(さあ、ご決断を・・・)
シェイナは高台から固まっているクイーンに対して思いを念じる。
すると突然、クイーン立っている場所が炎のように赤くなり、やがてクイーンの体を赤く染める。
クイーンの体が赤く染まり終わると、先ほど白になった黒のポーンもクイーンと同じく赤い色に体を変えていく。
すると周りの2、3の駒も次々と体の色を変えていった。
「な、なんなの!?これ!?」
クラミーは今までとは違って、ポーカーフェイスを作れないくらい驚いている。
シェイナが作った、この予想も出来ない現状に。
「よく決断してくれた・・・!」
シェイナは搾り出すように歓喜の声を上げた。
「こ、これは・・・?」
チェス上で次々と起こるありえない出来事に、ステフは自分の理解が追いついていない。
「黒でもない白でもない、新たな第三勢力の出現だ!」
シェイナはそう言うと、しゃがんで見ていたステフに手を差し出す。
ステフは現状に驚きながらも、シェイナの手を握ってゆっくり立ち上がった。
「お兄様はそれを狙っていたのですか・・・!!」
立ち上がったステフは両手を胸の前で絡ませて、堂々立っているシェイナを見た。
シェイナは一瞬目を閉じるとニッ、と口元を緩めて目を開けた。
(狙ってたというか、たまたまだよ・・・)
口に出していったらステフが驚いて失神してしまうかもしれないと思ったので、シェイナはわざとわかっていたという表情をした。
「戦わずしてゲームに勝つってのはこのことだ・・・!」
さっきとは逆で今度はシェイナが不敵な笑みを浮かべていた。
「戦わずして・・・勝つ・・・・・?」
まだシェイナがエルキアに帰ってくるずっと前、ステフは王室のベッドにいる先王の看病をしていた。
その時にぽろっと先王が呟いたのだ。
「ああ、そうじゃ。それくらいのことを出来る人じゃなければ今のエルキアを救うことは出来ないと思ったのじゃよ」
ステフは少し曲がっていたドレスのリボンを直しながら、叔父である先王の話を聞いていた。
「で、でも・・・」
ベッドに入っている先王は隣の小さな机から巻物状の地図をゆっくりと開いた。
そこには前よりもずっと小さくなったエルキアも載っていた。
「我々
先王のゆっくりで落ち着いた話をステフは快く聞いていたが、今話していた内容には疑問を持った。
「お爺様・・・!」
「そんな知恵を持つ者がきっと何処かにいる筈じゃ。最弱だからこそ・・・強さを知るものが・・・」
「お兄様なら、もしかして・・・」
もう兄がいなくなって数年経つというのに、ステフは何処か先王が言った可能性が兄にあると思っていた。
「シェイナなら、もしかしたらあるかもしれないの・・・」
ステフの言葉を聞いた先王はにっこりと笑顔を作った。
「お爺様!」
「やっぱり・・・」
昔、叔父の先王と話したことがまさか現実となっているなんて、とステフはシェイナを見ながら改めて思った。
その先王が亡くなった今、エルキアを任せられるのは兄しかいない。
ステフは強くそう思った。
「全軍、赤軍を中心に展開せよ!犠牲を最小限で行くぞ!!」
シェイナの叫びとともに再び駒達は力強く叫んだ。