「お兄様っ・・・」
鍵を握り締めたまま、ステフはゆっくりと目を閉じた・・・・・。
「おにいさまーーっ!!」
ステフは自分のほうに歩いてくるシェイナを見ると、一目散に走った。
「ステフ~、ただいま~」
勢い良く抱きついてきたステフをしっかりと受け止めたシェイナは笑顔を返す。
「おかえりなさいっ!おにいさまっ!!」
二人一緒にソファに座る。
「ス~テ~フ~」
シェイナはステフの頭をわしゃわしゃ撫でる。
撫でられているステフは目を瞑りながらも、もっともっとと催促する。
「おにぃさまぁ~、もっとぉ~」
シェイナの腕を掴みながらステフは笑顔で嬉しがっていた。
すると、突然シェイナの撫でる手が止まった。
「おにいさま?」
ステフは顔を上げるとシェイナの視線の先を見た。
テーブルの上に置かれている皿。
その上には色とりどりのクッキーが少し整った形で何枚か置かれていた。
「これ・・・ステフが作ったのか?」
シェイナは皿から一つクッキーを取るとステフに見せた。
するとステフは恥ずかしながらもこおくん、と頷いた。
カリッ
クッキーでは少しありえない音がしたが、シェイナは構わず噛み続ける。
「・・・おい、しいですか?」
ステフは緊張しながらも、上目遣いでシェイナを見た。
「・・・!うまい!これ、凄く美味しいよ!ステフ!!」
シェイナは笑顔で言うと、ステフの顔も明るくなった。
「ほんとですの?・・・ッ!!」
ステフは小さくガッツポーズをするとシェイナに抱きついた。
「おにいさまっ!だいすきですっ!!」
ステフはシェイナの頬に頬擦りした。
突然の行動にシェイナは少し驚いたが、直ぐにステフを受け止めた。
「ス~テ~フ~」
「おにいさま~っ!」
「お
鍵を譲り受けたのは二年前、それからステフを守ってくれるのは兄ただ一人になった。
しかし、その時はまだ兄は行方不明扱いで、一人孤独にエルキアを支えてきた。
「・・・・・」
できれば、今、このタイミングで思い出したくは無かった記憶だ。
今のお兄様はお兄様じゃない。
何と言うか、言葉では表せないがいつもとは何か違った。
だから今のシェイナにはこの'希望'の鍵を渡したくなかった。
いつもの様なやさしいお兄様に、エルキアを託すこの鍵を渡したい。
ステフは何か決意したようにキュッ、と強く鍵を握った。
その時ーーーーー。
「すいません、ちょっとよろしいでしょうか?」
ベッドの枕の壁からニュッ、と魔法を使ってジブリールが現れた。
「・・・・・・・・・」
10秒ほどステフは状況が理解できなかったが、直ぐに体を起こしてとんでもない速さでベッドの端まで移動した。
「なっ、ななななっ、何ですのぉっ!?いきなりッ!?ふ、不法侵入ですわよぉっ!!?」
ステフは心臓をバクバクさせながら早口でいろいろ言った。
壁から半身だけ出しているジブリールは特に表情を変えることなくそれを見ると、普通に話し出した。
「ドラちゃんには、直ぐに図書館に戻ることをお勧めします」
それを聞いたステフは目を点にして首を傾げた。
「それって、い、今すぐですのっ?」
「はい♪マスターの妹であるドラちゃんにはそれが良いと、命令無しで勝手に参りました。行くか行かないかはドラちゃん次第ですよ♪」
最後に笑顔を作ると、ジブリールは壁に戻っていった。