ノー『  』・ノーライフ   作:偽帝

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もうステフは俺の嫁で良いや。反論無いっしょ?はい、決定!

見渡す限りの人が、ゆっくりと姿を現す二人を見ている。

 

 

シェイナはステフの手を握りながら人を見渡せるギリギリのところまで来ると、自分達のことをずっと見ている観衆を見渡した。

 

 

チラッとステフの方を見ると、少し驚いているのか体が震えていた。

 

 

(拡声器?・・・・こんなのいらないな)

 

 

シェイナは空中で指を滑らせると、目の前に薄い青の粉が降ってきた。

 

 

粉がゆっくりと落ちながら消えていくのを確認したシェイナは拡声器を取ろうとしているステフを静止させた。

 

 

「大丈夫だステフ。皆に聞こえるから」

 

 

「・・・、わかりました」

 

 

ステフはシェイナの隣に立ちながら、出来るだけ体を震わせないよう意識した。

 

 

 

シェイナは小さく深呼吸すると、普段と変わらない口の大きさで喋り始めた。

 

 

 

 

「皆さん・・・いや、エルキアにいる人類種(イマニティ)諸君、聞いてくれ」

 

 

 

シェイナの声は直接城下にいない全ての人類種にまではっきりと聞こえた。

 

 

 

「『十の盟約』ができたその時から、人類種(イマニティ)は負け続け、数カ国あった国も今やこのエルキアを中心とした小国家しかないほどに領土を取られた・・・」

 

 

シェイナが淡々と話した事実を聞いている人々の仲には、顔を俯かせる人もいた。

 

 

「・・・どうしてそんなことになった?前国王のやり方が悪かったのか?それとも俺等、人類種(イマニティ)が再会の種族だからか?それとも人類種(イマニティ)が<魔法を使いない>種族だからか?こんなに力の無い愚かな種族は滅ぶべきだからか?」

 

 

 

「・・・ッ!」

 

 

 

こことは違う森精種(エルフ)領とエルキアの境目のような世界で、クラミーも一人シェイナの喋っている人類種(イマニティ)の事実を聞いて悔しい顔を浮かべていた。

 

 

 

「答えはノーだ」

 

 

誰もが予想していた答えと間逆の答えを言ったシェイナを、エルキア中の人類種(イマニティ)が体を止めて聞いた。

 

 

「かつての大戦で他の種族が血を流して争う中、我々も戦いそして生き残った。かつてはこの大陸全てを人類種(イマニティ)の国家が占めていたのはもう過去の話と闇に葬るのか?多種多様な能力を有する各種族を相手に一つの広大な大陸を彼等からもぎ取ったのは、人類種(イマニティ)は戦う・・・暴力が得意だったからか?・・・・・違うだろ!!俺達が戦った末に生き残ったのは・・・・・」

 

 

 

人々は食い入るようにシェイナの話を聞いている。

 

 

一言一句聞き漏らさないように、目を大きく見開きながら。

 

 

それは隣にいるステフも同じだった。

 

 

胸に手を当ててシェイナの話を聞きながら、愛しい兄が必ずこの国を変えてくれると信じていた。

 

 

 

 

「俺達が弱い・・・弱者だからだ」

 

 

シェイナは少し間を空けて、さっきとは違い余り感情を込めずに淡々と話した。

 

 

「いつどんな時代でも、弱い立場の者達は強者に対抗して知恵を磨く。俺達が今、かつてない程に怯えているのは、その強者たちが『知恵をつける」ということを覚えたからだ!我等人類種(イマニティ)が唯一生き残る術だったことを、強者が手にしてしまったからだろ!それがこの有様だ!!」

 

 

ほとんどの人々はシェイナの話から目を逸らすように下を向いて、今のこの現状から逃げるようにしていた。

 

 

ステフも下を向きながら、ぎゅっと拳を握って悔しそうにしていた。

 

 

 

「どうした諸君。何故そんな残念そうな表情をしている?何故目を逸らしている?」

 

 

 

シェイナの問いかけに、一斉に人々が顔を上げた。

 

 

その瞳にはわずかに希望の色があった。

 

 

「俺達は昔と何も変わっていないだろ?魔法という恐怖から逃れるための術を身に着け、他種族を上回ることも出来る知恵も持っている!!俺達は弱者故に強者の前に何度も立ち塞がってきただろ!それを忘れたか!?」

 

 

そこまで言うとシェイナは半歩後ろに下がり、片手を顔の近くまで上げた。

 

 

「シェイナ・ドーラはい今ここに、第205代エルキア国王として戴冠したことをここで宣言する!」

 

 

 

瞬間、二人の目の前で暴風が沸きあがる。

 

 

ステフは風を必死に避けながら、その風の中に何があるのかを確かめた。

 

 

やがて風がなくなると、光る一つのチェスの駒が現れ眩い煌きを放っている。

 

 

(これが・・・全権代理者に与えられる主の駒・・・!)

 

 

ステフは目の前でそれを見て、驚きを隠せなかった。

 

 

「・・・我々は弱者として生き、弱者らしく強者に立ち塞がることをここに誓う!」

 

 

少し唖然としているステフの手を取ったシェイナはゆっくりとその手を上に上げる。

 

 

「最弱ゆえに・・・何者にもなることが出来る最強の種族であることを!!!」

 

 

 

ワアアアアア!!!!

 

 

 

人々の歓喜の声と拍手が辺り一体を包むように広がっていく。

 

 

 

「さあ、俺達のゲームを始めよう!もう苦しむのは疲れたろ?ずっとこのままは嫌だろ?だったら方法は一つだ、諸君。今、この瞬間!我等エルキアは他種族に対してーーーー」

 

 

シェイナはもう片方の手で主の駒を持ち、それを人々のほうへ伸ばした。

 

 

「宣戦布告する!!さあ、今こそ反撃の時だ!俺達の国境線・・・返してもらわないとなあ!!!」

 

 

 

再び歓声が沸き上がり、それが波となってたちまち広がっていく。

 

 

 

 

「王様~!隣のその()は誰なんですかー!」

 

 

歓喜の声で湧き上がっている人々に手を振っているとき、ふと前のほうにいる人からそんな声が聞こえたような気がした。

 

 

「・・・」

 

 

どうやらステフは聞こえていなかったらしく、笑顔で手を振っている。

 

 

さて、どうしよう。

 

 

早速無視したら、速攻で評判悪くなりそうだし、かといって妹のことを皆の前で『俺の后だー!』っていうのもアレだし・・・。

 

 

「諸君、気づいている人もいると思うが・・・」

 

 

シェイナの突然の発言に、一瞬歓声が止んで再び人々が視線をこちらに向ける。

 

 

ここで黙っているのも何だったんで、シェイナは意を決して言った。

 

 

 

「隣にいる彼女は、我が后である!」

 

 

そう言うとシェイナは少し恥ずかしがりながらステフを抱き寄せ、自分の前に立たせる。

 

 

「もし町で会うことがあれば、気軽に声を掛けて欲しい!以上だ!!」

 

 

 

人々はステフの整った可愛らしい顔に見とれて数秒間、時間が止まったように沈黙が続いた。

 

 

 

ステフは顔を真っ赤にしながら、何とか笑顔を作って一礼するとゆっくりと戻っていくシェイナに続いた。

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