「・・・ッ!!売国奴共め!!!」
怒りを露にしたクラミーは、その目で第三勢力へと変貌した駒達を強く睨みつける。
赤い駒達は、白い駒達の前に立ち並び武器を構える。
黒い駒も武器を構えて互いの駒が睨み合う状態になる。
「・・・!赤の駒が盾みたいに・・・・・」
「ああ。そうすることで黒の駒達は元々仲間だったあいつらを容易に攻撃できない」
呆然と顔を向けているステフにシェイナは目を合わせると、顔を前に戻して今度は目だけをクラミーの方に向けた。
(エルフの魔法を上回るなんて、一体どこの種族を味方に・・・・!もしもあんな奴に国を渡してしまったら・・・!)
体が震える中、クラミーはゆっくりと顔を上げた。
怒りの様な鋭い目つきで、シェイナとステフの二人を睨みつける。
「過去の戦いを振り返ると、必ずしも相手の大将を倒して勝った戦いが全てじゃない」
クラミーはただ目だけで威圧しながら黙ってシェイナの話を聞いていた。
「勝てる見込みが無い時は・・・降伏するってのもアリだ」
その言葉にステフ大きく目を見開いて、先王である叔父の言ったことを思い出す。
「戦わずして、勝つ方法・・・・・!」
ステフは少し頬を紅潮させて、隣のシェイナを見守った。
「・・・フフッ」
突然どこからか笑い声がした。
シェイナとステフは周りをキョロキョロ見渡すと、クラミーが顔を床に向けながら腰を大きく震わせて笑っていた。
「ハハッ・・・フフフフッ、降伏!?降伏ですって!?フフフッ・・・この国は渡さない!私達の国は・・・・・私達の国よ!!」
狂気の笑みで顔を上げたクラミーの目は紫色にどよんと光っていた。
きっと森精種の魔法の力だろう、今までよりもなんとなく空気が重く感じた。
今までとは全く違うクラミーの表情を見たステフは、恐怖の余り一瞬体が硬直して動けなくなってしまう。
狂気のクラミーは怪しく目を光らせながら、黒い駒達に怒鳴りつけた。
「全軍!命を捨ててでも国王の首を取りなさい!!!裏切り者を切って捨てて!!」
黒い駒達もクラミーと同じく目を紫色に光らせながら、全員一斉にドスンと一歩前進すると、現実の軍隊のように規則正しくゆっくりと進みだした。
「お兄様・・・もしかしてクラミーを追い詰め過ぎた?とかでは・・・」
ステフはゆっくりとこちらに向かってくる黒の駒を見ながら焦りの表情を浮かべている。
視線を再びクラミーに向けると、その目はどう見ても狂っているとしか言いようの無い目をしていた。
「・・・だな」
シェイナは感情がわからない返事をした。
ステフは狂気に満ちたクラミーと着実にこちらに侵食してくる黒い駒を交互に見ると、ドサッと床にへたりこんだ。
「もう、終わり・・・ですわ・・・・」
(戦わずして勝つなんて、やっぱり・・・)
ステフが下を向いて、叔父が言ったことはやっぱり無理なんだと失望しかけているとシェイナが呟いた。
「わざと追い詰めたんだよ」
それを聞いた途端、ステフは顔を上げて信じられないという風にシェイナを見た。
シェイナはステフの視線に気づくと、そのまま続けた。
「圧政や、独裁を行った人物は決まってーーーー身近な誰かに殺される。そういうもんさ。暗殺って怖いねぇ」
ピシッ
その瞬間、クラミーという一つのガラスが粉々に砕けた様に兄妹には見えた。