ガラガラガラ・・・・。
馬車がゆっくりとエルキアの道を進んでいく音を聞きながら、シェイナとステフは向かいに座っているクラミーの話を聴いた。
「・・・正直に言うわ。私が森精種の力を借りてるのは、人類種を滅亡させないため。エルキアにとって必要最低限の領土を取ったら森精種とは縁を切るつもりよ」
「へえ、意外と口が軽いんだね、クラミーちゃん。
シェイナは馬車に寄り掛かりながら、外の景色を見ていた。
クラミーは説得するように動揺の声でシェイナに言った。
「よく考えて!今の人類種が生き残るためには大国の下につくしかないの。貴方ならわかるでしょう?」
今までとは違い必死に説明してくるクラミーに、シェイナは彼女と目を合わさずに答える。
「その考えだけとは限らないと思うなあ。第一、俺いなかったし」
シェイナの返事を聞いたクラミーは視線をステフに向ける。
「貴方は行方不明で愚王の行いを知らないものね・・・。でもステファニー・ドーラ、貴女ならわかるでしょう?」
「そ、それは・・・」
咄嗟に振られたステフは言葉につまり、下を向いてしまう。
それを予想してたのか、クラミーは直ぐに説明を始めた。
「世界最大国家であるエルヴン・ガルドの森精種が使う魔法は、どの種族にも破れやしない!だから、私に勝つのは不可能。勝負を取り消して欲しいの。決して森精種の傀儡国家を造らないと誓うわ・・・」
「お兄様・・・」
クラミーの言葉を聞いてどこと無く不安が心を過ぎったステフは隣に座っているシェイナの様子を伺う。
(どの種族にも破れない魔法、是非とも破ってみたいね・・・)
不安混じりのステフの声を聞きながら、シェイナは心の中でそう思った。
一時的とはいえども、唯一神・テトに仕えていた自分には魔法が敗れるのかどうか気になるのだ。
「ふーん。良いとは言えないけど、悪くない考えだ」
それを聞いたクラミーは直ぐに声色を変えて、シェイナに言った。
「でしょう!そう思ってくださるんなら、勝負を降りて下さる?」
「・・・断る」
ピシッ、と空気を割ったようなシェイナの返事に、クラミーとステフは口を開けなかった。
しかし直ぐに冷静になったクラミーは、冷たい口調で言った。
「そう。交渉決裂ね。お望みどおりねじ伏せてあげるわ」
同時に馬車も目的地に着いてのか、動きを止めていた。
馬車が完全に止まったことを確認したクラミーはドアを開けると靴の音を立てながら歩いていった。
「此処でね・・・」
クラミーに指定された場所に通じる暗い通路をゆっくりと歩き進める。
空気が冷たくて、少し肌寒い。
すると、ステフもそう感じたのか腕を絡ませてきた。
「あの、お兄様?何で断ったんですの?その・・・クラミーの言ってることも一理あると思いましたけど・・・」
「さっき彼女の言ったことは確証の無い話ばかり・・・。それに俺らの後ろに他種族がいるかもしれないという不安がありながらあそこまで話さないよ」
(ホント、言葉上手な子だな・・・)
「お兄様、そ、そこまで考えていたのですわね・・・!」
ステフは目をキラキラさせてシェイナを見ていた。
腕の隣から明らかに視線が来ているシェイナはステフと目を合わせずに、もう片方の手で彼女の頭を撫でた。
(理解してないな、ステフ・・・)
結局いつも通り、ステフを撫でながら、いつまでも続いてそうな道を歩く。
「あ・・・」
ステフの声を聞いて目の前を見るとそこには大きな扉があった。
どちらかというと洞窟のような廊下よりもこの扉から冷気的なものが出てるんじゃないかとシェイナは思った。
ステフが腕を放すと、シェイナは扉に向けてゆっくりと歩き出した。
大きな扉に手が触れると、ツンとくるような冷気がシェイナの体に伝わる。
「・・・・・ステフさん、もうちょっと勉強しようね。付き合うから」
ガチャッ
シェイナは扉を少しずつ押し開けながら、隣で見ているステフに言った。
「は、はい・・・」
ギイイイイ・・・
少しずつ見えてくる扉の先にはは此処からだと真っ暗に見える。
でもその先には必ずクラミーが待ち構えているのだろう。
「さて、行きますか・・・」
シェイナとステフはクラミーの待つ部屋へ足を踏み入れた。