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1.
「トレエェェナアァァァーー!!」
負けた悔しさそのままにトレーナーに抱きつく。
「ターボ負けちゃったよぉ……悔しいー」
「おーよしよし、惜しかったのうターボよ」
お風呂に長く入った時みたいにしわしわになった手が、勢いよく突っ込んだターボを受け止めてくれた。トレーナーは、少しよろけたけどすぐに持ち直した。
「ターボね! 今日は噴射出来なかったけど、今度のレースは絶対に、ぜぇーったいに勝つから!!」
「おお、その意気じゃターボ! どれ、ターボが今日も頑張ったご褒美にライブが終わったらご飯にでも行こうかの」
「えっーいいのっ!? ターボねいっぱい食べたいものあるんだ! 人参ハンバーグでしょそれからオムライスあとパフェも! それからね――」
「ほっほっほ、レースが終わったのに元気じゃのう。しかしターボよ、まだライブが残っておるぞ。あと少し頑張ってくるのじゃよ」
「うん! トレーナーも見てて! ターボかんっぺきに踊ってくるから!!」
「ああ、期待しておるよ」
夕飯が楽しみででターボエンジン全開! ライブの控室に全力ダッシュだー!
「ふふ、本当に元気な子じゃな。昔の婆さんを思い出すのう……」
ツインターボがいなくなった後、トレーナーは財布から一枚の古ぼけた写真を取り出して、眺めていた。そこに写っていたのは、若き日のトレーナーと一人のウマ娘だった。
「もうすぐじゃ、もうすぐで……」
しばらく考え込むように目をつぶり写真を財布にしまった彼は、関係者席へと向かった。
2.
「タ~ボタ~ボタ~ボ~♪ターボーをーなめーるとー♪」
授業が終わってすぐにトレーナー室に直行! こんなに早く練習に来るなんてターボ偉い! 早起きは3文の得って言うしきっと早いことはいい事だね! ところで3文ってなに?
早速練習だー!って思ってたけど今日はあっついなー。うえー、汗で制服が背中に張り付いて気持ち悪い。太陽もがんばりすぎだぞ! この前の授業で習った氷河期?ってやつがくれば涼しくなるのかなー? トレーナーに聞いてみよ! だってトレーナーはターボの知らないこと何でも知ってるもんね! それにね、ターボのトレーナーはかっこいいんだ! 背が高いし真っ白な頭はいつもまとまってるし、それに口の上に立派なお髭を生やしてるんだ!
あとターボのトレーナーはいつも人気者! いろんなトレーナーがターボのトレーナーの所に話を聞きにきてるもん! ターボも鼻が高いね!
「トレーナー、来たよー! 早速練習しよう!」
冷房の効いたトレーナー室に入ると、トレーナーはコップに水を入れて何かを飲んでいた。
「あっー、トレーナーずるい! ターボにもちょうだいよー!」
「ほっほっほっ、ターボよこれはお菓子ではなく薬じゃよ。じゃから、これはあげられないのう」
「え゛っーお薬!? トレーナーどこか悪いの……?」
「大したことないよ。少し血圧が高くての……おや?」
すぐにトレーナーに近づいて体のあちこちを触る。しょくしん?ってやつが体の悪いところを見つけるのにいいんだって! 確かネイチャが読んでた漫画に書いてあった。その先のページをネイチャはめくらせてくれなかったけど、続きが気になるなー。
「何をしてるのじゃターボよ?」
「しょくしん! こうすれば悪いところを見つけられるんだって漫画に書いてあったから!」
「そうかい。ではターボ先生や、ワシの調子はどうですかの?」
「うーん、分かんない!」
「ほっほっほ、そうじゃろうと思ったわい。では、ターボ先生には診察代の代わりにこれをあげよう。手を出しなさい」
言われた通りに手を出すと、トレーナーはポケットから金平糖の袋を取り出した。金平糖はトレーニングの終わりにいつもくれるお菓子だ。
ターボの目の色と似た色の金平糖が、ターボは好きだ。トレーナーはターボの目の色を「紫陽花と似た色で綺麗じゃな」って褒めてくれるから、同じ色の金平糖も好き!
「わぁーっ、やったー!! はい、トレーナーにも半分あげるよ! 手、出して!」
トレーナーの手にも、金平糖の袋を開けて半分出した。ターボの手だと、両手のひらじゃないと収まらないけど、トレーナーの手は大きいから片手で全部入っちゃうんだ。
「ありがとう、ターボ。君はいつも優しいのう」
トレーナーはそう言うと頭を撫でてくれた。
「えへへー、でしょ! ターボのこともっと褒めてもいいよ!」
「ああ、ターボはワシの自慢のウマ娘じゃよ」
ターボ優しいトレーナーのこと大好き! このままずっと一緒にいれたらいいなあ。そう思ったけど、言うのは何か恥ずかしかったからトレーナーには内緒にした。
3.
「そうじゃターボ、明日は休みにするぞー」
トレーニングが終わって、ターボが芝の上で倒れていると、さっきまで携帯で電話していたトレーナーが声をかけてきた。
「えーなんで? ターボ明日も練習したいよー!」
「すまんのう、ターボ。明日はワシが出かける用があるのでな」
「ずるいずるい! ターボも連れてってよー!」
トレーナーのジャージの服の袖を引っ張っておねだり。トレーナーは困った顔をしていた。
「しかしのうターボよ、ワシの用事はそう楽しいものでもないぞ」
「別にいいもん! だから連れてってよー!」
即答したターボに、トレーナーは驚いて困った顔をしていた。
「もしダメなら、ターボ勝手についていくから!」
最後の一押し。トレーナーがターボのお願いに弱い事知ってるもんね。トレーナーは、しばらくうーんと唸ったあと、真面目な顔になってターボの目線までしゃがんだ。
「わかった。じゃが、約束してくれ。明日ワシが行く所は静かにしなければいけない。ターボは約束を守って静かに出来るかの?」
「出来るもん!」
約束通りに口にチャックをする。しばらくして苦しくなって口を開けて息を大きく吸った。それを見たトレーナーはいつもの顔に戻って笑った。
「今からじゃなくていいんじゃよ。明日の朝8時に学園の正門前に集合じゃ。起きられるかの?」
「出来るもん!」
明日は絶対に早起きするぞ。トレーナーを驚かしてやる!
約束通りの朝8時、身支度をして正門に向かうと、門の前にいつもとは見慣れない恰好をしたトレーナーが立っていた。
グレーのスーツに紺色のネクタイを締めたトレーナーは、ターボに気づくと手を振ってきた。
「おはようターボ。まだ眠いかの?」
「うん。でも、今日はついていくって決めたから! それで、今日はどこに行くの?」
「ふふ、着いてからのお楽しみじゃよ。では、出発するかの」
歩き出したトレーナーの後ろについていく。今日はどこに行くんだろ?
4.
「ターボ、ターボや起きなさい」
体を揺すられて目を覚ますと、病院の前だった。どうやら寝ちゃってたみたいだ。まだ寝ぼけている目をこすって、トレーナーの方を見ると手に花束のブーケがあった。
「トレーナー、それは?」
「これはプレゼントじゃよ。今日、ある人が退院するんじゃ」
タクシーから降りて、病院の入口の前で待っていると、前から一人のウマ娘がやってきた。
トレーナーほどじゃないけど、頭は白と黒が混じっていてターボとより頭1つ背が高い人だった。
その人はトレーナーの顔を見ると、嬉しそうな顔で駆け寄ってきた。
「お爺さん、わざわざ来てくれたんですか」
「婆さん、退院おめでとう。それと、これを受け取ってくれ」
トレーナーは、買ってきた花束を渡した。
「まあ、綺麗なお花。お爺さんありがとう――」
その人が言葉を言い終わる前に、トレーナーは抱きついていた。ターボの方から顔は見えなかったけど、肩は震えていた。
「良かった、本当に良かった。婆さんが倒れた時、ワシはもうダメかと……。」
「あらあら、お爺さんったら大げさなんだから。この通りもう元気だから安心してくださいな。それに……」
トレーナーに抱きつかれて照れていたその人は、首を向けてターボの方を見て笑った。
「そちらのかわいい子はどなたかしら? 名前を教えてくださる?」
名前は聞かれた時は、大きな声で答える。トレーナーにそう教わった。
「ターボはねツインターボって言うの! ターボはトレーナーの自慢のウマ娘だよ! あっ」
トレーナーとの約束を思い出したターボは慌てた。トレーナーは苦笑いしていた。