

 

(セラフィ・ナイト。昨年度『たいていのことがどうでもいい』と言ったな)

 

 座席は空いているようだ。

 ノックして開けると彼女はクッキーの屑を頬につけたまま「やあ」と言った。

 

「頬に、ついているぞ」

 

「ん。本当だ。恥ずかしいな」

 

 ──絶対に恥ずかしいとは思っていないだろう。

 けれど、たいていのことがどうもいい彼女にとっては自分の指摘もどうでもよいのだろう。

 

「隣、座っていいか?」

 

「ええ、どうぞ。でも、あなたはマルフォイのいるコンパートメントに座っていると思っていたけれど」

 

「クラッブとゴイルが黙秘を貫くから、マルフォイが俺にばかり返答を求めて来て困っている。代わりにパンジーを座らせたので今頃楽しくやっているだろう」

 

「黙秘だなんて。話す頭がないだけでしょう。『グウ』とか『ブウ』なら言えるかもしれないけれど」

 

 冗談と愛想笑いを交わしながらセオドールはセラフィを窺う。

 

「なるほど?」

 

 拳でクッキーを砕いた彼女は「そういうこともあるのか」という感じだ。

 

「夏休みのお話をしていてね。君の休暇は充実していたのかな」

 

「俺は……まあまあだ。旅行は面倒だし欲しい物も大してない。日がな一日、土いじりだ」

 

「そうか。羨ましいな」

 

「何だと?」

 

 もしも、マルフォイに同じことを聞かせたら鼻で笑われる趣味だ。

 

「自分の食べるものを自分で作ることは素晴らしいことだと思う。土いじり。いいと思う。花でもジャムを作れると聞く」

 

「ああ、そういうものじゃない。魔法薬に使う薬草畑だ。雑草がすごくてな。肉食ナメクジなどは駆除剤で何とかなるが、雑草は除草剤を使うと魔法薬で使う薬草までダメになるし……」

 

「大変なのだね」

 

「大変なのだよ」

 

 ズキズキした頭痛は気付けば鎮まっていた。それからセオドールは日常の小さな出来事を話した。

 それはホグワーツへ向かう道程の途上、招かれざる看守の訪問が来るまで続いた。




忘れ物
 出掛ける直前で「あれが無い!」ということに気付いてしまうのは幸か不幸か。
 いざ出発時間に間に合わないと分かったらお茶を飲もうとするコッペリアはなかなかの根性をしています。クィレル先生は「ひょっとして人でなしなのかもしれない」と思い始めました。安心して下さい。正解です。

セオドール・ノット
 誰だっけ?という人は、『純血一族一覧』で記される聖28一族を定めた人を先祖に持つ男子生徒ということで覚えていただければよいかな、と思います。なので『純血の一族について詳しいし気にしてしまう』という要素は本作の設定であります。
 原作の彼はダフネもですが……出番があまり……ごにょごにょ。

アストリア
 表記に揺れがあるようなのですが、本作では『呪いの子』準拠の『アストリア』とします。
 また、年齢については、ハリー三年生時に一年生(ジニーの一学年下)と設定しました。
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